あらすじ
戦争は、人々の人生をどのように変えてしまったのか。帰るべき家を失くした帰還兵。ニューギニアで高射砲の修理にあたる職工。戦後できた遊園地で働く、父が戦死し、その後母が再婚した息子……。戦争に巻き込まれた市井の人々により語られる戦中、そして戦後。時代が移り変わっても、風化させずに語り継ぐべき反戦のこころ。戦争文学を次の世代へつなぐ記念碑的小説集。第43回大佛次郎賞受賞作。
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「終わらざる夏」を読んで以来の、浅田さんによる戦争文学。6編の短編から成る。どの作品も、視点や趣向は異なるが、共通しているのは、戦争に人生を狂わされた人たちの悲しみや苦しみを描いていることだ。
戦争さえなければ、幸せな暮らしを営めたはずなのだ。亡くなった人も生き残った人も本来なら背負わずとも良い十字架を背負わされた。その苦しみや悲しみに言葉も無い。
戦争という事象や、戦争を引き起こした当時の政府や軍部に怒りが湧いた。犠牲になった人々に心からの哀悼の意を表する。このような悲劇は二度と繰り返されてはならないのだと、反戦への想いを新たにした。
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戦争小説。短編集。
どの篇も悲しい。
「帰郷」については少し未来に希望が持てる。二人の先が幸せであることを祈らずにいられない。
「不寝番」ではファンタジー色が強い展開であったが、二人の交流が違和感なく汲み取れ、それでも元に戻った後を想像すると苦しくなる。
他の篇についても救われるものが少なく、諦め感も否めず、あっさり終わりを受け入れている場面がなんとも言えない。
自分も戦争を知らない世代であるが、人の生き死にについて改めて考えさせられる機会を与えてもらえた
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知らない時代の知りたくなかった話
戦争…故郷へは、帰れない…女房には私が戦死した事で国から少しでも手当てが入っているだろうから…
野ブタを食ったのです。仲間を腹に収めて日本に帰ってきました。悲しい
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帰郷できた兵士もできなかった兵士も、ともに共通するのは、人生の始末に向き合って初めて戦争の残酷さを知るということ。正直どの作品も切ないし、史実であってほしくない。でもきっと実際にあったであろう名もなき兵士たちの物語。反戦という言葉を重く受け止め続けたい。
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久し振りの浅田次郎さん、戦争に翻弄される弱者を描いた短篇六編。
なる様にしかならなかった時代、その中で若者は自我をどう持っていたのか。
考えさせられます。
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文中の
あたしら命まで取られないもの
恭ちゃんや香田さんは、何から何まで取られた上に命まで召し上げられるんだ
という文が特に身にしみました
実際出兵した兵隊さんたちがどんな思いで家族と離れたのかと想像すると涙がでました
戦争のない時代に産まれられたことでも幸運だと思いました
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浅田次郎さんの短編6作
「母の待つ里」で落胆して以来手にしてこなかった浅田作品だけれど本作の中でも特に「帰郷」と「不寝番」を読んで私がかつて愛した浅田ワールドが蘇ったようで痺れた。
「帰郷」
戦場から故郷長野に戻った主人公はそこで戦場以上に辛い思いをして何かを求めて東京に出る。
そこで出会った娼婦のマリアに自分の居場所を求めた彼は、今まさに「一緒に死んで欲しい」という言葉を待っていたマリアに「一緒に生きてくれ」と頼む。
「不寝番」
まさに私が抱く浅田ワールド。
時を隔てた兵士が2人その時の壁を超えて顔を合わせる。
戦時と平時それぞれの時に立つ2人はそれぞれの日本に思いを馳せる。
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第二次世界大戦終戦前後の短編4話と、もう少し経ってからのお話し2話。
終戦まで生き延びたのに、事情があって故郷に帰れない復員兵、戦争で家族や家をなくし苦労を強いられた人々のお話。
お陰様でぼんやり生きてるけど、二度と戦争をしてはいけないと思い続けなければいけないな。
浅田次郎さんの本は歴史小説でも、戦争が題材の小説でも読みやすい。日本語が美しいからかな。なのにエッセイは爆笑出来るし。大好きな作家さん。最近の本も読んでみよう。
ちなみにこの本は《大佛次郎賞受賞作》
生前の父に大佛次郎さんの本を買って来るよう言われて、「だいぶつじろう?」って読みを聞いたら呆れられたのを思い出しました。大佛(おさらぎ)さんですよ。
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目次
・歸鄕
・鉄の沈黙
・夜の遊園地
・不寝番
・金鵄のもとに
・無言歌
浅田次郎の戦争小説だけを集めた作品集。
もちろんどの作品も上手い。
が、これぞ浅田次郎!というものが戦争小説という括りの中で、どこまで発揮できたのか。
戦争小説って、もっとも個性を消さなければならないジャンルのように思えてしまう。
その中で、戦後の遊園地で働く若者が主人公の『夜の遊園地』にはちょっと驚いた。
生きて日本に帰ってきた兵士の心中をあらわすのに、遊園地という舞台をこう使うのかと。
子どもを育てるお金が必要で再婚した母と、母に置いていかれ家庭に居場所のない青年という構図は、ちょっと前に見た2時間ドラマのようだったけど(男はみんなマザコンってことでいいですか?)。
日本人はいつから死者に対して謙虚じゃなくなったんだろう。
ジャングルの中で死んでいく戦友たちの思いを、日本に連れて帰る、それだけを胸に生きのびて日本に帰ってきた傷痍軍人の、誇りと哀しみがこころに刺さる『金鵄のもとに』。
今となっては傷痍軍人という文字を見て、どういう人のことかピンとくる人の方が少ないのだろうけれど。
『無言歌』は最初、ほのぼの系かと思ってしまった。
夢の話から始まる。
寝る時に見る方の夢。
随分のんきだなあと思いながら読んで、最後に状況がわかった時の衝撃。
”戦死だろうが殉職だろうがかまうものか。俺は人を傷つけず、人に傷つけらずに人生をおえることを、心から誇りに思う”
そしてチャップリンの映画で有名な「スマイル」を歌うのだ。
鼻唄で酸素を使い切るために。
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浅田次郎が描く戦争にまつわる短編集。
と、いっても派手なドンパチは出てこない。
舞台は終戦直後の闇市であったり、作戦中のひと時であったりするが、どの主人公も人には決して言えないような悲しみを抱えて生きるまたは死ぬ様子を描いている。
生きるか死ぬかという瀬戸際になると、愛する妻子や好いた女性が出てくる。
現代の世の中では、恋愛や結婚はエンターテイメントか合理的判断の対象になっているが、本当はそんなものではないのかもしれない。
もちろんフィクションの話ではあるが、戦争は本当に悲惨で最中も終わった後も死ぬよりも生きることが難しい日々をもたらす。
平和が当たり前になっている現代でもやるせなさや苦しみはあるのだが、過去にこういう時代を生きた人々がいて、それはそれほど遠い話ではないという事を覚えておきたい。
そして生きるという事をもっと大きな枠組みで考えていきたい。
そんな事を思った良い作品でした。
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戦時中、戦後を生きる人々の短編集。
戦争は終わってもその時に生きていく人々は何かしらの痛みを抱えながら生きていく。
それは戦争に携わった兵士だけでなく、その子供達まで間接的に影響があって、戦争が終わってもなお苦しいこと、辛いことがあるんだなと、各章の主人公の姿を見て感じた。
どうしても戦時中ばかり焦点が当たりやすくなる気がするが、戦後を生きる人たちのことももっと知ることも反戦を促すためには必要だと思う。
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戦争物は苦手だけど、浅田次郎が近代史を学ぶべきだと言うてたので、読んでて気持ちが落ち込んでいった。
ただ、浅田が好き過ぎて、最近のはどうもあまりオススメしたいほどにならない…
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先の大戦に素材を求めた短編集であるが、浅田の場合、何を伝えるか、読者に何を届けるか、は、わかりやすすぎるほどわかりやすいテーマであって、浅田の真骨頂はそれをいかにわかりやすく伝えるか、響かせるか、という、いわばプレゼン能力にあるということだろうな。
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浅田次郎さんの戦争ものは、「反戦!」なんて声高に言わない。
戦禍にも人情があり、それぞれに温かく、切ない人としての営みがある。
故に戦争なんてしない方が幸せなのだと痛感する。
人の優しさに触れ、優しくありたいと思える作品だと思う。
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表題作『帰郷』を始め計6編からなる短編小説集。
収録作品のタイトルを順にあげていくと、
1.『帰郷』
2.『鉄の沈黙』
3.『夜の遊園地』
4.『不寝番』
5.『金鵄のもとに』
6.『無言歌』
すべて、第二次世界大戦を題材にした、戦争がもたらす哀しみや普通の人々の思いを描いた、反戦・非戦小説。
『帰郷』『金鵄のもとに』は出征し、なんとか生きて復員した兵士が主人公。
『夜の遊園地』は戦死した父を持つ大学生が主人公。
『不寝番』は、浅田次郎さんお得意の幻想譚、現代に生きる自衛隊員と戦争中の兵士が主人公。
『鉄の沈黙』『無言歌』は戦場での兵士たちが主人公。
戦争の非情さ、理不尽さを描いてます。
その一方で、人間の情の深さを描き、悲惨なだけではない、それ故に一層、戦争が理不尽なものであり、決して繰り返されるべきではないこと、が心に染みてきます。
表題作の『帰郷』は、とても切ない話しなのですが、生きる希望を抱かせる結末で、作者の優しさが伺われます。
こうした戦争を題材にした小説は辛くて、あまり読みたくはありません。
しかし、戦争体験者もすくなくなくなり、平和の大切さを学んだはずの日本人が、また、性懲りもなく他国との対立を深める言動や行為ばかりになってしまった現在、あらためて読まれても良い作品、いやぜひ読んで欲しい作品です。
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子供の頃、白装束の負傷軍人が街角に募金箱を持って立っていた事を思い出した。まだほんの少し戦後が感じられた。その時代の話しもあって、何か懐かしさともう今は戦後の匂いすらないなあ。と、今の子は特に遠い話しなんだろうなぁと思う。
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第43回大佛次郎賞受賞作品。戦争を背景に、その時代を生きた人たちの短編集。
直接のメッセージはないものの、筆者の戦争に対する思いが伝わる作品。
■帰郷
玉砕したと思われた復員兵の独白
妻と子供に会うために故郷に戻った復員兵が見たものとは?
■鉄の沈黙
ラバエルから高射砲の修理に来た修理工
そのまま、戦地にとどまって、アメリカを迎え撃つ
■夜の遊園地
戦後、夜の遊園地で客引きをする男
お化け屋敷から出てこない親子を探しにいって見たものとは?
■不寝番
自衛隊員と兵士の時代を超えた不思議な交流
このファンタジーは哀しくなる
■金鵄のもとに
ブーゲンビルを生き延びた兵士がそこで経験したこととは?
これも切ない
■無言歌
特殊潜水艇内の兵士二人の会話
残り少ない酸素の中での二人の会話が悲しい
それぞれの物語で、死にゆく者、生き残った者たちの話が戦争という悲惨さを物語っています。
哀しい物語でした
Posted by ブクログ
戦争によって、翻弄されていった人たちを描いた作品。全6章で、一つの章が程よい量になっていました。
テレビドラマは何回も拝見していて、それで読んだ気になっていました。会社の方からおススメということで、今回が初の浅田作品でした。
難しい言葉が多く、なかなか想像しにくい部分もありましたが、戦争の悲惨さは伝わりました。
フィクションではあるものの、こういう人たちが戦争の時代に生きていたと考えると、何ともやりきれない気持ちでもありました。戦死者一人一人に人生があって、ちゃんと生きていたということを表すためにも過去の戦争を忘れていけないなと思いました。戦争文学ですが、想像するような衝撃的な映像が飛び交うのではなく、どちらかというと当時のリアルな日常が描かれていました。だからこそ、より残酷さ・冷酷さがありました。
時折、情景描写が文章にすると美しく、何回も読みたくなる部分がありました。別の作品にもこのような描写があるのかわかりませんが、ちょっと他の作品にも挑戦したいと思いました。
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たまたまお盆休みで時間があったので、何冊か読書用の本を購入してみた中の一冊。時期的に戦争を扱ったものも一冊ぐらい読んでみようと購入。短編集で、どれもふつうの市民から兵隊に召集された主人公のお話。じわじわと戦争の悲惨さが伝わってくる本。
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浅田さんらしい語り口ではあるものの、もう一つ響くものが少なかった。反戦小説集との名目だが、これでは安倍晋三や百田尚樹は日本人の美談と思い込んじゃうよ。もっと明確に反戦を歌って欲しい。
Posted by ブクログ
戦争を題材にしているゆえか、文庫帯に「反戦小説集」との謳い文句がある。
しかし、その思いはその文言ほどには、心に響かなかった。短編であるがゆえの限界だろうか(著者には、『天国までの百マイル』のような、忽ち涙腺を刺激する傑作短編集もあるが)。
反戦ということであれば、先ごろ読んだ乃南アサ著『水曜日の凱歌』の方がより、その感が強い。