浅田次郎のレビュー一覧

  • 長く高い壁 The Great Wall

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    ネタバレ

    『長く高い壁』(浅田次郎著)は、戦争という極限の現実を背景に、人間という存在の尊厳と愚かさ、そのどちらもを静かに照らし出す傑作である。物語の舞台は1938年、中国北部の前線。国家の名のもとに動かされる兵士たち、そしてその中で起こる一件の“不可解な死”。浅田次郎は、この謎を糸口に、戦場という場所がいかに人の心を侵食し、同時に人間の本質を露わにしていくかを見事に描き出している。

    本作の魅力は、単なるミステリーの枠を超えている点にある。真実を追う物語でありながら、読者が辿るのは「事件の解決」ではなく「人間の理解」へと至る道である。そこには、善悪の単純な区別を拒む、深い人間観が息づいている。軍隊という組織の中で、個の意志が押しつぶされ、理性と信念がせめぎ合う姿は、戦争文学でありながらも現代社会にも通じる普遍性を帯びている。

    そして、浅田次郎特有の筆致――冷徹でありながらも、最後に必ず人の温もりを残す文章が、この作品をただの悲劇に終わらせない。
    「長く高い壁」とは、国家と個人の間に立ちはだかる壁であり、人の心が越えようとしながらも越えきれぬ壁でもある。読後には、重くも澄んだ静寂が胸に残り、人間という存在の奥行きを改めて思い知らされる。

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    2025年10月24日
  • 母の待つ里(新潮文庫)

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    非現実的と言えばそういう設定ではあるけれど
    それだけでは割り切れない現代人の刹那を描いた作品?
    故郷や帰る所がある人には分からない事かも
    最後に母の真実が分かるくだりが何とも…

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    2025年10月23日
  • 大名倒産 上

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    ネタバレ

    江戸の末期、財政的に苦しい丹生山松平家12代当主は密かに倒産の準備を進めていた。そして、庶子の四男、小次郎は何も知らずに家督を譲られ、江戸城初登城の際に、目録不渡りであったことを知らされる。

    御家の財政難に気付き、建て直そうと奮闘する小次郎、他家の元勘定役に助けられたり、参勤交代を終え、地元に戻る際に兄嫁の父、小池越中守が同行したりと、貧乏神が現れたりと、ファンキーな内容ながら面白い。
    この後どう展開するのか、続きが気になる。

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    2025年10月18日
  • 一路 (上)

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    BS時代劇で見て以来、読むつもりで手に入れて、ずっと積読だった本を満を持して読破。
    途中整然とした参勤行列に驚嘆する場面が出るが、その理由がなかなか出てこないのでやきもきした。「浅田次郎で?いやまさかそんな……」と心配していたが、きちんと回収してくれたので安心した。
    上下巻なので前半である本作はのんびり気味。でも転は本作の中にあり、今後どうなるのか期待させる内容。参勤行列の威容を思い起こさせる文体はゾクゾクするほどで、読んでいて清々しい。後半も楽しみ。

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    2025年10月07日
  • オー・マイ・ガアッ!

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    分厚さにも関わらず、ページを捲る手が止まらない、楽しい作品でした。
    舞台となっているラスベガスへの興味と、恐れとがないまぜになり、不思議な気分です。一生に一回は行ってみた行けれど、それで何かが変わってしまうかもしれない、みたいな笑

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    2025年10月01日
  • 壬生義士伝(上)

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    ちょうど新選組熱が高まっているタイミングで読んだこともあり、なんとも感慨深く読み進めた。下巻でどんな展開が待っているのか、楽しみなような怖いような。

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    2025年09月30日
  • 降霊会の夜

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    この本を読んでる途中で、蒼穹の昴を書いた浅田次郎さんか〜と感慨深く思いました
    文章めっちゃ上手くて、子供時代の回想がお金持ちのちょっとスレた子供感出てた。正直、今まで読んだ子供の文章の中ではピカイチかもしれない。キヨとの関係も切なくて泣いちゃいましたなぁ…
    大学生時代で出てくる真澄さんも切ないキャラで、ゆうちゃんのことが好きなのにそれを言い出せなくて、ボロボロになっちゃって、死んじゃって…
    全体を通して、主人公含め男の人に肩入れする表現が多いように思った。女の人は、彼氏なり旦那なりに甘くて依存してるみたいな感じ?時代背景もあると思うので仕方ない部分もあるけど、真澄さんとか、もっと男の人がいなくても生きていける女性だったんじゃないかとか思ったり…
    まぁこれは、私の女性にこうあって欲しいという願望かもしれないけど。
    兎にも角にも、エピソードも文体も表現もとても良い作家さんですので、是非他の作品も読みたいと思います。

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    2025年09月26日
  • アジフライの正しい食べ方

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    どのお話も面白く、クスッと笑える。
    特に覚えているのは、ロンドンのホテルでのエピソード。そのビッグスターには、あまり興味がなかったのかな?と思った。

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    2025年09月21日
  • 長く高い壁 The Great Wall

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    ネタバレ

    1938年、中国へ進軍していた日本軍の一部小隊で、兵士10名が死亡する事件が発生する。調査のために現地を訪れたのは、探偵小説作家と日本軍の中尉。彼らは生き残った兵士や、中国人の医者、料理屋の主人など、事件に関わる可能性のある人物たちへ次々とインタビューを行い、真相を追っていく。

    物語は一見するとミステリー小説のような雰囲気で進むが、結末に至ると「推理劇」というよりも、むしろ戦争そのものが人を狂わせていく過程が描かれていたのだと気づかされる。

    読後には「なるほどね」と言いたくなるような、少し掴みどころのない感覚が残る。ただ、それは決して悪い意味ではなく、不思議と納得感を伴う余韻として残る読書体験だった。

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    2025年09月20日
  • 壬生義士伝(上)

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    壬生義士伝上巻。かつて新選組に所属していた吉村貫一郎の生涯を追っていく物語。新選組といえば近藤、土方、沖田などのその名を轟かせた人物目線で語られることが多い中、吉村貫一郎という世間的にはあまり知れ渡っていない人物を通して描かれる新選組に関心を持ちました。

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    2025年09月13日
  • 母の待つ里(新潮文庫)

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    衝撃の設定に思わぬ結末 登場人物が本当にいるかと思うくらいのリアルな描写と、意外なのになんだかありそうな設定。こんな内容を思いついたことも、生々しく書けることも才能だなぁとしみじみ感じた。

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    2026年01月12日
  • おもかげ

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    んなんちゅー話やー!(すごくいい意味で)
    なるほど、こう繋がるのかと最終章で理解し、心がとても暖かくなりました。ぜひ読んでほしい。

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    2025年09月10日
  • 鉄道員(ぽっぽや)

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    あなたに起こる やさしい奇蹟
    有名な小説なのに、いまさら読みました
    どの物語もこころが暖まる、そして大切な人に会いたくなるものばかり
    「うらぼんえ」が一番好きでした
    おじいちゃんに会いたくなった

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    2025年09月02日
  • 蒼穹の昴(2)

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    西太后と皇帝側の二極権力になっているけれど本当の二人の姿は母子同士愛し合っている、春児の言葉に納得した。

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    2025年08月26日
  • 壬生義士伝(下)

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    ゆきさんのpostに惹かれて、audibleにて♪
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    愛する者のために人を斬る―
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    激動の幕末の時代に “人斬り貫一"と言われ恐れられた男がいた。
    新撰組 吉村貫一郎、その人である。
    彼はなぜ新撰組に入隊したのか?何のために人を斬るのか?
    "義"を貫いた、貫一郎とその息子である嘉一郎の生き様を描いた物語。
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    久々の時代小説だったけど、やっぱり時代物はどっぷりハマる〜
    泣けた〜(T^T)
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    形式としては 以前読んだ「木挽町のあだ討ち」の様な感じ。
    貫一郎の死後 時を経て、誰かがいろんな人に貫一郎とはどんな人物だったか聞き歩く、といったのもの。
    1人聞き終わる毎に貫一郎の人物像が浮かび上がってくる構成。
    ⁡
    実在した人物だったみたいだけど、吉村貫一郎という人の名前すら知らなかった。
    生とお金に異様に執着した貫一郎だったが、実は家族を心から愛した誰よりも強くて優しい男だった。
    そしてその血を受け継いだ嘉一郎もまた 優しい誠実な男だった。
    ⁡
    少し語りが長いな〜と思うところもあったけど、幕末の動乱の時代、悲しくも武士として生きた貫一郎と嘉一郎の生き様に涙した。
    そして大野次郎右衛門の手紙に泣いた。。
    この時代があってこそ 今に繋がるのだなぁ。
    貫一郎の娘と末息子が その後幸せに暮らせて良かった。
    ⁡
    ただ、この聞き手は誰なんだろうと思いながら読んでいたのに、そこは最後まで分からずじまいで
    肩透かし!笑( ºΔº )
    浅田さんとしては 物語の主旨はそこではなかったんだろうけど なんだかちょっとモヤモヤ〜笑(°○°...)
    ⁡

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    2025年08月22日
  • 鉄道員(ぽっぽや)

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    ちょうど良い分量で、温かく、久しぶりにゆったりした時間を過ごすことができました。描写が丁寧で美しい。人物の所作や言葉、さらっと書かれる一行にぐっと魅せられるものがあって、本当に贅沢な短編集です。

    個人的には、この時期に読む「うらぼんえ」が特に良かったです。

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    2025年08月20日
  • 鉄道員(ぽっぽや)

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    さらっと読めた。
    読みやすかった。
    涙までは出なかった。

    「角筈」が1番よかった。
    一緒にいられない父の子供を思う気持ちに切なさを感じた。

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    2025年08月15日
  • 蒼穹の昴(2)

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    春児の運命がいよいよ大きく動き出す二巻。元々頭もいいし、真面目で人のために尽くせる優しい春児だから、色々な人に愛されて出世していく様が、読んでいて爽快というか、自分のことのように嬉しくなる
    そしていよいよ西太后も登場。稀代の悪女と謳われている西太后のイメージを覆してくるのがまた面白い。この夏で最後まで読み進めたい。

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    2025年08月14日
  • 輪違屋糸里(下)

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    お梅も吉栄も糸里もおまさもお勝もみんな強い。
    上巻では京言葉に慣れなくてなかなか物語の中に立てなかったけど、上巻のラストが衝撃だったからか、下巻は集中できた。
    浅田次郎さんは、その時どう思ったかなど、良い意味で細かく描いてくれるからしっかり読むと読んだ甲斐があるのがいい。

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    2025年08月14日
  • アジフライの正しい食べ方

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    かつて読書は娯楽であった。書物から知識を得ようとせず読書を楽しんでいた。
    一巻を読むのに4時間や5時間はかかる読書は社会の速度にあわなくなった。
    読書は娯楽でなくなり学問に堕落した。1に花。2に書物。3に食事。

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    2025年08月03日