浅田次郎のレビュー一覧
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浅田さんというと、「泣かせ」の名手というイメージがあった。本作を通して「笑わせ」の技倆も天下一品、軽妙洒脱な一面もあるのだな、と感心した。
時代小説が好きでよく読むが、何が楽しみかと言うと、やはり臨場感を味わえることだ。当時を生きた人々の思想や行動の背景を知り、世相を追体験し、「かつての日本」に没入できること。
本作にもやはりそのような臨場感があるのだが、今までにない「共感」も覚えた。
たとえば、主人公・一路の御供頭という役割。これは、いわゆるプロジェクトリーダーだと思う。スケジュールを組み、メンバーの進捗を管理し、対外的な交渉を担ったり、予期せぬトラブルに対処したりして、チームをゴールに導 -
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ネタバレ椿山和昭
百貨店の婦人服第一課の課長。四十六歳。取引先との会食中に脳溢血かクモ膜下出血で倒れる。戒名は昭光道成居士。死後に残された家族の今後や、自宅のローンを心配している。現世特別逆走措置で逆走が許可された。死後七日間のため、制限時間三日間だけ現生にもどる。
カズヤマ・ツバキ
和山椿。椿山和昭の逆走時の化身。三十九歳。職業はフリーのスタイリスト。
椿山由紀
椿山の妻で夫より一回り年下。三十四歳。同じ百貨店の案内嬢をしていた。結婚を機に退職。嶋田とは結婚前に付き合っていた。
椿山陽介
椿山の息子。小学生。病院にいる祖父の昭三とは仲が良い。祖父と歩いている時に泣いている蓮子を助ける。
三上 -
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武士の生き様、信念を感じられる物語。
玄蕃と乙次郎の道中記。
下巻です。
無罪の罪をかぶり、磔となる少年との出会い。
そして、敵討ちの結末は?
玄蕃の導いたこの落としどころはちょっと悲しい。
さらに、故郷の水が飲みたいと願う病状の女との出会い。
ここちょっと面白い!
変なお決まりがあったんですね。
旅も終盤になってきて、この旅を通して語られるのは、武家の辛さ、厳しさ。「礼」と「法」の意味。
そして、いよいよ、旅の最後で語られる玄蕃の罪の真実。
そこにあった玄蕃の武士としての矜持。
家と取り潰してまで貫いた玄蕃の信念。
これは、唸ります。
そして、最後、乙次郎との別れには、熱いものがこみ -
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武士の生き様、信念を感じられる物語。
玄蕃と乙次郎の道中記。
上巻では、
旗本の玄蕃は姦通の罪で切腹を言い渡されるも拒否!
え?切腹を拒否ってできるの?
結果、蝦夷松前藩へ流罪となります。
その玄蕃を押送することになったのが見習与力の乙次郎。
この二人の旅が始まります。
旅の初めに、乙次郎は部下?に裏切られ、口も態度も悪い玄蕃との凸凹コンビです。
そして、道中に出会った出来事。お尋ね者と賞金稼ぎ、女郎の事情から、一つの結論を出していく様は玄蕃の真の心が見え隠れします。
玄蕃は本当に罪人なのか?
さらに出会った仇討ちの旅を続ける侍。そして、偶然出会ったその仇。
その敵討ちに立ち会うこと -
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上巻が色鮮やかな料理が小さな器に盛りつけられて寿司詰めのように飾られた籠膳であるならば、下巻はうな重のように大きな器にでーんと大物を盛りつけたような感じ。下巻は道のりがあとわずかでありながら、これまでの問題点が一気に噴き出してくる、それを解決せねばならないため一つ一つがじっくりこってり書き込まれているので上巻のようなテンポよさはない、しかしながらこれまで垣間見せていた御殿様の本来の姿が顕現し、あれやこれやが一気に大団円。これぞ時代小説の粋である。
タイトルの一路という名を背負った御供頭の名の由来も明かされすべてがきれいに、それでいてまったくの爽快感でもなくしんみりとした御殿様の幕引き口上、星4 -
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太平洋戦争末期にアリューシャン列島の最先端部である根室から1000キロ、ソ連のカムチャッカ半島先端と目と鼻の先の占守島(シムシュとう)に取り残された戦車部隊の奮闘を描いた作品。ぜひ実写化して欲しい。
「終わらざる夏」は第11戦車連隊の顛末だけを描いた作品ではない。徴兵された元出版社勤務の45歳の老兵、缶詰工場に送られた女工達、上陸作戦に駆り出されたソ連兵、その後のシベリア強制労働など、さまざまな人の織り成すドラマ。
第11戦車連隊の兵士の目線と上陸部隊のソ連兵の目線と、両方から語られる。
心に響いたのはヤクザ者の萬吉が45歳老兵の子供(集団疎開中だが脱走)を助けるシーン。
浅田次郎は戦争の悲 -
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太平洋戦争末期にアリューシャン列島の最先端部である根室から1000キロ、ソ連のカムチャッカ半島先端と目と鼻の先の占守島(シムシュとう)に取り残された戦車部隊の奮闘を描いた作品。ぜひ実写化して欲しい。
「終わらざる夏」は第11戦車連隊の顛末だけを描いた作品ではない。徴兵された元出版社勤務の45歳の老兵、缶詰工場に送られた女工達、上陸作戦に駆り出されたソ連兵、その後のシベリア強制労働など、さまざまな人の織り成すドラマ。
第11戦車連隊の兵士の目線と上陸部隊のソ連兵の目線と、両方から語られる。
心に響いたのはヤクザ者の萬吉が45歳老兵の子供(集団疎開中だが脱走)を助けるシーン。
浅田次郎は戦争の悲 -
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旗本の流人と見習与力の押送人の道中記。
玄蕃の犯した罪はなかなか語られない。
道中に出会う色々な事情を抱えた人々への深慮と筋の通った振る舞いを見れば見るほど、聡明さと信念、透ける孤独に魅かれていく。
これだけの人が切腹を拒否した理由は単純ではないとわかりつつ、後半につれて語られる正体と罪をどこか知ってしまいたくない。知れば罪を撤回したくなるから。
信念を貫くのは簡単ではない。でもそれを玄蕃は選んだ。旅の中で玄蕃の生き様を見て生まれた乙次郎にとっての礼が新しい道の導になっていくのだろう。
歴史小説が苦手な私が浅田次郎さんの小説を好きな理由は人物が本当に魅力的な所。存分に味わいました。