浅田次郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
浅田次郎は人情ものがいい。
「蒼穹の昴」は傑作だし、「壬生義士伝」も何度読んだか。しかしやっぱり浅田次郎は人情ものがいい。
浅田次郎の人情ものは「悲しくて、温かい」。
近年よくある何気ない日常でのほんわかストーリーではなく、ちょっと特殊な舞台設定だ。主人公は大正時代の太夫だったり太平洋戦争のソロモンで戦う将校だったり網膜色素変性症の女性だったり。いずれも辛く悲しい経験をするが、己の幸福のみを追い求めることなく、他人の幸せを願うのだ。何故この人たちはこんなに悲しい体験をしたのに他人に優しくできるのだろう、と思わずにいられない。
だから「悲しくて、温かい」。
本作で私が特に好きなのは「シューシャインボーイ」だ。最後の遺書は、電車の中で読んでいるにも関わらず涙があふれ出て仕方なかった(...恥ずかし)。
ところで、浅田次郎の人情ものを読むと「人情噺」を想像する。落語の「文七元結」や「芝浜」などが有名な人情噺だ。本作の短編を談志や圓楽が人情噺として演ったら絶対にグッとくると思いませんか?もう二人とも鬼籍に入っているので、今なら誰が上手いんだろうか...などと想像するのも楽しかったりする。 -
Posted by ブクログ
「ラブ•レター」で涙が出た。
どれも心揺さぶる小説だった。
心から愛しています世界中の誰よりも。
吾郎さん吾郎さん吾郎さん吾郎さん吾郎さん吾郎さん吾郎さん吾郎さん吾郎さん。
この9回の「吾郎さん」にはどれだけの愛が込められているのだろうか。そしてその手紙を読んで吾郎さんが涙を流したが手紙の差出人はもうこの世にはいない。なんて切ないのだろう。
「うらぼんえ」
うちの男衆の前に這いつくばってね、ちえ子に至らんところがあったらちゃんと言って聞かすで、なんとか離縁はせんでくれろ、邦ちゃんに一生添わせてやってくれろ
幽霊として出てきたおじいさんの愛が心に沁みた。
幽霊としてでも出てきて自分が置いて行ってしまった1人の孫のために男衆の前で這いつくばり涙を流すおじいさんの絶対的な愛。愛の大きさに涙が出た。 -
Posted by ブクログ
上巻にも増して、魅力的な登場人物が目白押し。誰しも必ず、好きなキャラクターが見つかると思う。(私は鶴橋と楢山儀右衛門を推します。)
郷里から江戸へ、タイトル通り寄り道なし、一直線の旅路を辿る物語で、結末は一件落着という言葉がしっくりきた。それでも、最後までちっとも単調に思わなかったのは、魅力的な人物が次々と登場し、人間ドラマがぎゅっと詰まっていたからだと思う。
本作は、憎しみや恨み、理不尽に対する無念に堪え、ひたすら真っ当に誠実に生き抜くことの大切さを教えてくれた。
上巻を読み終えて、充分「おもしろかったな」と思っていたが、下巻はさらに飛躍的におもしろくなった。これから読む方々には、期待を膨らませてほしい。 -
Posted by ブクログ
浅田さんというと、「泣かせ」の名手というイメージがあった。本作を通して「笑わせ」の技倆も天下一品、軽妙洒脱な一面もあるのだな、と感心した。
時代小説が好きでよく読むが、何が楽しみかと言うと、やはり臨場感を味わえることだ。当時を生きた人々の思想や行動の背景を知り、世相を追体験し、「かつての日本」に没入できること。
本作にもやはりそのような臨場感があるのだが、今までにない「共感」も覚えた。
たとえば、主人公・一路の御供頭という役割。これは、いわゆるプロジェクトリーダーだと思う。スケジュールを組み、メンバーの進捗を管理し、対外的な交渉を担ったり、予期せぬトラブルに対処したりして、チームをゴールに導く仕事だ。
すると、先輩(父)からハウツーの一切を学べぬまま、いきなりリーダーを任されることになった一路の心細さや不安は、とてもよく理解できる。
ビジネスパーソンならば、本作の登場人物の心情に共感する場面はかなり多いだろうと思った。
時代小説というジャンルに留めてしまうには本当にもったいない、幅広い読者から愛される作品だと思う。