森博嗣のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ再読。
何も考えずに時流に流されそうになるとき、森博嗣の本を読む。
当たり前を、常識を押し付けられそうになるとき、森博嗣を読んで頭や感情をフラットな状態に戻す。
この小説ははっきり言って面白くはない。
作者もそれを承知で、敢えて面白くなく書いているのだと思う。
流れるようなストーリーではなく、山場もなく、魅力的なトリックもなく、どんでん返しもない。
ただただ単調に水柿助教授の日常を描き、読者の期待をすり抜けるように不可解な謎を作らない。
だって現実ってそういうものだから。
どこまで読者の期待を下回ることができるのか。
それでも本は売れるのか。
そういう実験だったんじゃないかと思いながら読んだ。
登場人物だけでなく、作者をも疑いながら読む。
それが結構、世の中に流されそうになっている自分を振り返るためのいいリハビリになって、心地よい。
森博嗣は定期的に読みなおさなければいけない。 -
Posted by ブクログ
誰も理解してくれない。
という一点のみで、
自分をこの現実に繋ぎ止めている気でいるひとって居るよね。
天才は、誰かに理解された瞬間に天才ではなくなる。
そう思っていたことがあったけれど、どうやら間違いだったんだろうな。
理解できない、ということを理解しているだけで理解したつもりになって、
実はそれは諦めているだけだと気付かない。
だからほんとうに諦めなければならないときに、
諦めることを諦めることができなくて、
諦めかたが解らなくて疲弊するのだ。
なんてこういう、言葉遊びにもならない堂々巡りが、
案外自分をシャープにしてくれたりして。
ほんとうに、誰かを理解するということは、
誰かに理解されている、という一点のみで、
自分をこのリアルに繋ぎ止めることができる、とか
それくらい奇跡的なロマンスなのだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこのシリーズも第8弾となった。今回もそれなりに議論を巻き起こしそうな内容が散りばめられている。
思考の過程で第三者の視点から眺めてみるということは、客観性を確保する意味で重要であると理解しつつも、これがなかなか難しい。
今回、感銘を受けたのは天才に関する行である。
「知りたいことは、自分の目で見て学ぶ。この観察力に、まず非凡な才能が発揮されるのが天才である。」という。
やりたいことはすぐに実行し、試す。そこに体系化されたステップは存在しない。だから天才は上達するのが速いという。
「天才は自分で自分を評価している」とも指摘する。他人に評価されることを待つ凡人とは異なり、自分の出力を逐一チェックしているので、上達するのが速いという。
そうかも知れないと凡夫の私は感じるのみである。 -
Posted by ブクログ
完全無気力、日々頑張らなくていい方法を模索して生きてきた青年・高橋が就職したのは、大学から「ここだけはやめておけ」と言われた銀河不動産。
顔も口も声もでかい気力満々の社長・銀亀元治と、年齢不詳、控えめだけど鋭い洞察力を備えた事務員・佐賀佐知子と共に社会人生活のスタートを切った高橋は、ひょんなことから客である大地主の間宮葉子から、超個性的な間取りの家を借り受けることになる。
――玄関ホールの左右に一段低い部屋が二つ。とても大きい。左右対称だった。いずれも、奥へ行くほど天井が高くなる。奥の壁の高い位置半分は、全面がガラス。そちらは方角では北になる。青一色の空が、窓の外に見えた。異様に大きい空間である。とても、住宅とは思えない――
まさに「ノースライト」の家。工学部建築学科助教授だった森さんの意匠を空想して物語に入り込む。
何事にも白黒をはっきりとつけない、よく言えば人柄がよく、悪く言えば優柔不断な高橋は、どんどん周りに流されていく。行きがかり上とかひょんなことからといった事情の積み重ねで、彼の住む家がだんだん変貌を遂げていくのは想像の範囲内で、ありがちなコメディを見ているよう。
と、ここまではなんだかな~って感じだったんだけど、この物語の肝はラストの間宮邸でのやり取りにある。
――幸運といったものは、この世にはない。あるとすれば、幸せを築く能力、それを持っていた、幸せを築こうという努力、それをしたというだけのことです。その能力と努力によって、順当に作られていくのが幸運なのです――
ここに来て振り返る高橋の生き方、人との関わり、そんなにうまくいくわけないよな~って思いながらも、彼でなくてはこうはならなかったな~と、ちょっと爽快で、ほんのり温かい気持ちで読み終わりました。
余談:昨日読んだ「森には森の風が吹く」ではこの作品について森さんは、
――この作品を読んで、「真面目にやっていれば、いつか報われるという教訓」を読み取った人がいるようだが、そんなことを読み取られるとは、まだまだ作家として脇が甘いというしかない。真面目にやっていても、報われないことの方が多いだろう。と正直に書いた方が、ずばり通じるのだろうか――
と書いていた。やっぱり相当天邪鬼だわ~