河合隼雄のレビュー一覧
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ネタバレグリム童話、時折日本の昔話を交え、洋の東西の差異に思いを馳せながら書かれたような考察。ひとつひとつ理由づけられたものがたりたちは、その理由づけた次元より深いところに存在しているのだろう、と、しぜん考えさせられる。グリム童話は矢川澄子さんの訳も巻末に付せられているが、岩波のセットを読み込むのもまたひとつと思う。……ただ、まだ未熟な視点しか持たない私のおさない感情ゆえだと思うが、「男性」の中にアニマとアニムスが(女性にも同様に!)同時に存在するということを頭において読み進めないと、ちょっと頭がおかしくなってしまいそうな気もする。“わたし”の中に、“男性”と”女性”が同時に存在するひとは少なくない、と思うのだが。十章を読むには少し胆力がいる。これも、「自己の内面」を浮かび上がらせられた、その結果だろうか?
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どの大人も子供の時代があった。
しかしながら目は自分のまつげをみえないのと同じように、自分自身の一部である子供時代の心のあり方について大人になっておもいだすのは難しい。
その結果、大人の視点で子供の心を解釈してしまいがちな親になる。
「大人になるということは、子供のころにもっていたすばらしい(内的)宇宙の存在をわすれることではないか」と著者は述べている。一方で「大人も自分のなかに宇宙があるのだが、地位や月給などの地位財にこころを奪われがちで、その宇宙の存在にきがつくことが案がいこわいのではないか」と。大人はそのような不安におそわれるのがこわいので、子供の宇宙の存在を無視したりは破壊してしまう。
この本は、心理学者の河合先生が、子供のこころのなかには広大な宇宙があり、それがどのような作用を生じて成長していくか?変化していくか?を紹介した本。秀逸なのは、それを理論だけでなあく、優れた児童文学作品の解説の形をとりながら展開している。
児童文学は透徹した子供のしてんで世界を描いている。子供ではなく大人が再度よみとくことで、子供の目、こころの動きを体験できる。紹介されている本でこれはぜひ読んでみたいとおもったおは以下。
★子供と家族
ラモーナとおかあさん
クローディアの秘密
ふたりのロッテ
★子供と秘密
秘密の花園
まぼろしの小さい犬
★子供と時空
時の旅人
ノンちゃん雲に乗る
★子供と老人
ぼんぼん
ジョコンダ婦人の肖像
★子供と死
あのころはフリードリヒがいた
誰が君を殺したのか?
あなたが百匹の羊をもっていたとする。そのうちの一匹がいなくなったら99匹を野原に残しておいて、いなくなった一匹を見つけるまで捜し歩かないであろうか? (ルカ伝第14章5) -
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日本神話の中に古代から通底する日本人の心のあり方を探った著者晩年の集大成。深層心理学に基づいた視点により神話のそこかしこに調和を第一に重んじる日本的精神が息づいていることが本書では明らかにされていく。一人の日本人として自分のルーツがどんどん鮮明になっていくようで感慨深かった。日本神話に表れている心性が私個人の中でも中心的な地位を占めていることをいたく実感した。科学は分解する力だと言い、それと対比して神話は統合する力であるとして現代における神話の力の重要性を指摘しているのは、現代人の一人として深く同感するところである。ただし著者が序章で言っているように、現代を生きる私たちは日本神話の物語にそのままフリーライドすることはもはやできない。それを拠り所にしつつ自分で物語を築く必要がある。なんと厳しい世の中なことかと思うが、拠り所にすべきものが一つ分かっただけでも私としてはひとまずほっとした気持ちがした。
以上のように私は主に個人のアイデンティティのこととして読んだが、日本人論や日本社会論としてもとても興味深い。というかそちらが本分である。今の日本または日本人が今後目指すべき道について重要なヒントが提示されていると思う。日本人としてのルーツを明確に見直すと共に今後のあり方を考える道筋を示してくれる良書であろう。学術文庫だが、文章は易しく専門的なややこしい話も出てこないので、広く一般の人でも読める。著者もそれを望んでいるという気がする。 -
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近代の働き盛りといわれている中年男性の周辺の心情や問題に関して描かれている。
結構前の本なのに、子供との問題、家族との問題、社会との問題、同僚との問題など、やっぱりいつの時代も
課題はあんまり変わらない。
ただ、心に留めておきたい箇所は「教育」で。
こんなに豊かになった社会で、子どもは親から与えられすぎてしまって。
自分で一生懸命、欲しいものを選んで買う楽しさや迷いや葛藤。
友達や先生との喧嘩の中で学ぶ人間関係や倫理感。
人格を形成する上での貴重な経験を奪ってはないだろうか?という問い。
大人になれば、欲しいものを自分で買える。誰かを攻撃したりするのは良くないし、思いやる気持ちが大切なのはわかる。
でも、失敗をさせてあげない、苦痛を味あわせないことは
実はとっても不幸なこと。
与えてあげられるけど、あえて与えない、という選択は「愛する」ことなんだよ。
という内容にハッとした。
人との関わりの中で、苦しんで悩む期間を経験しなければ、
人は何かに気づくことも成長もできない。
障害も無くスムーズに成長することはないんだと、
カウンセリングの目線から語られていて、読みやすかった -
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ネタバレユング派心理学の日本での第一人者であった
河合隼雄氏によるエッセイ集。
人、本、言葉、家族、など「出会い」にまつわる
内容のものが多く集められています。
河合隼雄さんの著作には、
いくつか、若い頃から触れています。
そうやって、考え方を多少なりとも知っていても、
まだまだいろいろと新しい発見があり、
揺さぶられたりする。
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理解力の浅い人は、よく怒る傾向がある。
ものごとが「理解できない」ときは、
人間は不安になり、不安を打ち消すために感情を爆発させる。
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というのもそう。
うちの親父がそうだなあと思いつつも、
それだけじゃないことが、
その後の「しつけ」「父性」に関するところでわかることになりました。
著者は、吉本ばななさんと話をしたときのことを引き合いに出します。
ばななさんのお父様は、ご存知のように思想家の吉本隆明さんなのですが、
その吉本隆明さんは、ばななさんに、
「寝る時には雨戸を閉めなさい」というしつけをしていた。
ばななさんは高校生くらいになったときに、
「朝陽が部屋に射して目覚めるほうが自然なのでは」と思い、
隆明さんに言うと、それで言いあいになったそうです。
著者はそこで、大笑いして膝を叩いたそうです。
大切なのはこれだと。
子どもを育てるうえでは、なんでも自由というのはよくなくて、
「我が家ではこれはダメ」というルールは必要なんだそうです。
そして、そのルールはちょっと変くらいがよくて、
なぜなら、子どもがその変さに気づく歳になって、
親に反発するタネになるからだそうです。
そうやって、議論や言いあいをして、親子関係が昇華していくと
著者は述べていました。
まあ、でも、そんなにすんなり昇華するものかなあと疑問符は付きます。
こころのしこりになって残ることって多いと思うんですよ。
それにそういうのがきっかけで、
家を出よう、一人暮らしをしようと思ったりもする。
著者はそういうのも含めて、長いスパンで見て、
それでいいんだと言っているようでもあります。
うちのおやじも、そういう変なルールに固執するところがあり、
そこを論理的な話し合いでどうにかしようとぼくは試みるのですが、
これがうまくいかないのですね。
どうやら、そこには父性というのものがあるがゆえに、
親父は頑固なんだろうなあというのが見えてきました。
また、まったく別の話になりますが、
アメリカ・インディアンの神話の話もおもしろかった。
ジョシュア族の神話に、創造主が二人でてくるのです。
一方は名前があり、他方は名前がない。
名前のある方は、努力をして、
どうにか動物や人間をこしらえようとするのですが、
失敗に終わる。
他方の創造主は、三日間ずっタバコを吸っていると
家が出現し、その中から美女がでてくる。
名前のない創造主は、その美女を結婚して、
16人の子供を授かったのだそうです。
16人はインディアンのすべての種族の祖になった。
つまり、創造というのは、ひたむきにガリガリやって
無茶して努力してできるものではなく、
タバコを吸うという行為に象徴される行為によってなされる
ということが言われている。
著者は、昨今の禁煙の風潮によって、
「タバコを吸う態度」までなくすると、
人間のたましいに悪いのではないでしょうか、と
やんわりと禁煙の風潮に疑問を突きつけます。
そうなんですよねえ。
一般的に、詰め込み教育であったり、
馬車馬のように、忙しく働くのが正しい、みたいな考えであったり、
そういうのに僕なんかはよく出くわしますが、
そういうのでいいひとは良いかもしれないけれども、
思索したいひともいるだろうし、
それこそクリエイトしたいひとはそういうのが害になりますよね。
というか、これからの時代って、
ばたばた忙しいのが傍流になるんじゃないだろうか。
いや、傍流にしていくべきなんじゃないのか。
いずれにせよ、ひとつの価値観を強要するようなのは
よくないということですね。
と、まあ、いろいろ考えさせられて、
考えの基盤も揺らぐところがあり、
そのために寝ざめの悪い日もあったくらいの読書になりました。
でも、それはそれで、どっちかといえば、
よい読書体験だったと思います。
こういうのって実はありがたいんですよね。
20歳くらいのころは、ぐらぐら揺れたくなかったですが、
いまは、たまにならこういう揺れを感じたいくらいです。 -
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家族の問題について各現場から河合隼雄に寄せられた質問に、自説を述べながら答えている。目新しいことはないけれど、わかりやすく納得しやすい内容。。
一貫して言われていることは「世の中、何でも自分の思い通りに行くわけではない」ということ。
だからこそ生きていく上で拠り所が必要で、それが今失われつつある宗教やイエが果たしていた役割。
日本社会の質・形の変化を悪者に、「昔は良かった」とするのではなく、変化に適応できていないのをどうにかすべき。
・長い個人主義の歴史をもつ欧米と、最近個人主義を大切にする風潮が出てきた日本。
個人主義が悪いという訳ではない、和を尊ぶことでうまくやってきた日本では強い「個人」を育てる仕組みが弱い。
→道徳規範が弱まって統制のとれない個人の暴走が増えている気がする。教会や儒教、神道(ご先祖様orおてんと様)の存在は躾の中にある。
・必要なものは簡単に手に入る、お金があれば大抵のことは外注できる、時間をかけなくても帳尻が合う便利な時代。
昔は母親のアカギレや夜なべ姿から親の愛情は自然に感じて育つことができたが、家族の有難味を感じる機会が減っているいる今は、子へ対話して伝える必要がある。でもうまくいかず形骸化しがち(Ex.「〇〇してやってるだろう!」)
才能がなくても気まぐれに語った子供の夢を応援する経済的余裕があるせいで、子供を宙ぶらりんにさせてしまう親の問題もある。
→月並みだけど、物よりも心を通わせるコミュニケーションが大事。
・昔の日本の父親は強かったというけれど、威張っていただけで父性としては弱かった。母親の役割を下請として父親がやるのも意味がない。父性とは「子供が自分を信じてやることに対しては、誰からも守ってやる」というもの。
→迷惑だから危険だからと何かとリスク回避型になっているのは、子供に対しての父性を日本全体が失いつつあるのかもしれない。
・「家族の絆」という言葉も昔は「家族に絆(ほだ)されて」という、束縛やしがらみなど悪い意味で使われていた。
今では家族の繋がりが薄くなりすぎて、あって当たり前の「絆」が大切なものと扱われるようになった。 -
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ネタバレセラピストとして名高い、故・河合隼雄さんの、
40歳前のころの講座を4つ収録したものです。
カウンセリングの基礎の基礎である、
その立場や姿勢について述べている。
しかしながら、
カウンセリングの技術的なことに終始しているわけではなくて、
一般の人として、他者と向かいあうためだったり、
自分自身を知るためだったりすることに役立つ考えや
知識がたくさんでてきます。
たとえば、
頑張れない人に対して、そのひとのなかに怠け心をみるよりも、
まず劣等感が強いのではないかと見るべきじゃないか、というような考えもそう。
また、
早期解決をまず考えるというのがセオリーかもしれないけれど、
早期解決が本当の解決になるとは限らない。
早期解決にこだわらずに、その問題(こういう場合の多くは人間の心理の問題)が
本当に必要とする解決策を見つけるべきなんだろうと思う。
早期解決で解決したようにみえても、
それはうわべだけの解決だったり、
いっときの対症療法だったりする。
そうすると、そのうちぶりかえしたりこじらせたりするんだと思う。
問題と真正面から向き合って、
自分から克服していける方法がもっとも好ましいんじゃないだろうか。
と思うようになる箇所もでてきたりなどして、
考えながら読んでしまう。
自分で自分の気持ちをごまかすことによって、
それから自分のこころを起点としたヘンなことが起こってくる、
というカウンセラーならではのこころの見方もありました。
と、いうように、少し内容の欠片をならべただけでも
いろいろと興味をひかれるのではないかと思うのです。
そして、最後になりますが、
カウンセリングの目的としてのその本質が書かれていたので、
紹介しましょう。
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人間というのは、相当な悪環境に放りこまれて、
相当な悩みがあり、相当に嫌なことがあっても、
自分で立ち上がってくる、そういう力を持っているということですね。
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これは、カウンセラーが立ち会って、
話を聞いてあげることによって、
クライエントが自分の力で立ち上がってくると言っているんです。
なかなか一人だけで考えて、難しい境遇から脱することはできなかったりする。
その手伝いをカウンセラーはするのだ、と言っている。
これを聞いて、ぼくはこう思ったんだけれど、
たとえばSNSの言葉でも、誰かの名言でも、
誰かの本でもいいですけど、そういうのに触れて、
「あっ」と共感したり発見したり、
気づかされたりすることってあるでしょう?
それも一種の、カウンセリングによって自分が立ち上がることにつながるものと
同じような意味合いを秘めているんじゃないだろうか。
そういう言葉によって、癒されたり励みになったりする。
まあ、でも、これはあくまでぼくの私見です。
ぼくは河合隼雄さんの本を昔から何冊か読んでいますが、
この本こそ、その考え方や知識の土台となる本であると感じました。
この『カウンセリング入門』からはじめて、
人間の理解を深めていくのもおもしろいと思いますよ。 -
Posted by ブクログ
本当に尊敬する人には先生という言葉をつけたくなる。面識がなくとも、自分の中の一部になった(なってほしいという願望も込めて)気がして、先生、と呼ぶ。
これはユング研究で有名な河合隼雄先生が猫を語る本である。古今東西様々な物語の中に登場する猫という存在を通じて、その猫に人間が託したものを解説してくださる。
化け猫であり招き猫でもある二重性やトリックスター的性格、それは誠実を託されがちな犬にはない魅力。有名どころが多いのでマニアには物足りないだろうが猫小説の案内書として読むも良し。冒頭に説明される、数学の連続体問題を使った魂の捉え方なんかはいかにも先生らしい感じでほっこりする。 -
Posted by ブクログ
河合隼雄さんの読書に関する講演を文字に起こしたもの。河合隼雄という名前は村上春樹関連でちらちら聞いたことがあるだけで正直何故この本を購入したのかも思い出せないんだけど、思いのほか実り多い読書となった。河合隼雄さんは臨床心理学者であり、ユング派学者であり、臨床経験も豊富。タイトルだけ聞いたらありがちな自己啓発系読書本なのだが、文字通り、「こころ」の働きから本を読み解こうというテーマ。つまり、「自我」「エス」「アニマ」「悪」とか。いろいろ。中でも第一章「私とそれ」、第三章「内なる異性」の夏目漱石の、異性、魂についてとか、すごく目から鱗でした。自分がこれまで本を読んできて、何に引っかかりを覚えていたのかが明確になった。
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Posted by ブクログ
人間が成長などの変化をする時に、それまでの自我による規範を超えなければならない。そういう時に人は意識(自我)と無意識(自己)の間を行きつ戻りつし、主体自体を変化させていくというのが、ちょっと違うかもだけど、ユング心理学の考え方なのだろうか。世界に似たような童話というものが多くあって、そこで喩えられるエピソードは、国を超えて人間という生き物全体が一種納得のいく喩えとして選択したものだということができるだろう。そういう童話の中からグリム童話を題材とし、アニマやアニムス、トリックスター、父性原理、母性原理などユング心理学のキーワードを持ちいて人間の深層心理のありようにせまる。心理学になじみのない人でも何となくはわかる読み物になっている。