あらすじ
京大生の<僕>は、古びた映画館で清家忠昭に出会い、彼のつてで映画撮影所のアルバイトをすることになった。ある日、清家は撮影所に現れた美しい女と恋に落ちる。しかし、彼女は三十年前に自殺したはずの女優だった――。清冽な叙情とたおやかな文章で綴る、青春恋愛小説の傑作。
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Posted by ブクログ
すごく綺麗な文章でした。そして最後まで掴めない、それこそ霧のかかった、けど認めざるを得ない幽霊のような話でした。大事な事がいっぱいあった。買おうかな。
Posted by ブクログ
侮ってました。ちょっと不思議だな位の話しかと思ってました。何と美しい純愛小説なのでしょう。戦後20年経過した、経済成長を遂げようとする日本の中に置いてきぼりになりつつなる、活動映画の世界のノスタルジックな雰囲気がたまりません。この21世紀に読むから意味がある。私も、周りの人に誠実に向き合って行きたい。男女の関係だけではなく、家族、職場、様々な人間関係について考えさせられました。
Posted by ブクログ
ミステリをファンタジーで包んだ幻想小説。舞台が京都なことも相まってか、春霞にまかれたような、時間軸のどこかに置き去られたような読後感を覚える。
時間軸を動かす、というあまりに大きな仕掛け、ファンタジーを、一切の違和感なく読ませる筆者の技量は圧巻という他ない。
ぴんと張った糸のような緊張感のある撮影シーン、美しく繊細な日々の描写、何かが起きている、ときゆえの何事もないような文の運び。
すでにミステリは始まっている。
これ以上スピードを上げようとも、これ以上展開をダイナミックにしても晴れてしまう霧の存在は承知だ。ただ、リアルとファンタジーの狭間に時に置いていかれそうになりかける。