【感想・ネタバレ】詩的私的ジャック JACK THE POETICAL PRIVATEのレビュー

あらすじ

大学施設で女子大生が連続して殺された。現場は密室状態で死体には文字状の傷が残されていた。捜査線上に浮かんだのはロック歌手の結城稔。被害者と面識があった上、事件と彼の歌詞が似ていたのだ。N大学工学部助教授・犀川創平とお嬢様学生・西之園萌絵が、明敏な知性を駆使して事件の構造を解体する!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

個人的にとても好きな作品だった。

話の構成や、トリックなど、どこを取っても今までの作品の中でも良く出来たものに感じた。

特に、最後の3つ目の密室のトリックに対するミスリードの部分には完全に引っ掛けられたし、萌絵と同じように?が浮かび続けていた。

犀川が半分いないまま話が展開していくところや、犀川の内的思考の描写が今までの作品のようにないことがとても印象的で、萌絵の心理描写が多いところも今までとの差分があって面白かった。

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2025年08月30日

Posted by ブクログ

今回もあっという間に読み終わりました。
タバコの描写が作品ごとに増えていくのは個人的に喫煙促進しているようで嬉しいような、悪いような・・・。ただ、読書しながら吸うタバコはこれもこれで良いものと思ってしまう。
S&Mは今後どんな関係性になるかも気になります。

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2025年08月15日

Posted by ブクログ

犀川創平&西之園萌絵の密室シリーズ
大学内で発生した連続殺人
密室と奇妙な暗号、HowとWhyの予測がつかないなかでのフーダニット
でも最終的には全てに意味があった
お見事です

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2025年07月28日

Posted by ブクログ

S&Mシリーズ第4弾
詩的私的ジャック
タイトルから全く中身が想像できませんでした
まさか萌絵が解決してしまうのかと思いきや
そこは犀川先生が、、、

改めてこのシリーズがどハマりしてまして
なんでだろうと整理してるんですが
・誰が(who done it)
・どうやって (How
・何を(what
---------
・なぜ(why
ここの線引きが凄いはっきりして
なぜかとか興味もないし、理解しようとも思ってないし、(本人)犯人も言語化正しくできるのかすらわからないでしょというこの構図がしっくり
きているのだと感じてます
しっくりくるというのは、読者に考えさせる(問いてる)なので、読んだ後もあれって結局って余韻が残るので、心地よい頭の疲れと思考が連続するんだなと(昇華してます)

登場人物の成長(萌絵がどんどん冴えまくってくるところ)と冷静な犀川。そして、国枝さんとかまわりの警察とか本当にバランスがよく。ひとつひとつ言葉が考えさせられます

いくつか
夢と希望の違いって。。。
物理的に実現できそうなことを夢という言葉は
私は使わないと(国枝)
男前すぎるでしょw

学ぶのは、平等になるためだ
(犀川先生、、、)

他人に説明して、理解してもらえるなら、人殺したりしないよ
犀川先生の言葉の重さが素晴らしいんだよな
森博嗣さんの言葉選びと頭脳の凄さよ

続いて第5弾「封印再度」へ
※全くタイトルから想像つきませんねw
(who inside)

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2024年07月27日

Posted by ブクログ

s&mシリーズ第四作目の今作だがあいも変わらず面白かった。
密室にした理由に納得のいく理由が提示され、森先生の引き出しの多さに脱帽

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2024年04月06日

購入済み

おもしろい!

ただのミステリーに留まらず、哲学的思考が散りばめられた『犀川教授&萌絵』シリーズ。

シリーズがどういう順番か、電子書籍はわかりづらいのですが、(裏表紙がないから) 

シリーズ4作目?くらいだと思います。

ここでハマってこのシリーズは全て読みました!

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2012年08月19日

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今作は犀川が出張で出番が少なく、萌絵と並んで彼の登場を心待ちにする自分がいた。前作のような閉鎖的な舞台装置はなく山場らしい山場もないけれど事件は淡々と確実に連鎖していき、その静かな行進が最後に全てを繋ぐ鍵となる構成に森博嗣という作家の引き出しの多さを感じた。タイトルの響きも好き!

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2025年12月09日

Posted by ブクログ

大事なのは、howではなくwhy。

なぜこのように殺したか。
なぜ殺したのか、という動機は問題にしない。

そんな崇高なホワイダニット。
感傷に収束させない、意思のお話。

思えば、事件とは離れたところでも、根源的ななぜ〜?("why")という問いが多かった。
自分の意思、思考を問われる作品だった。
一つくらい、気の利いた答えを用意してみたい。

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2025年09月01日

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ネタバレ

答えに行き着けるかどうかは、正しい問いを立てられるか、なのだろうなと思った。今作も鮮やかだった。

犯人が最初から計画していたという冷静さがとても恐ろしい。
「なぜ密室を作ったのか?」というわかるwhyと、「なぜ凶行に至ったのか?」と完全にはわからないwhyの対比が印象に残っている。人が何を考えているのかはわからないし、言葉にしないと伝わらないんだろうな、と。

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2025年08月22日

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やっぱり面白いこのシリーズ…最初から最後までずっとトリックを暴くために奮闘するから、気になって一気に読み進めてしまう。理系っぽい言葉や数字が出てくると正直難しくてわからないところもあるけど…。それでも少しずつトリックを暴いて犯人に近づいたり、遠のいたりしていくこのストーリーにハマる。犯人がわかった時、人間の弱さを突いてくるところもまた好き。

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2025年07月20日

Posted by ブクログ

難しい!けどやっぱり読み始めるとぐんぐんハマってしまうこのシリーズ。今作は萌絵の無敵お嬢様感をものすごく感じた気がする。犀川先生が出張で不在の時間も多かったからかなぁ。トリックは意外にシンプルなものだったけど、頭でぐるぐる考えてしまった。実験室の見取り図があったらもっと想像しやすかったかも。萌絵が犀川先生に自分の気持ちをガンガン伝えているのがかわいいし、上手くかわしながらお洒落な返答をする先生も素敵。続けてシリーズ読み進めていきたい!

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2025年07月03日

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殺害動機について、物凄いエゴな理由だなと感じたが、殺人事件なんてエゴでしか成り立っていないようなものだからと納得できた。
行動力も判断力も素晴らしい犯人、一度やると決めたらやり遂げるまで遂行する、でないと意味がない。標的にされたらひとたまりも無いという部分に恐怖を感じた。面白かった。

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2025年05月15日

Posted by ブクログ

途中で読むのストップして間に何冊も読んじゃったり、読むのに時間かかったけどやっぱり面白いな~~~。
トリック面白かったし、
ハラハラドキドキしたし、
2人のやり取りにニヤニヤした。

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2025年04月13日

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S&Mシリーズ第四弾
大学で連続密室殺人事件が。
捜査線上に浮かぶのは有名ロック歌手。歌詞が事件内容と酷似している。

犀川創平が中国出張から帰ってくる中盤から一気に面白くなりました。やっぱり二人の会話が楽しくて読んでるようなもの。

謎自体は難しくてさっぱりでした…。
読後、思い返せばヒントはちゃんと散りばめられてた気がする。

そんなことより西之園萌絵の恋模様が気になって仕方ない。くっ付いてほしいけど、まだヤキモキしていたい( * ॑꒳ ॑*)

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2025年04月11日

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女子大の助手である杉東千佳は、大学内の演習用ログハウスで窓越しに死体を発見する。
ログハウスには鍵がかかっており、いわゆる密室だった。
その後、次々と発生する連続殺人事件。被害者はみな、密室で殺されており、その死体には、文字状の傷が残されていた。

犯人の動機をどこまで理解できるか。登場人物たちは、みな、理解不能という感じだったが(多分、犀川創平は理解していた気がする)、個人的には、多少なりとも理解できなくはない。
何もかも許せないっていう気持ちになることもあるし。
ただ、そのために犯罪を起こすかどうかは別として。

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2024年12月01日

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 大学施設で連続殺人が発生し現場は密室だった。そして事件の内容がロック歌手の結城稔の曲『詩的私的ジャック』と酷似している…というS&Mシリーズ第4弾で、密室は勿論「何故現場を密室にしたのか」というホワイダニットも面白かった。犀川先生と萌絵の関係性もますます気になる…

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2024年09月08日

Posted by ブクログ

犀川助教授が冷静な判断で事件の犯人を突き止めていく過程と真相を語る様は、かなり読み応えたっぷりで素晴らしかったです。
西之園さんも独自で事件を調べたり行動していく姿が良く、2人の関係がどうなるのか楽しみです。

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2024年07月15日

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ネタバレ

9章の萌絵のプロポーズ、読んでいてニヤニヤしてしまいました。探偵ものの異性バディが恋仲になることは許せないタチでしたが犀川&萌絵のやり取りにニヤニヤしてしまう…。最後の会話もよかった。
あと、解説でも書かれていたけど途中の国枝女史と萌絵の会話が今作の中で1番印象的で好きなシーン。

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2024年07月07日

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タイトル通り、私的で私的な物語だった。
難しい表現多めだったけど面白かった。
夢と希望の違いはなんなのでしょうか。
しばらく考えようと思います。

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2024年04月20日

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ネタバレ

シリーズ4作品目!

今回の事件はミステリ要素は少し控えめだが、人間描写が綺麗だった。
天才博士が出てこないのは初めての作品だった事もあり、事件の動悸や謎としては今まででは一番奇抜ではないように感じた。その為読みやすかった!

森博嗣先生の作品は全体的に家族構成や恋愛対象が特殊に絡んでくるものが多いなという印象。

段々進展していく、犀川と萌のやり取りも面白いので続きが気になる!

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2024年04月13日

Posted by ブクログ

シリーズ第4弾です。
再読。audibleにて。

今回は犀川先生は中国に出張に行ったり、東京に出張に行ったりで、あまり出番はなかったのに、事件を解くのは犀川先生なんですよね〜。

殺人の動機はちょっとわかりにくいかなぁと思いました。
密室の作り方に至っては、聞き流してます笑
なので無理があるとか、杜撰だとか全く感じません。(考えてないので)
ほぼ全てのミステリーそれで読んでます。

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2025年10月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

何か心がザワザワして、考えることを放棄してひたすら読み進めてしまいました。
リセットする、と言うかまっさらにしたい、という気持ちはわからないでもない自分が居て。ただ度合いの問題なのだろうと。完璧を求めすぎる人間の恐ろしさですね。

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2025年10月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

久々にしっかりサイコパス犯人
瞬間接着剤とセメント、ナンバーにあんまり意味がなかったのはちょっと残念

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2025年07月12日

Posted by ブクログ

今まで読んできたこちらのシリーズの中で1番読みやすかったです。 犀川先生が中国出張している間の、萌絵の1人のストーリーが今までよりもすごくしっかりと描かれていて、成長している様子を描きながら本筋のミステリーもすんごい複雑に進んでいくのに最後きれいに纏まっていくのがすごい…凄すぎました…

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2025年06月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かった。
s&mシリーズの4作目。
大学で起こる謎の密室殺人。しかもそれは人気ロック歌手の結城稔の曲の歌詞に酷似している。その事件を萌絵と犀川が解決に導くという話。
今回の話では1件目と2件目の事件で萌絵達が当事者でないから、いつもより積極的に事件に関わろうとはしていなかった印象。それもあって序盤はやや退屈だと感じた。しかし3件目からは萌絵の大学、しかも知り合いが被害者だという事もあって面白くなっていった。
結城寛はマジですごいと思った。数時間でこのシナリオを思いついたのかと驚かされた。最後の事件を密室に見せるためのそれまでの事件、お腹のナンバー、とても緻密で冷静なシナリオだと思った。ただ真っ白にするためにこんな事ができるのかと感じた。この人からは一度決めたら必ずやるというような執念を感じた。この殺人はあくまでも自分を貫くためやったものだから関係のない萌絵を殺さなかったのかなと思った。
犀川の篠崎に対するそれは英語で言える?って聞いたところは最後スッキリした。なんかお洒落。
萌絵と犀川の関係も読んでて楽しい。
萌絵が犀川の事を全然知らないと感じて論文を読んだり、質問を考えたり、転勤の可能性を考えて慌てたり、酔った勢いでプロポーズしたりしちゃってて可愛い。最後に一生懸命言葉にした想いを笑われちゃったのも可愛い。
犀川の方も萌絵が大人になった事を認めてタバコをあげたり、萌絵に影響されて少しずつ変わっていた事を自覚したりしていて、2人の今後が楽しみ。

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2025年03月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

事件と日常が、作者風に言えばシーケンシャルに進行する好調な語り出しで、これは来たなと思ったら、最終的にやって来たのは、文学性高めのアート的映画の上映終了後のようななんとも言い難い無言の空気で、作品像が掴めなくなってしまった。
なにか90'sトレンディドラマと終わらない青春学園ラノベを燃やした灰を混ぜて練ったコンクリで作ったブルジョア風マンションにゲバ棒(萌絵の学園闘争的に)隊が突撃して爆破したみたいな漠然とした印象だけが残った。

最初は事件を中心に回転していた物語は、次第に萌絵が中心になり、更にその周囲に犀川の物語、犯人の周辺の物語、萌絵と才川の関係といくつも軸が増え、そのギア同士は噛み合ってない感じがした。
事件のプロセス説明の授業は相変わらず良かったが、犀川も興味ないけど片手間でまたやっちゃいました的な、よくある不感症的主人公タイプの匂いを少し醸し出してきて、不安が増してきた。
なんだかアイドルのライブを後方で黙って腕組みして見た後、終了後パフォーマンスについて本人に駄目出しをするみたいな感じになっている。F島で副所長の依頼を断り本格介入した時の犀川はどこへいってしまったのか……
そもそも萌絵の甘え=自己中心的な性格を動力に回転する話なのに、彼女から甘えを取り除いたら物語自体が空中分解して墜落しかねない。
その兆候はすでにアイドルの代わりにマネージャがステージに上がり、最終的にアイドルより目立ってしまうといった様な、まさしく天秤のような萌絵と犀川のバランスを欠いた構造に表れている。萌絵の葛藤より原始的な犀川の方を定番化してほしかったが封印したようで残念。
この作者にしか出来ない音楽ライブの爆音圧の独特の表現は良かった。《ふたりは数字の11より接近した》なんて表現も作者くらいしか思い付けないだろう……

今回の犯人の能力には驚く。知能、スキル、フィジカルと三拍子揃った万能型、更に忍者のようなスピードと隠密能力を有していてたぶんシリーズ中最凶なのでは。短期決戦ならばFの犯人をも陵ぐと思われる。
午前三時に飛び出しおそらく2時間弱でたった1人であの偽装工作を完遂し、一切の無駄の無い動きで犯行を行い密室を作り上げ、そして持ち手のない60キロのコンクリート体を10数Mとはいえあっさり運搬する(10キロの米袋6つ持って階段登れる人間がどれほどいるだろうか?)。こんな化け物が暗殺者で命を狙われたらたまらない。

唯一、致命的と言える欠点は文庫版のあとがきで、三大読書罪の一つ、〈ミステリの犯人をバラす〉と同等の罪を犯してしまっている。
あの5文字を見た瞬間、本を閉じたので詳細は不明だが、展開によっては先が読めてしまいかねず、どうも、ここで来るかという楽しみが無くなってしまったような予感がしてテンションが落ちた。
感想サイトなら自業自得だと思っているが、シリーズ物の前作でやるのはアウトだろう。しかも《今作までのネタバレを含みます》と注意書きをしてその先もネタバレするという悪質な罠まで仕掛けている。
なにか著者の作品のあとがきは思い入れからか、筆が先走りすぎている傾向がある。そういう面では本編に触れず、実情はこうですよとステレオタイプ化を牽制しながら本編の楽しみ方を簡潔に語り、余韻を崩さなかった笑わない数学者での森毅氏のあとがきはかなり好感が持てる。あとがきや解説というのは作品強度を高めるものじゃないと駄目だ。

あと動機が不明とよくあるが、本作の場合、解釈可能だといえる。
例えば、絶対に今この商品を買わなくちゃいけないとか、午前中でこの数のタスクを終わらすとか、人は自分の中の合理性、強迫観念的意識にどうしても勝てないものだ。自分の感想が異常なほど長文になってしまうのもそうだし、ネット上の荒らしや不可解なコメントだって理由はわからないが、いくら刈っても生え伸びてくる雑草のように現象としてはありふれている。だから動機の仕組み自体に関しては取り立てて特殊というわけではないと思うが、雑草も定期的に刈り取らないと家は荒廃してしまうし、どうして雑草が生えてくるのかを考えてもしょうがないという意見も一理ある。

それは動機ではないと言われたらそれまでだが、この犯人の場合、事件を訊いた瞬間、電光石火の如くアイデアが閃き、なんとしてもそれを実行しなくてはならないという強迫観念に囚れたのだろう。
動機が不明というのは全く共感出来ないか、恨みや憎悪ではないということだ。しかし、主目的は妻の殺害であり感情的理由がないとは断言できないと思う。
言葉を知らず興味だけで動く子供の行動の場合は動機が読めないと言い切れる。たぶんその純粋さめいた添加物の無い目的意識を綺麗だと形容したであろう犀川の洞察もわかるが、大人の場合では危険な思考になり得る。
ヒトラーの『我が闘争』には《将来の主観的な決断を実行するために、あらゆる客観をおろそかにしない》みたいな一節があるらしい。Fの犯人もそうだが、この強固なエゴイズムによる意思は今作の犯人と共通性がある。この犯人の場合の客観とは、自分に向けられるあらゆる疑いであり、それを解消するため何者も寄せ付けない強い主観をもって計画殺人を決行したのであり、詩的どころではなく死的である。

そもそも傷害致死を無かったことにするという意図は、会社の資金を押領して隠蔽工作するのとさほど変わらず、その意思自体の肯定はかなり難しい。小説中の論法を使えば、出来事自体を無かったことにするというのは、出来事を隠すという行動によって確実にあったことになる。
犯人の意識についての考察内容をより完璧に達成するためには自己消滅しかないと思うのだが、シンプルな様態を複雑にして、単なるリセット願望を上手いこと誤魔化された気もした。
なぜ一人で死なないのかまで考えると確かに理解不能で、非常に倒錯した利己的な人格が浮かぶ。狂った行動をさせれば狂人はいくらでも描けるが、ここまで詳細にサイコパスを描いた創作物は珍しい。不可解に見える人物の頭の中では自己中心的な計算回路が本来あるはずのエラーを修復し、その人物の主観行動は常に正常で合理的なのだ。しかも客観性を分析し目的に合わせ外部からは異常がないかのように偽装出来る。その結果が〈そんな事をするような人には見えなかった〉という定番のセリフである。
作者は動機について言及することで、動機や人物像を説明している。よく云われている理系的な技巧や手法だけの作家ではないことがわかる内容だ。内面を詳細に描いてしまうとミステリ作品としてはうざったくなってしまうので、あえて登場人物にわからないと言わせている可能性もある。
まあ、この犯人よりも犯人の妻の方がよくわからないのだが。
最終的には被害者相関図の最も中心にいる人物なので必然的に捜査線上に浮かんできそうではある。

色々思うところはあるが、それはやはり1,2作目の出来の良さを引き摺っていることが原因で、思ってたより感性が合わないのかもしれない。ミステリ小説的には最も分かりやすいドラマ性で展開するレベルの高い秀作だと思うし、その都度で文章の流れを汲める人向けかと思う。

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2024年12月01日

Posted by ブクログ

度肝を抜くシリーズ一作目から、どんどんとおとなしめ?のストーリー展開になってきたけど、犀川始めキャラが良い。唯一無二のお嬢様もだんだんと……犀川曰く、成長して(犀川がそこを成長と位置付けた事には多少違和感。)……いわゆる普通のお嬢様になりつつあるし、それはそれでOK。ただし恋愛系はあまり露骨に出してきて欲しく無いかな。そこはフワッと。

やり直しを真っ新なノートから揃える思考は理解出来るが、そこ殺人まで飛躍しちゃってるのが、森さんの書く天才達やん。
物理的に実現可能な事は夢とは言わない。桃子様から素敵な格言をいただいたわ。
次作も楽しみ。

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2024年11月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

犀川先生がお茶目で面白い。
萌絵の告白はたぎったが、その前の
「目を瞑って…」のくだりは最高でした
指輪でもキスでもなく、煙草かい!
ミステリィと恋愛小説読みたいときには欲求を満たしてくれますね。
あと、カタカナ表記が気になって仕方ないんですが、5冊目になったら慣れてくるのかな、カタカナ伸ばさなくて違和感すごいんですけど、工学では標準の表記なんですね。
思わず「森博嗣 カタカナ表記」で調べました(笑)

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2024年08月14日

Posted by ブクログ

自分のアイデンティティは、素直な思考によって不可逆的に柔軟になっていく

この本の中でとても引っかかりのあるフレーズだった

不可逆な柔軟は、全然柔軟ではないように思えたから
しかし、自分のアイデンティティはという主語とイコールとした時に
なんだか人間味があって、妙に納得して

読み終えた時に飲み込めた気がした
犯人のアイデンティティは不可逆で柔軟に当てはまると思たから

S&Mシリーズは
萌絵と犀川のやりとりに少女漫画のような
乙女心(?)をくすぐるようなやり取りがあると思う

「今日は、仕事はしない。全部、君の話を聞く時間だよ」
いいなぁ、犀川先生
私ならこのフレーズにグッときてしまうけどな笑
萌絵のリアクションが書かれていないところが小説の良いところ

星3.5

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2024年07月05日

Posted by ブクログ

今作はミステリとしては控えめな面白さという印象でしたが、常人には理解できない理由で事件を起こすこれまでの犯人とは違い、「ノートを真っ白にしたい」というの分からなくもない動機だったので(「女性を」といったジェンダーの話ではなく、全ての事象において自分の理解の範疇に納めて起きたいという感情)、心情は一番受け止めやすかったかも知れません。それでも殺人に結びつけるのは、やはり異常だとは思いましたが。

とはいえ、犀川先生と萌絵の2人の関係性を掘り下げる作品としては、これまで以上に心情を深掘りしたエピソードが多く、非常に魅力的な作品でした。あそこまでぶちまけられたにも関わらずはぐらかす犀川先生は流石に鬼だと思いましたが(笑)。萌絵の大学院進学の話も出てきて、ますます目が話せませんね。

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2024年02月22日

Posted by ブクログ

S&Mシリーズの4作目である本作。本作の印象として、前回までのシリーズとは打って変わって主人公である犀川が不在の中、もう1人の主人公である西之園が事件に巻き込まれていくことがとても印象的でした。

本作はまず、大学教員が密室のログハウスで女子生徒の遺体を発見することから始まります。その遺体は絞殺された痕跡とともに、衣類が脱がされ、ナイフによる切り傷で作られたメッセージが残されています。そして、事件が連鎖していく中で1人のミュージャンに疑惑の目が向いていきます。果たして、殺人犯はどのようにして、密室を作り、なぜこういう犯行に至ったのか…というストーリー。

事件のトリックと推理の導き方に関しては、森さんの特徴とも言える、理系工学に基づいたトリックであり、かつ論理の筋道も思考過程を踏まえながら主人公が話してくれるので、知的好奇心がそそられるようで相変わらず面白いなと思いました。

また、少しずつ主人公の関係性にも変化が見えてきて、シリーズも深まってきたなぁと個人的には思いました。

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2024年02月18日

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