【感想・ネタバレ】終わらざる夏 中のレビュー

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Posted by ブクログ 2023年02月27日

「浅田次郎」の戦争小説『終わらざる夏』を読みました。

「半藤一利」の『新装版 太平洋戦争 日本軍艦戦記』に続き、第二次世界大戦関連の作品です。

-----story-------------
〈上〉
1945年、夏。
すでに沖縄は陥落し、本土決戦用の大規模な動員計画に、国民は疲弊していた。
東京...続きを読むの出版社に勤める翻訳書編集者「片岡直哉」は、45歳の兵役年限直前に赤紙を受け取る。
何も分からぬまま、同じく召集された医師の「菊池」、歴戦の軍曹「鬼熊」と、「片岡」は北の地へと向かった。
―終戦直後の“知られざる戦い”を舞台に「戦争」の理不尽を描く歴史的大作、待望の文庫化。
第64回毎日出版文化賞受賞作。

〈中〉
「片岡」の一人息子「譲」は、信州の集団疎開先で父親の召集を知る。
「譲」は疎開先を抜け出し、同じ国民学校六年の「静代」とともに、東京を目指してただひたすらに歩き始めた。
一方、「片岡」ら補充要員は、千島列島最東端の占守島へと向かう。
美しい花々の咲き乱れるその孤島に残されていたのは、無傷の帝国陸軍、最精鋭部隊だった。
―否応なく戦争に巻き込まれていく人々の姿を描く著者渾身の戦争文学、中編。

〈下〉
1945年8月15日、玉音放送。
国民はそれぞれの思いを抱えながら、日本の無条件降伏を知る。
国境の島・占守島では、通訳要員である「片岡」らが、終戦交渉にやって来るであろう米軍の軍使を待ち受けていた。
だが、島に残された日本軍が目にしたのは、中立条約を破棄して上陸してくるソ連軍の姿だった。
―美しい北の孤島で、再び始まった「戦争」の真実とは。
戦争文学の新たなる金字塔、堂々の完結。
(解説/「梯久美子」)
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集英社が出版している月刊小説誌『小説すばる』の2008年(平成20年)6月号から2009年(平成21年)10月号に連載された作品で、第64回毎日出版文化賞受賞作です… 歴史の闇の中になかば隠れつつあった太平洋戦争終戦後(もしくは終戦準備・戦闘停止 期間中)における占守(シュムシュ)島での戦いにスポットをあてた物語、、、

1945年(昭和20年)8月9日、ソ連は日ソ不可侵条約を一方的に破棄して対日参戦… ポツダム宣言受諾により太平洋戦争が停戦した後の8月18日未明、ソ連軍は占守島も奇襲攻撃し、ポツダム宣言受諾に伴い武装解除中であった日本軍守備隊と戦闘となり、戦闘は日本軍優勢に推移するものの、軍命により21日に日本軍が降伏して停戦が成立、23日に日本軍は武装解除されたが、捕虜となった日本兵はその後大勢が法的根拠無く拉致され、シベリアへ抑留された という史実を忠実に辿りながら、アメリカとの和平交渉の通訳要員として兵役年限直前の45歳で招集された翻訳書編集者「片岡直哉」、岩手医専卒・東京帝大医学部の医学生で軍医として招集された「菊池忠彦」、大陸でたてた手柄で金鵄勲章を授与された鬼軍曹で4回目の招集で占守島に送られた「富永熊男(鬼熊)」の三人の登場人物を軸に、過酷な状況下での人間の本質を照射しつつ、それぞれの場所で、立場で、未来への希望を求める人々を描いた巨編(上・中・下で約1,050ページ)です。

重層的で物語の奥行が深く、人物造形にも優れている作品だったので、読んでいるうちに、どんどん作品の中に引き込まれていき、登場人物の目線で物語が展開していく感覚で読み進めていくことができました… 『終章』では、辛いとか、哀しいというよりは、胸が苦しくなるような気持になり、「鬼熊」の母親に宛てた手紙や、少年兵「中村末松」の遺した押花帖が出てくる場面では、涙が止まりませんでした、、、

戦争は終わったのに、戦闘が始まる… この大いなる矛盾の中で、戦う兵、死にゆく兵、戦争の禍々しさと非情さ、そして愚かさに胸を打たれましたね。

終盤の戦闘シーンは、その少し前から登場していたソ連の現場第一線の兵からの目線で描かれているのですが、彼らもまた、終わったと思っていた戦争で、再び命を賭して闘わなければならないという矛盾を抱えながら行動しており、戦争というものの非情さや非人間的な部分が、巧く描かれていたと感じました、、、

この戦闘の矛盾を訴えた「アレクサンドル・ミハイトヴィッチ・オルローフ中尉(サーシャ)」の報告書には共感する部分が多かったですね… 略奪を目的とした大義なき作戦行為は、現場では誰も望んでいないんですよね。

不条理な戦争(戦闘)に、国土とそこに暮らす人々を守るために誇り高く戦った人たち… 軍人も民間人もそれぞれの誇りと愛するものを守るために戦ったんですよねぇ、、、

久しぶりに読書しながら泣いちゃいました… 涙が止まらないほど感動した、忘れられない作品でした。



以下、主な登場人物です。

「小松少佐」
 大本営参謀。参謀本部編制課動員班の動員担当者

「甲斐中佐」
 陸軍省軍事課員。参謀本部編制課に合流

「佐々木曹長」
 盛岡聯隊区司令部第三課動員班長
 
「蓮見百合子」
 盛岡聯隊区司令部の庶務係。岩手高女の女学生

「遠山敬一郎大佐」
 盛岡聯隊区司令部司令官。地元の名士

「佐藤金次」
 滝沢村役場の戸籍係兼兵事係

「勇」
 滝沢村役場の給仕の少年

「片岡直哉二等兵」
 東京外国語学校卒の翻訳書編集者。岩手県の寒村出身。
 英語通訳として招集され占守島に向かう

「片岡久子」
 片岡の妻。女子高等師範卒の文学書編集者

「片岡譲」
 片岡の息子。国民学校四年生。信州に集団疎開しているが疎開先を抜け出す

「吉岡静代」
 譲と同じ国民学校の六年生。信州に集団疎開している。譲とともに疎開先から東京を目指す

「小山雄一」
 国民学校の教師。四年男子学級の担任

「朝井マキ子」
 国民学校の教師。六年女子学級の担任

「岩井萬助」
 渡世人。懲役に服していたが、召集のため放免される

「尾形貞夫」
 片岡と同じ出版社に勤める、翻訳書出版部の部員。
 警視庁で洋書や英文記事の検閲を行う

「尾形佐江」
 尾形の妻。夫妻で久子の住まいに引っ越す

「野中良一」
 久子の異父弟。フィリピンで戦死

「野中きぬ」
 久子の母。久子の父親との離婚後、良一の父親と暮す

「安藤仁吉」
 東京で岩手県出身者たちの面倒をみる篤志家

「菊池忠彦軍医少尉」
 岩手医専卒の医師。東京帝大医学部に在籍。
 招集されて占守島の軍医となる

「富永熊男軍曹」
 盛岡のタクシー運転手。金鵄勲章を授与された軍曹。
 四回目の招集で占守島へ向かう

「吉江恒三少佐」
 第五方面軍司令部参謀。敗戦処理の任務を負う

「大屋与次郎准尉」
 戦車第十一聯隊第二中隊段列長。旭川出身

「中村末松兵長」
 戦車第十一聯隊第二中隊段列の少年兵。東京出身

「池田大佐」
 戦車第十一聯隊長

「岸純四郎上等兵」
 南方帰りの船舶兵。三陸の宮古出身

「工藤軍医大尉」
 野戦病院の軍医。菊池の岩手医専での先輩

「渡辺中尉」
 第九十一師団副官。札幌出身

「森本健一」
 日魯漁業社員。占守・幌筵島の漁場と缶詰工場の責任者

「石橋キク」
 缶詰工場で働く女子挺身隊員。函館高女の卒業生総代

「沢田夏子」
 缶詰工場で働く女子挺身隊員。キクの同級生

「ヤーコフ」
 占守島出身のアイヌ。色丹島の診療所で助手を務める

「池田大佐」
 戦車第十一聯隊長

「アレクサンドル・ミハイトヴィッチ・オルローフ中尉(サーシャ)」
 ソ連軍の将校。シベリアに住むコサックの子孫

「ボクダン・ミハイトヴィッチ・コスチューク兵長(ボーガ)」
 ウクライナ出身のソ連兵

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Posted by ブクログ 2021年12月03日

終戦間近の北の涯の島で起こったこと、初めて知った。戦争についてまだまだ知らないことが沢山あると気付く。
是非ではなく、少なくとも祖国の歴史を知ることが、未来に続く事だと思いたい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年08月29日

終戦の直前で終了。複数の場面が設定され「不条理」を描ききった。昭和20年夏の敗戦に向かう日本、国民は何も知らされず耐えるのみである。①占守島に向った翻訳要因の片岡、菊池医師、富永軍曹が敗戦濃厚を知らされる場面/②片岡の息子・譲が疎開先で静代と出会い東京に向け歩き出す/③片岡の妻・久子が息子・譲、夫、...続きを読む義弟を思い奔走する/④占守島から追い出されたアイヌ族。戦争に巻き込まれた彼らの悲哀が身につまされる。広島・長崎の全滅とポツダム宣言受諾の報、ラストの下巻で昭和20年の夏はどのように過ぎていくのかを追っていく。

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Posted by ブクログ 2016年10月09日

戦争に巻き込まれた人たちの哀しい物語。
たくさんの登場人物の視点から、戦争の悲惨さ、理不尽さをあらわした物語です。

中巻では、集団疎開していた片岡の息子が同じく疎開していた年上の女の子と二人で、疎開先から脱走し、東京目指して歩いていくところが語られています。
その旅でのいくつかの出会いが語られてい...続きを読むます。
このトピックスを通して、疎開先での子供たちの苦悩が感じられます。

また、占守島の缶詰工場で働く女学生たちの話も出てきます。
当時の女学生達も含めて、当時の若者がある意味こんなにもしっかりした考え方をもっていたのかと感じさせられます。

いよいよ終戦に向けて、片岡が通訳者であること、菊池と鬼熊はそれを隠すためのダミーであること、終戦に向けて片岡を守る必要がることが段列長に明かされます。
また、ここでは、上巻の中でも語られていましたが、鬼熊の考え方がある意味ストレートで腹にしみます。
歴戦の勲章をもつ鬼軍曹でありながら、実はとても温かい人物であることが明かされます。

片岡、菊池、鬼熊、段列長、少年兵、女学生達がどうなるのか..

下巻に続くです..

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Posted by ブクログ 2013年11月16日

「戦争とは、生と死との、ありうべからざる親和だった。ただ生きるか死ぬかではなく、本来は死と対峙しなければならぬ生が、あろうことか握手を交わしてしまう異常な事態が戦争というものだった。」

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Posted by ブクログ 2013年09月14日

上巻より濃い内容の中巻。驚くほど過激な浅田次郎節炸裂の、登場人物の言葉選び。
凄まじい戦時中の普通に生きている一般人と軍人の
なんちゅーかもどかしいというか、どうにも出来ない現実の描写。
引き込まれていくように読むにつれ、眉間にシワが寄っていくような。
一億総玉砕というより全滅という言葉が何ともリア...続きを読むル。
やっとバラバラだった登場人物がパズルの様に繋がったかなぁーと。

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Posted by ブクログ 2013年08月20日

終戦間際のギリギリ感を、疎開児童の目線、その後に及んで前線に召された兵士の目線などを通じて描かれる中巻。終戦を把握し、それに向けて静かに動き出した中枢陣。何も知らされないけど、希望とともに終戦を願う民間人の様子が、それぞれの本音・建前を通して見事に浮き彫りにされている。終戦をはっきり知らされたとき、...続きを読む件の人々はどうなるのか。北方領土では、引き続き終わらざる夏が戦われたのか。下巻に対する期待は膨らむ。

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Posted by ブクログ 2013年08月01日

満州で戦った親父から聞いた。「勲、よく聞け。満州で『金欲し、いのち欲し』と中国人に聞くと奴らは『金欲し』って答えるんだ。金を投げてから将校は奴らの首を軍刀で切り落として笑ってるんだぞ。。。」
狂気が支配したあの時代。死ぬことが何でもなかった時代を知る名著だ。

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Posted by ブクログ 2013年07月27日

天皇の神格化についての室長の意見が説得的。
セリフ回しや行動の描写から岸上等兵のイケメン振りが鮮やかに伝わってくる

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年07月28日

片岡直哉(かたおか なおや)の息子で小学四年生の譲(じょう)は信州に学童疎開していた。
もう一年近くになる。
食べるものが乏しく、子供たちは来た頃よりも皆、一貫目(約3.75kg)ほども痩せた。
24時間、子供達を守らなくてはいけない先生たちの苦労も大変なもの。
自分では否と思うことを子供達に吹き込...続きを読むまなくてはいけない事が一番の苦しみだろうか。
「あなたたちの本分は勉強です」と、言外にさまざまな思いを込めて言い聞かせることしかできない。
ホームシックの限界に来ている子らを見守るのも辛い。
実家に出す手紙も、実家から来る手紙も検閲することになっている。
良心ある教師はそれもつらい。
片岡譲の担任の小山雄一、六年生の吉岡静代を担任する浅井マキ子は、二人の子供がしっかりしているからと信じて手紙を読ませるが・・・

片岡直哉たちが配置される、北の最果ての島、占守(シュムシュ)島には、なんと民間の缶詰工場があった。
民間といっても、軍の命令で動いている。
撤退したいのに許されず、函館の女学校を出た女子挺身隊も働いている。
工場の責任者である森本健一は、なんとしても彼女たちを守ろうと思っている。

そういえば、この本には「悪い人」が出てこない。
強いて言えば、小山や浅井の上司に当たる教師かな。まあ、体がデカいだけで、器は小さいけどな。
戦争が悪いのであって、人は悪くない、という事なのだろうけど、戦争は自然災害とは違う。
いつまでも戦争を終わらせたがらず、国民を苦しめている奴らが確かに存在しているはずなのだ。

片岡たちは皆、岩手の出身だから、地元が描かれる時は岩手弁の会話だし、鬼熊こと富永軍曹は常に岩手弁だ。
なんとなく宮沢賢治を思い出すなあと思っていたら、「星めぐりの歌」と「雨ニモマケズ」が出てきた。
満天の星と、東北の自然と、素朴な心の美しさが、非情な現実との対比になっている。

片岡二等兵、菊池軍医、富永軍曹の三人はいよいよ占守島に着任する。
片岡の役目は最初から書かれていたけれど、後の二人の役目は・・・う〜ん・・・そんなのありか。

スーパーで「マルハニチロ」の商品を見つけ(ゼリーだった)なんだか胸がせまる。

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Posted by ブクログ 2023年03月19日

片岡夫妻の息子・譲の疎開先の描写から、譲と静代が東京を目指した逃避行の場面から、千島列島の領有権を大日本帝国はおろそかにし、クリルアイヌの人々の居住権すら侵した歴史的背景の説明を挟み、富永軍曹、片岡二等兵、菊池軍医少尉が運命に引き寄せられて、無傷の戦車第十一連隊が守備する占守島に来着するまでの息もつ...続きを読むかせぬ展開。本当の任務を告げた方面軍参謀・

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Posted by ブクログ 2022年08月10日

英語の先生、医者、軍人を職業とする者、親子、のいろんな糸を通して戦争を描く。昨今の情勢がより身近に感じられる。

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Posted by ブクログ 2022年02月08日

徴兵制度の非効率さを感じた。赤紙は本籍地に送られ、徴兵された人は本籍地を管轄する部隊に入営する。東京で働いている人も徴兵のために出身地に帰らなければならない。大本営の参謀は敗戦を見越して密かに英語ができる人間を前線に配備させようとする。これが迂遠である。本人は余計な負担を被ることになる。机上の計画で...続きを読む資源配分する公務員的発想は非効率極まりない。上から目線で能力のある人を見出して任命する計画の押し付けよりも、ジョブを公募し、希望する人が応募する市場主義的な手法の方が上手く回るだろう。

学童疎開で学校側は子どもに何が起きても責任は問わないという誓約書を保護者に提出させた。子どもがいなくなって親に電話連絡した際に教師は学校側に責任がないということを遠回しに語った(中巻73頁)。まるで戦後の学校のような対応である。責任逃れで保身第一の公務員体質は戦中も戦後も同じである。

「戦争が不幸なのではなく、事実を伝えられないのが不幸」との台詞がある(中巻200頁)。日本の公務員の隠ぺい体質への市民の不満は、この点にある。

会社員の独白には「自由であるべき資本主義が、国家主義に呑み込まれてゆく矛盾」との表現がある(中巻227頁)。これは1940年体制の矛盾である。戦後昭和の日本はマルクス主義の影響が強いためか、反権力を反資本主義と同一視しがちである。しかし、個人の自由に立脚する資本主義と国家主義は対立するものである。日本の不幸は個人主義の反権力の思想が弱いところだろう。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年01月06日

どんどん面白くなってきた。
それぞれの立場で見る戦争が描かれていて、誰も望んでいないことがよくわかる描写が切ない。
なのに突き進むしかなかった。
そして今、ようやく終わりが見えてきて、さてどうなるというところで下巻へ続く。

第二次世界大戦時の日本は、ずっと去勢を張っていたのだろう。
そして日本中の...続きを読む誰もが、みんな表面と心を分離して過ごしていたのだろう。

教科書で日本史の事象だけを学ぶと、この時代は異常だな、洗脳だったのだろうかと思うこともあったけれど、やはり心の内は自分を保ち、人として悲しみながら生きていたのだろうなだと思うとやりきれない。。

死を身近に感じながら生きていく必要がある上に、表現を制限される辛さ、想像するだけで苦しい。

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Posted by ブクログ 2020年05月31日

登場人物の動きがパラレルに語られる、中巻。
下巻の完結に向け、ハッピーエンドに向けての予感は感じられない。

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Posted by ブクログ 2018年07月16日

 疎開先の小学生たちや教師、島で働く女子学生たち、そして敵兵であるソ連兵たちなど、自国の兵士だけでなく、それぞれの立場の苦悩と葛藤、戸惑いを描くことで浮かび上がる、戦争の不条理と非情さ。

 こうした様々な立ち位置からの悲劇を描けるだけでも、すごいと思うのですが、さらに浅田さんは物語の舞台となる占守...続きを読む島すらも、不条理と非情から生まれたことを描きます。

 国家の思惑に踊らされ、故郷を追い出された先住民たちの悲劇。単に物語の舞台でしかなかったと思っていた島すらも、不条理と非情から生まれていたということが、明らかにされるのです。

 個人と土地、それぞれの物語をあますことなく描ききり、小説は最終刊に向かいます。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年03月07日

暗い内容で気が滅入り、読む終えるまでに何ヶ月もかかってしまった。
入れ替わり立ち代わりそれぞれの立場の人間が語り手となっていく手法だったが、読みづらいと感じたときもあった。
占守島の戦いのことは全く知らず、たまたま聞いていたラジオ番組のゲストが著者で本書の紹介をしていたため、手に取った。
日本でこの...続きを読む戦いの知名度は低いが、教科書に載せても良いのではないだろうか。

結末は救いがなく、心が重くなった。
生き残った人々はシベリアに送られ、無事に帰国できたかどうか胸が痛い。
娯楽のための読書はすばらしいが、ときどき本書のようなジャンルを読むことは大事なことなのかもしれない。

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Posted by ブクログ 2014年09月22日

終戦後の任務を担った片岡と菊池医師、鬼熊軍曹の運命、そして疎開先から抜け出した片岡の息子。刻々と近づく終戦の日とその後の終わらない夏。中篇はじりじりとして進まない時と進んでほしくない時が交錯しているようだ。

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Posted by ブクログ 2014年03月15日

まだ、ソ連軍は攻めてこないが、
不気味に物語は進行している。
一体この後シュムシュ島に残された日本軍はどうなるのだろうか。
そして、疎開先から逃げ出した子達はどうなるのだろうか、
下巻への期待が否が応でも高まる。

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Posted by ブクログ 2013年11月21日

疎開先での子供達の暮らしや心情、子供達を預かる先生方の気持ちが心に迫ってくる。占守島の事やアイヌの人達の事、女子挺身隊員達の事など知らなかった話しばかりで夢中で読んだ。

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Posted by ブクログ 2013年08月31日

登場人物達それぞれの戦争に対して向き合う戦いを描く中巻。

戦争が終局に向かう中、片岡が召集された真実も明らかになっていく。
狙った通りの結果をもたらすのか?それとも?

戦争の凄惨さを感じながらも、ページを捲る手は止まらない。
戦争自体ハッピーエンドでないが、登場人物達のハッピーエンドを願って、
...続きを読むそして、この物語の結末に向けて、いよいよ下巻。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2013年08月19日

集団疎開先の話やその子供、親たちの境遇、心情がよく描かれています。
片岡さんたちも占守島に到着。今後の展開に息が詰まります。

つくづく、片岡さんたちも、吉江少佐始めの軍人も、占守島の女学生たち、疎開先の子供や先生に至るまで、あと少し無事でいてくださいと祈るばかりです。

個人的には、譲達がドイツ人...続きを読むやロシア人と会うのが衝撃的でした。

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Posted by ブクログ 2013年08月07日

中巻はあっという間に読み終えました。

なんなんだ、もう。
幸せな思いをしてる人が一人もいないじゃないか。
戦争ってそういうもんなんだけど、やっぱり悲しい。

片岡さんはようやく占守島に着きました。
本当に悲惨になりそうなのは下巻のよう。
どうか、片岡さんも菊池さんも鬼熊さんも死なないで…と
祈りな...続きを読むがら読まなければなりません。

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Posted by ブクログ 2024年03月24日

疎開ってこんな感じだったんですね。
私の故郷は田舎なので、食べるものには困らなかったと聞いているけれど。

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Posted by ブクログ 2019年06月07日

北千島の孤島に渡る片岡、そこには移動手段を無くした北の守りに着く精鋭部隊、食料確保の缶詰工場で働く戦時動員された女子高生らが居る。長野に疎開した低学年の子、東京で夫を戦地へ送りの残された妻に生き様を綴る。其々が本土決戦への備えながら戦争の矛盾を感じ生きる姿がその時代の不幸を痛感する。

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Posted by ブクログ 2016年08月31日

終戦間近、不気味に物語は続いています。
兵隊として戦うのも勿論凄まじいものがあるけれと、終わりへと運ばなければいけない人たちもまた大変そうだ。
兵隊と一括りにして言ってしまったけれど、
その一人一人は親であり、子であり、夫であり、兄であり弟であるのだなと改めて実感。

戦争は知れば知るほどわからなく...続きを読むなる。

下巻へ続きます。

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Posted by ブクログ 2014年05月19日

やっと中巻終了。まさかのファンタジーなエピソードもあり。登場人物ひとりひとり、立場や年齢が違っていても、思っていることはそんなに変わらないように思う。熱い。もうちょっといろんな考え方の人がいて、気持ちの緩急があるといい気がする。これが史実だと言われれば何も言えないのですが。

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Posted by ブクログ 2013年10月19日

舞台に役者が集まりつつあり、
物語もある地点へ向けて動き出そうとしている予感がするのだけど、
それらが揃う前に1945年の夏になってしまった。

ええ?ここから話が動くの?もう戦争終わるはずだけど・・・。
と、思たところで作品名の「終わらざる夏」に立ち返る事に。

なるほど。話はここからなのか。
...続きを読む巻が熱くなりそう。

座して拝読。

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Posted by ブクログ 2013年08月07日

戦争の現実を考えさせられる巻でした。小さな子供が母親の死を悲しむより先に残された家族を守らなければならないと決意するところや、戦災に苦しんでいると思っていても、そこにもやはり歴然とした差が存在することの厳しさを感じます。

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Posted by ブクログ 2013年08月03日

集団疎開先で父親の出征を知った譲は同じく東京に戻りたい静代と共に東京に向かう。
片岡はそこで自分が派遣された理由をしることに...
片岡はどうなるのか?

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