萩尾望都のレビュー一覧
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ネタバレ7月に電子で読んだ。
原作の児童文学では12歳を、漫画では18歳に変更。
18歳未満の人はAWAY、それ以上はHOMEというパラレルワールドに。
18歳の誕生日でAWAYからHOMEへ。
年齢を変更したことで、AWAY内でも妊娠出産が生じ、親子が離れ離れになるという設定が加わった。
この時期の作品らしくドテドテしているのはタブレット画面で読んだせいかなと考えていたが、ざっと読み返してもやはりそう。
少し時間を置こう。
1巻
4月1日 前編43p
4月1日 後編40p
3月21日 前編35p
3月21日 中編32p
3月21日 後編36p
謝辞「AWAY」と「お召し」(萩尾望都)1p
2巻
4 -
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ネタバレ8
2012年から2019年という、この約10年弱の萩尾望都の連載を、心の底から寿ぎたい気持ちでいっぱいなのだが、うーん誰一人共感できないし、人物を突き放して習俗の描写に徹する資料的な作品かといえば、独白たっぷりに描かれるので、それも違うし……。
あるいは萩尾望都はSFという枠組みを使って、美男や生殖や宇宙規模の孤独な思索を絵的に実現したが、
それと同じ程度の文化人類学的な「わからない文化」を描こうとしているというには、「わかる心情」に引き付けようとしているし……。
うーん……。
とにかく登場する人それぞれが、20世紀のあたりまえの感じ方から離れていて、単純に感情移入しきれない……もちろん萩 -
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『盟三五大切』の謎の中の、鶴屋南北を代弁した(と言い切ってしまいます)一文がいい。「そのくらいの細かいところは、お客さん目をつぶってくださいよ。その方が、江戸の人間として粋ですぜ」というやつです。
昨今、粋という言葉で表されるような余裕を楽しむ心がなくなっているように思えるので、すごく良かったです。そうだよねぇ、全部がきっちり来てなくてもいいじゃない、と思います。考察・伏線回収だけが楽しみじゃないよ。
楽しいけどね。そこに囚われてしまっては、なんだかなぁと思います。
『色悪というファンタジィ』もよかったですねぇ。
「色悪」という言葉ができて初めてその現象が存在する、というようなことをプロレス -
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ネタバレ初読。
■ローマへの道 202p
ベルギーの育ての父母たる叔父叔母のもとを離れてパリでバレエ修行中のマリオ。
叔母の葬儀で叔父から、死んだと聞かされていた実の母が、夫つまり実の父を殺したあとローマで生きていると教えられて動揺し、パリに戻っても恋人とうまくいかず……。
という筋だが、マリオが恋人のラエラを殴る(!)とき必ず母が父を殺した凶器の麺棒がよぎる……この描写が凄い。
いわば救いが描かれるわけだが、個人的には、描かれない今後も想ってしまう。
ドメスティック・バイオレンスと親子の繰り返しの問題。あとは日常の倦みについて。
漫画内で、読者の味わいをよくするためには、たとえば一回だけマリオがラ -
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ネタバレ初読。
冒頭、母がバレエなんてお遊びでしょという姿は、間違いなく萩尾望都のお母さんの姿だろう。
が、後半では複雑な親子関係が描かれ、これは読み手を意識した展開なんだろうな、と。
視点人物が結構普通の人だが、人と人の網の目の中で与えられたり与えたりして成長する、とても健康な話になっていく。
闇萩尾を期待する側の人間としてもみどりしっかり! と応援していた。
親世代の悶着、周囲の人間たちのいざこざ、に巻き込まれていくが、そんな中でみどりと対等にいい描かれ方をしたのが、サンダー。いい子なんだ。
このふたりの話だけ取り出しても、いい。
なんでも本作(1988-1989)が萩尾バレエ時代の幕開けになるん -
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ネタバレ2006年以来15年ぶりの再読。
本作は「11人いる!」「百億の昼と千億の夜」に続くSF長編で、今後「マージナル」へと。
確かに世界の壮大さと生殖能力が関連しているという意味で、萩尾ワールド。
また生殖能力云々に留まらず性転換という少女漫画的モチーフが出ることで、さらに萩尾ワールドっぽさが増す。
極めつけは「宇宙レベルの孤独」、これが萩尾テーマだろう。
と当時のSFの潮流も何も知らずに書いてみちゃう。
500ページを超える分厚い一巻本を一気読みしたせいか、個人的には、超能力や舞台やがびゅんびゅんと飛ぶなー、と理解できなくはないが実際に体験するほどには迫ってこなかった印象。
70年代後半当時 -
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ネタバレ・先日「私の少女マンガ講義」新潮文庫で読んだ「柳の木」以外は初読。
・タイトル……谷口ジローっぽかったり、藤子・F・不二雄っぽかったり。
・誰が誰とどういう関係性で、という人物関係がセリフで執拗に説明されるのがちょっとまだるっこしいな、と近年の萩尾望都作品を読んで思っていたが、考えてみれば各編がたった数十ページ、ということは雑誌では読み切りだろう。一篇で独立させるには必要な配慮なのでは、と思い直した。
・わちゃわちゃしているだけでなく、孤独というテーマが貫かれていることが端々に見える。
・70年代当時に萩尾望都の熱狂的ファンになって人生ずっと追ってきた読者と、新たに出会うかもしれない若い読者と -
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初期の短編作品16編を収録しています。
「精霊狩り」「ドアの中のわたしの息子」「みんなでお茶を」の三編は、超能力をあやつる精霊の少女ダーナ・ドンブンブンが主人公の連作短編です。異能の持ち主であるがゆえに人びとから迫害されるという世界設定や、生殖にかかわるテーマをあつかっているところなど、『スター・レッド』や『Marginal―マージナル』に通じるSF作品で、著者がこれらのテーマにとりくみつづけてきた経緯を知ることができます。
「赤っ毛のいとこ」も連作短編形式の作品です。茨木(いばらぎ)まりという黒髪の美少女が、いずれもクセのある三人の少年たちに言い寄られながらも、彼女の恋の理想像とのズレが -
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初期の短編作品12編を収録しています。
表題作「ルルとミミ」の主人公である双子の少女ルルとミミのように、エネルギーに満ちあふれた女の子たちが元気に動く作品が印象にのこっています。とりわけ「ごめんあそばせ!」のエマ・ディズニーは、「キーロックス」のドラマー募集におうじて類まれな能力を見せつけながらも、気ままに多くのクラブをわたり歩いては、少年たちを翻弄しつづけます。「花嫁をひろった男」は、タイトルのとおりオスカーという青年が結婚式から失踪したキャンディという女性が倒れているのを発見する話ですが、天然のヒロインに男たちが振りまわされるラブ・コメディです。
「かたっぽのふるぐつ」は、公害問題をか -
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「一角獣種」と呼ばれる、特徴的な髪色をした登場人物たちが主役を務める短編作品6編を収録しています。
表題作「A-A'」は、惑星開発プロジェクトのメンバーだったアデラド・リーが事故で亡くなってしまい、彼女のクローンがあらたなメンバーとしてやってくる話です。アデラドの恋人だったレグ・ボーンは、クローンとなって帰ってきた彼女と打ち解けることができず苦しみますが、しだいに二人の心に変化が生じることになります。
「一角獣種」の登場人物たちはいずれも感情の動きを表面に出すことがすくなく、そうした彼らに戸惑いながら、自分自身の感情に駆られていく周囲の人びととの対照が印象的でした。 -
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両親を事故で亡くした平羅坂真比古(ひらさか・まひこ)と兄の安曇(あずみ)は、二人で暮らしています。ところが、彼らの暮らす家に奇妙な出来事が起こるようになり、神社の神主である坂上という老人から、その家の下に宇宙からやってきた隕石が埋まっていることが語られます。やがて、マヒコの目の前に女の幽霊がすがたを現わすようになり、さらにアズミの意外な正体までもが明らかになっていきます。
ほかに、マヒコが源頼朝と義経のきょうだいをめぐる歴史的事件の場面にタイム・スリップする話や、未来からやってきたジーンという少年を拾う話などが収録されています。
著者の作品は、緊密なストーリー構成をもつものが多いのですが、 -
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仲間たちとともにヨットで海へと出た音羽(おとわ)アベルは、嵐のなかで光る球体を目にして、波にのまれて行方不明となります。
やがて家に帰ってきたアベルは、それまでの記憶をうしない、以前の彼からは理解できないような言動をくり返して、弟のコリンをはじめ周囲の人びとを戸惑わせます。そんな彼らの通う聖シモン学院に、有亜土(ありあど)ディデキャンドという音楽教師が赴任してきます。彼は、自分がエイリアンだと名乗り、アベルの身体のなかに入り込んだ「ベリンモン」という楽器の演奏者であるといいます。自分はアベル以外の何者でもないと反発するアベルは、アリアドに背を向けつづけますが、アベルの不思議な能力によってさま -
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表題作をはじめ短編6作品を収録しています。
「イグアナの娘」は、青島リカと妹のマミの物語です。二人の母親のゆみこには、リカがトカゲのように見えてしまい、彼女に愛情を注ぐことができません。そんな家庭で愛を受けることなくそだったリカは、いつしか人間のなかで一匹のイグアナとして一生をおくることを受け入れるようになっていきます。
ほかに「帰ってくる子」や「カタルシス」など、親子愛のもつれやゆがみをえがいた作品、「午後の日射し」のように夫への愛をうしなってしまった女性を主題とした作品などが収録されています。
「イグアナの娘」や「学校へ行くクスリ」は、登場人物のすがたが変化して見えてしまうという設定 -
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バレエ・ダンサーとして成功することを夢見る青年マリオ・キリコの物語です。
ドミ・ド・リールのオーディションに合格したマリオは、おなじく合格したラエラことラファエラ・ロッティと交際をはじめます。しかし、彼のほんとうの両親をめぐる問題のせいで彼の心の安定はうしなわれ、はじめはめだたなかったもののしだいにその才能を開花させていく同期のディディに対して後れをとっていると感じて、しだいに追いつめられていきます。その結果、彼は何度もラエラに手を挙げてしまい、二人の関係も冷え込んでいきます。
『感謝知らずの男』にも登場したレヴィが本作でも重要な役どころを担っており、そちらを読んだことのある読者にとっては -
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バレエ・ダンサーの青年レヴィを中心に、何人かの登場人物たちによって構成される連作短編集です。
「感謝知らずの男」は、人と容易に打ち解けることのできないレヴィが、隣人になったモリスとミリーのカップルのおせっかいに困惑させられる話です。ほかに、レヴィのバレエを踊るすがたに魅せられて彼をモデルにしたいと申し出た写真家のアーチーと、その恋人だったガブリエラとの関係の変化をえがいた作品や、オリバーとローズマリィの恋をえがいた作品などが収録されています。
レヴィが主人公の4編にくらべると、あとの2編はややコミカルな雰囲気が強いようにかんじます。どちらもたのしんで読むことができました。 -
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バレリーナをめざす五所みどりは、義兄の薫の友人であるガブリエルに招かれて、イギリスのパディントンにあるロシア・バレエの学校が開催するサマー・キャンプに参加します。
おなじく日本からやってきた東蘇芳や、バレエを生み出した西洋文化のなかでそだった同世代の女の子たちに取り巻かれて不安を感じていたみどりでしたが、公演でスピリットの役を引き受けることになります。しかし、みどりの相手役となるサンダーパートナーであったレイチェルが急遽キャンプにやってきたことで、スピリットの役をめぐってみどりと争いになってしまいます。さらにみどりの母である園子のかつての夫であるジョージと出会うことになり、みどりの周辺はます -
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レイ・ブラッドベリの作品をもとにした短編8編を収録しています。
表題作の「ウは宇宙船のウ」と巻末の「宇宙船乗組員」は、SF色の強い作品です。もちろん短編なので、凝った世界設定などに読みどころのある作品ではなく、地上につなぎ留められた人間が広大な宇宙に夢を馳せるロマンティシズムが表現されています。
「泣きさけぶ女の人」や「ぼくの地下室へおいで」は、幻想的な結末が印象的な作品です。こうしたテイストの短編といえば、おなじく「二十四年組」の一人である山岸凉子の得意分野という印象が強いですが、本書の作品は緊迫感が若干控えめな一方、抒情性が強く現われているように感じられます。