あらすじ
あなたは友人の出世を喜べますか? 人はなぜ裏切るのでしょう? 夫婦、男女、そして上司と部下の友情とは? 人生を深く温かく支える「友情」を、臨床心理学の第一人者が豊富な経験と古今東西の文学作品からときほぐす、大人のための画期的な友情論(目次より「友だちが欲しい」「男女間に友情は成立するか」「友人の死」「“つきあい”は難しい」「友情と同性愛」「茶呑み友だち」「友情と贈りもの」など)。
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Posted by ブクログ
"人間は死ぬことだけは確実である。このことが、どれほどしっかりと自覚できているかが大切である。互いに死すべき者と感じるとき、善悪とか貧富とか長短とか、この世のいろいろな評価を超えて、束の間のこの世の生を共にしている者に対する、やさしさが生まれてくる。"
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古い友人と、結局いつも同じ昔話ばかりして生産性がないねえとゲラゲラ笑うことがあった。
著者はそれを「お互いに共有するものを確かめ合いながら、その存在を認め合うものである」と書く。また、未来の話はそれに基づく評価が入り、非力だと仲間から外される可能性が出てくると。
専門家はこんな事象も述べられるのかと惹き込まれる。
簡単な文書なのに、じっくり考えてしまう内容だった。なぜこんなに文章が柔らかいのに胡散臭くないのか。流石の河合隼雄だと思う本だった。
Posted by ブクログ
とても平易に軽く読めるが深い。背後にとてつもない思考量と、臨床的な人との会話量によって培われた、洗練を感じる。
またもちろん、友情というものをあちこち網羅的に眺めて輪郭を描いて行く本として(テーマを正面から捉えたとしても)素晴らしい本だった。
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とても個人的な事ですが「友人」とはなんだろうか…と思うことがあり本書を読みました。友情だけでなく人間同士の色々な関係について述べられていて本当に読んで良かったです。白州正子氏とのエピソードとアメリカの分析医の先生とのエピソードが特に心に残りました。
Posted by ブクログ
まず、『大人の友情』というタイトルがいい。歌や本、映画の題名を考えるタイトラーという職業がある、と聞いたことがあるが、タイトル、つまり、本の名前によって、どれだけの人にその内容が届けられるのか、決まってしまう部分ってあると思う。
さて、内容は、河合節炸裂!
何事も断定的な言い方はせず、課題や疑問にふれつつも、大きな可能性を浮かび上がらせる、「あれ」です。
本当の友情、男女の友情、同性愛と友情、従来の関係を超えた友情、裏切りなど様々な視点を通して、本書全体では、あらゆる人間、いや、あらゆる生命との関係に激しさでなく、深さをもたらす「友情」のあり方を綴られていると思います。
もっと読み続けていたかった、というのが、正直な感想です。
Posted by ブクログ
友情について河合先生の視点で書いてある、興味深い本。これまでに河合先生が読んだ本を引用したり、心理学の視点から説明したり。たとえば、同一視。友情の中の愛情を、同一視とし、坊ちゃんのKと先生もこの関係であったのではないかとする。同じ人物は同時に存在し得ないために、自殺という悲劇が起きたと。なるほど。
カウンセラーとしての表現として、「本当の友人は心が通じていることが肝心。と思っているので、「形式的儀礼など無視すべきだ」と考えているが、友人と思っていた人と疎遠になり、「結局、人間なんてそんなものでしょうかね」という相談者に、「なんだか、自分の考えに納得しておられないように感じますが」と言っている。(p99)そして、相談者は、いろいろ考え、自分の放漫さに気づくのである。
ほかにも、贈り物に関する章では、贈り物をするのが好きな婦人にたいして、「今お話をうかがっていて、『別にお返しとか感謝を期待しているわけではありませんが』というのと、『だからと言って何も怒っているのじゃないですよ』というのを繰り返しておっしゃるのが気になりましたが」と返している。ここでも、本人が考え込み、「私はやっぱり何かお返しを期待しているのでしょうか」といったそうである。(p174-175)
そうだとか違うとかいった判断ではなく、カウンセラーが感じた印象を返すことによって、相談者が本当は自分でもうすうす気づいているながらもそうではないと否定しているようなことについて、振り返り気付きを促すことができるのだろう。
これらの気付きをした人たちがその後どのようになったのか気になるところである。
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河合隼雄はやっぱりすごいな。いつ読んでも何かその時の自分に響くものがある。
この薄い本の中にも。
特に心に残ったのは二つ。
・大学時代の仲の良い友達が自殺してしまい、傍にいたのにその辛さに気づけなかった自分は臨床心理士にはなれないと思って慕っている精神科医に相談に行くと、「人は親しい人のことは分からないものだよ」と言われたという話。
自分の経験からも本当にそうだなあと思うし、河合隼雄もそうであることに元気づけられる。
・過去に共有している思い出を語り合うのが友達、未来や目標について語り合うのは友達というより仲間、同志なのかもしれないという話。
中高の友達と仕事や社会の話があまりできないということにくよくよしていたけど、それって当たり前なのかもしれない、と気付かされた。
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30歳を過ぎた今でも、年末だけは地元の友達と集まり、毎年同じように昔話で盛り上がっている。内容はほとんど変わらないし、酔っ払った帰り道では「一年に一度で十分だな」と思ったりもする。でも、あの時間は、地位や財産、名声とは関係なく、互いの存在をそのまま認め合っているのだと気づかされた。それがいつのまにか、自分にとっての支えになっていたのかもしれない。そんな風に考えたことなかったから、年末のことを思うと少し嬉しくなった。
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河合さんの他の本の書いてある友情に関する話題を、集大成したような本。
今でこそ、欧米などでは、LGBTQであることで人権が阻害されないようにするのが常識化しているが、2005年にして同性愛のことが書いてあるのにびっくり。
『 同性愛の場合の方が、男役と女役ということが決まっているので、かえって、昔にあった「男女の愛」による安らぎを感じやすい』
など、心理臨床家として同性愛を擁護する発言もある。
Posted by ブクログ
[人間の生き方を豊かにしてくれるもの]表紙の絵や挿絵も好き。河合隼雄さんの書く、白州正子さんのエピソードが心をほぐしてくれました。ときどき読み返す。
Posted by ブクログ
・タイトルがいいな〜と思って購入したけど、心配されそうで、いつもいく喫茶店のカウンターでは表示を隠して読んだ。
・大人になってからの友人の作り方、といったノウハウを求めて読むものではない。本全体を読んだ時子どもの頃からアップデートすることなく持ち運んできた硬くなった「友人」「友情」のイメージがぼやけるような、意図的にコリをほぐしてぼやかせられるような本。
・友人とは夜中に死体を車のトランクにつんで現れた時黙って話を聞いてくれる人、というのはわかる気もするが、割と映画なんかだとよくみるシーン。
・小林秀雄と中原中也、田辺元と野上弥生子のエピソード好き。
Posted by ブクログ
大人になると欲しいと思っても、なかなかできないのが友人。
そしてある時に何よりも代えがたく感じるのが温かな友情。
そんな大人になってからの友情というものに焦点を当てた本書。
学術的内容というより河合先生自身の体験から述べられたエッセイのような内容。
目次は
・友達が欲しい
・友情を支えるもの
・男女間に友情は成立するか
・友人の出世を喜べるか
・友人の死
・「つきあい」は難しい
・碁がたき・ポンユー
・裏切り
・友情と同性愛
・茶呑み友達
・友情と贈り物
・境界を超える友情
いいなと思った考え
・目的や理想を同じくする絆は仲間や同士であるが、友との絆は「生きていること」とでも言いたくなる。
・互いに死すべき者と感じるとき、この世のあらゆる評価を超えて、束の間のこの世の生を共にしている者に対する、やさしさが生まれてくる。
・友情で大切なのは「真実」と「優しさ」であるが、それは目指すべき星であり、到達することは無い
・他人に愛想を尽かしているときはまだいいが、自分自身に愛想を尽かすと人間は動けなくなる。そして、そこから出てくる答えとしては死以外にないとした。
・人間の感情には、激しさと深さという二側面がある。激しさは目に見える行動に結びつきやすく、他人から見てもよくわかる。
深さの方はすぐにわかるような行動と結びつかないので一見すると認めにくいが、永続的な行為として示され、それは他からの力によっては変え難い。
・現代は下手をすると、なんでも思いのままに支配し、操作できると錯覚し、その結果大変な孤独や閉塞感に悩まされることになる。
Posted by ブクログ
ちょっと難しいかな~と恐々読み始めたけど、切り口が身近というのと、1つ1つが短いのもあってとても読みやすかった。
うんうん、そうだよな~。と思うような内容がたくさん。自分や周りの環境を振り返りながら、人間として大切なことを改めて考えさせられました。
本文より↓
友人とは「夜中の十二時に、自動車のトランクに死体を入れて持ってきて、どうしようかと言ったとき、黙って話に乗ってくれる人だ」
外からみて批判し、非難する以前に、内側に共にたって感情をわかちあう、やさしさが友情を支える
悪を許容するわけではないが、それでも何とか関係を続けてゆき、変化を期待し続ける態度に支えられて、子どもは成長してゆくのである
人の死に対しては「喪」が必要だ。
Posted by ブクログ
ユングの箱庭療法を日本に取り入れ、民間人として文化庁長官にもなった河合さんの読みやすい友情論。
本当に頭の良い人の文章って、シンプルで読みやすいんだよね。
文化ごとに違う友情表現の紹介とか、とても面白かったです。
友だちも数じゃなくて質だよね!
Posted by ブクログ
「友情」で結ばれていると思っても、何かあれば嫉妬したり不安になったりもするのが人間の常。
河合隼雄さんが「友情」について易しく教えてくれる本です。
Posted by ブクログ
"お返しと「感謝の心」"の章が印象に残った。
ブータンの友人の十七年後のお返しの話には驚いた。極端ではあるが、これもまた心の関係の構築の立派な一例であるといえるだろう。
友情というのは、友達のみにとどまらず、親子や夫婦、上司と部下などあらゆる人間関係において発生しうるものであること、
そして友情が基盤にあることで豊かな関係を構築できることを知った。
Posted by ブクログ
同一視の部分、なるほどと思った。やってしまいがちなので、一歩引いて自分を見つめたい。
そして、結婚においては茶呑み友達のような相手を選びたいな〜(笑)
Posted by ブクログ
以前、男性同士の恋愛をテーマにした映画を見た時
結局、愛って何なの?肉体的な関係が最終形なの?ともやもやしたのだが
いつも「一心同体」でありたいと願った二人の破綻の物語だったんだなと、この本を読んで何となく分かったような気がしている。
誰かとすごく距離が縮まったような気がする時
「一心同体」感は心地よいものだけれど
“残念ながらいつも「一心同体」にはなれない”ということを
お互いに自覚していなければ、距離が縮まったのちの
深い友情あるいは愛情の景色は見られないということなのだろう。
Posted by ブクログ
「友情」という、利害関係からも義務からも離れたところにある関係。
大人になってからというもの、「自分はごく近しいと思っているが、どうやら彼女/彼は思って居なさそうだ」とか「私は友達がいないのではないか」とか、そんな悩みに襲われるひとは少なくない、というところから始まる。
ごくごく平易に書かれている、さくっとした本作。
それだけにわかり良いのだけれど、もの足りなさも残る。
『影の獄にて』の箇所ではあらすじだけでもぐっとくるものがあった。
原書にあたらなければ。
Posted by ブクログ
自分がその様に振舞っているからなのではあるが、大人になってから学生の時みたいには友達を作る事ができなくなったような気がしている。
それはそれで正しくて、仕事上の付き合いというのはそういうものなのではないかという気もする。
下手に踏み込んで、絶交するというわけにも行かないのだし。
が、本当にそれで良いのかなという迷いもある。
などという事を思って本書を手にしたのだが、いまいちそのような感じの内容ではなくて、あまりピンとこなかった。残念。