萩尾望都のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
2011年6月28日発売の"月刊flowers"8月号で発表された震災後の福島県を舞台にした『なのはな』と、放射性物質を擬人化した『プルート夫人』『ー雨の夜ーウラノス伯爵』『サロメ20××』の原発3部作、そして2012年に出版された時の描き下しの『なのはなー幻想「銀河鉄道の夜」』に、今回『福島ドライヴ』を収録しての新装版。
3部作では、放射性物質の持つ抗いきれない魅力にとりつかれ、危険性に脅威を感じたらたちまち忌み嫌う人間の身勝手さがシニカルに描かれていて身に沁みます。
漫画で社会問題を発信することには様々な解釈もあり難しさもあるだろうけど、こうしてまた顧みて少しでも考えてみようという気持ちになることだけでも意味があると思います。
「なのはな」は希望を感じられる話です。常磐線!! -
Posted by ブクログ
高いプライドと野心に嫉妬心が加わり、哀れなほど空回りしているマリオ。育ての母の死をきっかけに打ち明けられた家族の秘密が、スランプへ入り口となりマリオを苦しめる。
押さえられない衝動として恋人のラエラに手を上げるシーンが何度も出てきて、マリオのメンタルの弱さが執拗に描かれる。そうしてターニングポイントとなる「愛を学ばなかった」という台詞。
満を持して登場したマリオの実母に驚いたのは私だけじゃないと思う。老人ホームにいるって言葉から、白髪の老婆かと思えばこざっぱりとした性格のオバサンで。
実の母との再会で愛を知るって、育ての両親の存在ってなんだったんだろう。義両親だって愛情をもって接してきたのに、愛を知れなかったのは当たり前として受け取らなかったマリオ自身の問題なんじゃ?
その家庭から愛を学べずラエラへの暴力に走ってしまったという結論のつけ方は納得できない。
バレエ・コレクションと銘打たれ、バレエ作品のみを掲載したこの一冊ではロットバルトが好き。3作とも人間を丁寧に描いた作品でした。 -
Posted by ブクログ
短編四作品を収録しています。
「訪問者」は、『トーマの心臓』の番外編で、シュロッターベッツにやってくる前のオスカー・ライザーとその父親の物語です。写真家の父のグスタフ・ライザーは、オスカーが自分の息子ではないという事実に感づきながらも、そのことに向きあう勇気のない男としてえがかれています。彼は、妻とのあいだにその件をもち出すことを避けつづけ、最後には妻を殺害してしまいます。やがて刑事が彼に疑いの目を向けはじめます。しかし、グスタフ以上に心に大きな負担をあたえられることになったのはオスカーでした。オスカーは、父と母と自分の関係が家族というまとまりをうしなってしまっていることに気づきながらも、家族でありたいと願いつづけ、逃避行をつづける父と行動をともにします。
「城」は、両親が離婚し父に引きとられることになったラドクリフという少年の物語です。なかなか友人のできない彼ですが、同じクラスのアダムという親切な少年と、その友人で不良学生のオシアンと過ごす時間が多くなります。ところが、ラドクリフは偶然にも、キャルガリ先生の若妻メディーナとオシアンが不倫をしていることを知ってしまい、そのことがきっかけで、彼は人間の心の複雑さを知ることになります。
「エッグ・スタンド」は、第二次世界大戦でドイツの占領下にあるフランスが舞台の物語です。キャバレー「花うさぎ」で働くルイーズというユダヤ人の娘は、ラウルという身寄りのない少年を引きとります。ところが、彼女の店に現われた、レジスタンス運動の闘士であるマルシャンという青年が、ロゴスキーという協力者の死をきっかけに、ラウルに疑いの目を向けるようになります。やがてマルシャンは、戦争のなかでしか生きられない少年の心を知り、みずからの手でラウルの運命に結末をくだすことを決意します。
「天使の擬態」は、ヨコハマアドリア女子学園に通う有栖川次子(ありすがわ・つぎこ)と、生物学の新任教師・織田四郎(おだ・しろう)の物語です。次子が自殺未遂事件を起こしたことがきっかけで二人は知りあいます。ストーリーは次子が中心となって展開していき、やがて四郎が次子のかかえている心の傷を知るようになります。 -
Posted by ブクログ
ドイツのシュロッターベッツというギムナジウムを舞台に、少年たちの繊細な心をえがいた作品です。著者の初期の代表作のひとつとされています。
13歳のトーマ・ヴェルナーは、ユーリことユリスモール・バイハンという少年に一通の遺書を残して自殺します。かねてからトーマは、ユーリに好意を伝えていたのですが、ユーリはトーマの好意を拒みつづけていました。そこへ、トーマにうり二つのエーリク・フリューリンクという少年がやってきます。破天荒なエーリクの登場によってギムナジウムは騒々しくなりますが、そんな彼に対してユーリはいつまでも冷たい態度をとりつづけます。最初は、ユーリのことを疎んじていたエーリクですが、ユーリと同室のオスカー・ライザーという大人びた少年やクラスメイトたちとの交流を通じて、しだいにユーリの心の奥にひそむものに魅かれるようになっていきます。
物語が進展するにつれて、エーリクの母が死に、オスカーの親にまつわる秘密が明かされるなどのエピソードを通して、登場人物たちの心の襞がしだいに細やかにえがき出されていきます。そしてクライマックスでは、ユーリがトーマに引かれていながら、悪魔主義者であるサイフリート・ガストという上級生に誘惑され、トーマの愛を受ける資格をうしなったと感じ、みずから心を閉ざしていったことが明らかになります。
少女マンガ史において隠れもせぬ名作と評価される本書ですが、たしかに登場人物たちの心情の細やかさには目を瞠らされました。 -
Posted by ブクログ
宇宙大学入学をかけた最終試験。10人一組のはずが1人多い。閉ざされた宇宙空間と爆発物の仕掛けられた試験会場である宇宙船の中で11人の53日間にも及ぶ共同生活がはじまった。
さまざまな星から集まった受験生ということがあり、鱗に肌が覆われていたり、王様だったり、両生体だったりと個性的。
2度の爆発によるタンクの故障、軌道から外れた宇宙船、船内気温の上昇による伝染病と古典的かつ、正統派SF作品に仕上がっている。
続編は大学入学後のタダとフロルのカップルメインと見せかけて試験で同じグループだった王様のマヤ王。
王という地位を賭けた陰謀にはめられ逃亡の身となったマヤ王と彼を守るタダとフロル。宇宙規模の逃亡劇と少女漫画家らしくちょっとの恋愛は怒濤の勢いで展開されすこしついて行けなかったが、帯にある不朽の名作という謳い文句に嘘はなかった。 -
Posted by ブクログ
主人公のタダトス・レーンは、宇宙大学への入学をめざす少年です。最終試験は10人で一組のチームを組んで宇宙船白号に乗り込み、たがいに協力しあって53日間を過ごすことが求められます。ところが、タダのチームのメンバーが11人いることが明らかになります。だれが、いったいなんの目的で、最終試験にもぐり込んだのか、メンバーたちのあいだに疑心暗鬼が芽生え、追い討ちをかけるようにさまざまな事件が生じていきます。事件が進展するに連れて、タダが幼少期に、この宇宙船白号にかかわっていたことが明らかになります。
タダは「11人目」ではないかという疑いをかけられながらも、フロルベリチェリ・フロルというメンバーと交流を深めます。フロルは、両性が未分化の状態で生まれる「メニール」という種族で、この試験に合格すれば男性になることが許されることになっていました。しかし、タダといっしょに過ごすうちに、フロルは女性を選びタダと婚約してもよいと考えるようになります。
「続・11人いる!―東の地平 西の地平」は、宇宙大学に入学後のタダとフロルの冒険を描きます。最終テストでいっしょになった、アリストカ・レという星の王であるバセスカに招待されて、タダとフロルは彼の星へ行くことになります。ところが、隣国へ攻め込むことを主張する大臣のバパがクーデタを起こし、タダとフロルはバセスカとともに反逆者の汚名を着せられることになります。
学校の授業でアニメ版を見たことがあったので、懐かしくなりました。 -
Posted by ブクログ
「おじさまはアブサント酒がお好み いつも作って差し上げる」
ピカデリー7時のお嬢様が作っていたのはまさかの芋焼酎。。
イメージーー!萩尾さーーん!
笑ってしまった。
台詞は確認してないので違うかも。
人の名前が覚えられないという。でもキャラクターの名前の付け方、いつもぴったりじゃないですか、、と思ったら、やっぱり言葉には敏感なのだ。「サーボ」という名前の、音の響きに恍惚となってしまう敏感さ。小鳥の巣のテオは、やっぱりテオでしかない。脇ながら見逃せない、重要な立ち位置となったのは、名前のおかげだったりするのだろうか。
名は体を表す。
実在の名前でなくたって、トーマスでなく「トーマ」になって本当によかった。「ミノタウルス」と「ミノタウロス」では全然、違うよねえ。
関係あったりなかったりする挿し絵、というか絵のページが嬉しい。
「ミロンのたれ目一族郎党」図に笑った。