浅田次郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
3巻。新たな登場人物がたくさん出てきて物語を追うのに必死です。
蒼穹ではただの面白キャラかなと思ってた戴沢殿下が案外真面目に国の行く末を案じている人で意外だった。ミセスチャンこと寿安との対話が物悲しくて、印象的だった。
日本で暮らす文秀のもとへやってきた蒋介石。教科書で見た名前だ。何した人なのかは覚えてないけど。きっと小説オリジナルのキャラクターと史実の人物をうまく混ぜて物語を作ってるんだろうなぁ。
アヘン窟にて珍妃の井戸に出てきたプージュンが登場。順番に読んでてよかった。
張作霖はただの暴君にしか思えなくてで好きじゃなかったけど、子供と動物に優しいところはちょっと見直しました。
時代遅れの人物や物を「ロートル」というけど、それの語源が中国語の老人を表す「老頭児」という言葉だったのを初めて知った。勉強になります。
4巻に続く。 -
Posted by ブクログ
マイケルサンデルさんの「実力も運のうち 能力主義は正義か?」the tyranny of meritの小説版と言えなくもない。
人は生まれる時代も場所も親も何も選べず生まれてくる。
容貌も頭脳も身体能力も。
遺伝要因と環境要因以外に、意思など自由になる要因はあるのだろうか。
最初の起点である、生まれ出る要因のどこにも、主体としての意思がない以上、論理的には、木に竹を継ぐように、意思や自由が立ち上がるのは、やはり筋悪の議論と言わざるをえないのではないか。
また、社会に目を向けると、法、というものも社会、組織など集団に、一定の秩序をもたらすため、必要になることも分かる。
しかし、法など、それが議会制民主主義の下で定められようが、封建領主の下で定められようが、不完全、あるいはある局面においては有害なものにならざるをえない。
統治機構も、どれだけの頻度で最適化するのが適当かは分からないが、状況により見直すことが不可欠である。しかし、その機構の構成員は、どんな状況にあっても、機構の存続のため懸命の努力を行う。
結果、相当程度大きな不都合により、転覆されるまで、軋みを増しつつ続くことになる。
しかし、人が生きていくためには、意思や自由という虚構が必要であるとは思う。
礼、もその軸の一つであろう。
一人ひとりが、礼、美しさを希求し、軋みで損なわれてしまうものを、なんとか救い出そうとすることによって、人の世は住むに値するものになるのではないか、ということが著された作品だと思う。
論説文で積み上げる論理の力も重要だが、難しいことを書き連ねることなく、エッセンスを伝える、小説の力に改めて感じ入った。
解説に杏さんの文章があった。
なんだか若い子だけどいろいろ苦労があったように報じられた子だったか。
年号など気にせず読んだが、江戸幕府最後の数年が舞台だと解説。
杏さんが指摘する通り、そうしたことも踏まえると、登場人物のこれからが少しでも明るさを増すのではと期待できて、一層よい読後感を得ることができた。 -
Posted by ブクログ
2巻。蒼穹に出てきたキャラクターが次々と登場してきて面白くなってきました。
文秀と玲玲が日本で夫婦として暮らしていて、しかも子供まで生まれていて、その子供が復生(フーション)という玲玲の婚約者だったタンストンのあざなで呼ばれていたのが泣けた。
幽閉されている光緒帝と西太后が通信で会話するシーンに号泣。歴史に疎いのでどこまでが創作でどこまでが史実なのかはわからないけど、浅田次郎の描く西太后像はとても好きだ。愛情深くて強く美しい女性。春児の前でだけは子供みたいな素の顔を見せるところもチャーミングで可愛い。最初はただの暴君にしか思えなかったんだけどな。いつの間にか好きになってしまった。
そんな西太后がついに身罷る。そして歴史が動いていく。溥儀という聞いたことのある名前が出てきました。いわゆるラストエンペラーというやつ。この壮大な歴史ロマンに触れた感じ、歴史の話は難しいけど、やっぱり面白い!
2巻は他にも春児と蘭琴の対話など胸熱シーンがてんこ盛りでした。
西太后を失った清の国はどうなっていくのか。兄弟の再会はあるのか。蒼穹のラストで毛沢東に出会った王逸も今後登場してくるかな。王逸好きなので。楽しみです。
3巻に続く。 -
Posted by ブクログ
長らく積読になっていた蒼穹の昴の続編にやっと手を付けました。
蒼穹のラスト、文秀と玲玲が日本に亡命してからの続きかな?と思ったけど、1巻では文秀は出てこず、失踪した春児の兄李春雷(リチュンレイ)と、馬賊の長、白虎張(パイフーチャン)こと張作霖(チャンヅオリン)を主軸に物語が展開していきます。相変わらず読み方が難しいけど、改頁ごとにちゃんとフリガナ振ってくれてるから助かる。
春雷が幼い春児を置き去りにする回想シーンや文秀とのエピソードに胸が痛んだ。この後春児と春雷兄さんと玲玲の再会はあるのかな。あってほしいな。
馬賊の生きざまは粗野だけど一本気が通っててしびれます。
また、愛新覚羅家の太祖ヌルハチのエピソードが挿入されることで、今までぼんやりしてた漢族とか満州族とかその辺の民族のいざこざや中国という国の生い立ちが少しわかってきて、それを理解した上でもう一度蒼穹を読み返すとさらに楽しめそう。
2巻に続く。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ浅田次郎の短編集。
面白かったのは「夕映え天使」と「琥珀」でした。
「夕映え天使」
中年店主がほそぼそとやっている中華料理屋「昭和軒」。そこへ、住み込みで働きたいと女性がやってきて…
短い時間を共に過ごす。
「琥珀」
定年を目前に控え、三陸へひとり旅に出た警官。喫茶店へ入った際に見つけた店主は、時効まであと少しの殺人犯…。
ただし、大手柄を挙げたとしても、報告できる妻もなく。
「本当ならこの秘密をわかちあうであろうたった一人の連れ合いを失ってしまったのだと、米田はようやく気づいた」
歳をとること。人を愛すること。悲しみを描いた味わい深い短編集です。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ短編集であるのだが、表題作「獅子吼」「流離人」戦時中の話が刺さった。
「獅子吼」
動物園で飼われているライオンの心情が表される。動物の思いが中心となっているので意外な感じであったが、戦争に対する馬鹿馬鹿しさ、怒りが伝わってくる。
怒りの感情を滅す、という掟を死を前にして自らの矜持のため、対する人間のためだろうか破り吼える。
「恨み憎しみのかけらもない相手に、敵という名を付けて殺す戦争ではないか、その最中にある君が何をためらう」
人間を憐れむライオンの言葉が残る。
「流離人」
目的地を目指さず満州国を流浪する、桜井中佐。決して命令違反ではないと屁理屈のように言葉を返す。
この人もまた戦争を軍を馬鹿馬鹿しく感じている。それでも戦争からは逃げ切ろうと自ら迷子となり、沢村にもその道を薦める。
別れのとき、敬礼でなく帽子をとり頭を下げた中佐の思いは国の代わりに沢村に詫び、生き延びて欲しいという思いが切実と伝わる。そして死ぬなという最後の命令が終わりであって欲しい。
氏の戦時の物語は本当に戦争の愚かしさが伝わり考えさせられます。