浅田次郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
浅田次郎らしい壮大で悲しい物語。
実際の阿波丸事件の謎を元に現代のミステリと歴史の悲劇を巧みに描いた快作だ。
最初読み始めた時は沈没船の引き上げをネタにした裏社会の絡んだサスペンスか、もしくは「M資金」的な詐欺モノかと思っていた。ところがそこは浅田次郎。いつの間にか史実の謎を独自の説で明らかにしながら、戦争の悲劇を壮大なドラマとして仕上げた。謎解きに関しては、戦時中はソ連のように平気で約束を反故にすることもあるし、軍部の狂気を思えば米軍の確信犯的な撃沈も、陸軍の考えた人間の盾もあり得ない解釈ではない。
本作では戦闘シーンや実際に人が死ぬ場面はあまり描かれていない。それなのに戦争の悲惨さはひ