【感想・ネタバレ】天子蒙塵 3のレビュー

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Posted by ブクログ

イギリスに留まるかそれとも故郷に帰るか考え続ける張学良。そして生きていた王逸。春雷はいよいよ、その弟子に龍玉を渡そうとする。王逸が家庭教師として育てた弟子の名前は毛沢東。
ああ……ああそうなるのか……そうなるんだけどいよいよここまで来たんだなという感慨に溢れる第3巻。

"恐怖心は武士道に悖る。だから誰も本音を口にできない。美辞麗句の建前に糊塗されて、実はその存在理由がよくわからない国家が、満州なのです。"

その満州でいよいよプロパガンダのための映画制作が始まる。そもそも何のためのプロパガンダなのか、本当はみんなわかっているけれどわからないふりをしているんだな。

いや〜〜自分の偏見に気付かされた巻でもありました……元自衛官の浅田先生がこんなにバチバチに旧大日本帝国軍と関東軍を批判するとは……恥ずかしながら予想していなかったというのが事実です。浅田先生は東京オリンピック開催にも反対してましたもんね。そりゃそうなんですよね。
ナチ党と満州国共和会をなぞらえるあたりの緊迫感よ……

文秀の教え子、朝日新聞の北村記者も好きです。大きな流れに抵抗しなければ。ジャーナリストとしてやるべきことをやらねばと思っているのに、甘粕はじめ大きな流れに飲まれていってしまう。どうかジャーナリストであり続けてほしい。柳川先生の教え子ならと思わずにはいられません。

そして張学良は帰国する。自分は中国を選んだのだと信じて。

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2023年04月26日

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2023.10.31〜2023.11.16

翼を拡げる。でも、その拡げた翼で正しい方角へ飛べているのか。飛んでいけるのか。
もしかしたら、黒い翼が生えていたのか。

歴史上の人物以外も登場して、彼らの今後がどうなるのか、楽しみ。

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2023年11月18日

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第三章「漂白」はヌルハチの神話から始まる。『蒼穹の昴』シリーズは中国近現代史の歴史小説であるが、ところどころに清朝の過去の物語が挿入される。第一部『蒼穹の昴』では乾隆帝の時代の話が挿入された。第三部『中原の虹』では明末清初の話が挿入された。第五部ではヌルハチの時代と遡っている。

近代中国史の屈辱は阿片戦争に始まる。二十世紀になっても阿片の問題は終わった話ではなく、繰り返し言わなければ気が済まない。張学良は以下の皮肉を心の中で言う。
「その昔インド産の阿片を売りにきたのもジョークのつもりだったのかね」
阿片戦争の卑劣は『蒼穹の昴』シリーズで繰り返し語られる。
「洋人たちはこの国にひどいことをしました。茶葉や器や絹のかわりに阿片を持ちこみ、それを拒めば、鋼鉄の船を並べて、大砲を撃ちこみました」(浅田次郎『珍妃の井戸』講談社、1997年、314頁)
「イギリスが運んできた阿片のせいで、この国はめちゃくちゃになった」(浅田次郎『中原の虹 4』講談社文庫、2010年、414頁)
「仮に近代資本主義と植民地主義が不可分の関係にあるとしても、阿片戦争はあってはならぬ蛮行だった」(浅田次郎『兵諫』講談社、2021年、137頁)

ところが、満州国は阿片を財源にしようとした。「一部の者が、阿片の専売を目論んでおります。禁制の麻薬を国家の財源にしようなど、あってはならぬ話であります」

甘粕事件の甘粕正彦が満州国に登場する。溥儀にとって甘粕は人当たりがいい人物に見えたが、虐殺者であった。憲兵隊所属の甘粕は1923年(大正12年)の関東大震災の混乱時にアナキストの大杉栄・伊藤野枝と甥の橘宗一(6歳)の3名を憲兵隊本部に連行して殺害し、同本部裏の古井戸に遺体を遺棄した。

甘粕は何事もなかったように満州国で映画に携わるが、虐殺の過去が関東軍からも白眼視されていることは数少ない良心的反応である。溥儀にも甘粕事件が説明され、「聞くだに胸が悪くなった」との反応になる。清朝では義和団事件に際して珍妃が井戸に投げ込まれて殺害されるという過去があった。大杉栄らの遺体を井戸に遺棄した甘粕の所業は珍妃殺害を溥儀に想起させた。珍妃殺害は第二部『珍妃の井戸』で取り上げている。物語の絡め方が巧みである。

張作霖は儀礼を嫌った。「儀仗を受けるときにも、ラッパや軍楽など耳に入らぬかのように、早足で通り過ぎてしまった」。公務員的な形式主義の対極にある人物である。日本には張作霖爆殺(満州某重大事件)というどうしようもない負の歴史がある。一国の国家元首を爆殺するという、とんでもない事件である。その重大性を小さく見せるために張作霖をヤクザの親玉のように矮小化する傾向がある。その結果、張作霖という人物の魅力も伝えられないことは不幸である。『蒼穹の昴』シリーズが張作霖を掘り起こしたことは素晴らしい。

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2022年06月12日

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満州が日本によって整備されていく過程を描く。春雷の持つ龍玉はどうなるか?なんか毛沢東に行っちゃうのかな? 張学良が欧州でぶらぶら、英気を養って帰国するまで。さて最終巻はどうなるか?満州帝国ができて?

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2021年09月11日

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満州国建国を背景に、新たな登場人物を加え、最終巻に向けてさまざまな布石が打たれるように物語が展開する。

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2021年08月23日

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今巻の主な視点は、溥儀と張学良。
溥儀は清の復辟を成すため、日本が作った満州国の執政に就任。そのまま、満州国皇帝を目指す。
溥儀は孤独の概念を知らず、孤独を感じることはないとの独白があるが、彼の感じる感情の多くは孤独そのものである。
張学良は蒋介石に実権を渡した後、ヨーロッパに身を移すが、外から見た中国を感じながら、最終的には再度、中国に戻ることを決意。
張学良は、難しい政局の中で逃走を余儀なくされるが、世間からは様々な非難や憶測を呼んでおり、これもまた孤独である。
激動する社会に取り残されたり、巻き込まれたりした人々の各々の人生が翻弄される。
前まで物語の途中、毛沢東の名前が出、天命のの具体、龍玉の落ち着く先が暗示される。

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2021年07月25日

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満州国に執政として捕われた溥儀と欧州で目的のない日々を暮らす張学良が交互に語られる。それぞれにどうにもならない不幸な境遇。
満州の唯一の希望だった武藤将軍は暗殺(?)により舞台を去る。判っていることとは言え暗澹とする。

中盤で登場する袁金鎧。以前、袁世凱に名が似ていると書かれていた小物。こういう人物にしっかり焦点を当てるのもこの大河物語の面白さかな。

甘粕の主催したオーディションに登場した少年の歌うジャズ。時代のあだ花だと思うけれど、東洋のハリウッドやパリを現出させる夢には魅かれるものがある。
しかし、その後の愚直な軍人は「三人の悪人」の退官自衛官を思い出させるが、(引用)どうして軍人は謀略を好むようになったのだろう。正義を滅してまで求める結果など、あってはならないのに、という抵抗に満州国の出鱈目さを指弾している。

浅田次郎節炸裂というか、ノッテ書かれているのが伝わってくる名文。
(引用)建物の大きさに較べて玄関は慎ましく、その造作はいかにも、姓名のほかに何らかの称号を持つ人物でなければ足を踏み入れがたいように思えた。
(引用)しかし、彼が熱く語るファシズムの正当性は、私の胸には何ひとつ届かなかった。それはことごとくが勝者の論理だからだった。
むしろ、私が感心したのは、彼の活力と、暑い胸板と、一分の隙もない装いだった。つまり、そうした外観さえ備えていれば、中身などなくとも人心を掌握できるのだと知った。

こういうピリッとした文に痺れまくって読み進めた。

張学良が溥儀を凶相として、情けをかけるのをやめることが軽く驚き。この長い物語では溥儀はまっすぐな王者だったのに。
張作霖が爆殺されなかったら、または張学良が支配したら中国はどうだったんだろう。

さあ、次はいよいよ張学良が帰還する第4巻。

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2021年06月24日

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張学良がメインの巻。

登場人物が増えてきたな。
本のオマケの、しおりタイプの登場人物紹介が便利だ。
1巻の分からまとめて持っておくとよい。

登場人物、実在も架空もどれも魅力的。

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2021年06月24日

Posted by ブクログ

シリーズ5作目
溥儀が満州国の皇帝になるまでが描かれています。
前作「マンチュリアンレポート」をはじめ「中原の虹」や「蒼穹の昴」から随分間が空いたので、人間関係や相関が忘却の彼方でした。
自分のレビューやググってようやく思い出したところ多々あります(笑)
登場人物多くて、ストーリが追いきれません。
前作含めて、じっくり、あいだ開けずに一気に読まないとだめです(笑)

第三巻は
張学良の物語。張学良も阿片にやられていたんですね。
最終的には中国に帰ることになります。
また唯一の希望だった武藤将軍も亡き人に。
どうなる満州国。
そして、龍玉は誰に渡されるのか?
といった展開です。

ここで新たな登場人物の正太と修!
おいおいここで出てきてどうなる?どう絡んでいくの?最終巻に向けてどう絡む?

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2023年06月11日

Posted by ブクログ

関東軍の謀略で父・張作霖を爆殺された張学良。蒋介石の国民党に東三省を渡し失意のうちに欧州に渡る。
溥儀を執政に迎え満州を実質的に支配する関東軍に対しひとり馬占山のみが孤軍奮闘するが力及ばず。
甘粕正彦、石原莞爾、川島芳子など満州を舞台に暗躍する役者達が続々登場。完結編が楽しみです。

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2021年07月14日

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