Posted by ブクログ
2013年08月02日
全3巻。
ポツダム宣言受諾後の日本。
千島列島北東端、占守島にロシアが攻め込んできた。
第二次世界大戦末期の日本を、
占守島の戦いを舞台に描いた物語。
これは。
哀しい。
ただただ、哀しい。
最初は読みずらいかもしれないが、
最後まで読んで欲しい。
清末期の中国を描いた著者の「蒼天の昴」シリーズ...続きを読むにも見られる、
供述的な形式やファンタジックな要素に
好き嫌いが別れるかもしれないが、
最後まで読んで欲しい。
大戦末期、極秘任務のために3人の国民が招集された。
彼らは徴兵の基準からほぼ外れており、
自分が当事者として戦争に関わるとは考えていなかった。
それだけに、いままで夢想していた未来が理不尽に閉ざされ、
戦争に巻き込まれていく一般市民の戸惑い、哀しさ、絶望が
リアルに切実に胸に迫る。
さらに、妻、子供、母、教師、やくざ、敵国の兵士まで、
3人をとりまく様々な立場の様々な葛藤が描かれ、
国、兵士、文字の連なりでしかない歴史の裏側に、
当然あったはずのそれぞれの思いに改めて気付かされ、
ハッとする。
自分は正直、近年の近隣諸国による
(日本の立場から見ると)理不尽な要求に腹が立っている。
さらには、要求をのまない日本に対し
「ならば戦争だ」と声を上げるそれらの国に対抗するには、
日本の再武装もやむをえないとも考えている。
ただ、それ以前に、
戦争が遠い歴史になってしまったこの国で、
戦争は悪だと教えられて育った人間として、
簡単に「ならば戦争だ」と言ってしまう国々の思考に
疑問と哀しさを感じる。
物語の後半に、やくざものが子供たちに願ったセリフがある。
少し長いが、下に引用する。
「二度と戦争はするな。
戦争に勝ち敗けもあるもんか。
戦争する奴はみんなが敗けだ。
大人たちは勝手に戦争をしちまったが、
このざまをよく覚えておいて、
おめえらは二度と戦争をするんじゃねぇぞ。
一生戦争をしないで畳の上で死ねるなら、その時が勝ちだ。
その時に万歳しろ。分かったか」