萩尾望都のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
西暦30世紀目前の地球、環境問題の悪化の果てに女性が絶滅し男性だけが残った。滅亡の一途を辿る地球人の中でただ一人、出産の役目を授かった聖母(ホーリー・マザ)が暗殺される事件から、物語は幕を開ける。
古くは手塚治虫の「ふしぎなメルモ」のように「性」をストレートに扱ったマンガは少なくない。その中でも萩尾氏は、一貫して「性」を扱ってきた方である。そんな氏の長編作品の中で、おそらく最も性を鋭く突いた作品の一つと言えるだろう。さらに今回は「受胎」まで射程に捉えていた。
近年、小説家の桐野夏生氏は「東京島」を通じて偶発的に生じた原始的な小集団生活の中の「現代的な」女性性を丹念な描写で描いた。この作品は「根源的な女性性」を表すという点で共通する部分が少なくないが、描き方としては真逆である。すなわち、運命的に生じた近未来的な大規模集団の中での「詩的な」女性性を抉りだしているからだ。
Marginal の登場人物の一人は次のように語る。「母体は子宮とは別の人格だ」と。それを象徴するかのように、物語の主役の一人であるキラは操作不能な暴力性を持ち、と同時に生命を宿す特殊能力を備える。
物語を読み進めるにつれて「孕む」こと、「産む」ことの果てしない暴力性にときに呆然とし、ときに安堵した。そうした激しい海練と潮の緩急の中でのみ<命>は生まれ、脈打ち続け、その運命に僕らは一向に抗えないという気持ちを抱いた。
変わらず萩尾先生のメッセージは軟弱者の自分にはかなり手厳しいものだった。