森沢明夫のレビュー一覧
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縄文時代が一万年も続いていたなんて、知らなかった。一万年も続くってことは、幸せな時代だったということ、というクマゴロウさんの解釈に、なるほどと思った。
人間同士で争うことを知らない時代。他人の幸福を祈ることが当たり前の世界。
ライア視点のパートでは、縄文時代の木々に囲まれた自然豊かな風景の鮮やかさ、静謐さに感動した。
桃子視点のパートでは、朴訥とした考古学者のクマゴロウさんとの関係の深め方が微笑ましく、そして大森家の家族の愛にも、心が暖かくなった。
裕福でなくても、幸福でいることはできる。
耳を塞ぎたくなるような痛ましい事件や事故が毎日のように起こる現代だけど、縄文時代の人たちのように、み -
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ネタバレいずれ夫婦のうちのどちらかが先にこの世を去ってしまう。
先立つ側が何を残し、遺された側が何を受け取るか。
別れの悲しさの中に、倉島夫妻のお互いを想う気持ちがぎゅっと込められていて、胸が苦しくなったり温かくなったりと、情緒が揺さぶられる。
私の何となくの理想は散骨だったけれど、遺族の負担は結構大きいのだと知った。(亡くなった人の骨を砕いて粉々にしなければならないという心理的な負担と、船を出して海に撒かなければならない身体的・時間的な負担)
でもその旅を通して、最初の章では点でしかなかった色んな人たちの人生が、線になって繋がっていく様子は、洋子が遺した奇跡なのだと感動した。
最後に倉島さんが -
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不登校の娘、霊能者に嵌っていく母親、家族の再生の物語。
これは、ほんわか、すっきり、そして最後は優しくなれる物語でした。
中学生の娘の春香はいじめをきっかけに不登校に..
父親の川合は学校に乗りこむも、学校はいじめを認めず..
転校させようと考えていた矢先、妻の杏子は霊能者に嵌っていきます。
全てを言い当てる霊能者。
洗脳から妻を解き放つことができるのか?
近所の釣り好きの心理学者に相談するも、状況は変わらず、さらに悪化..
そんな中、娘の春香も霊能者のもとに通い始めます。
家族はどうなる?
という展開ですが、おおよそ展開が読めてしまいます(笑)
父親、母親、娘、霊能者、心理学者、それぞ -
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ネタバレ大手レコード会社を辞めて、ひとりでレコード会社を立ち上げたパワフルな女性起業家、すみれが主人公。会社といっても従業員は自分だけ。
寝る間もなく仕事に駆け回り、知らないうちに道路に倒れて寝てしまうくらいの多忙っぷり。
そんな仕事に夢中なすみれなので、恋人の亮ともすれ違うことが多く、読んでいる側からしたらヒヤヒヤしてしまう。
所属していたバンドが、辞めた大手レコード会社に引き抜かれてしまったり、亮から別れのメールが来たりと、悪いことは重なり、すみれは失意のどん底に落ちる。
けれど、ここからどうやってすみれが挽回していくのか、立ち上がっていくのかが、このお話の見どころ。
周りの人を頼って巻き込んで -
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『海を抱いたビー玉』森沢明夫
古いものには、魂がある––––そう迷信めいた言い伝えを親から聞かされて育った。特に、人形には必要以上に可愛がってはいけない、と教わった。この物語は、愛されたお陰で魂を宿したバスの物語であり、バスを通して生まれる縁が描かれた群衆劇だ。
大三島での熟れてない蜜柑の甘酸っぱい味がしそうな青春物語、新潟震災を舞台にしたサバイバル物語、広島での心温まる職人物語、悪代官コンビのドタバタ物語など、多様なエピソードが織り交ぜられており、読者を飽きさせない。
物語のテーマは、一貫して「出会いと別れ」である。
「ぜんぶ、思い出に、するの、嫌じゃ……」
本作の第一話で、別れを前