浅田次郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
お母さんお勧めの一冊ようやく読み終えました
会社員としては成功例、出自は人に話すようなものではないが、どこか虚無感を抱き生きてきた。
死の淵に立ち、謎の女性を通して人生を振り返り
やがて来る地下鉄の向こう側と、雪の降るこちら側で
男が最後に見たものとは
浅田次郎の「地下鉄に乗って」の姉妹作だろう。
ノスタルジックと戦後の鈍った明るさと現世の移ろいを高度経済成長の日本の中で生きる人のエネルギーや、やるせなさをなどすべて描かれている。
とにかく初読の感想がこれだけ戦慄なのも久しぶり。
良い本です。あとがきもいい。年を取って読んだらもっとしみるだろう。
死に際で出てくる女性は果たして天使なのか悪魔なのか
そう思っていたら実は・・・
と理解できた時の驚きと納得と。
人生は決して勝つか負けるかではないが一応成功者としていても出自と自分のアイデンティティで、どこかネガティブな感情を抱いていた竹脇
ただ愛はそこにあり。母も決して彼のことを愛してなかったわけではなく、病院に来たすべての人が彼を必要としている。
彼は目覚めたのか、それとも地下鉄に乗り直したのかはわからない。
ただしぽっかりとあいた欠如は埋められたはずなのだ。
愛に溢れているというのは途中に出てくるカッちゃんと同じだ。
一方は求め続け一方は与えられてきた似た二人であり
好意や贈与という点でも対照的で
まさに合わせ鏡のような二人だった。ので
カッちゃんが地下鉄で旅だった、その反対側にいる竹脇は…なんてことも考えてしまったり。
そう思うととてもよく練られていたすばらしいストーリーだったと思う。 -
Posted by ブクログ
4巻に渡る長編であったが、読み終わるとあっという間で、もう終わってしまうのかという寂しさが込み上げてきた。それだけこの壮大な歴史物語は読み応えがあった。
国を救うために命を賭して奔走する志士たちの姿は、みな輝いていた。それでも国を動かすことはできない。変法派がどれだけ策を講じても旧守派によってことごとく潰され、腐敗した政治や、そこに群がる老臣たちを変えることはできなかった。
国はそう簡単には変えられない。李鴻章ですら50年にわたって国に仕えながら、歴史を大きく変えることはできなかった。
それでも、維新の志は脈々と次の世代へ受け継がれていく。いつか歴史が大きく動くとき、そこには新しい未来を切り拓く人物が現れるかもしれない。そんなことを感じさせてくれる結末だった。
初めて読んだ歴史小説だったが、たくさんのドラマとロマンに溢れた物語で、とても面白かった。シリーズの続編や、同じ時代の日本を描いた『坂の上の雲』も読んでみたいと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ幕末の無血開城を巡る、謎の武士の物語。やはり浅田次郎は読ませるのが上手だな。歴史小説をこんなにスルスルと読めたのは、自分の中では珍しい。
開城間近の江戸城に居座る謎の武士・六兵衛の正体を巡って、数多の登場人物が多種多様な憶測をしては覆される。そのまさかまさかの展開は、読んでいてワクワクした。意外な黒幕の登場や、突拍子もない正体への期待感。個人的には、六兵衛=慶喜説が熱かった。
結局は、六兵衛の正体も目的も明かさず、もう一人の主人公・隼人の憶測のみで締められており、モヤモヤも残った。六兵衛の意味は読者の想像に任せて、ただただ格好いい侍を描いたファンタジー。それが余白の美学ということなのだろうか。その分、想像が捗って良いのかもしれない。
最初はお人形のように感情のない不気味な存在であった六兵衛が、下巻では少しずつ人間味を見せる。周りの登場人物と同様に、いつの間にか六兵衛のファンになっていた。明治の世も、みんな幸せに生きていって欲しい。 -
Posted by ブクログ
七編からなる短編集は、大正時代から戦後を通じて人の情の深さが描かれている。
この胸に染み入る七つの物語は、浅田節ならではの世界観で描かれ、読後の読者にほのぼのとした温かい気持ちを与えてくれる。
7編の物語中、特に私がお気に入りとなったのが「雪鰻」。
簡単な内容を紹介すると⋯
夜更けに上官から食えと、お土産の鰻重を1人の下士官に差し出された。
なぜ上官は召し上がらないのですかと下士官に問われ、上官はその理由を酔いに任せて述べることになる。
その理由は戦地での想像を超えた破倫とも云える体験が災いしたものだった。
本当に理不尽とも言える地獄を味わった者は、自らの体験談は決して口にしないものだ。
今の時代、戦争の実態を知らずに勇ましい考えを主張する人々にこそ「雪鰻」を読んで欲しいのだが、知力・想像力の欠けた者には残念ながら絵に描いた餅、豚に真珠、馬の耳に念仏、犬に論語等々なのだと思ってしまう。
いやいや、餅、豚、馬、犬に失礼な例えだったかな⋯、ごめんね。 -
Posted by ブクログ
シリーズ最終巻らしく、笑いと勢いの中に、どこか別れの寂しさが漂う一冊でした。
三人の行く末が気になって読み進めてきたシリーズでしたが、最後まで期待を裏切らない面白さで、派手な展開の連続なのに、不思議と根底には人情が流れています。
それぞれ欠点だらけの男たちですが、自分なりの信念だけは最後まで曲げない姿には惹かれました。
特に、損得ではなく義理や情を優先する生き方は、今の時代だからこそ余計に格好よく映ります。
軽妙な会話に何度も笑わされながらも、人としてどう生きるべきかを考えさせられる場面が多くありました。
読み終えた今は「この三人にはもう会えないのか」と思うほど愛着が湧いてしまい、笑いと痛快さの中に、人情や男の矜持がしっかり描かれた、シリーズを締めくくるのにふさわしい一冊でした。 -
Posted by ブクログ
著者らしさが最初の数ページから全開で、読み始めてすぐ「これは理屈で読む話じゃないな」と肩の力が抜きながら物語に没頭しました。
時代に置いていかれた男たちの荒っぽさと、どこか抜けきらない人情が同居していて、笑いながらも胸の奥が少しざらつきます。
軽口や啖呵のテンポが抜群で、ページをめくる手が止まりませんでした。
展開は勢い任せなところも多く、細かい辻褄や深みを求めると物足りなさはありますが、それでも、筋を外れてもなお残る矜持や美学があって、「悪党」と呼ばれる男たちのほうがよほど人間らしく見えてきます。
読後、昭和の裏道を一緒に歩いたような余韻が残る一冊でした。 -
Posted by ブクログ
実家に置いてあり以前から気になっていた本。
中国史の話であまり気が進まず積読していたが、読み始めると一気に引き込まれた。
物語は田舎に生まれた2人の少年が、それぞれ異なる道から運命を切り開いていく話。宮廷内部の権力争いや科挙、浄身などが丁寧に描かれており、中国・清朝末期の歴史をほとんど知らない私でも十分楽しめた。
特に科挙試験の描写は圧巻だった。9日間にも及ぶ過酷な試験を、極限状態の中で耐え抜く受験生たちの姿は鬼気迫るものがあった。大学受験や資格試験でひぃひぃ言ってた自分とは比べものにならない、まさに命懸けの戦いだったのだと感じた。
文秀も春児も歩む道は違うが、目指す場所は同じ。2人の覚悟と、それぞれの人生を懸けて前へ進もうとする姿に胸が熱くなる。政治の世界は想像していた以上に腐敗し、権力者はやりたい放題。そんな時代に2人がどう切り込み、どんな未来を切り開いていくのか。次巻以降も楽しみだ。