浅田次郎のレビュー一覧
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愛と涙の六短編。
私にとってハズレのない浅田次郎さんの、切なさの残るストーリー。
忘れっぽい自分が、この先忘れることはないだろうなと思うのは、最初の「あじさい心中」の二人。
リストラされたカメラマンと、廃れた温泉街で働くストリッパー。初対面の二人が心中を決意する、そんなまさかの展開を受け入れる自分がいることに驚く。そうさせる著者の筆力にも脱帽。
哀しみの淵にたどり着いた人の言葉は重く、その決断は強い。
架空の人物だけど、同じような境遇の人がいることに想いを馳せて、その人たちの幸せを、自分のそれとともに願いたくなる、そんなお話でした。読めてよかった。 -
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今巻の主な視点は、溥儀と張学良。
溥儀は清の復辟を成すため、日本が作った満州国の執政に就任。そのまま、満州国皇帝を目指す。
溥儀は孤独の概念を知らず、孤独を感じることはないとの独白があるが、彼の感じる感情の多くは孤独そのものである。
張学良は蒋介石に実権を渡した後、ヨーロッパに身を移すが、外から見た中国を感じながら、最終的には再度、中国に戻ることを決意。
張学良は、難しい政局の中で逃走を余儀なくされるが、世間からは様々な非難や憶測を呼んでおり、これもまた孤独である。
激動する社会に取り残されたり、巻き込まれたりした人々の各々の人生が翻弄される。
前まで物語の途中、毛沢東の名前が出、天命のの具体 -
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全体の印象としてはジワジワと進展する印象。
「馬賊の唄」に馬賊の鄭が云う。「どうして日本人は、俺もおまえもと誘い合ってやってくるのだ。生まれ育った祖国に住み飽きるとは、どういうことだ。そして、もうひとつー」「中国人は、日本人を待ってなどいない」
満州国の出鱈目にはこの言葉で十分だな。
永田、石原の対談は痺れるシーンだけど、この後の歴史を考えるとウンザリ。
中国に戻った張学良。迎える宋字文や杜月笙が頼もしい。刺客来襲のシーンは映画のよう。まだ前哨戦で盛り上がるのはこの後だろう。
志津が想定する満州国の財政。チラッと不思議に思っていたことだけど、こんな非道いことがされていたのか。
最後は -
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満州国に執政として捕われた溥儀と欧州で目的のない日々を暮らす張学良が交互に語られる。それぞれにどうにもならない不幸な境遇。
満州の唯一の希望だった武藤将軍は暗殺(?)により舞台を去る。判っていることとは言え暗澹とする。
中盤で登場する袁金鎧。以前、袁世凱に名が似ていると書かれていた小物。こういう人物にしっかり焦点を当てるのもこの大河物語の面白さかな。
甘粕の主催したオーディションに登場した少年の歌うジャズ。時代のあだ花だと思うけれど、東洋のハリウッドやパリを現出させる夢には魅かれるものがある。
しかし、その後の愚直な軍人は「三人の悪人」の退官自衛官を思い出させるが、(引用)どうして軍人は謀