浅田次郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
中国清朝末期を描いた歴史小説の最終巻。貧しい少年と、誰からも期待されていなかった名家の青年。それぞれの個人の成り上がりの物語から始まり、そこから少しずつ世界を揺るがす歴史のうねりの物語へと変わっていく。
スケールの大きさにも引き込まれたし、国内外の様々な思惑が入り乱れる政治ドラマ、権力闘争の模様にも引き込まれました。当時の歴史的背景についての予備知識はまったくなかったけど、それでもどんどん読み進めていけたのは、歴史の流れだけでなく登場人物の行動や言動、思惑でストーリーを引っ張っていく語り口のうまさがあったように思います。
時の大帝、西太后に仕え女王個人の立場や王宮内部の人々をおもんばかりながら、事態を見守る春児。役人となり国や将来への憂いから行動を起こす文秀。
そういった個人の視点だけでなく、西太后や光緒帝といった権力者側の視点や、日本の新聞記者をはじめとした各国のジャーナリストたちに伊藤博文も登場するなど、国内外問わず、身分や立場も問わず多くの登場人物が登場します。しかしそれに負けない物語の吸引力がありました。
時代背景に詳しければ、史実通り登場する人物たちの書きっぷりをより楽しめたのかな、と思いますが、分からなくても十二分にストーリーに引き込まれました。
最終巻は特に歴史の大きなうねりが、物語を読んでいる自分の体中に響いているように思いました。西太后の襲撃事件から始まり、改革派によるクーデター。そこから一気に結末まで話は突き進む。
様々な登場人物たちの思いを飲み込むおおいなるうねりに、歴史の残酷さや無情さを感じつつも、一方で個人の思いにも寄り添う語りや、視点の切り替えが本当に巧みでした。全4巻を読んでいると言葉にできない様々な思いが去来してきます。
1巻の感想でも書いたけど、少年マンガのような展開やキャラの魅力がありつつも、一方で国内外の権力闘争を色濃く描き、そして歴史のうねりも描ききる。本当に濃密な読書体験ができたと思います! -
Posted by ブクログ
第三巻に入り物語のスケールがかなり大きくなりました。
これまで主に清国内から語られてきたストーリーですが、この巻あたりから日本人やアメリカ人ジャーナリストが登場します。それによってアヘン戦争以降、列強の脅威にさらされる清の姿というものが、外の視点からも描かれていきます。
海外の脅威にさらされる一方、宮中内の政争もより苛烈さを増していく。これまでの中心人物だった春児や文秀の出番が減ってしまったのが少し寂しくはあったのですが、陰謀渦巻く国内・国外政治のドラマはまた違った読み応えを与えてくれました。
歴史のうねりの中で、登場人物たちが時には自分たちの立場や勢力拡大、あるいは保身のために、あるいは理想や夢を持ち、それを人に託し、あるいはただただ純粋に人と国を憂い祈る。様々な思いが交差し描かれていきます。
大枠としてはこの巻は歴史・政治の陰謀、策略の要素が強かったと思うけど、要所要所でこうした清濁合わせた人の思いが描かれ、言葉が紡がれ、それによってストーリーが単にドロドロとしたものだけでは終わらないのが、印象として良かったです。
歴史物だとストーリーが歴史をたどるだけに終わってしまう印象になるものもあるけれど、この蒼穹の昴の3巻はそれを感じませんでした。そこもまた作品の引力や浅田次郎さんのストーリーテラーっぷりが現れていると思います。 -
Posted by ブクログ
蒼穹の昴の第二巻。
この巻では西太后の姿が印象的だった。前巻でちらっと出た感じでは、権威ある強大な女帝という感じ。さらに歴史上のイメージも相まってとんでもない悪女という印象があったのだけど、蒼穹の昴での人前で見せない彼女の姿はその印象ががらりと変わる。
話し言葉が普通に女の子っぽかったというのもあると思うけど、国を背負う重圧に押しつぶされそうになる弱さや、混沌とした状態のままで国を愛しい甥に任せたくない、という情愛の思いであるとか、そうした部分が等身大に描かれていて、女帝の人間らしさが描かれます。
表の強い女帝の姿と、裏の普通の女性っぽさ。その相反する二面性が、彼女を魅力的に描きます。
熱くなるシーンでいうと宦官を志す春児が、鍛錬の日々の中で師匠から教えを受け継ぎ舞台にあがるシーンが格好よかった! この作品は宝塚で舞台化されているそうだけど、舞台で見たらめちゃくちゃ映えるだろうな、とつい想像してしまう。
あとは春児の運命を変えるお告げをした白太太が、お告げに関してのある真実を述べる場面も捨てがたい。人間の可能性や強さを感じさせ、感慨深くなるいい場面でした。
ストーリー的にはこの巻から宮中や国際政治が絡んできて、シリアスさが増してくるのだけど、春児の運命が語られる場面はどことなく王道の少年マンガの雰囲気を思い出させ、どこか懐かしい気持ちにもなりました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ列強諸国に蹂躙される間際の斜陽の清朝時代の中国で、抗いがたい大きな時代の流れになすがままにはされるまいと踏ん張った人々の物語。糞拾いの春児は万に一つも裕福になる可能性のない運命を自らの手で掴みとった。文秀は皇帝を、ひいては中国という国全体を正しい道に導くために全力で奔走した。結果として2人が迎えた結末は、2人が目指した白太太のお告げのそのままとはいかなかったかもしれない。しかしそこには天命なんてものを凌駕する人間の力というものが働いていたと思う。また、個人的にもう一人の主人公だと思っていたジュゼッペ・カスティリオーネが偉大なるヴェネチアンという身分を捨て、郎世寧として西洋のバロックの芸術家も到達し得なかった「青」に到達したことが、誇らしかった。貧しい人々や苦しい人々の心を救う絵を描きたいと言って中国へと渡ったカスティリオーネの描いた絵画や、生み出したガラス工芸が何百年の時を経て、蒼穹の昴として春児や西太后をはじめとした中国の人々の心を救ったとき、人間の力は天の力をも超えるのだと思えた。岡やトムをはじめとする諸外国の記者団や、変法のために自らの命を捨てた順桂なども、その一人一人の働きは微々たるものかもしれない。しかし、作中で岡が演説したように、彼ら一人一人の行為は何ひとつ歴史を変えることが出来ないかもしれないが、彼らは確実に、あの時あの瞬間に歴史に「参加」していた。ただ時代の激流に流され、清朝が倒れていく様を傍観しているのではなく、自らの頭で考え、自らの足で行動を起こした。そうした積み重ねが未来を変えるのだと、今の私たちにとっても、身につまされるようなメッセージを受け取った。
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Posted by ブクログ
蒼穹の昴から読んでるものにとって、まさにこのチクルスが最終巻でよいかも。梁文秀と春児と玲玲の終着点。満州国皇帝溥儀を廻り、万感の想いで締めくくられるラスト。彼らをずっと読んできた読者にとってはもうこれ以上の物語はいらない最高の締めくくりだった。
只、歴史はここからが面白くなるところ。
次の兵諫は、226事件と西安事件。
シリーズがこの先どうなるかわからないけど、毛沢東、周恩来が中心となるわけで、我々と同じ時代を生きた人たちの物語がどうなるのか、興味は尽きない。
本流シリーズがいつ出るか情報を知らないけど、行けるところまで読み継いでいきたい。 -
Posted by ブクログ
今回も面白かった!シリーズを重ねる毎に読みやすくなってるって感じてたんだけど、それは物語が現代に近づいてきてるからなのかも。カフェとか段々知ってる言葉が多く出てきてる気がした。
天切り松さんが仕事した描写って今まであんまない気がしたんだけど、今回やっと出てきました!狙った人2人とも起きてたけどね。笑
なんだか天切り松の新人時代を見ているようで、頑張れってなりました。
それにしても相沢中佐の話は、読んでて何とも言えない感情になりました。松蔵と同じように「神を信ずることの幸か不幸」を考えさせられる話でした。奥さんへの愛情表現が下手だけれど、ちゃんと愛してたのが伝わる相沢さん。奥さんを苦しめることになるから、人を殺さなければいいのにって思うけれど、それが本人の思う正義なんだからしかたない。
そして「王妃のワルツ」が好きでした。黄不動の栄治もかっこいい人だったのか!今まで出てきてたけど、そんなに心に残ってなかったみたいです。ファンクラブが出来るほどかっこいいのか!顔を見てみたくなりました。
でも何よりも1人のひとを愛した殿下が1番かっこよかった!結婚するならそういう人とするのが幸せだと思いました。津村さんはチャラチャラしてないで、見習って欲しい。笑