浅田次郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ『長く高い壁』(浅田次郎著)は、戦争という極限の現実を背景に、人間という存在の尊厳と愚かさ、そのどちらもを静かに照らし出す傑作である。物語の舞台は1938年、中国北部の前線。国家の名のもとに動かされる兵士たち、そしてその中で起こる一件の“不可解な死”。浅田次郎は、この謎を糸口に、戦場という場所がいかに人の心を侵食し、同時に人間の本質を露わにしていくかを見事に描き出している。
本作の魅力は、単なるミステリーの枠を超えている点にある。真実を追う物語でありながら、読者が辿るのは「事件の解決」ではなく「人間の理解」へと至る道である。そこには、善悪の単純な区別を拒む、深い人間観が息づいている。軍隊という組織の中で、個の意志が押しつぶされ、理性と信念がせめぎ合う姿は、戦争文学でありながらも現代社会にも通じる普遍性を帯びている。
そして、浅田次郎特有の筆致――冷徹でありながらも、最後に必ず人の温もりを残す文章が、この作品をただの悲劇に終わらせない。
「長く高い壁」とは、国家と個人の間に立ちはだかる壁であり、人の心が越えようとしながらも越えきれぬ壁でもある。読後には、重くも澄んだ静寂が胸に残り、人間という存在の奥行きを改めて思い知らされる。 -
Posted by ブクログ
この本を読んでる途中で、蒼穹の昴を書いた浅田次郎さんか〜と感慨深く思いました
文章めっちゃ上手くて、子供時代の回想がお金持ちのちょっとスレた子供感出てた。正直、今まで読んだ子供の文章の中ではピカイチかもしれない。キヨとの関係も切なくて泣いちゃいましたなぁ…
大学生時代で出てくる真澄さんも切ないキャラで、ゆうちゃんのことが好きなのにそれを言い出せなくて、ボロボロになっちゃって、死んじゃって…
全体を通して、主人公含め男の人に肩入れする表現が多いように思った。女の人は、彼氏なり旦那なりに甘くて依存してるみたいな感じ?時代背景もあると思うので仕方ない部分もあるけど、真澄さんとか、もっと男の人がいなくても生きていける女性だったんじゃないかとか思ったり…
まぁこれは、私の女性にこうあって欲しいという願望かもしれないけど。
兎にも角にも、エピソードも文体も表現もとても良い作家さんですので、是非他の作品も読みたいと思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ1938年、中国へ進軍していた日本軍の一部小隊で、兵士10名が死亡する事件が発生する。調査のために現地を訪れたのは、探偵小説作家と日本軍の中尉。彼らは生き残った兵士や、中国人の医者、料理屋の主人など、事件に関わる可能性のある人物たちへ次々とインタビューを行い、真相を追っていく。
物語は一見するとミステリー小説のような雰囲気で進むが、結末に至ると「推理劇」というよりも、むしろ戦争そのものが人を狂わせていく過程が描かれていたのだと気づかされる。
読後には「なるほどね」と言いたくなるような、少し掴みどころのない感覚が残る。ただ、それは決して悪い意味ではなく、不思議と納得感を伴う余韻として残る読書体験だった。 -
Posted by ブクログ
ゆきさんのpostに惹かれて、audibleにて♪
愛する者のために人を斬る―
激動の幕末の時代に “人斬り貫一"と言われ恐れられた男がいた。
新撰組 吉村貫一郎、その人である。
彼はなぜ新撰組に入隊したのか?何のために人を斬るのか?
"義"を貫いた、貫一郎とその息子である嘉一郎の生き様を描いた物語。
久々の時代小説だったけど、やっぱり時代物はどっぷりハマる〜
泣けた〜(T^T)
形式としては 以前読んだ「木挽町のあだ討ち」の様な感じ。
貫一郎の死後 時を経て、誰かがいろんな人に貫一郎とはどんな人物だったか聞き歩く、といったのもの。
1人聞き終わる毎に貫一郎の人物像が浮かび上がってくる構成。
実在した人物だったみたいだけど、吉村貫一郎という人の名前すら知らなかった。
生とお金に異様に執着した貫一郎だったが、実は家族を心から愛した誰よりも強くて優しい男だった。
そしてその血を受け継いだ嘉一郎もまた 優しい誠実な男だった。
少し語りが長いな〜と思うところもあったけど、幕末の動乱の時代、悲しくも武士として生きた貫一郎と嘉一郎の生き様に涙した。
そして大野次郎右衛門の手紙に泣いた。。
この時代があってこそ 今に繋がるのだなぁ。
貫一郎の娘と末息子が その後幸せに暮らせて良かった。
ただ、この聞き手は誰なんだろうと思いながら読んでいたのに、そこは最後まで分からずじまいで
肩透かし!笑( ºΔº )
浅田さんとしては 物語の主旨はそこではなかったんだろうけど なんだかちょっとモヤモヤ〜笑(°○°...)