浅田次郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
浅田次郎さんって、不思議な人だと思う。
登場人物の誰も彼もがものすごく人間くさい。
どうしようもない一面
生々しい欲望
切なくなるほどの胸の内
鮮烈で個性の塊みたいなそれらがぐちゃぐちゃに混ざり合っているはずなのに、なぜか立ち上る風景は、全てがセピア色だ。
それでいて、人間くささはあっても
計算くささは全くない。
6つある短編はどれも決して長くはないのに、
なぜか読み終わった時にどっしりと余韻が残る。
余韻に絡めとられて、
すぐに次の話には行き難くなる。
日を変えて次の話を読めば、
また知らないうちにその世界に囚われてしまう。
戸惑いながら読み始めても、
いつしか目が離せなく -
Posted by ブクログ
奥多摩の御嶽山は何度か登ったことがあり、大好きなお山です。
そのお山が舞台、しかも著者のご実家がそのお山にある神社の神主一族だったなんて全く知らなかったので驚きました。
本書は、その末裔である少年が実際に体験した不思議な出来事や、伯母から聞いた昔ばなしを綴った短編集です。
私は御嶽山のコースの中で、苔が美しいロックガーデンが特に好きなんですけど、ああいう自然の中に神が宿る感覚はすごく理解できます。
なので、狐憑きとか現代の感覚から言うと非現実的であり得ない話ですけど、自然を恐れ敬う気持ちがあればこういうこともありえるかなーなんて思ったりして。
どれも不可思議で敬虔な気持ちになる物語でしたが -
Posted by ブクログ
本の帯に「涙なくして読めない!」と書かれていたが本当にラストは泣けた。
私は仕事柄、人の生き死に関わっている。
その仕事の中で何度も感じたことは「人生の最後は呆気なく終わっていく」だった。
亡くなっていく人の人生を知らず、死に立ち会った時に心が震えることもなく、ただ淡々と送り出していく。
冷たい心だなぁと思いながら、
仕事だからしょうがないと思いながら。
ただ本書を読んで泣けて良かった。
命にはそれぞれの人生があって、歴史がある。
亡くなる人を知らないなりにも「よく生きたよ!」って送り出していきたい。
そうできるように私の心を育てていきたい。
とてもいい本でした。