萩尾望都のレビュー一覧
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嵐に襲われ漂流した兄・アベルらしき男が見つかったとの情報を聞きつけコリンが沖縄に駆けつけると、そこには記憶を失いながらも不自然に音楽的才能を開花させたアベルの姿があった。
コリンや友人らの助けもあり、なんとか日常生活に馴染もうとするアベルだったが、音楽教師アリアドの登場により自身の「楽器」としての宿命に巻き込まれていく。
逗子海岸でヨット乗りをする場面から始まる作品だが、壮大なSFへと展開していく。
主筋は重いのだが、冗談交りの友人との三角関係やディスコミュニケーションのおかしみなんかもあり、読み口は結構軽め。
登場人物それぞれのコンプレックスも丁寧に書かれており、コンプレックス克服の成長物 -
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昼は女学生、夜は暴走族女リーダーである主人公・レッド星。
彼女は生まれ故郷の火星に強い憧れを抱くエスパーであった。
正体不明の美少年・エルグと出会ったことで、彼女の人生が大きく動き出す。
萩尾望都大先生のSF長編。脇役もちゃんと活躍するのが素敵。
「主要キャラクターはあれだが、希望は残った…」という感じの終わり方や迫害されるエスパーという設定、溢れんばかりのSFイズムが竹宮惠子『地球へ…』を思わせる。あれも名作。
しかし、この人の漫画は設定がしっかりしているのにいつも感心させられる。
一部の登場人物の造型や世界設定が『マージナル』に引き継がれてるように感じた。 -
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あえて表題作「半神」の感想のみ。
どこでも書かれていることだが、16ページでここまで描ける、というお手本。
かつて鈴木光明に萩尾が「新人マンガ家に16ページとか32ページとか、投稿作に
ページ制限を設けるのはいかがなものかしら? 私たちのころはみんなページにとらわれず自由に描いていたでしょ?」と電話をしたとき、鈴木が「近頃の投稿者はページ制限を設けないと、何ページ描けばデビューに有利になるかとか、長いと不利かとかそんなことばかり聞いてくるから、あえて設けている」
と答えたのを聞いてうーむと考えた、というエピソードがあったのだが、
そりゃ天才とそうでないものは違うさ、と思わざるを得ない。
努力で -
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個人的な、あまりに個人的な……というと、なんだか男の好みが変わってヒーロー像が固定不変、そのヒーロー像にイマイチ深みがないために作品全体のドライブ感がなくなってしまった(でも絵というかドラマチックなシーンの演出がものすごく好きなので買い続けるのだが)山口美由紀のことを思い出してしまうな。
自分ちのネコのかわいいようすに、擬人化の度合いの絶妙なセリフを乗せ、子ども大くらいの大きさにし(家の中や、著者本人を思わせる飼い主との絡みでは正常なネコサイズ)冒険させるライトファンタジーマンガ。執筆動機が「ウチのネコちゃんかわいいでしょ」であることは明白なんだが、ファンタジーとエッセイ漫画的な現実描写との混 -
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優等生のアベルが、ヨットで座礁して行方不明になった。
眉目秀麗、完璧なアベルの死を嘆く通夜に一本の電話がかかってくる。
「頭のちょっと弱い男の子をこちらで預かってるんですけど」。父親は激怒して話を聞かず通話を切る。
しかし気になった弟コリンや友人らが沖縄へ行くと、アベルそっくりな少年がいる。
しかし、「彼」は言葉も話さず、ただ音楽だけが堪能で、生活知識もまったくない状態。以前のアベルとはかけ離れている。
コリンはそれでも身体的特徴から彼がアベルだと断定し、彼を連れ戻す。
しかしアベルは学校でも家庭でも問題を起こし、そんな中、新しく学校にやってきたアリアドという音楽教師はアベルを「自分の楽器」 -
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一巻でトラウマで一年以上続きに手が出せなかったけど、最近重たい話が読みたくって再チャレンジ。笑 したら、二巻も更に凄いことになってる。
ジェルミが狂わされていく様が本当に壮絶としか言いようがない。グレッグの狂気に巻き込まれて…ポーの「黒猫」を引用したモノローグはたまらない。震えるほどにやりきれない。
残酷な神、って、一巻ではグレッグのことだと思ったけれど、二巻を読むと、イアンやサンドラの「無知の残酷さ」を凄く感じた。グレッグとジェルミの関係という事実に対する無知だけでなく、どこか理想的なものにこだわるがために生まれる、本質的な無知、っていうのかな…、残酷。
最後道が開けそうな展開になって、これ -
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ヨットの遭難で海に消えた少年アベルは、記憶も常識も喪失して還ってきます。
彼の体内には、宇宙生命体である楽器ベリンモンが宿り、その楽器を追い求めてエイリアンが現れます。
こんなふうにあらすじを書くと、???がとびかうような突飛な話のようにみえますが、さすが、萩尾望都先生。美しい抒情詩のような仕上がりになっています。でも作品群の中では比較的軽い感じでさらっと読めるほうです。
話はそれますが、この一巻の最後に恩田陸さんがエッセイを書かれています。
その中で、恩田陸さんのあらゆる作品の根っこになっているものが萩尾望都先生の作品だと。「精霊狩り」シリーズが「光の帝国」シリーズへ。「トーマの心臓」が「 -
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えーと、「残酷な神が支配する」から後、この「バルバラ異界」は、購入はしていたけれど、ずっと未読のままでした。
まあ、1番の理由は、萩尾望都は、読むのに体力と根性がいるからなのでした。
そのくせ、泥沼のように(?)一気に読ませようとするからねぇ。そして、一気に読みたいたぐいのお話だし。
ということで、夏で仕事も一段落した今の体力のある時期に、読んで置こうということで読み始めました。
えーと、凄い。
これは、あんまりにも陳腐な表現ですねぇ。
前作の「残酷な神が支配する」は、リアルな理解しやすい物語だったと思います。まあ、劇的なドラマの連続が、リアルといっていいのかどうかという問題はあります -
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この物語は、登場人物が多すぎる。人物間の関係が一度読んだだけでは、掴めない。というわけで、第2巻では、章の終わりに人物間の関係が説明してある。
映画、マトリックスでは、現実とサイバースペースの関係を論理的に考えようとすると、納得のいく筋道がつかめるわけもなく、物語の中に入り込めず楽しめなかった。
バルバラ異界でも、現実世界と、キリヤの作り上げた仮想世界に青羽が住み着き、そこに渡会時夫が入り込みタカに引きずられていくうちに、バルバラにいたパインがこちらの世界に来て、キリヤのことをタカだという。現実とバルバラが交錯してきた。
バルバラでは、死者がでると心臓を取り出してみんなで食べる儀式が行われる。 -
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「残酷な神が支配する」全17巻、1993.4-2001.9でついていけなくなって、萩尾離れを起こして人が多数いるのではないだろうか。僕は最後まで付き合ったけど、うちのカミさんやカミさんのお友達は、テーマの気持ち悪さについていけず脱落してしまった。
「バルバラ異界」でどれぐらいの望都ファンが戻ってくるだろうか?
この本の主人公はいったい誰なのだろうか?眠り続ける十条青羽、他人の夢に入り込むことの出来る渡会時夫、渡会時夫の息子のキリヤ。物語の時代は、2052年。
瀬戸内海に浮かぶ幻の島バルバラ。右手の形をしている。この島は、キリヤがパソコンの中に作った架空の島だという。
2045年に何者かにより