河合隼雄のレビュー一覧
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◼️ 河合隼雄「猫だましい」
様々な著作に現れる猫についての紹介・研究。猫が人間のたましいにふれる、ということは?
地元の書店、その名も猫誓書房さんで仕入れた本。取り上げられている作品は多岐にわたる。「くるみ割り人形」のE•T•A•ホフマン「牡猫ムルの人生観 並びに学長ヨハネス・クライスラーの断片的日記」
シャルル・ペロー「長ぐつをはいた猫」
「源氏物語 若菜の畳」
アーシュラ・ル=グゥイン「空飛び猫」
日本昔話の猫をはさみ、
宮沢賢治の童話の猫「セロ弾きのゴーシュ」「どんぐりと山猫」ほか
「鍋島猫騒動」
絵本の猫 佐野洋子「100万回生きたねこ」
長新太「ごろごろにゃーん」ほか世界の絵本
ポール・ギャリコ「トマシーナ」
大谷崎「猫と庄造と二人のおんな」
さらに少女マンガに飛び
大島弓子「綿の国星」
シドニー・ガブリエル・コレット「牝猫」
これだけが250ページくらいの中に詰まっていてなかなかおもしろちアプローチだと思った。タイトル通り、表したいのは「たましい」であり、臨床心理学者である著者は近現代の物理的な効率性によって人間関係の喪失または希薄化に悩まねばならなくなったこと、これすなわち「たましいの喪失」と説く。
各作品の中で、そのあらすじのみならず、猫はどんな存在であり、主人公もしくはその家族、人間関係、そして事案の全体構造にどのような影響を及ぼしているか、を掘っていく。
有名と言われるものでも全部を知っているわけではなく・・「100万回生きたねこ」は読んだつもりだったにもかかわらずこんな話だったのかと思ったし、鍋島猫騒動も結構な壮大さにちょっと驚き。
章を離して書いてあるけども、「猫と庄造」と「コレット」の相似性もなかなか興味深い。「神猫の再臨」と銘打ってある章の「トマシーナ」は効率を重んじる獣医師と、できる限りの手立てを尽くす「魔女」と言われている女性、そして医師の娘と飼い猫が絡む、読むに深そうな話で惹かれるものがある。
最後に大島弓子氏のマンガ付き。たましいとは、そこに迫っている猫の存在感とは、という目線で、しぜん作品分析、人間の研究ともなっていくおもしろみ。ふむふむと読みこんだ。
猫好きさん必読かも? -
Posted by ブクログ
無意識の探求のために神話に興味を持たれ、世界中の昔話や神話を読んでこられた河合先生が、キリスト教以前のヨーロッパに生まれたケルトの神話にまつわるものに触れ「これから」を考えるためアイルランドに行き、見て、考えられたあれこれ。
占い(タロット)とカウンセリングを生業としている魔女の話が特に印象に残った。
p217
「人間と人間の関係の持ち方、パッと会ったときの感じを知りたい」
p242
「「思考する」というのはとても不思議な行為で、人間が獲得した特殊技能である。これは、自分というものが世界と別個に存在しているという意識を持つことに起因する。そして、その自分をどうすべきかを考えることを記したのが、神話なのである。すべての神話には、「人間が意識を持つとはどういうことか」が書かれているといっていい」
p470
(アメリカ先住民やケルトの文化は)「ここまで洗練された考え方を持ちながら何も痕跡を残していない。これほど偉大なことはない」
p967
「日本古来の考え方では、人間も「ネイチャー」の一部である。人間を除外した「ネイチャー」という概念は、日本には存在しなかった」
p1147
「人間は遊んで自由に動くところから自分を超えた絶対者、超越的な存在にどうつながっていくかを考え出したのである」
p1152
「遊びの方が本質なのだ」
p1224
「現在は、遊びと儀式と仕事が円環構造になっており、その円環構造から抜け出るにしろ抜け落ちるにしろ、どこにでもその入り口はある」
p1417
「人間は「自らの物語」を生き、作り出せると私は思うのです」
p1495
「人間は矛盾を抱えているべきだと思います。矛盾がなければ生きているとは言えないと言ってもいいでしょう。矛盾との闘い、矛盾を抱え続ける努力が、人間には必要です」
p1540
魔女の仕事を見ながら
「彼女には相談者の話を聞く力があるのだ。(中略)これは、私が心理療法の仕事としてやっていることと同じだ。(中略)魔女がほとんど助言をしないのを見て、「これは相当な人間だ」と感心した」
p1563
「下手に、ああしろ、こうしろとは決して言えるものではない」
p1572
「忠告めいたことはまったく口にしないが、置いたタロットにまつわる具体的なイメージが確実にカードに出ているときは、そのことは伝えるということだった。これは、ユングのいうシンクロニシティだ。」
p1634
「治る人は全身全霊があげて信じることができた」
p1640
「魔女が常識とは違う言い方をしたときにはじめて「そうかぁ!」と、相談者の態度が変わるのである。まったく違う角度からパッと切り込み、それを聞いた人が「そうだ!」と思うというのは、前述した「全身全霊」と同じことだ。態度が変わるからこそ、そこに新しい世界が開けていくのである。」
p1675
「相談者に「こうしなさい」とは決して言いません。選択肢を示すだけです。相談者の力をそぐ場合もありますから。本人に選択してほしいのです。天気予報のようなものです。予報を聞いて行動を起こすかどうかは本人次第です」
p1684
「(魔女)棒は火、行動を表します。剣は対立、コインは物質、聖杯は感情を表します。カードは状況をとてもよく示します。逆さまだと下降を示し、そうでない場合は外向性を表します。
(河合)直感に頼るのですね。とても重要なことです。
(魔女)それをリサーチと経験で裏づけます」
p1696
「意識を通じて無意識に働きかけることは困難ですが、記号や儀式では直接無意識に働きかけることができます。それが「魔術」だと考えています。」(魔女)
p1744
「私は問題を解決するのではなく、解決する方法を伝えるだけです。」(魔女)
p1784
「「いわく言い難い」ものを解明しようとすると、論理や言葉ではなく、具体的なこととして表出してくる。具体化されるのだ。(中略)しかし、表出するものは具体的なのだが、その背景にある価値基準は、混沌としたかたちで現れる。その人の主観的体験と、主観を離れた体験は分離されていないからである。」
p1806
「もっともっと外れていったならば、いま見えているもの以外のものまで見えるのではないかと、私は考えている(考えてはいるが、そんなことをすればまともに生きてはいられないだろう)」
p1878
「「ゲニウス・ロキ」という考え方がある。土地自体が、精神というか魂をもっているという考え方のことである」
p1901
「「そういうことがあるかもわからんな」と思うと、その瞬間から変わってくる。さらに面白いことに「そんな馬鹿なことがあるか」という人も、そちらに捕らわれていく。それが「意識」というものなのだ」
p2112
「ケルトには文字すらなかったのに、音楽は残った」
p2172
「人は「それがすべてだ」と思った途端に不安になる。「それもある。これもある」というのが大事なのだ」 -
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面白かった。副題が「ユング心理学講義」。谷川俊太郎さんという質問者がいることで河合先生がわりと具体的にご自分の経験やこれまでの経緯を話されている。
p37
「ユング研究所で、「相手をどこか好きにならなかったらみるな」とよく言われました。(中略)可能性が輝いている人とは相性がいい。(中略)医者として「好き」というのは、他人には見えない可能性を感じていること」
p38
「危険をおかして賭けていく」
p40
「青年期の人で死が怖いというのは(中略)本当はうまいこと生きられないということなんで、生きる方法が見つかってきたらなくなってしまいます」
p48
「問題を突きつめて意識化するということに、どれだけ重点を置いていいものかわかないという態度で、ぼくはやっています」
p49
「治るときは誰しも苦しい歩みを続けるのだから、そこに付き添う人があることは測り知れない大きい意味を持つ」
p54
「治療というのは二人でつくる傑作ですね。」
「ほっぺたひっぱたいたってかまわんしね。表現としてその人の状態ときちんとあっているものというのは強いですよ」
「人は自分をハダカにしながら成熟していく」
p55
「(本来的な自己)そいつをできる限り生かそうじゃないか」
「いわば無限の可能性みたいなもの」
p64
「先生はいつも長い刀を持っていて、子供は短い刀を持たされているみたいなもので」
p83
「『人間と象徴』という解説書」
p168
「女として間違ったことをしてはならないと監視しているものすごく恐ろしい存在というか、そういう父親像が強くあるために、女の人は自由に動けない。何かしようとすると怒られるんじゃないかという恐れが先行してしまう」
「何かしようとしてもする前から叱られているような」
p169
「自分の意識しないところですごい禁止がかかっているんです。それを意識化できないものですから、いっそう無理に破ろうとするわけです。(中略)父親像との闘いのあらわれなんですね」
p172
「グレートマザーが後ろについていたら、いくら死んだってかまわないわけです、どうせ生まれ変わるんですから。そういうものにバックアップされている人は平気で死んでいけるでしょう」
p198
「俳句なんかはそれの最たるものであって、あれは自分の心なんて絶対書いちゃいけない、物だけ書けという方法論ですよね。しかも、その物がみごとに自分の内面の投影になっていなければ、俳句としては成り立たない」(谷川)
p200
「日本人であるぼくらは、あんまり簡単に、ヘビは何のシンボルであるとか剣は何のシンボルだとか言われると、眉唾物のような気がしますね」(谷川)
p224
「自分の限界を知らずにすべてにアイデンティファイしていると、判断力が鈍ってくるからです。シャープな判断力を持った上で受け入れるんじゃなくて、何でも結構ですとなると、これは危ない。そういうことじゃなくて、いま言ったように自分の限界というか、置かれた位置などからくる限定を非常にはっきりしていけば、ぼく自身はそうしていますけど、いくらでも怒ったり泣いたり笑ったりできるようになる」
p226
「どんなにおもしろくないことからでもおもしろいことを見つけだす才能がわれわれには要ると」
p230
「ユングは、死後の生命ということを考えないような現世の生き方は完結しないと言うんです」 -
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安野光雅さんの挿絵と相まって静かで素敵なエッセイ。
大人の友情、というタイトルどけど、男女間の友情や夫婦間の友情、はたまた友人感の裏切りや嫉妬など、大人になってからの人間関係について広く心理学者の視点から感じられたことが書かれている。
現代の自己啓発本みたいにティップスが分かりやすく羅列されているわけではないし、例えば同性愛などに関する記述などちょっと時代を感じる部分も多かったけど、それでも時々はっとする言葉があった。
家族も夫婦も根っこには友情が必要だというのは、確かにそうだなと思った。男女間の友情は存在するかという議論が良くあるが、そういえば夫婦間には友情が存在するなと。
時間に余裕がある時にゆっくりと読みたい本。
以下、友人関係における優しさと秘密について、素敵だと思った言葉を書いておく。
やさしさは死すべき者の自覚から生まれる。
やさしさは友情の行く末を照らす星。
秘密は友情の証としての贈り物。
愛の告白は秘密を語ることによって始まる。 -
Posted by ブクログ
ユング心理学者・河合隼雄と詩人・谷川俊太郎の対談。どちらもその道の第一人者だけあり、非常に高い次元の会話がなされている様子。何のことやらと思いながらただページを捲るだけでもそれなりに楽しい。
一方で、肝心のユング心理学についての「講義」は禅問答のようでさっぱり。
カウンセリングの実際についてかなり詳しく述べていたが、分析家は何もしないのが一番いいとか極力意見を述べないようにするとかで、結局何をする仕事なのかちっとも分からなかった。
万事こんな具合で、読む前よりも余計に分からなくなったような気すらするわけだが、不思議なことにこの本を読んでからというもの、朝起きてその日に見た夢を覚えているようになった。
単純に、夢に関する本を読んだことで意識が夢に向いたということなのかも知れないがなかなか興味深い。ひとまず自己流に分析してみるつもりだ。