森博嗣のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
完全無気力、日々頑張らなくていい方法を模索して生きてきた青年・高橋が就職したのは、大学から「ここだけはやめておけ」と言われた銀河不動産。
顔も口も声もでかい気力満々の社長・銀亀元治と、年齢不詳、控えめだけど鋭い洞察力を備えた事務員・佐賀佐知子と共に社会人生活のスタートを切った高橋は、ひょんなことから客である大地主の間宮葉子から、超個性的な間取りの家を借り受けることになる。
――玄関ホールの左右に一段低い部屋が二つ。とても大きい。左右対称だった。いずれも、奥へ行くほど天井が高くなる。奥の壁の高い位置半分は、全面がガラス。そちらは方角では北になる。青一色の空が、窓の外に見えた。異様に大きい空間である。とても、住宅とは思えない――
まさに「ノースライト」の家。工学部建築学科助教授だった森さんの意匠を空想して物語に入り込む。
何事にも白黒をはっきりとつけない、よく言えば人柄がよく、悪く言えば優柔不断な高橋は、どんどん周りに流されていく。行きがかり上とかひょんなことからといった事情の積み重ねで、彼の住む家がだんだん変貌を遂げていくのは想像の範囲内で、ありがちなコメディを見ているよう。
と、ここまではなんだかな~って感じだったんだけど、この物語の肝はラストの間宮邸でのやり取りにある。
――幸運といったものは、この世にはない。あるとすれば、幸せを築く能力、それを持っていた、幸せを築こうという努力、それをしたというだけのことです。その能力と努力によって、順当に作られていくのが幸運なのです――
ここに来て振り返る高橋の生き方、人との関わり、そんなにうまくいくわけないよな~って思いながらも、彼でなくてはこうはならなかったな~と、ちょっと爽快で、ほんのり温かい気持ちで読み終わりました。
余談:昨日読んだ「森には森の風が吹く」ではこの作品について森さんは、
――この作品を読んで、「真面目にやっていれば、いつか報われるという教訓」を読み取った人がいるようだが、そんなことを読み取られるとは、まだまだ作家として脇が甘いというしかない。真面目にやっていても、報われないことの方が多いだろう。と正直に書いた方が、ずばり通じるのだろうか――
と書いていた。やっぱり相当天邪鬼だわ~ -
Posted by ブクログ
ネタバレ
自分の道を見つけ、そこへ挑む姿こそ尊い、ということ。他者の顔色を窺ってばかりでは、道は見つからない。また、人が歩かなければ、道は草木に覆われ、たちまち消えてしまうのである。
第16回 人間は自然の一部 より
人生も、あなたが生まれて、あなたが生きてるのは、世界で唯一の条件であって、過去にあなたが生きた例はない。誰も研究していないし、どこにも発表されていない。人生とは、フロンティアなのだ。
第26回 仮説で切り開くフロンティア より
そろそろ引退、隠居と公言している森博嗣のエッセイ。
第1回から12回が雑誌掲載、4年後にWEBで40回まで、残りの8回を書き下ろしとのこと。
好きな作家さんなので、無条件で金言になりがちですが、日々の生活の中での気づきになるような内容です。cream of notesシリーズに読み慣れている方、彼のエッセイを他にも読んだことのある方はすこし物足りなく感じるかもしれません。けれど4年の隔たりがある掘り出し物感があるのと、作家自身書こうとしていたようなことを思い出しつつ書いたそうです。そこらへんの背景も踏まえつつ読むと面白いかもしれません。 -
Posted by ブクログ
ネタバレシリーズ第1作より良い~珍しくロジの趣味に誘われた。ヴァーチャルの世界での車の運転だ。サーキットから外に出て調子が良かったのに急にブラックアウトした。ヴァーチャル空間を提供するアリスシステムに何らかの問題が生じ、自殺者さえも出現した。日本の情報局を通してドイツ情報局から協力を求められた理由は、僕とロジはシステムとの親和性が高いからだという。あちらの世界へ行って車を走らせると、熊のぬいぐるみを抱いたアリスという少女を拾い、海へ行くように指示された。船を操るのはモリスという男性。何もない海の上には人が絶滅した数万年後の夜空が広がっていたが、夜明け前にハルマゲドンを連想させる大爆発が陸地で発生した。一日が終わってホテルに落ち着いてウトウトすると、ホテルのドアをノックしてアリスが現れた。僕にはどちらがリアルで、どちらがヴァーチャルか分からなくなってきた。システムはドイツの権力闘争のスキャンダルを握っていて、闘争に巻き込まれている。日本に亡命を希望するので、3箇所から基板を持ち出すのに手を貸してほしいという内容だ。ドイツにはアリスサイドが造った物語を見せておき、僕らが実際に基板のすり替えを行う。計画は成功し、コミュータとバスを乗り継いで、ヴァーチャルと同じレーシングカーでスイスを目指す。検問は機知とドローンの運び屋を利用し、基板を届けた相手はモリスだった~ロジは結構人間臭いね。届いた筈のルームサービスが消えていたのは、ロジがサプライズで用意したグアト用ナイフの絵に刻まれていた名前の綴りが間違っていたから、ロジが腹を立てた所為ってのは、よくできたと思います
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Posted by ブクログ
ネタバレ本書は、WWシリーズの第2作目。前作の『それでもダミアンは一人なのか?』よりも、本書は一層Wシリーズを読んでいるかのような懐かしさを覚えた。
本書では、グアドとロジのほぼ二人きりで、あるヴァーチャル世界の崩壊に関する調査を行う。
ヴァーチャル世界とリアルの世界の境界がどんどん無くなっていく世界。
もし、自分も高齢となり、体の自由が効かなくなるようなことになれば、体を切り離してヴァーチャル世界の中でずっと過ごすのも悪くないかなと思ってしまう。
ここからは完全にネタバレ。
前作『それでもダミアン~」ではグアトとロジの関係をグアトがロジのことを「妻」と紹介していたが、本作では二人がカップルらしくいちゃいちゃするシーンはあまりなく
あれ?二人の関係性ってWシリーズからあまり発展していないのか?
と思うような場面もあるが、一緒の部屋で寝起きし、ロジの寝顔をグアトが普通に見ているような描写があることから、もう結婚してそこそこの期間があった後の夫婦の関係にも見える。
それにしては、ロジがグアトに対してよそよそしいと感じてしまうのは、ロジの性格が元々こういうものなのか、そのあたりはちょっと謎だ。
最後のロジの本名の関係で例のおなじみのネタが出てきたのは良かった。
やはり『マーガリィ』と『マーガリン』のネタはWシリーズファンなら鉄板のネタだよね(笑)。
そして最後にちょこっとアネバネ(名前は出てこないが、「美女」と形容される『彼』と言えばアネバネしかいないだろうw)が出てきたのは素直にうれしい。 -
Posted by ブクログ
誰もが気になるお金の話。特に作家という一般人からは謎めいた特殊な職業の(森先生の)収入や支出について数字をもとに発表したある種タブーに触れた内容となっている。自分の主義によって作品を作っているだろう森先生であるから書かれている内容が本当だと信用できる。あとがきからの引用→すべての仕事を通して、僕が最も意識していることは「新しさ」である。新しさを生み出すこと、新しさを見せること、それが創作者の使命である。「使命」というと格好が良いが、もう少しわかりやすく表現すれば「意地」だ。それが、それだけが、プライドを支えるもの、アイデンティティなのである。/したがって、小説家になるためにはこれこれこうしなさい、といった既存の「ノウハウ」に惑わされてはいけない。とにかく自分の作品を書けば良い。「手法」はどうでも良い。「どう書くか」ではなく、「書くか」なのである。自分の勘を信じること。自由であり続けること。その場かぎりでも良いから、自分が考えた理屈に縋って、「正しさ」そして「美しさ」を目指して進むこと。あとは、とにかく「勤勉」を自分に課すこと。これくらいしか、僕にアドバイスできることはない。最適の健闘を!また別の森先生の本も読もう。