浅田次郎のレビュー一覧
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浅田次郎さんの作品らしい7つの短編集。
ヤクザ、中国人、不器用な男や女が登場し、男と女の関係がまずある。
帯の題にもなっている「月のしずく」が一番だったかな。
美人で次々と男を替えるような女性リエが、金持ちで妻帯者の男性と関係を結び、赤ん坊が出来る。
当然の展開で、結局ケンカ別れになるが、たまたまその場面に出くわしたのが、中年の労務者辰夫。
女性を介抱し小汚ない自分の家に泊めてあげるが、それまで彼女と関係を持った男とは異なり、女性のことを考えて手を出さない。
彼女にとっては新鮮で、心が通うようにもなるが……。
不器用な男の辰夫は、実にいい味を出している。
彼女と関係を結ぶ男性とは真逆だ。
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Posted by ブクログ
蒼穹の昴①~④を読んで
時代は他国から侵略され続け、過酷な状況を抱えた清国。西太后が実質の政権を握っていた。
「春児、汝は必ずや、あまねく天下の財宝を手中に収むるであろう。」
「文秀、汝は学問をみがき知をひろめ、もって天下の政を司ることになろう。」
占い師(白太太)のお告げを信じ、その道へ向かってひた走る文秀と春児。その真っすぐな気持ちと勇敢な姿に応援したくなる気持ちがこみ上げてきた。
春児は健気で愛くるしく、様々な人々から愛され、ついには西太后の目に留まる。
しかし、そのお告げは真実ではなく、夢であると本人は分かっていた。
文秀は、試験に合格し皇上にお仕えする立場まで上り -
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明治元年、御一新直後の東京で大火が出た/ 小伝馬町の牢屋敷は囚人を解き放ち、消火後の帰参を待つ/ そこにおいそれと放てない事情を抱えた三人/ 親分に売られ身代わりに収監された深川一帯の大博徒、大政奉還後も官軍を斬って回った辻斬りの旗本次男、奉行所の悪事を知り尽くした夜鷹の元締め/ 珍妃の井戸よろしく浅田次郎らしいインタビュー形式/ 徐々に明らかになっていく火事のあと幾晩かの出来事/ めちゃくちゃ面白いし、東京に住むものとして東東京の当時の状況が非常に興味深い/ 合羽橋が新堀川の暗渠だなんて知らなかったし、浅草寺の東側が火除け地で飲食店は勝手に出されてあたりが繁華になったなんてのも知らなかった/
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新選組隊士たちの姿を彼らに近い女性たちの視点を中心に語らせながら(特に壬生の八木家のおまさ、前川家のお勝が多い)芹沢鴨暗殺の騒動を描く。
上巻で隊士のルーツや背景などを永倉に語らせているのだが、新選組初心者がいちいち躓き調べながら読んだのでめちゃくちゃ時間がかかってしまい。しかも史実と比べたりしてしまったのでとてもドラマティックなのにのめり込むようには読めなかったのが残念。
八木家のおまさがけっこう好きなキャラクターだった。糸里をタイトルにしている割には出番が少ないような…芹沢はどうにかならんのか(良い方に)?ばかり考えながら読んでいた。
シラフ時は侍然としているが酒が入れば乱暴者の姿。人斬り -
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一番印象が強かったのは、旗本の番頭頭、小池越中守の塩引鮭への恋焦がれ。和泉守の兄の岳父となった経緯から、越後丹生山に同行。
面白可笑しい文章だけど、下卑た処がない。不思議な品がある。こういう文を浅田先生以上に書ける人がいるだろうか。
その他の登場人物では異母兄のきさぶ様、異父兄の平家琵琶の名手の正心坊、大黒屋、鴻池、仙藤たちの商人たち、配下の武士たち、その他諸々。
25万両の借財はそうは簡単に片付かないだろうと思ったが、まあチョッと荒業かな。
七福神、貧乏神、死神も結構、内実を露わにしてたけど、映画でもこの神様たちも登場するのかしら。
やっぱり、ときどきは浅田先生の文に触れないとね。