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1938年秋。従軍作家として北京に派遣されていた探偵小説作家の小柳逸馬は、軍からの突然の要請で前線へ向かう。 検閲班長・川津中尉と赴いた先は、万里の長城・張飛嶺。 そこでは分隊10名が全員死亡、しかも戦死ではないらしいという不可解な事件が起きていた。 千人の大隊に見捨てられ、たった30人残された「ろくでなし」の小隊に何が起きたのか。 赤紙一枚で大義なき戦争に駆り出された理不尽のなかで、兵隊たちが探した”戦争の真実”を解き明かす、極限の人間ドラマ。
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Posted by ブクログ
日中戦争の最中、従軍作家として北京にいた流行探偵作家の小柳逸馬は、突然の要請で前線へ向かうことに。万里の長城、張飛嶺で待っていたのは、分隊10名全員死亡という大事件だった。
切ない感じ
なんだかやるせないお話でした。 浅田次郎作品が好きで読んでますが、他の作品とは違う読後感。 目の前に風景が浮かぶ描写はさすが。
#切ない
日本の軍人の致命的な性格を評した一節。規模の大小にかかわらず理想の戦果を特定しそれに向かって作戦を立案する癖。負の要素を想定せず希望的観測よってのみ戦争を遂行する。 これは日本人全てに言える事だ。コロナ対策に於いても、いつか収束する、という楽観が何処かに潜み対応が中途半端且つ後手になる。経済活動も...続きを読む然り。いずれかつての高度成長が戻るという根拠のない希望的観測により20年もの歳月が空虚に費やされた。 我が身にも常に肝に銘じておきたい一節なり。
中国を舞台にした「戦場ミステリー」。 浅田センセは、軍隊・自衛隊の現場の空気を描かせたら秀逸だなぁ。 最終的にどこに落ち着くのかと思ったら、ラストはなんだか救われた気がする。
R5.12.16~12.30 (きっかけ) 奥さんが買ってきた (感想) タイトルと表紙絵をみて、日中戦争モノか。 と思って読めば…日中戦争を舞台としたミステリー風という挑戦的な一作でした。 ただ、昨今の浅田さんの作品の感想にはいつも書いている気がしますが、設定は面白いだけに、ちょっと「これどう...続きを読むだ、面白いだろう?」みたいな押しつけがましさを感じるのは私だけでしょうか。 個人的にはミステリ風にせずにそのままのストーリーでドラマ仕立てにしてもいいのかなと思いました。
日中戦争のさ中、万里の長城・張飛嶺でみつかった10名の兵士たちの死体。これは戦死ではなく殺人。やがて明らかになる真実に、作者が描いたものはトリックではなく、嘘で塗り固められた戦争の姿だと気づきました。
日中戦争を舞台としたミステリー。従軍作家として北京に滞在していた売れっ子推理作家に下されたのは万里の長城で起きた事件の調査。 関係者への聞き込みを進める際に、それぞれの軍関係者の一人称視点で語られる。事件の解き明かし自体は大したことはなく、事件の真相も安直すぎる。 ただし、大正の軍縮時代と昭和初...続きを読む期に入ってからの大陸での戦争遂行状態で兵役というものが全く異なっていたこと、それに伴って世代によって兵隊の資質が異なっていたことを知れたのは収穫。 また、士官学校出身の将校と、兵卒からのたたき上げの下士官の関係性を描いた作品は数あれど、最初の兵役満了後に一般社会人として生活をしたあと、予備役招集で再び大陸に送られた当時の日本人男性たちの姿の描写はリアルだった。このまま坂を転がり落ちるように太平洋戦争が始まり何百万人もの普通の男たちが戦争に絡め取られていく未来があったことが悲しい。 一方で、日本軍、国民党軍、共産党軍が群雄割拠している状況にあっても中国の来週、それも食生活が豊かであったという描写は興味深い。
実力・実績の著者ならではの、情景描写のクオリティだが、結城昌治の戦争小説の名作「軍旗はためく下に」の劣化版コピー作品と評価されてもしょうがない作品。少し残念であった。
満州時代の万里の長城を舞台に起きた殺人事件のお話。 軍人と従軍作家の立場から、必ずしも本音が言えないという時代背景と、真実を解き明かさなければいけない正義感の狭間にいる主人公達。 浅田先生の小説は非常に面白いのですが、設定の深いところをもっと知りたくなってしまう。 蒼穹の昴や中原の虹あたりの話も見え...続きを読む隠れして、繋がりがあるのが面白い。
『長く高い壁』(浅田次郎著)は、戦争という極限の現実を背景に、人間という存在の尊厳と愚かさ、そのどちらもを静かに照らし出す傑作である。物語の舞台は1938年、中国北部の前線。国家の名のもとに動かされる兵士たち、そしてその中で起こる一件の“不可解な死”。浅田次郎は、この謎を糸口に、戦場という場所がいか...続きを読むに人の心を侵食し、同時に人間の本質を露わにしていくかを見事に描き出している。 本作の魅力は、単なるミステリーの枠を超えている点にある。真実を追う物語でありながら、読者が辿るのは「事件の解決」ではなく「人間の理解」へと至る道である。そこには、善悪の単純な区別を拒む、深い人間観が息づいている。軍隊という組織の中で、個の意志が押しつぶされ、理性と信念がせめぎ合う姿は、戦争文学でありながらも現代社会にも通じる普遍性を帯びている。 そして、浅田次郎特有の筆致――冷徹でありながらも、最後に必ず人の温もりを残す文章が、この作品をただの悲劇に終わらせない。 「長く高い壁」とは、国家と個人の間に立ちはだかる壁であり、人の心が越えようとしながらも越えきれぬ壁でもある。読後には、重くも澄んだ静寂が胸に残り、人間という存在の奥行きを改めて思い知らされる。
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長く高い壁 The Great Wall
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浅田次郎
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