浅田次郎のレビュー一覧
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ネタバレ短編集であるのだが、表題作「獅子吼」「流離人」戦時中の話が刺さった。
「獅子吼」
動物園で飼われているライオンの心情が表される。動物の思いが中心となっているので意外な感じであったが、戦争に対する馬鹿馬鹿しさ、怒りが伝わってくる。
怒りの感情を滅す、という掟を死を前にして自らの矜持のため、対する人間のためだろうか破り吼える。
「恨み憎しみのかけらもない相手に、敵という名を付けて殺す戦争ではないか、その最中にある君が何をためらう」
人間を憐れむライオンの言葉が残る。
「流離人」
目的地を目指さず満州国を流浪する、桜井中佐。決して命令違反ではないと屁理屈のように言葉を返す。
この人もまた戦争を軍を -
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時代にあわせた独特の会話に始めは戸惑ったものの、段々と慣れ、物語に引き込まれていった。
主人公:彦四郎は、運に見放された男であった。神頼みをきっかけに貧乏神・疫病神・死神に取りつかれてしまう。
「神頼みがさらなる不運を招く」驚く程波乱な展開。貧乏神・疫病神・死神の独特なキャラクター。面白くてあっという間に読破できた。
災難に遭い続けながら、「何が一番大切なのか」を問いかけながら身の振り方を決めていく彦四郎。その真っすぐな姿勢が好きになった。
死神に時間が欲しいと頼み込む場面が、一番心に残った。「人間は限りある命ゆえに輝かしい。自分にも輝きが欲しい。命に限りのない神に自分の思い -
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義母から借りたシリーズ3作品目。
江戸時代の話だから難しいと思ったら、面白くてさらさらと読めてしまった。
江戸時代の武士にはよく分からないしきたりや決まり事が多かったことが分かりました。武士はお金のことに関わっちゃいけないとか、殿様への挨拶の仕方とか色々決まってて大変そうでした。
それにしても小四郎がちょっと可哀想。どうにか立て直してほしいと応援したくなる。ご隠居にも考えがあるのかもしれないけど、やっぱり小四郎が不憫で肩を持ちたくなる。
そして小池越中守めっちゃ良い人!鮭に目がないのもなんか可愛い。笑
これからも越中守が小四郎のことを助けてくれるといいな。下巻も読んでみよう。 -
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ネタバレ片岡直哉(かたおか なおや)の息子で小学四年生の譲(じょう)は信州に学童疎開していた。
もう一年近くになる。
食べるものが乏しく、子供たちは来た頃よりも皆、一貫目(約3.75kg)ほども痩せた。
24時間、子供達を守らなくてはいけない先生たちの苦労も大変なもの。
自分では否と思うことを子供達に吹き込まなくてはいけない事が一番の苦しみだろうか。
「あなたたちの本分は勉強です」と、言外にさまざまな思いを込めて言い聞かせることしかできない。
ホームシックの限界に来ている子らを見守るのも辛い。
実家に出す手紙も、実家から来る手紙も検閲することになっている。
良心ある教師はそれもつらい。
片岡譲の担任の -
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ネタバレ歴史物は、よく知られた事件に関してはおおむねネタバレである。
現代に生きる我々は、昭和20年の8月15日に、玉音放送で全日本国民に敗戦を知らされるということを知っている。
だから、昭和20年7月などという日付を見れば、ああ、もう少しで終わるのに、と思う。
しかし、当時でももう少しで終わるだろうと予感していた人たちがいたとて、赤紙が来たならば逆らうことはできないのである。
今私たちがこれを読んでどうすることもできない。
しかし、知っておくことくらいは出来る。そして大切だろう。
時に、昭和20年7月。
すでに沖縄は陥落し、軍は本土決戦に向けて最後の「根こそぎ動員」にかかっていた。
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