森博嗣のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
既知は思考を助け、思考を縛る
順番が多少前後してしまったがGシリーズ三作品目の本作品は密室劇に様々な要素を注ぎ込んだ作品。超能力者とか、信者の存在とか、恋愛関係とかそういった色々な要素を注ぎ込んで話が展開される中で読者の読みを揺さぶってくる。
どうしても今までの他の作品の読みの型に当てはめてしまう読み手の私は超能力のときはこんな感じのトリックでとか、信者ということは金銭とかの関わりとか組織とかの関わりがあってとか、恋愛関係ということはこういった動機があってとかを考えてしまう。それが本作品では助けともなり、そして縛りともなる。その構成は良かったと思う。
一方でGシリーズの特徴なのか真相当てと犯人当てというところが重ならないことがあり、そういった意味で後味の悪さや、消化不良感を感じてしまうところ。どうしても物語の中で話を展開させる山吹さん、加部谷さんとは違う、あまり話さない思考も読みづらい海月さんという推理役がイマイチフィットしてないところがあるのかなぁと感じる。
ただ、犀川先生と西之園さんの関係性の描写には思わずニヤッとしてしまうファンの楽しみ方があり、二人の関係性が巻を追う毎に楽しんでいる私もいる。ただそれは今までのシリーズで積み重ねてきたキャラクターの造形の良さであるが故に、新シリーズのキャラクターたちの良さをこれから引き出してもらえたらなぁと思っている。 -
Posted by ブクログ
Gシリーズ3作目なのだが、これまで以上に「途中経過」感が強く、モヤモヤの残る作品だった。
まず、密室の謎は解けたものの、殺人犯が誰なのかは未確定なまま終わる。
そして、1、2作目ではギリシャ文字が何を表すのかは比較的明確だったのに、今作の「τ」が何を意味するのかはわからない。ラジオ番組のタイトルとして登場するだけで、殺人事件との関連も謎のまま。
ただ、これまでちらちらと見えていた真賀田四季の影が、少しずつ具体性をもって現れてきたような気がする。
「τになるまで待て」というのは、もしかして私たち読者に向けられたメッセージなのだろうか。
その“時”が来れば、すべてがわかるのだろうか。
次作を読まねば! -
Posted by ブクログ
ラーメンと云えば、家系、二郎系、醤油に豚骨、味噌や台湾風などキリが無いほど様々あるけれど、日本が誇るラーメンと云えばやはりインスタントのラーメンではないだろうか。
お湯を入れて三分待つだけで食べられるカップラーメンもあれば、鍋で煮込んで食べる袋麺がお手軽だろう。災害時の非常食にも役に立つので常備している方も多いのではないだろうか。
そんな袋麺の賞味期限って気にした事がありますか?
ギリギリだから大丈夫だろう、多少過ぎてるがまだイケるだろう。そんな軽い気持ちでインスタントラーメンを食べてしまった登場人物たちは、男は女に!女は男に!性転換してしまう。
そんな不思議な連作短編です。
小腹が空いた夜食にはお気を付けください。 -
Posted by ブクログ
お金の減らし方というタイトルに内容は合っていない。お金についての考え方、お金の使い方が適切ではないか。
内容は極めて合理的でその通り。
20億稼いだ作家だから言えるというところはあるが、誰しも自分の満足のために自分の稼いだ金は使うべき。迷うのはそれほど欲しくないからだというのもそうだろう。
疑問点は、人間は普通、著者ほど合理的で他人に配慮しなくていい立場でないことだろうか。
あと、もう一生金に不自由しないだろう著者が何故まだ仕事してるのかが疑問。書くのは好きじゃないと公言してるのだから、こんなエッセイを書くより、好きな工作をするのが著者の主張に合うのではないか?
好きでもない仕事をしてるのは、金のためか、承認欲求のためか、いずれにしても、この本自体が著者の主張に合わないように思える。 -
Posted by ブクログ
被害の連鎖に、推理の一貫性が見出せるのか
Gシリーズ2作品目にして、このシリーズの推理の道筋が見えてきたような気がする。推理役の海月さんが示すのは客観的な事実の照らし合わせによる、妥当性が高い納得解の提示。
今までのシリーズのように警察の方と強い繋がりがあるわけではなく、犯人と立ち向かうわけでもない。そういったところは犀川先生や紅子さんもはまた違った推理のあり方をこれからも見ていけそうだ。
同時にそこに必要な客観的な裏付けをその後に他に託すといった形により、あくまでも推理担当といった役割分担が明確になっているなとも思った。
同じマーク「θ」をつけられた被害者という「連続性」に対して、何が「連続」しているのか、何が「不連続」「独自性」があるのかといったところが推理の一貫性には大切。こういうパターンだから次はこうといった先入観を持たず、一つ一つの事件の事実に着目することが大切かと思う。
よく今までと同じようにというのは持続ではなく衰退といった考えがあるように、今までの型に当てはめず、一つ一つに新しさを見つけていけるように、推理の発展を見出せるように、私もこれからの読みにいかしていきたい。 -
Posted by ブクログ
東野圭吾さんが亡くなってしまった今、間違いなくミステリーを楽しめる本を書く一人。
森博嗣。
東野圭吾さんに比べて、森博嗣さんはとてつもなく心情とかそういうのはドライ。もう、ドライハートなのよ。
でも、そこがまた面白い。
展開も、人間像も。
紅子がずーっと好きになれなくて、犀川教授は結構好きだったのに、紅子はなぁ。
こういう女があんまり好きじゃない。
と、思ってたものの、数冊目になるとそんな紅子にも慣れてきて、なんとも思わなくなった。
付き合いがそうさせるのかぁ。
立ち位置は犀川先生と同じような立ち位置だから、犀川先生のお母さんであらせられるものの、さすがだなぁ。と。
犀川先生の周りのメンバーより、より個性的なメンバーに囲まれてるし、とてつもなく非現実的な生活してるように感じられる紅子だけど、なんだか惹きつけられます。
今回の謎もアクロバティックだったなぁ。
まさか飛行機の中で殺されるなんて。
ましてや、操縦士が。
建築士の製図試験に追われて、ギチギチだけど、やっぱり本には癒される。
楽しみました!
#建築士一級製図
#9時から21時まで授業
#きつい -
Posted by ブクログ
ネタバレ
私はまだ学部3年なので研究って実際どんなものなのか正直あんまり分かっていないが、授業でやる勉強とは違って、自分で問いを見つけてそれについてずっと考え続けるものなんだろうな〜くらいには分かった。
院に進んだらこんな景色を見ることができるのかな、と思った。
喜嶋先生みたいに、研究に没頭して、世の中の雑音が少しずつ遠くなって、自分の興味のあることだけが鮮明になっていくような世界。外から見たら「静かな世界」なのに、その人の中ではものすごく濃密な時間が流れている感じがして、なんかいいなと思った。
研究職に向いている人って、単純に頭がいい人とか、勉強ができる人というより、自分が面白いと思ったものに対して、周りが見えなくなるくらい没頭できる人なのかもしれないと思った。
そう考えると、研究ってちょっと怖いものだとも思う。研究に夢中になるほど、それ以外のものが見えなくなることもある。でも、それくらい何か一つのことを好きになって、自分の時間を全部使って考え続けられるのは、すごく羨ましく感じた。
院進か就職か迷っているいまこの本を読んで、余計に自分は数年後どうなるのか、どうなりたいのかを考えさせられた。今はまだ研究する側の世界を外から見ているだけだけど、院に進んだらいつか自分もこういう静かな世界の中に入っていくのかな〜そこまで熱中できるものに出会えるのかな〜
最後のはなに⁉️なんで喜嶋先生の奥さんは自殺したの!!喜嶋先生が具体的に沢田さんのどこが好きだったのかも分からないし美貌と知能だけで好意を持っていたとしたら、沢田さんが他の人と離婚してまで結婚したのに何があったんだ⁉️ってきになる
自伝的小説だからそこらへんは分からないままなのか〜( ; ; )現実と同じであんまり全てを知ろうとしない方がいいですかね
-
Posted by ブクログ
科学者として、女として、そして母として
Vシリーズの今作品を読み始めたときまず思ったこと、あれ?この舞台知っているぞといいこと。超音波研究所再びということでこれは前のエピソードを読んでいた方がいいなと思った。
地下空間のさらに地下にある密室空間から発見された遺体、そしてかつて起こったスペースシャトル内での惨劇。宇宙空間と地下空間で起こった二つの事件がどのように繋がるのかワクワクしながら読んでいたら、明らかになった真相にびっくり、こういうアプローチからの「どうやって殺したか?」を提示できるのは理系ミステリィの森博嗣作品の所以たるところを感じた。
今回は中盤での紅子さんの振る舞い、前の夫である林とのやり取りの中でより今までにないほどの「母」としての要素、そして「家族だった」という要素を感じた。今回のエピソードのテーマでもある「家族観」をより深ぼってくれたと思う。
Vシリーズは紅子と林と、祖父江との三角関係も見どころの一つ。S &Mシリーズのときはどちらかというと西之園さんから犀川先生への憧れや愛情といった二者関係だったものが、三角関係になったことでより描写や奥行きが大人向けにもなっているんだなと感じている。
色々な深掘りや伏線、匂わせをして進んできたVシリーズも残りあと1作品とのことでどのような終わり方をするのか楽しみにしたい。