【感想・ネタバレ】終わらざる夏 中のレビュー

あらすじ

片岡の一人息子・譲は、信州の集団疎開先で父親の召集を知る。譲は疎開先を抜け出し、同じ国民学校六年の静代とともに、東京を目指してただひたすらに歩き始めた。一方、片岡ら補充要員は、千島列島最東端の占守(シュムシュ)島へと向かう。美しい花々の咲き乱れるその孤島に残されていたのは、無傷の帝国陸軍、最精鋭部隊だった。――否応なく戦争に巻き込まれていく人々の姿を描く著者渾身の戦争文学、中編。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

終戦の直前で終了。複数の場面が設定され「不条理」を描ききった。昭和20年夏の敗戦に向かう日本、国民は何も知らされず耐えるのみである。①占守島に向った翻訳要因の片岡、菊池医師、富永軍曹が敗戦濃厚を知らされる場面/②片岡の息子・譲が疎開先で静代と出会い東京に向け歩き出す/③片岡の妻・久子が息子・譲、夫、義弟を思い奔走する/④占守島から追い出されたアイヌ族。戦争に巻き込まれた彼らの悲哀が身につまされる。広島・長崎の全滅とポツダム宣言受諾の報、ラストの下巻で昭和20年の夏はどのように過ぎていくのかを追っていく。

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2020年08月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

片岡直哉(かたおか なおや)の息子で小学四年生の譲(じょう)は信州に学童疎開していた。
もう一年近くになる。
食べるものが乏しく、子供たちは来た頃よりも皆、一貫目(約3.75kg)ほども痩せた。
24時間、子供達を守らなくてはいけない先生たちの苦労も大変なもの。
自分では否と思うことを子供達に吹き込まなくてはいけない事が一番の苦しみだろうか。
「あなたたちの本分は勉強です」と、言外にさまざまな思いを込めて言い聞かせることしかできない。
ホームシックの限界に来ている子らを見守るのも辛い。
実家に出す手紙も、実家から来る手紙も検閲することになっている。
良心ある教師はそれもつらい。
片岡譲の担任の小山雄一、六年生の吉岡静代を担任する浅井マキ子は、二人の子供がしっかりしているからと信じて手紙を読ませるが・・・

片岡直哉たちが配置される、北の最果ての島、占守(シュムシュ)島には、なんと民間の缶詰工場があった。
民間といっても、軍の命令で動いている。
撤退したいのに許されず、函館の女学校を出た女子挺身隊も働いている。
工場の責任者である森本健一は、なんとしても彼女たちを守ろうと思っている。

そういえば、この本には「悪い人」が出てこない。
強いて言えば、小山や浅井の上司に当たる教師かな。まあ、体がデカいだけで、器は小さいけどな。
戦争が悪いのであって、人は悪くない、という事なのだろうけど、戦争は自然災害とは違う。
いつまでも戦争を終わらせたがらず、国民を苦しめている奴らが確かに存在しているはずなのだ。

片岡たちは皆、岩手の出身だから、地元が描かれる時は岩手弁の会話だし、鬼熊こと富永軍曹は常に岩手弁だ。
なんとなく宮沢賢治を思い出すなあと思っていたら、「星めぐりの歌」と「雨ニモマケズ」が出てきた。
満天の星と、東北の自然と、素朴な心の美しさが、非情な現実との対比になっている。

片岡二等兵、菊池軍医、富永軍曹の三人はいよいよ占守島に着任する。
片岡の役目は最初から書かれていたけれど、後の二人の役目は・・・う〜ん・・・そんなのありか。

スーパーで「マルハニチロ」の商品を見つけ(ゼリーだった)なんだか胸がせまる。

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2023年07月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

どんどん面白くなってきた。
それぞれの立場で見る戦争が描かれていて、誰も望んでいないことがよくわかる描写が切ない。
なのに突き進むしかなかった。
そして今、ようやく終わりが見えてきて、さてどうなるというところで下巻へ続く。

第二次世界大戦時の日本は、ずっと去勢を張っていたのだろう。
そして日本中の誰もが、みんな表面と心を分離して過ごしていたのだろう。

教科書で日本史の事象だけを学ぶと、この時代は異常だな、洗脳だったのだろうかと思うこともあったけれど、やはり心の内は自分を保ち、人として悲しみながら生きていたのだろうなだと思うとやりきれない。。

死を身近に感じながら生きていく必要がある上に、表現を制限される辛さ、想像するだけで苦しい。

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2022年01月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

暗い内容で気が滅入り、読む終えるまでに何ヶ月もかかってしまった。
入れ替わり立ち代わりそれぞれの立場の人間が語り手となっていく手法だったが、読みづらいと感じたときもあった。
占守島の戦いのことは全く知らず、たまたま聞いていたラジオ番組のゲストが著者で本書の紹介をしていたため、手に取った。
日本でこの戦いの知名度は低いが、教科書に載せても良いのではないだろうか。

結末は救いがなく、心が重くなった。
生き残った人々はシベリアに送られ、無事に帰国できたかどうか胸が痛い。
娯楽のための読書はすばらしいが、ときどき本書のようなジャンルを読むことは大事なことなのかもしれない。

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2018年03月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

集団疎開先の話やその子供、親たちの境遇、心情がよく描かれています。
片岡さんたちも占守島に到着。今後の展開に息が詰まります。

つくづく、片岡さんたちも、吉江少佐始めの軍人も、占守島の女学生たち、疎開先の子供や先生に至るまで、あと少し無事でいてくださいと祈るばかりです。

個人的には、譲達がドイツ人やロシア人と会うのが衝撃的でした。

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2013年08月19日

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