2021年11月20日(土)にジュンク堂書店 三宮駅前店で購入。11月22日(月)に読み始め、24日(水)に読み終える。
浅田次郎の作品を読むのは、『壬生義士伝』『地下鉄に乗って』に次いで3作目(だと思う)。泣かせるような話ではなかったけど、とてもよかった。
何かに関わるとか、その原因になるとはどういうことなのか、特に最後の部分で考えさせられる。
涮羊肉(シュワンヤンロウ)を食べたくなる。
59ページに「長く高い壁である。」
244ページに秋口に採れたきのこもまだたっぷりとありますと。
【以下、再読記録】
2025年1月22日(水)に再読を始め、2月24日(月・祝)に読み終える。2月24日の第54回文学カフェのため。1回目に読んだときほどの衝撃はなく、星3つとしたけど、いい作品。
2・26事件(1936年2月26日)が物語の背景にあって、2月24日に文学カフェでこの作品について話ができたのには、なかなか感慨深いものがあった。
22章と24章の視点はほかの章と比べてやや特異。賛否両論あろうかと思う。
老陳を山村大尉が殺したことについては、どうしてもしっくりこないところ。
■1938年当時における軍隊の階級(巻頭より)
===将校ここから===
将官
大将、中将、少将
佐官
大佐、中佐、少佐
尉官
大尉、中尉、少尉
===将校ここまで===
准士官
准尉
下士官
曹長、軍曹、伍長
兵卒
上等兵、一等兵、二等兵
■旧制の教育制度
1938年当時の義務教育は尋常小学校(6年)まで。尋常小学校を卒業したあと高等小学校(2年)に進学して就職するか、尋常小学校のあと旧制中学校(5年)に進学して就職する。旧制中学卒業は当時としてはエリートだが(本作で言えば山村大尉)、さらに旧制高校(3年)に進学して帝国大学(4年)を卒業するのは成績上位0.5%ほどで、トップエリート(本作で言えば川津中尉)。
ちなみに、川津中尉は高文試験(高等文官試験)に落第し、出版社の入社試験も通らず(18頁)、甲幹の将校(33頁)という設定。小柳逸馬は高等小学校卒(271頁)で小説家になったという設定。
■軍隊組織
大隊、中隊、小隊(3分隊で30人)、分隊(10人)
■時代背景
最初に「1938年当時における軍隊の階級」が付されていることや、「つい先ごろ、支那の戦線にある下士官が、みごと芥川賞を受賞したという事実も」(20頁)という記述から(これは1937年下半期の火野葦平『糞尿譚』と思われる)時代背景は1938年のことだろう、と思って読み進めると、事件は本文の記述から1938年11月初旬のことだとわかる(298頁)。事件の時点で10月27日に武漢が陥落したという情報を山村は得ている(311頁)。
当時の貨幣価値について、ChatGPT o1に1938年当時の1円が現在(2020年代で計算しているもよう)の貨幣価値でどれぐらいになるのか推測させたところ、CPIを基にした推計で数百円~数千円程度、賃金水準を基にした推計で1円あたり3,000円前後になるケースが多いとのことだった。
■舞台
北京と司馬台長城(作中では長城の張飛嶺という架空の場所)
■内容
50頁、高粱飯(コーリャンめし)を食ってみたいな。
山村大尉も支那語ができるところがミソだろうか、と思っていたら182頁で尋問のあとに山村大尉がめしを食いに行く(と描写されている)場面があり、示唆的。
234頁、涮羊肉(シュアンヤンロウ/シュワンヤンロウ)
ところで、津山30人殺しも1938年に起きた事件。犯人の都井睦雄は、1937年5月22日に徴兵検査で丙種合格になったことがきっかけで人間関係がこじれていき、1938年5月21日未明に事件を起こしている。