森博嗣のレビュー一覧
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現状の関係性を変えるため、踏み出した一歩
Gシリーズは謎解きというよりも背景にある真賀田四季の影を感じながら読んでいく方が面白いのではないかと段々と思いつつある今、今作品も森博嗣さんらしい深掘りと心理描写がらされていた。
一番私がすごいなと思うところは森博嗣さんは物語の核心部分を溜めて出すというよりは、さらっと自然に、登場人物達の雑談とか思考の中でさらっと描写しちゃうところ。おしゃれだなぁと思う。構成とか文章表現の中にあるトリックをさも日常にありふれた1ページのように描写するのは逆に読者の中に思考を促していていいなと思う。
今回はなんとなく犯人はすぐに察しがつく。ただその犯人の内面の描写が丁寧にされているのは今までの犯人をある意味であまり深掘りしない森博嗣さんの作品群の中では意外性があるなと感じた。
登場人物達の関係性にも変化が、特に海月さんと加部屋さんのやり取りと駆け引きと、そして一歩踏み出す姿にはもはやミステリーの謎なんて一回どうでも良くなっちゃうほどの読み応えがあり、西之園さんと犀川先生のあのS &Mでのやり取りを思い起こさせるようなトキメキがあった。Gシリーズにはなかなかなかったこの描写、読み手の私が一番求めていた描写かもしれない。
赤柳さんの振る舞いも、どれだけの真相に迫っているかも気になる中でラストの一文には読み手としてもグッとくるものがある。シリーズを通して色々な人を徐々に好きになってくる作品だなと改めて感じた。 -
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ネタバレ孤島の研究所で発見された密室状態の死体を理系教授の犀川とお嬢様生徒の西之園コンビが解き明かしていく、哲学的要素と科学的発想が光る本格ミステリー。
1996年の作品だけあって、めっちゃタバコ吸うな!笑
コンピュータ系の話が少し難解な部分もあり、理解していたら、皮肉な部分とかも少し楽しめたのかもしれないが、文系には少し楽しみが少なかった。ただ、難しすぎて読めないわけではない。
人が中に入れない密室を、まさか、産まれるという点で解決してくるトリックは見事!
プラスして入れ替わりトリック、被害者も協力者というのもあり、だいぶこんがらがって、混乱をきたす仕上がりだった。頭疲れた。
ただまぁ納得感はあるし、そこまで変とも思わなかったので、よくできているなーと。
天才、真賀田四季というキャラクターにいろいろと翻弄された。多重人格に加えて娘、妹と入れ替わるんだから、そりゃ分かるわけねぇわな。
どちらかというと、ミステリーメインではなく、哲学的な話がメインなのかもしれない。 -
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読書番組で、中野信子さんが森博嗣さんを推していた。脳科学者が推すのは脳に合理性がありそうな期待がある。森さんの名前は知っていたが「嗣」の文字のせいかむずかしそうな勝手な印象があって読んだことはなかった。中野さんはその推理小説群を推していたが、僕は自分が推理小説を読む段階にないと長らく思っている。エンタメ要素が強いと思っているからだ。
そんな森博嗣さんの中で、興味深いタイトルがあって手に取った。日頃ラジオ日経を聞いている中で「増やした後の減らし方」というコーナーがあり、世間にはそういうニーズがあるのか、とも思っていたし、ダイウィズゼロも良く読まれているようだ(斜め読みはした)。
とにかく森さんの人となりが分かってとても良かった。工学部出身同士、根底の価値観が似ているように思う。お子さんが赤ちゃんの頃、奥様のミシンが壊れて、森さんが修理しようと、更に再起不能の状態にして、奥様に大泣きされた、というくだりはとても理解できたし泣けてきた。
森さんは「好きなことに使って減らす」主張で、その核は庭園鉄道みたいだ。それはそれなりにお金がかかるだろう。僕は好きなことはいくつかあるものの、物は減らしたい方針でもあるためか現実にはあまり使い途がない。欲しいものは技術や判断力が先ず挙がる。とりあえず読書で好きなことを探そう。推理小説もいずれ読みたい。 -
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ネタバレ森博嗣さんらしい独特な世界観。
永遠の命を持ち、生まれ変わりながら、戦争のなかで人を殺し続けるキルドレ。
本作は良く分からない曖昧な表現が多く、なんか主人公であるカンナミはパイロットで、腕利きで、どこかと戦争してるっぽい、というなんとなくでストーリーが進んでいく。
それは、キルドレが、永遠の命をいきるため一種の防衛本能として、記憶に靄をかけることから、そのような表現になっていたこと、カンナミは、前任者(クリタジンロウ)の生まれ変わりであり、だからクリタを知っていた登場人物はカンナミに対して、丁寧な説明をしなかったり、「僕」という一人称を使用したカンナミにたいして笑っていたこと、なとがラストで明らかになり、それらにはっと気付かされたとき、すごい快感だった。 -
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かつての悲劇を、あなたはどう捉え生きていくのか
Gシリーズを読み進め、今作品はスタートから死体が四人分、しかも歯が抜かれているという猟奇的な引き込みからスタートし、主に西之園さんの視点から西之園さんの過去への捉え方も踏まえて話が進んでいく。
トリックはそんなのありか!と思いくらいの大胆さ、ただ確かに伏線は貼られていたといったものであり、伏線が繋がった時は驚きと同時に納得をしてしまう自分がいた。作者の博士としての領域を活用したトリックだったなぁと感じた。
Gシリーズはどちらかというとあまり被害者に深掘りがない。さらっとしているところが多く、なので探偵役たちの深入りのしていない感、あくまでも謎解きの部分のみに介入し、その後の展開からは手を引くといった部分が多い。思い直せばS &Mシリーズとかは毎回のように西之園さんピンチになってるヒロインムーブがあったなと感じた。
それがなくなりあくまでも一歩引いた立場になりつつある西之園さんの成長は犀川先生の影響と存在があるが故。今作品は彼女の根幹の内面にも触れる、それを元に対話をするシーンがあるが、そのような考えに至り、その考えを共有したいと思える相手がいて、その考えを分かち合える自分たちがいるところが良きです。
いつもの通り学生たちがある意味で賑やかしに止まっているところが少し残念で、新章はあくまでも今までのキャラクターをクロスさせて深掘りしていく話なのかなぁとも少し感じてしまっている。魅力的なところがまだ掴みきれてない。
悲しみの捉え方が、その後の行動が、人生を大きく変える。私もいま30年少しの人生をあゆみ、その中でいろいろな出来事があった。残りはあと今の同じくらいと、あと少しくらい。そう思うと今の自分を創った今までの人生は長くもあり、そしてこれからの自分を創るこれからの人生は短くもある。逆もまた然り。 -
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既知は思考を助け、思考を縛る
順番が多少前後してしまったがGシリーズ三作品目の本作品は密室劇に様々な要素を注ぎ込んだ作品。超能力者とか、信者の存在とか、恋愛関係とかそういった色々な要素を注ぎ込んで話が展開される中で読者の読みを揺さぶってくる。
どうしても今までの他の作品の読みの型に当てはめてしまう読み手の私は超能力のときはこんな感じのトリックでとか、信者ということは金銭とかの関わりとか組織とかの関わりがあってとか、恋愛関係ということはこういった動機があってとかを考えてしまう。それが本作品では助けともなり、そして縛りともなる。その構成は良かったと思う。
一方でGシリーズの特徴なのか真相当てと犯人当てというところが重ならないことがあり、そういった意味で後味の悪さや、消化不良感を感じてしまうところ。どうしても物語の中で話を展開させる山吹さん、加部谷さんとは違う、あまり話さない思考も読みづらい海月さんという推理役がイマイチフィットしてないところがあるのかなぁと感じる。
ただ、犀川先生と西之園さんの関係性の描写には思わずニヤッとしてしまうファンの楽しみ方があり、二人の関係性が巻を追う毎に楽しんでいる私もいる。ただそれは今までのシリーズで積み重ねてきたキャラクターの造形の良さであるが故に、新シリーズのキャラクターたちの良さをこれから引き出してもらえたらなぁと思っている。 -
Posted by ブクログ
Gシリーズ3作目なのだが、これまで以上に「途中経過」感が強く、モヤモヤの残る作品だった。
まず、密室の謎は解けたものの、殺人犯が誰なのかは未確定なまま終わる。
そして、1、2作目ではギリシャ文字が何を表すのかは比較的明確だったのに、今作の「τ」が何を意味するのかはわからない。ラジオ番組のタイトルとして登場するだけで、殺人事件との関連も謎のまま。
ただ、これまでちらちらと見えていた真賀田四季の影が、少しずつ具体性をもって現れてきたような気がする。
「τになるまで待て」というのは、もしかして私たち読者に向けられたメッセージなのだろうか。
その“時”が来れば、すべてがわかるのだろうか。
次作を読まねば!