萩尾望都のレビュー一覧
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ネタバレ「訪問者」
「トーマの心臓」に出てきたトーマの外伝。
母を殺してしまった父を庇う子の話。
逃避行の途上で体調を崩していく父の姿が悲しい。
「城」
寄宿学校に預けられたラドクリフが、優等生のアダムとギリシャ人の不良オシアンに影響される話。
「エッグ・スタンド」
ナチスドイツの侵略するフランス。
パリの踊り子ルイーズのもとに身を寄せる謎の少年ラウルを、
非合法活動に携わるマルシャンが、ふたりを愛しつつも調査する話。
「愛も殺人も同じなんじゃないの?」というラウルの存在が面白い。
「天使の擬態」
自殺未遂をこころみ、天使になることを夢想する大学生の次子が、
新任教師シ -
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2006年から2011年の大震災直前までに描かれた作品群の全貌。主にメッセージシリーズと、浦島舞の片思いシリーズを収録する。シリーズ連作「ここではない★どこか」の第二弾単行本らしいが、この本に収録された二つのシリーズに関連はない。
感想を長々と書けないので、メッセージシリーズの特に「オディプス」と「スフィンクス」について述べる。語り部は時を超えて現れる悪魔の右手(左手は天使?)を持つ黒装束の男である。彼は「運命」を知っている。男は有名なオディプス王にまつわる「運命」を全て知っていて、事が起きる直前に「その道を行くな」と伝える。時には手を掴んで強く諌め、時には道理を尽くして説得する。
そこに -
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萩尾望都を買わなくなって20年以上が過ぎている。今回「ポーの一族」新章を読んだ勢いで買ってみた。絵柄は少し変わっているが、紛れもなく萩尾望都だった。
作品的に最も気に入ったのは「なのはな」である。雑誌の2011年8月号に掲載されたので、少なくとも5月にはペン入れをしたはずだ。少女漫画では、最も早い時期に発表された「原発事故漫画」だろう。しかし、内容は事故の1年後の福島になっている。萩尾望都らしく、主人公の見る夢は距離と次元を超えてゆくが、内容は極めてリアルに描かれた。その後に継続して掲載された原発事故漫画を見ると、著者がなみなみならぬ熱意でこのシリーズを描いているのがわかる。私は20年の中断 -
ネタバレ 購入済み
SF
めっちゃSFでした。
子供を産めるのはマザーと呼ばれる女性一人だけ。
このままでは世界が滅びてしまうという恐怖に包まれた世界なのですが…
実は大どんでん返しあり。 -
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ネタバレやっぱ萩尾先生は神だわ~。スゴすぎてあたまおかしくなりそうになるわ。
イグアナの娘、最初読んだときは「お母さんイグアナだったんか。あ、そう」だったんだけど、二回目読んだらお母さん可哀想で泣けたよ。美容整形の暗喩? とか思ったけど、そういうわけじゃないんだよな。親または子を愛したいけど愛せない親子関係全体のお話なんだって思ったら、すごい不幸で切実だった。周囲に当然出来ると思われている(自分もそう思っている)ことがどうしても出来ないなんてね…
あとのお話はやっぱり表題作に比べるといまいち。受験生の男の子が喫茶店に住み込む話は読み込んでいくうちに登場人物の印象が逆転するのがよかったけど、終わり方が -
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2011年6月28日発売の"月刊flowers"8月号で発表された震災後の福島県を舞台にした『なのはな』と、放射性物質を擬人化した『プルート夫人』『ー雨の夜ーウラノス伯爵』『サロメ20××』の原発3部作、そして2012年に出版された時の描き下しの『なのはなー幻想「銀河鉄道の夜」』に、今回『福島ドライヴ』を収録しての新装版。
3部作では、放射性物質の持つ抗いきれない魅力にとりつかれ、危険性に脅威を感じたらたちまち忌み嫌う人間の身勝手さがシニカルに描かれていて身に沁みます。
漫画で社会問題を発信することには様々な解釈もあり難しさもあるだろうけど、こうしてまた顧みて少しでも考え -
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高いプライドと野心に嫉妬心が加わり、哀れなほど空回りしているマリオ。育ての母の死をきっかけに打ち明けられた家族の秘密が、スランプへ入り口となりマリオを苦しめる。
押さえられない衝動として恋人のラエラに手を上げるシーンが何度も出てきて、マリオのメンタルの弱さが執拗に描かれる。そうしてターニングポイントとなる「愛を学ばなかった」という台詞。
満を持して登場したマリオの実母に驚いたのは私だけじゃないと思う。老人ホームにいるって言葉から、白髪の老婆かと思えばこざっぱりとした性格のオバサンで。
実の母との再会で愛を知るって、育ての両親の存在ってなんだったんだろう。義両親だって愛情をもって接してきたのに、 -
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短編四作品を収録しています。
「訪問者」は、『トーマの心臓』の番外編で、シュロッターベッツにやってくる前のオスカー・ライザーとその父親の物語です。写真家の父のグスタフ・ライザーは、オスカーが自分の息子ではないという事実に感づきながらも、そのことに向きあう勇気のない男としてえがかれています。彼は、妻とのあいだにその件をもち出すことを避けつづけ、最後には妻を殺害してしまいます。やがて刑事が彼に疑いの目を向けはじめます。しかし、グスタフ以上に心に大きな負担をあたえられることになったのはオスカーでした。オスカーは、父と母と自分の関係が家族というまとまりをうしなってしまっていることに気づきながらも、家 -
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ドイツのシュロッターベッツというギムナジウムを舞台に、少年たちの繊細な心をえがいた作品です。著者の初期の代表作のひとつとされています。
13歳のトーマ・ヴェルナーは、ユーリことユリスモール・バイハンという少年に一通の遺書を残して自殺します。かねてからトーマは、ユーリに好意を伝えていたのですが、ユーリはトーマの好意を拒みつづけていました。そこへ、トーマにうり二つのエーリク・フリューリンクという少年がやってきます。破天荒なエーリクの登場によってギムナジウムは騒々しくなりますが、そんな彼に対してユーリはいつまでも冷たい態度をとりつづけます。最初は、ユーリのことを疎んじていたエーリクですが、ユーリと