浅田次郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
流人道中記・下巻。
青山玄蕃という人間の思想の高潔さ、というものに打ちのめされる下巻。ただ彼のそれは、武士道への反感や格差社会への諦念、といった鬱屈した部分が大きく作用したように思えます。その暗い気質を抱えながら、その上であの境地に至ったということが、高潔であると思うのも事実。
その一方で、理想を貫くことを選び、世間への反骨を示すことで、失わなくてもよいものを失ってしまうことになった、という一面もあるのが一滴の染みになってしまっているのか、とも思う。家族・家臣たちへ残したものが、それ。
玄蕃の生き様を見た乙次郎。彼がこの先の人生において、どんな行状を取るのか。怒涛の幕末、これまでの幕藩体制が崩壊し、価値観が一変する時代の中で、何を思い何を抱え何を支えとして生きてゆくのか。
最後、言葉を交わさずに別れた二人の間にあった、渡された残されたものがなんであったのか。それは、今後の乙次郎が人生を賭して表現してゆくしかないわけで。
それを見ることのできない「流人道中記」の終幕の仕方は、甚だ卑怯だと思います。
答えは与えられるものでなく、自ら見出すものである、と言われればそれまでですが、覚悟を持って幕末を生き抜いてゆくであろう乙次郎の姿を見たいという望みは、卑怯でしょうか。