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1945年8月15日、玉音放送。国民はそれぞれの思いを抱えながら、日本の無条件降伏を知る。国境の島・占守(シュムシュ)島では、通訳要員である片岡らが、終戦交渉にやって来るであろう米軍の軍使を待ち受けていた。だが、島に残された日本軍が目にしたのは、中立条約を破棄して上陸してくるソ連軍の姿だった。――美しい北の孤島で、再び始まった「戦争」の真実とは。戦争文学の新たなる金字塔、堂々の完結。
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Posted by ブクログ
占守島の戦いについて恥ずかしながら本書を読むまで知らなかった。スケールの大きな群像劇から浮かび上がる、戦争の齎す理不尽の数々が悲しく、戦争への怒りが湧いた。
占守島の悲劇。サイパン、フィリピン、硫黄島。多くの激戦地の戦いは知られるが、終戦後に戦わざるを得なかったこの島の物語。降伏せざるを得ない戦い後、シベリアへ送られることに。女子400名を避難させたことは、心から尊敬したい。そして涙が止まらない。読者はみな真実を知りたくなるだろう。平和な未来が来た時に、...続きを読む忘れ去られることなく、誰か調査をしてほしいと切に願う。
千島列島(当時)の最北端の占守(シュムシュ)島、ソ連領のカムチャッカ半島は目と鼻の先。 しかし、そこから東に連なるアリューシャン列島はアメリカ軍が押さえていた。 戦争終結を視野に入れて、大本営はアリューシャン列島からアメリカ軍がやってくると睨み英語通訳を占守島に送り込む。 これが間違いだったとは言い...続きを読む切れないと思う。 お人好し・・・だったのかな。 アメリカ軍ではなく、ソ連軍が国際法を破って侵攻してきた。 上巻中巻にもたびたび出てきたが、原住民や、少数民族に対しての大国のやり口がひどい。 どうして、「土地はもともとそこに住んでいた人たちのもの」と考えることができないのか。 占守(シュムシュ)島の戦闘とはまた別に、『終章』のシベリアの日々が一番悲惨であると感じる。 短い夏に花の咲き乱れる占守島の風景は天国のようだったが、シベリアは地獄だ。 神の兵はそこでは餓鬼となった。 特に、菊池忠彦軍医の先輩である、工藤医師の苦悩を思うと涙を禁じ得ない。 占守島の野戦病院で一度、工藤の様子を見ていればこそ。 工藤は軍医として前線を転々としてきた。 仕事は、負傷した兵の手足を敗血症を防ぐために切断すること。 ひたすら四肢を切り落とし、動脈血管を結紮(けっさつ)するだけの日々。 自分はもう生きて帰っても「普通の手術」はできないと言っていた。 その後送られたシベリアでは、安楽死のための空気注射をしなくてはならなかった。 人を生かすために医師になったのではなかったか。 彼の絶望は計り知れない。 日魯漁業の女子挺身員400名と、疎開先を脱走した静代と譲が無事に帰還できたことだけが救いである。 もう戦争をしてはならないと、登場する大人の皆が若者に言い聞かせているが、世界のどこかで毎日戦争は続いている。 解説は、梯久美子(かけはし くみこ)さん。 占守(シュムシュ)島の悲劇は今に至るまでほとんど伝えられておらず、歴史の闇に葬り去られていたと言う。 この本はもっとたくさんの人に読まれなくてはいけない。
「浅田次郎」の戦争小説『終わらざる夏』を読みました。 「半藤一利」の『新装版 太平洋戦争 日本軍艦戦記』に続き、第二次世界大戦関連の作品です。 -----story------------- 〈上〉 1945年、夏。 すでに沖縄は陥落し、本土決戦用の大規模な動員計画に、国民は疲弊していた。 東京...続きを読むの出版社に勤める翻訳書編集者「片岡直哉」は、45歳の兵役年限直前に赤紙を受け取る。 何も分からぬまま、同じく召集された医師の「菊池」、歴戦の軍曹「鬼熊」と、「片岡」は北の地へと向かった。 ―終戦直後の“知られざる戦い”を舞台に「戦争」の理不尽を描く歴史的大作、待望の文庫化。 第64回毎日出版文化賞受賞作。 〈中〉 「片岡」の一人息子「譲」は、信州の集団疎開先で父親の召集を知る。 「譲」は疎開先を抜け出し、同じ国民学校六年の「静代」とともに、東京を目指してただひたすらに歩き始めた。 一方、「片岡」ら補充要員は、千島列島最東端の占守島へと向かう。 美しい花々の咲き乱れるその孤島に残されていたのは、無傷の帝国陸軍、最精鋭部隊だった。 ―否応なく戦争に巻き込まれていく人々の姿を描く著者渾身の戦争文学、中編。 〈下〉 1945年8月15日、玉音放送。 国民はそれぞれの思いを抱えながら、日本の無条件降伏を知る。 国境の島・占守島では、通訳要員である「片岡」らが、終戦交渉にやって来るであろう米軍の軍使を待ち受けていた。 だが、島に残された日本軍が目にしたのは、中立条約を破棄して上陸してくるソ連軍の姿だった。 ―美しい北の孤島で、再び始まった「戦争」の真実とは。 戦争文学の新たなる金字塔、堂々の完結。 (解説/「梯久美子」) ----------------------- 集英社が出版している月刊小説誌『小説すばる』の2008年(平成20年)6月号から2009年(平成21年)10月号に連載された作品で、第64回毎日出版文化賞受賞作です… 歴史の闇の中になかば隠れつつあった太平洋戦争終戦後(もしくは終戦準備・戦闘停止 期間中)における占守(シュムシュ)島での戦いにスポットをあてた物語、、、 1945年(昭和20年)8月9日、ソ連は日ソ不可侵条約を一方的に破棄して対日参戦… ポツダム宣言受諾により太平洋戦争が停戦した後の8月18日未明、ソ連軍は占守島も奇襲攻撃し、ポツダム宣言受諾に伴い武装解除中であった日本軍守備隊と戦闘となり、戦闘は日本軍優勢に推移するものの、軍命により21日に日本軍が降伏して停戦が成立、23日に日本軍は武装解除されたが、捕虜となった日本兵はその後大勢が法的根拠無く拉致され、シベリアへ抑留された という史実を忠実に辿りながら、アメリカとの和平交渉の通訳要員として兵役年限直前の45歳で招集された翻訳書編集者「片岡直哉」、岩手医専卒・東京帝大医学部の医学生で軍医として招集された「菊池忠彦」、大陸でたてた手柄で金鵄勲章を授与された鬼軍曹で4回目の招集で占守島に送られた「富永熊男(鬼熊)」の三人の登場人物を軸に、過酷な状況下での人間の本質を照射しつつ、それぞれの場所で、立場で、未来への希望を求める人々を描いた巨編(上・中・下で約1,050ページ)です。 重層的で物語の奥行が深く、人物造形にも優れている作品だったので、読んでいるうちに、どんどん作品の中に引き込まれていき、登場人物の目線で物語が展開していく感覚で読み進めていくことができました… 『終章』では、辛いとか、哀しいというよりは、胸が苦しくなるような気持になり、「鬼熊」の母親に宛てた手紙や、少年兵「中村末松」の遺した押花帖が出てくる場面では、涙が止まりませんでした、、、 戦争は終わったのに、戦闘が始まる… この大いなる矛盾の中で、戦う兵、死にゆく兵、戦争の禍々しさと非情さ、そして愚かさに胸を打たれましたね。 終盤の戦闘シーンは、その少し前から登場していたソ連の現場第一線の兵からの目線で描かれているのですが、彼らもまた、終わったと思っていた戦争で、再び命を賭して闘わなければならないという矛盾を抱えながら行動しており、戦争というものの非情さや非人間的な部分が、巧く描かれていたと感じました、、、 この戦闘の矛盾を訴えた「アレクサンドル・ミハイトヴィッチ・オルローフ中尉(サーシャ)」の報告書には共感する部分が多かったですね… 略奪を目的とした大義なき作戦行為は、現場では誰も望んでいないんですよね。 不条理な戦争(戦闘)に、国土とそこに暮らす人々を守るために誇り高く戦った人たち… 軍人も民間人もそれぞれの誇りと愛するものを守るために戦ったんですよねぇ、、、 久しぶりに読書しながら泣いちゃいました… 涙が止まらないほど感動した、忘れられない作品でした。 以下、主な登場人物です。 「小松少佐」 大本営参謀。参謀本部編制課動員班の動員担当者 「甲斐中佐」 陸軍省軍事課員。参謀本部編制課に合流 「佐々木曹長」 盛岡聯隊区司令部第三課動員班長 「蓮見百合子」 盛岡聯隊区司令部の庶務係。岩手高女の女学生 「遠山敬一郎大佐」 盛岡聯隊区司令部司令官。地元の名士 「佐藤金次」 滝沢村役場の戸籍係兼兵事係 「勇」 滝沢村役場の給仕の少年 「片岡直哉二等兵」 東京外国語学校卒の翻訳書編集者。岩手県の寒村出身。 英語通訳として招集され占守島に向かう 「片岡久子」 片岡の妻。女子高等師範卒の文学書編集者 「片岡譲」 片岡の息子。国民学校四年生。信州に集団疎開しているが疎開先を抜け出す 「吉岡静代」 譲と同じ国民学校の六年生。信州に集団疎開している。譲とともに疎開先から東京を目指す 「小山雄一」 国民学校の教師。四年男子学級の担任 「朝井マキ子」 国民学校の教師。六年女子学級の担任 「岩井萬助」 渡世人。懲役に服していたが、召集のため放免される 「尾形貞夫」 片岡と同じ出版社に勤める、翻訳書出版部の部員。 警視庁で洋書や英文記事の検閲を行う 「尾形佐江」 尾形の妻。夫妻で久子の住まいに引っ越す 「野中良一」 久子の異父弟。フィリピンで戦死 「野中きぬ」 久子の母。久子の父親との離婚後、良一の父親と暮す 「安藤仁吉」 東京で岩手県出身者たちの面倒をみる篤志家 「菊池忠彦軍医少尉」 岩手医専卒の医師。東京帝大医学部に在籍。 招集されて占守島の軍医となる 「富永熊男軍曹」 盛岡のタクシー運転手。金鵄勲章を授与された軍曹。 四回目の招集で占守島へ向かう 「吉江恒三少佐」 第五方面軍司令部参謀。敗戦処理の任務を負う 「大屋与次郎准尉」 戦車第十一聯隊第二中隊段列長。旭川出身 「中村末松兵長」 戦車第十一聯隊第二中隊段列の少年兵。東京出身 「池田大佐」 戦車第十一聯隊長 「岸純四郎上等兵」 南方帰りの船舶兵。三陸の宮古出身 「工藤軍医大尉」 野戦病院の軍医。菊池の岩手医専での先輩 「渡辺中尉」 第九十一師団副官。札幌出身 「森本健一」 日魯漁業社員。占守・幌筵島の漁場と缶詰工場の責任者 「石橋キク」 缶詰工場で働く女子挺身隊員。函館高女の卒業生総代 「沢田夏子」 缶詰工場で働く女子挺身隊員。キクの同級生 「ヤーコフ」 占守島出身のアイヌ。色丹島の診療所で助手を務める 「池田大佐」 戦車第十一聯隊長 「アレクサンドル・ミハイトヴィッチ・オルローフ中尉(サーシャ)」 ソ連軍の将校。シベリアに住むコサックの子孫 「ボクダン・ミハイトヴィッチ・コスチューク兵長(ボーガ)」 ウクライナ出身のソ連兵
戦争に翻弄される人々のそれぞれの話。 終わらざる夏、終戦を告げる玉音の後に始まった戦闘。 兵士にも敵兵にも一人一人に妻がいて子がいて、母がいて、故郷があった。 軍人として戦って死にたいという誇りと生きて家族に再び会わねばという想いに揺れ、国を守るために戦った。 戦争の悲惨さをありありと感じさせられ...続きを読むる作品でした。 「一生戦争をしねえで畳の上で死ねるんなら、その時が勝ちだ。」登場人物の1人の言葉が強く印象に残りました。戦争を繰り返さず、平和な日本を守ってきてくれた方々に改めて敬意を表します。
ほんの少し前の日本にこのようなことがあったことをなぜ誰も教えてくれなかったのか、ということをすべての教育者に考えていただきたい。と思わせる小説。
昭和20年8月15日を過ぎてから始まった北方の島でのソ連軍との戦い。 400名の缶詰工場で働く勤労動員された女学生達だけが辛くも生き残れただけが唯一の救い。 何処かでハッピーエンドを期待していたけれど、そうはならなかった。 何処の世界でも、川下で働く人が受ける辛酸さは変わることがない、辛いエンディン...続きを読むグでした。
上・中・下巻を通して悲しい小説でした。戦争、そして国家に翻弄され続けた人々の姿は、戦争によって真に失われるものは何なのか、ということを示しているように思います。 下巻に入り、日本はポツダム宣言を受け入れ、戦争は終わります。しかし、それにも関わらず占守島にソ連軍は攻めてきます。それは、戦後の領土...続きを読む確保というソ連国家の思惑のためでした。 しかし、占守島は戦時中、戦力を移動させる手段がなかったため、戦車などの機械も、そして実力のある兵士たちも十分すぎるほど残っていました。一方のソ連は戦闘があったという記録さえ残しておけばいいため、送られた兵士たちはわずか。戦機も不十分でした。 国自体はすでに勝利しているにも関わらず、死地へ送られるソ連兵たち。そして、その攻撃に応戦せざるを得ない日本軍。戦争が終わってすらもその余波は、人々の想いも涙も、戦勝国も敗戦国も関係なしに飲み込んでいきます。 作中に「戦争をしたものはみんな敗者」という言葉があります。物語が終息に向かうにつれ、その言葉が実感を伴って心に打ち込まれます。しかし戦争の奇妙なところは、その敗者の責を負うのは、戦争を起こした国家や、権力者たちではなく、市井の人たちなのです。戦争の不条理の真実は、そこにあるのではないかと思いました。 妻、子供、親……、この小説に登場する人たちの誰かを想う気持ちは、とても美しいです。そうした大事な人を想う心の強さは、普通の世界では賞賛されるはずのものです。 しかし、戦争という異常自体の前には、そんな美しい想いも無力なのです。この想いを持ち続けている人が、生きることができる世界を造ることが、自分たちの使命なのだろう、と感じました。
戦争に巻き込まれた人たちの哀しい物語。 たくさんの登場人物の視点から、戦争の悲惨さ、理不尽さをあらわした物語です。 いよいよ最終巻です。 下巻では、いよいよ終戦に向けての話になりますが、今度はソ連側軍人の話も入り始めます。 また、ファンタジックな話も含まれます。(浅田さんらしい) そして、いよい...続きを読むよ玉音放送です。 片岡の息子たちは召集されようとしていた口の悪いやくざに助けられて汽車で東京に戻ることになります。 このやくざが実はまたいい人!東京に到着して、片岡の息子を母親に返すときに、最後に片岡の息子にわかるように言う言葉がしみる!! 「二度と、戦争はするな。戦争に勝ちも敗けもあるものか。戦争するやつはみんなが敗けだ。大人たちは勝手に戦争をしちまったが、このざまをよく覚えておいて、おめえらは二度と戦争をするんじゃねえぞ。 一生戦争をしねえで畳の上で死ねるんなら、そのときが勝ちだ。じじいになってくたばるとき、本物の万歳をしろ。」 浅田さんの思いそのものだと思います。 一方、玉音放送が入って、敗戦したにもかかわらず、いよいよ占守島にソ連の攻撃が始まります。 どうやって缶詰工場で働く女学生たちを脱出させるのか。そのやり取りに熱いものがこみ上げます。 さらに、ソ連側軍人の思いも語られます。 降伏している相手に攻め入るということ。さらにはそこには日本軍最強の戦車軍団がいること。その戦闘に何の意味があるのか? そして、最後の戦闘シーンとつながっていき、ソ連軍人の視点から戦闘が語られます。 最後はシベリア抑留... 戦闘のどんぱちが数多く語られるわけでもなく、悲惨さを前面に押し出しているわけでもないのに、戦争の現実がありありと感じられます。 この時代を生きたさまざまな人の視点から、その生き様、感じ方、考え方を語ることによって、その時代の悲惨さと哀しさを浮き彫りにしているのだと思います。 名作です お勧め!!
日本人として当然知っておくべき重要な史実を、恥ずかしながら今まで知らなかった。意図的に誰かが隠蔽しているのか、或いは私が単にバカだったからなのか?願わくば後者であって欲しい。
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