あらすじ
昭和三年六月四日未明、張作霖を乗せた列車が爆破された。関東軍の暴挙に激怒した昭和天皇の密命を受けて、若き軍人が綴った「満洲報告書」で明かされる「真相」とは? 該博な知識と丹念な取材に裏打ちされた浅田史観で、闇に葬られた昭和史最大のミステリーを追う。絶好調『蒼穹の昴』シリーズ第4部。(講談社文庫)
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「蒼穹の昴」シリーズ第4弾。
「満州報告書」
張作霖を乗せた列車爆破の真相は‥。
つらくて悲しい時代なので、読んでいて苦しかったです。
どうして止められなかったのか、どうしてこういう流れに流されていってしまったのか。
いくつかのリポートの間にある、爆破された蒸気機関車の生い立ちと思いが、悲しみを深めます。
そして4作通して生き抜いていく西太后に仕える宦官・李春雲の人生を思うと心が締め付けられます。
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23.09.06~23.09.18
真実ってどこにあるんだろう。どれが真実なんだろう。
正義って何だろう。
人によって、立場によって、異なるのはわかる。
でも、それを自分の身に都合のよいように解釈するのは、どうなんだろう。
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行こう、雨亭。鉄路はどこまでも続いている。皇帝でも総欖把でも大元帥でもない永遠の少年を乗せて、私は走りたい。それこそ鋼鉄の公爵の名にふさわしい、栄光の旅だと信ずるから。
張作霖が爆殺されてから一年後、昭和天皇の密命を受けてなぜ彼は殺されたのかを探る軍人の報告書と、彼を乗せた豪華機関車のモノローグが交互に挟まる蒼穹の昴シリーズの10巻目。巻を増やすごとに面白くなっていきます。
吉永中佐が大好きです……当時からこうやって引き裂かれた人はたくさんいたはずなんだ……雨亭が中佐に最後にかけた言葉も好きです……
どうか最終章まで読んでいただきたい……あの「ああ……」としか言えない感覚を多くの方に味わっていただきたいです。
感慨深い
いやいや、歴史を学んでこない私にはこれが真実の出来事としか感じられないほど。感動というのか。
事実かどうか、真実は何か。
突き詰めることは大切なこと。
数年前にあった公文書破棄なんて認められない。そんなことまで感じた一冊。 おススメ。
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蒼穹の昴シリーズは大好きで、これまでの全ての作品を読ませていただきました。第4段となる本作では志津中尉のレポートと、鋼鉄の伯爵と呼ばれる蒸気機関車の追憶が交互に提示される事で、満州鉄道爆破による張作霖爆殺事件が明らかとなります。ストーリーもさる事ながら、このスタイルにもとても感銘を受けました。コロナ禍の中でしたか、本の中で北京から奉天を旅している気分を感じる事が出来ました。是非ともこの先もこのシリーズを読みたいと思います。このような素晴らしい作品を執筆された浅田先生に感謝いたします。
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あゝ、読んでしまった…
今ある浅田次郎の傑作達を。
中原の虹の主人公、張作霖を本編を読んでる時はなんとも思っていなかった。
しかし、マンチュリアン•レポートを読んでると、張作霖の人間性を改めて好きになった。
その人間性を作っているのは、浅田次郎なのだが。
あゝ、新たな話が出てこないか…
今から待ち遠しい。
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いよいよ刊行開始になったシリーズ最新作「天子蒙塵」。その前の本作は、さていつ頃読んだのだったかな、と思って本棚を検索してみてビックリ。なんと登録してませんでした。ちょっと細かい内容までは忘れてしまったのですが、満鉄を擬人化しつつ、張作霖爆破事件に至る各人の動向を、それぞれの視点から描ききった力作だったと記憶します。というかそんな建前はどうあれ、本シリーズで心打たれなかった作品はないんですけどね。という訳で、本作を登録しつつ、上記最新作を存分に楽しませてもらおうと思う次第。
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「蒼穹の昴」、「珍妃の井戸」、「中原の虹」に続く浅田次郎の中国近現代史シリーズ。張作霖謀殺事件を舞台に、事後のレポートと張作霖を運んだ伝説の蒸気機関車のモノローグと二つの視点を交互に挟んで描いていく。
13年春に文庫本化されてすぐに買ったものの、ずっと途中のままでカバンの中に入っていた。やっと読み終えました。
「蒼穹の昴」や「中原の虹」とかと違って、1冊だけなのでその気になればすぐ読めるんですが、要所要所に挟み込まれる、俺って中国事情とか中国語に詳しいんだぜと言わんばかりのエピソードやルビふりにイラッとしたりもしながらも、浅田次郎だなぁとそこに楽しみを感じて見たり。
「蒼穹の昴」や「珍妃の井戸」を読んで、北京に何度か通ったりしましたが、また、奉天、瀋陽に行きたくなりました。って、2008年に瀋陽には行っていて、張氏帥府も訪れていますが、当時は張作霖にそんなに興味はなくて、近代史で名前がちらっと出てくる人っていう位しか認識がなかったからね。
まあ、春児が最後に出てきて、おいしいところを持っていくのは、浅田次郎のこのシリーズとしてはお約束なので、しかたないんでしょうね。
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浅田次郎『マンチュリアン・リポート』(講談社、2010年)は張作霖爆殺事件(満州某重大事件)の真相に迫る歴史小説。『蒼穹の昴』シリーズ第四部である。日本史と中国史が重なる事件である。
日本では張作霖は軍閥の親玉という程度の扱いとされがちである。このために、その殺害もそれほど大きな話ではないように思われがちであるが、中華民国(北京政府)の国家元首であった。国家元首を殺害しており、由々しき事態である。この重大性は現代日本では軽視されている。
視点人物は日本軍の中尉である。物語は治安維持法改悪への反対から始まる。張作霖爆殺事件と無関係に見えるが、「治安維持法の改正と爆殺事件は、けっして無縁ではないよ。国民の自由を奪わんとすることと、他国の領土を奪わんとすることは、同じ悪魔の発想だ」と説明される(105頁)。警察法改正反対運動が起きた2022年も参考になる。
中国人は「この国の人々は余分なことをしようとはしないが、報酬の分だけは必ず働く」と評される(104頁)。「頑張ります」という昭和の精神論根性論に毒されていない。IT業界では中国へのオフショア開発が盛んであるが、納得できる評価である。田中芳樹『銀河英雄伝説』のヤン・ウェンリーは中国系の設定であるが、給料分だけ働くことにこだわっていた。
本書は鉄道乗務員について以下のように説明する。「当時の鉄道員は労働者というよりも、文明の最先端にある技術者であり、特権階級であった」(128頁以下)。労働者と「文明の最先端にある技術者」は相容れないものとすることは労働者のイメージに偏見がある。労働者であり、かつ、「文明の最先端にある技術者」となる。
夏目漱石『坊っちゃん』の坊っちゃんは四国の旧制中学校の教師を辞職して街鉄の技手となった。坊っちゃんは公務員的な出世主義では敗者となるが、それは公務員組織の価値観であり、当時は文明の最先端にある技術者と言えるだろう。
近代中国史の屈辱は阿片戦争に始まる。依存性薬物の阿片を輸出し、清国民を阿片漬けにして、それを清国政府が取り締まると侵略戦争を始めた。この上なく非倫理的な侵略である。
『蒼穹の昴』シリーズの別の書籍には以下の記述がある。「仮に近代資本主義と植民地主義が不可分の関係にあるとしても、阿片戦争はあってはならぬ蛮行だった」(浅田次郎『兵諫』講談社、2021年、137頁)
阿片は20世紀になっても中国社会にまん延していた。本書では阿片中毒患者の病棟が描かれる。「禁断症状なのか痛みによるのか、ただならぬ唸り声や悲鳴や、壁を叩いたり蹴ったりする物音があたりに響き渡っていました」(199頁)。
一方で、この時代の中国人からは日本人は依存性薬物を否定すると評価されている。「日本人が阿片窟に出入りすることはないのです。阿片窟どころか、日本人には阿片を悪とする道徳があるので、王は阿片呑みの日本人さえ知らなかった」(202頁)。実際の日本は阿片に潔癖ではなく、日本軍は阿片を資金源にした。漫画『ゴールデンカムイ』の悪玉の軍人は阿片を密売していた。
21世紀の日本では危険ドラッグが社会問題になったが、危険ドラッグの原料の多くは中国から輸入されたものであった。「危険ドラッグの製造拠点として11府県の13カ所が摘発された。全てのケースで中国から原料が輸入されていた」(「危険ドラッグ摘発5.6倍の706件 14年、中国から原料輸入増」日本経済新聞2015年3月5日)。19世紀や20世紀前半にイギリスや日本が中国に依存性薬物を販売したが、21世紀には逆転している。日本人に依存性薬物を悪とする道徳がないと大変なことになる。
志津中尉は「大丈夫ですか」と質問し、相手から以下の反撃を受ける。
「大丈夫、か。妙な言葉だ。そう訊かれたって、まさかもうだめだとは言えまい」
「正直なところ、ちっとも大丈夫ではない。貴様の立場はわかるが、あれこれ詮索するのはもう勘弁してくれんか」
志津は「この明らかな病人から証言を引き出そうとしたおのれを恥じた」(272頁)。
表面的には相手を心配しているような風で「大丈夫ですか」と質問し、実際は相手に「大丈夫です」と答えることを強要させることは卑怯である。まともな倫理観を有しているならば志津のように恥じることが正しい。
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これまでのシリーズを読んだことなかったからか、登場人物やら関係性やら言葉やら難しくて読み解くのが大変だった。もっと満州の事や関東軍のことなど、時代背景を知ってから読んだらもっと楽しめたのだろう。そうしたらこのシリーズを読んでいきたい。
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現代史の謎、張作霖爆殺事件の真相に、密勅を受けた日本陸軍将校と、擬人化した機関車を通して迫る。
この頃の中国史は登場人物が多くて理解しづらいですが、浅田次郎の描写で理解が進み、俄然興味が湧いてきます。
蒼穹の昴のシリーズ作品で、一部の登場人物も出てきます。
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『中原の虹』のその後、張作霖爆殺事件の謎を描く。
この事件、事件名くらいしか知らない己の情けなさ。
でも、ここまで読むまでは、張作霖について、あえて調べずに読むことにした。
昭和天皇の密命を帯びた陸軍中尉、志津が描いた報告書と、なんと、西太后の御料車(!)のモノローグで構成された物語。
中原に出た張作霖が、国民革命軍との戦いに敗れ、奉天に帰る。
その際、かつて西太后を乗せた英国製の御料車に乗って。
例の岡圭之介や、吉永将も登場する。
吉永は張作霖の乗った列車に同乗おり、途中で関東軍のたくらみに気づく。
吉永は張と運命を共にすることを選び、大怪我を負いながらも命を取り留める。
こうした経験から、本作で登場する吉永は心を病み、『中原の虹』の時とは別人のようになってしまっているのが痛々しい。
この人は実在の人物なのだろうか?
いずれにせよ、この時期、日本にも、中国にも、国家のエゴに翻弄されて、目の前にいる、関係を築いた隣国人との間で板挟みになって苦しんだ人はいたに違いない。
西太后の奉天行きの様子は、きっと記録にあることなのだろうと思うが、お付きの人々が座ることもできずに付き従ったという話は、さもありなん、と思った。
最後の、紫禁城を訪れる場面で、春児とあのシャーマンの老女が登場する。
春児は…出てこなくてもよかったかな?
ドラマチックに盛り上がるけれど、なにか話が作り物臭くなってしまう気がする。
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初めて浅田次郎を読み終えて、これは面白かった。まず構成が面白い。張作霖の事件を批判して投獄された軍人が天皇の命を受けて事件を調べるため、大陸に渡る。そこからの彼の報告書と張作霖がその中で爆死した豪華な機関車の独白という二部構成で、交代に話が進められていく。まず序章で浅田が言いたいであろうことが多く語られる。ありえないことがありそうに思えてくる。ただ機関車の独白部分は少し感傷的な所があるのが気にはなる。
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『蒼穹の昴』の登場人物と重複していたので、イメージが湧きやすかった。
歴史小説と言うより、エンターテーメント性が強く感じる。『蒼穹・・』の西太后が可愛いおばさんに描かれていたように、天皇も、関東軍の一部の軍人も、張作霖も、それぞれ苦悩を抱えた良人に描かれている。
中国からも、日本からも角が立たないような、八方美人的な纏め方に、多少なりとも不満が残ったが、浅田氏が広く読まれている秘訣とも思える。近代日本の中国へ侵攻の流れが分かり易かった。
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天皇陛下から直々に張作霖爆殺の真相を探るよう密命を受けた陸軍中尉志津邦陽が、手紙の形で陛下に認めた満州からの報告書「マンチュリアンレポート」。
事件の首謀者である関東軍に対する痛烈な義憤と張作霖という草原の英雄に対する
深い愛惜の想いがこの小説の骨格を成している。浅田次郎は、義と情の人だと思う。
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『中原の虹』から連続で読み始めてみた。前作で長城を越えた張作霖のその後の苦悩、そして非業の死。それを追う日本の陸軍中将。2つの視点から、歴史的出来事を深く考察していく。その中で、張作霖の想いに触れ、その涙のシーンではおもわずぐっとくる。これはやはり必ず『蒼穹の昴』『中原の虹』とともに読むべきものである。
そして張学良の物語を是非読みたいと思う。
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シリーズ4作目。
張作霖の爆殺事件の真相を語る物語。
その語り部は、天皇から調査を命じられた主人公の天皇への報告書(マンチュリアンレポート)と爆破された機関車(擬人化された機関車)が交互にストーリを語っていきます。
擬人化された機関車が語り部とはさすが浅田次郎と思いました。(でもかなり違和感あり)
さらには、最後に真相を語る吉永中佐。
そして、マンチュリアンレポートの第7信。
正直、技巧に走りすぎでは?って思います。
そうはいいながらも、今までの背景を知っていると、じんわりと悲しみが押し寄せます。さらには張作霖の覚悟と生き様に心揺さぶられます。
これは、本作だけを読んでもきっとつまらないでしょう。中原の虹から読まないとその感動は味わえないと思います。
いくつか、いくらなんでも!!っていうところがありましたが差し引きしても中原の虹の続編としては満足です。
しかし、さらにその先を知りたくなりました。
これまた、続きがでるのかな。その辺期待しちゃいます!
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「蒼穹の昴」から続きシリーズ4作目。
張作霖爆殺事件の背景を紐解いていく内容。
一冊なのですぐに読み終えてしまうが、中国近代史に興味を持つのにはいい本だと思う。
史実とフィクションが入り交じっているので、どこかでが史実なのか興味が出てきた。というか、そもそも史実が真実かは不明なので、これを正とするというのもいいのかもだけど。
そして、やはり張作霖はかっこいい!
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天子蒙塵を読み終えたので、マンチュリアン・リポートへ遡り
以前読んだ時は取っ付きにくくて読むのに苦戦したけど、今ならごくごく飲み込める
こんなに面白かったとは
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関東軍が仕掛けた張作霖爆殺事件について、陸軍の不正を訴えた志津中尉が天皇陛下の命を受けて調査に乗り出す。
未だに謎が多い張作霖爆殺事件だが、本人は知っていながら、敢えて死を選んだようにも見えた。
浅田次郎のシリーズは龍玉を軸にして描かれているようにも見えた。
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報告書形式で張作霖が爆殺された事件の真相に迫る話。淡々と進んでました。なるほどそんなところに爆弾仕掛けてたのかーと歴史の勉強になりました。
シリーズが長編、謎解き、長編、謎解きの交互できて、その謎解きターンでした。
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関東軍参謀による謀殺とされている張作霖爆殺事件の真相を探るため、天皇陛下より密命をくだされた軍人志津中尉からの報告書を読み進めていくスタイル。
歴史の授業で習った微かな記憶はあるが、その経緯、中国内の軍閥の利害関係、日本軍との関わりなどある程度理解ができた。何より、爆殺の方法が多くの人間が想像していたイメージと全く違うことに新鮮な驚きを感じた。文庫本のカバーデザインに納得。
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いやぁ、昔の日本よ、なんてことをしてくれちゃったんだよ…と改めて思った。
この当時の情勢や出来事についてはまだまだ無知ではあるけれど、超えてはならなかった一線を越えてしまったんだということはわかった。
このシリーズを学生の課題図書にしたらいいのに。小説とは言えど、歴史を振り返り、調べ、検証し、今後に活かすきっかけになるのではないかと思う。
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本作といい『珍妃の井戸』といい、
このシリーズ幕間の作品は他国の侵略という目線が大いに採用された中国近代史になっています。
そのぶん日本人としては読むのが辛い……
これはフィクションだから史実と混同してはいけないのだけれども、
フィクションは時に史実より雄弁にわたしたちへ語りかけてくるなあと、それが文学の力だなとこの頃思います。
Posted by ブクログ
『蒼穹の昴』シリーズの第4作であり、張作霖爆殺事件を取り扱った歴史小説。事件の調査報告書と、爆破された機関車を擬人化した独白が交互に語られる、という構成で、特に後者が全体にセンチメンタルな印象を与えている。
Posted by ブクログ
西太后やラストエンペラー、更にその弟の存在は知っていたけれど
張作霖のことは知らなかった。
信長と秀吉は知っているけれど、明智光秀は知らないみたいな感じだろうか。。。
汽車の擬人化には驚いた。
春児の登場も嬉しい。占い師がまだ存命にはたまげた。
ウィキだから、正確さは分からないけれど、息子は大分切れ者だったようで。
前作でその友人が謀反を起こしたことがサラリと述べられていて
前作の張作霖の強烈さに比べ、済んだことだからか、さらりさらりという印象を受けたけれど、
(本人も息子への代替わりを意図していたし、察していた描写だったけれど。汽車の最期は悲しかったが)
そこから今後中国がどうなるのかが気になる、という感想を持ったところで作者の意図にはまっているのだろうか。。
同僚も乗っているのに爆破した日本軍の闇、爆破に至った作品を読んでみたい。
解説で張作霖ゆかりの土地が紹介されていたが
今更、彼は馬賊だったことを思い出す。
Posted by ブクログ
「蒼穹の昴」から連綿と続く中国シリーズの、目下最終巻。張作霖爆殺事件の真相を探る歴史ミステリーの体裁をとってます。
昭和史の闇に対する浅田氏の見解、という視点で読めばなかなかに面白いのですが、清朝末期のありのままを壮大かつ意外な切り口で世に出した本シリーズのラストがこれか、と思うと正直…。きかんしゃトーマスとトップハム・ハット卿の漫才が始まった時には本当にどうしようかと思いました。
西太后、光緒帝、李鴻章、袁世凱にトーマス・バートン…魅力的なキャラクターが軒並み退場してしまうと、こんなものなのでしょうか。そして史了どこ行った?ずっと読み続けてきてこの結末は、寂しさを禁じえません。
「蒼穹の昴」と「中原の虹」の間に「珍妃の井戸」があったように、本書も幕間である事を期待したいものです。もっとも、この先続けても雄大さは感じられるのかなあ…。