浅田次郎のレビュー一覧
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ネタバレどんどん面白くなってきた。
それぞれの立場で見る戦争が描かれていて、誰も望んでいないことがよくわかる描写が切ない。
なのに突き進むしかなかった。
そして今、ようやく終わりが見えてきて、さてどうなるというところで下巻へ続く。
第二次世界大戦時の日本は、ずっと去勢を張っていたのだろう。
そして日本中の誰もが、みんな表面と心を分離して過ごしていたのだろう。
教科書で日本史の事象だけを学ぶと、この時代は異常だな、洗脳だったのだろうかと思うこともあったけれど、やはり心の内は自分を保ち、人として悲しみながら生きていたのだろうなだと思うとやりきれない。。
死を身近に感じながら生きていく必要がある上に、表現を制限される辛さ、想像するだけで苦しい。 -
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プリズンホテル二作目。
一作目同様に非常に面白いです。
導入部分がなかった分、一作目よりストーリーそのものを楽しむことができました。
御存知やくざによる、やくざのためのホテルプリズンホテル。
今回はひょんなことから警察一同が慰労会でプリズンホテルに泊まることに。当然のことながらやくざ御一行もいるわけで。
そりゃあもう荒れることが必至な設定なわけで。
予想通りやくざと警察はもめにもめるんですが、最後はすごく気持ちよく終わります。
本作は警察とやくざのストーリーをメインに進むんですが、同時平行するストーリーの登場人物もすごく魅力的です。悲しくも、温かい。
売れなくなったアイドル歌手。主人公の愛人の娘。指名手配犯。
どれも芯の通った愛を貫く、到底真似できない強い人達。
そんな登場人物に温かい気持ちをもらう、そんな悲しくも素敵な物語。
三作目も楽しみです。 -
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ネタバレ2021年11月20日(土)にジュンク堂書店 三宮駅前店で購入。11月22日(月)に読み始め、24日(水)に読み終える。
浅田次郎の作品を読むのは、『壬生義士伝』『地下鉄に乗って』に次いで3作目(だと思う)。泣かせるような話ではなかったけど、とてもよかった。
何かに関わるとか、その原因になるとはどういうことなのか、特に最後の部分で考えさせられる。
涮羊肉(シュワンヤンロウ)を食べたくなる。
59ページに「長く高い壁である。」
244ページに秋口に採れたきのこもまだたっぷりとありますと。
【以下、再読記録】
2025年1月22日(水)に再読を始め、2月24日(月・祝)に読み終える。2月24日の第54回文学カフェのため。1回目に読んだときほどの衝撃はなく、星3つとしたけど、いい作品。
2・26事件(1936年2月26日)が物語の背景にあって、2月24日に文学カフェでこの作品について話ができたのには、なかなか感慨深いものがあった。
22章と24章の視点はほかの章と比べてやや特異。賛否両論あろうかと思う。
老陳を山村大尉が殺したことについては、どうしてもしっくりこないところ。
■1938年当時における軍隊の階級(巻頭より)
===将校ここから===
将官
大将、中将、少将
佐官
大佐、中佐、少佐
尉官
大尉、中尉、少尉
===将校ここまで===
准士官
准尉
下士官
曹長、軍曹、伍長
兵卒
上等兵、一等兵、二等兵
■旧制の教育制度
1938年当時の義務教育は尋常小学校(6年)まで。尋常小学校を卒業したあと高等小学校(2年)に進学して就職するか、尋常小学校のあと旧制中学校(5年)に進学して就職する。旧制中学卒業は当時としてはエリートだが(本作で言えば山村大尉)、さらに旧制高校(3年)に進学して帝国大学(4年)を卒業するのは成績上位0.5%ほどで、トップエリート(本作で言えば川津中尉)。
ちなみに、川津中尉は高文試験(高等文官試験)に落第し、出版社の入社試験も通らず(18頁)、甲幹の将校(33頁)という設定。小柳逸馬は高等小学校卒(271頁)で小説家になったという設定。
■軍隊組織
大隊、中隊、小隊(3分隊で30人)、分隊(10人)
■時代背景
最初に「1938年当時における軍隊の階級」が付されていることや、「つい先ごろ、支那の戦線にある下士官が、みごと芥川賞を受賞したという事実も」(20頁)という記述から(これは1937年下半期の火野葦平『糞尿譚』と思われる)時代背景は1938年のことだろう、と思って読み進めると、事件は本文の記述から1938年11月初旬のことだとわかる(298頁)。事件の時点で10月27日に武漢が陥落したという情報を山村は得ている(311頁)。
当時の貨幣価値について、ChatGPT o1に1938年当時の1円が現在(2020年代で計算しているもよう)の貨幣価値でどれぐらいになるのか推測させたところ、CPIを基にした推計で数百円~数千円程度、賃金水準を基にした推計で1円あたり3,000円前後になるケースが多いとのことだった。
■舞台
北京と司馬台長城(作中では長城の張飛嶺という架空の場所)
■内容
50頁、高粱飯(コーリャンめし)を食ってみたいな。
山村大尉も支那語ができるところがミソだろうか、と思っていたら182頁で尋問のあとに山村大尉がめしを食いに行く(と描写されている)場面があり、示唆的。
234頁、涮羊肉(シュアンヤンロウ/シュワンヤンロウ)
ところで、津山30人殺しも1938年に起きた事件。犯人の都井睦雄は、1937年5月22日に徴兵検査で丙種合格になったことがきっかけで人間関係がこじれていき、1938年5月21日未明に事件を起こしている。 -
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浅田次郎が描く戦争にまつわる短編集。
と、いっても派手なドンパチは出てこない。
舞台は終戦直後の闇市であったり、作戦中のひと時であったりするが、どの主人公も人には決して言えないような悲しみを抱えて生きるまたは死ぬ様子を描いている。
生きるか死ぬかという瀬戸際になると、愛する妻子や好いた女性が出てくる。
現代の世の中では、恋愛や結婚はエンターテイメントか合理的判断の対象になっているが、本当はそんなものではないのかもしれない。
もちろんフィクションの話ではあるが、戦争は本当に悲惨で最中も終わった後も死ぬよりも生きることが難しい日々をもたらす。
平和が当たり前になっている現代でもやるせなさや苦しみはあるのだが、過去にこういう時代を生きた人々がいて、それはそれほど遠い話ではないという事を覚えておきたい。
そして生きるという事をもっと大きな枠組みで考えていきたい。
そんな事を思った良い作品でした。