あらすじ
心の問題集&回答集!――人間の心がいかにわからないかを骨身にしみてわかっている「心の専門家」である著者が、「人の心とは何か」という問いに心理療法の現場から答える。悩み、傷つく心を知ると、自分も他人も見えてくる!!
◎人間の心がいかにわからないかを骨身にしみてわかっている者が、「心の専門家」である、と私は思っている。そのわからないことをそのままに捨ておかず、つねにそれに立ち向かっていなくてはならないのはもちろんであるが。これに反して素人は「わかった」と単純に思いこみすぎる。というよりは、「わかった」気になることによって、心という怪物と対峙するのを避けるのだと言っていいだろう。この書物はもともと心理療法をいかにするかという問題意識から出てきたのであるが、心理療法に関係のない、心に関心のある一般の方々が読まれても、おもしろいものになっていると思う。治療者とクライエント(相談に来た人)の関係を、そのまま家族や職場の人間関係に移しかえることはできないが、それらを考える上でヒントになることが、相当にあるのではないかと思う。
●私がユング派の分析家になるまで
●普通の人になることが幸せか
●苦しみの処方箋
●「自分はダメじゃないか」が大切
●少年事件と家族の問題
●治ることの悲しさ、つらさもある
●中高年の自殺に打つ手
●たとえ「冷たい人」と思われても
●空虚感、無気力感への対処法
●定石どおりにことは運ばない
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
学校や病院など、様々な場所に勤務する臨床心理士たちからの質問を、著者であるベテラン心理士が回答する形式。臨床心理の現場で心理士たちはこういう問題に直面するのか、ということがよく分かり、興味深い。
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人間の心がいかにわからないかを骨身にしみてわかっている者が、「心の専門家」である、と私は思っている。
要は、本気でやっているかどうか
人間が生きていく場合、ある程度、モノがないほうが生きやすいのではないか
私たちの言語表現能力には限界がありますから、実際の体験、実際に起こっていることのほんの一部しか表現することはできないはずですが、いったん言語化されると、あたかもそれがすべてであるかのような錯覚を招きがちです。だから、つねにそういうことを踏まえていないと、大きな間違いをおかすことになります。
自分が変わるときには、苦しいもの
Posted by ブクログ
河合先生のご本は、どれもやさしい語り口なんですが、書いてあることは結構すごい。例えば、この本には、河合先生が50歳くらいの頃、心理療法がしんどくて「死んでしまいそうだった」という感想がさらっとでてきます。うっかりすると読み飛ばしそうですが、たぶんこれも淡々と事実を語っていて、本当に死にそうだったんだろうなあと腑に落ちました。臨床家かくあるべし。肝に銘じることにします。
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不肖ながら臨床心理士を目指しています。
この本を呼んだら、本当に自分なんかが目指していいものか、もし仮に試験に受かったとしてもこんな責任のある仕事をやり遂げられるのか、自問自答してみました。答えは出なかったのですが、「これから勉強していく中でその適正を見つけよう」となんとも先送り的な結論に。
河合隼雄さんやその他の心理療法家と呼ばれる先生方の本を呼んだりお話を聞いたりしてみたい、と思える一冊でした。
Posted by ブクログ
学校の職員文庫の片隅にあったのを拝読。
河合さんの経験に基づく考えや思いが詰まった本で、
しかも、語り口が柔らかいので、とてもわかりやすく読み進めることができた。
この本を読んで、内容を理解し、そのことを実践できるのであれば、
学校教育の質ももっとアップするだろうなぁと思いつつ…
この本に限らず、河合さんに触れたことのある先生は、
子どもに対する見方が柔らかいなぁと感じることが多いので、
学校の先生であれば、河合さんにぜひ触れてほしいなと思う。
Posted by ブクログ
以前、海外の統合失調症家系の本を読んだ際、とんでもないことをしても意外と家族が集まるものなのだなと思っていたが、
「昔にしても、父親と子ども、母親と子ども、あるいは夫と妻とが、ほんとうの個人としてつきあうということは日本ではほとんどなく、ただ、モノがないから、言わず語らずのうちに共有とか融合という状態の中で生きていくほかなかったわけです。そういう生き方で家族というのが構成されており、それがいわゆる日本の家族というものでした。」
という一文で納得した。強い母性と関係の希薄さによるアンビバレントは日本独自で、いちいち海外と比較してもしょうがないかもしれないなと思う。
重いことがさらっと書いてあるので、すらすら読んでいたらここに答えがあった!と急に手が止まることがある本だった。
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精神科医、スクールカウンセラー、家裁調査官など第一線で活躍している人が、臨床を続ける上で困っていることや疑問を河合隼雄氏に質問し、それに答えていく形式。
臨床の現場でこんなにも一生懸命課題に取り組んでいる人たちがいるのだと実感し、単純な私は嬉しくなってしまう。そして私も自分の仕事を頑張ろうとまた思えるような本だった。
ー治療者の若い時(初心者)ときというのは、面接がうまくいっているときには、相手が苦しいとうことがなかなかわからない。治療者がうまくいっていると思っているときというのは、相手側何いろいろと反省したり、深く考えたり、苦しんだり、自分を責めたりしている時。そこで、こちらがうまいこといったと思って喜んでいると、相手の苦しみとはだんだん乖離してしまう。この状態がある程度すすむと相手は面接に来る気をなくしてしまう。
このことを心得ているか否かだけでも雲泥の差が出てきますね。肝に銘じたいです。
ーどんなに訓練を受け、いかに多くの経験を積んでも、全部がわかり共感できるなどということはない。カウンセリングを受けに来るような人は、みんなそれぞれ深い問題をかかえているから、常に新し発見の連続であり、新しい限界との遭遇とも言える。新しい発見限界に共感していくためには、さらに新しい努力が必要になってくる。
異性の同性愛がなかなか共感できなければ、三島由紀夫の小説を読む。
難しいケースの人がこの音楽が好きだと言えば、一生懸命その音楽を聞いてみる、という共感する努力が必要。
また、個人的には関係ない複数の人が三島の「金閣寺」に感動したとか、同じ日におなじようなことを言ったりしていれば、そこには何かしらのメッセージがあるはずなので、そういう時はどんなに忙しくても必ず読んでみる。
河合隼雄氏も常にこういった努力を重ねてきている。
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この本の対談者は、「閉ざされた心との対話」=心理療法の現場から (上)、「心にある 癒やす力 治る力」=心理療法の現場から (下)、という2冊の本と同じメンバーで、その時の対談者のQ&Aを本にしたものがこの本。
以下の話が参考になった。
(河合さんの師匠の)マイヤー先生も、そのときの流れで、カウンセリングが50分のところが1時間になったり、40分でやめるときもありました。そこで私が、「先生はあんまり時間どおりにやりませんね」と言ったら、こんな返事でした。
「君は、『カルメン』は三時間だけど、『椿姫』は二時間だから、同じ値段ではおかしいとか、『カルメン』のほうが割安だとか言うかね。その作品を見にいっているんだから、作品が終わったら終わりじゃないか」
この話は、河合さんの「イメージの心理学」という本にある「人間は生まれたときから完成しているとも言えるし、どんな人も未完のままに死ぬとも言える」という言葉に通じる逸話である。幼くして死んで、その人の人生という作品が、周りの人には未完に見えたとしても、本人には、それで完成なのだ。
人生の評価は、時間の長さで比較するようなものではない、ということを言いたいのではないだろうか。
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今の自分にとって、ジャストタイミングで出会えたと思えた本。
「答えは問処にあり」という言葉がとてもしっくりときて、折に触れて思い出すようになりました。
そのほか、「その人にとってほんとうに幸せか」考えること、「相手が攻撃できる可能性を残すこと」、「そこにいること」、言葉と心を一致させることなど、多くの示唆をいただきました。
また、カウンセリングは本人の心に深くコミットするものであり、連携はコミットのための便宜である、という説明は、とてもすっきりと受け取れるものでした。
これからも、きっと、読み返す機会が訪れる本だろうなと思いました。この本ができるきっかけとなった本も、ぜひ読みたいです。
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心理療法家としてのあり方について、
考えさせられたり納得したりできる本です。
人の悩みをきくのに料金や時間を設定することに抵抗を感じていましたが、
そこに納得できる理由も書かれていたり。
自分にこの仕事は向いているのか、
自分にこの仕事が本当にできるのか、
何年たってもそんな疑問を抱きながら真摯に人と向き合う。
それこそが大切な要素であることを改めて感じました。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
悩み、傷つく心を知ると自分も他人も見えてくる!!
人間の心がいかにわからないかを骨身にしみてわかっている「心の専門家」である著者が、「人の心とは何か」に心理療法の現場から答える。
[ 目次 ]
第1章 私が「人の心」に出会ったとき
第2章 日本人の心の問題
第3章 心との対話法
第4章 心がいま直面していること
第5章 心の影と闇、そして新しい発見
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
現場で活躍する心理療法家たちのさまざまな質問に答えるかたちで出来上がった本である。気軽には読めるが、読むほどに人と人のかかわりについて胸にしみるような言葉が多かった。
現場で苦労する心理療法家たちの真剣な質問に、著者も熱心に語り、小冊子ながら奥行きと幅のある、良質な本になっている。著者が、来談者にかかわる姿勢が、じかに感じられる。
深いところにどんと安定して来談者にどこまでも付き添っていく限りない包容性。それでいてちょっとした言葉の端はしに、こちらがハッとするような細やかな指摘があったりして、じつに参考になる。
心理療法について語りながら、人間と人間との関係についてのもっとも深いところに平易な言葉で触れていく、魅力的な本だ。
Posted by ブクログ
この人の本を対談じゃなくてちゃんと読んだのは、「こころの処方箋」以来なのかもしれない。といっても、口述筆記だそうですが。わかりやすいことばで、一応臨床心理士に向けても話していて、とてもよく理解できた。しかも、行動療法の話が出てきた辺りでは、なるほどなるほど、こういう見方もあるのね、と面白く読んだ。でも、やっぱりなんていうのかな、臨床心理士の人が書けば、臨床心理士中心になるのだなぁ、と思ったのであった。ちょっとはこういう本も読もうっと。
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It was different from what I had initially expected; it turned out to focus on psychological counseling.
Nevertheless, it provided valuable insights into how professionals in that field think.
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これを読みながら、つくづく人々が抱える問題というのは、一夜にして瞬間的に治る・解決するなんていうことはそうそうなく、じわじわと、じっくりだんだん治る、良くなるものだと改めて感じさせられる。カウンセラー・臨床心理士とは、なんとも忍耐力の必要な仕事だなと思わされる、、
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臨床心理士の皆さんへのアドバイスを延々と共有されている形だった。はじめ違和感を感じたが、臨床心理士さんの着眼点や考え方を知ることができて良かった。しかしタイトルの『人の心はどこまでわかるか』、ということに対する答えのようなものはあるようでなかったのが気になるところ。
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多くの方と同じく河合隼雄の著書とは古くから付き合いで、河合隼雄が流行った(?)80年代からかれこれ数十年な感じですが、多作だったこともありなかなか読み切れていません。
これは分析やカウンセリングにテーマを絞った対談集。戦いの記録でもあり、問いかけでもあり、河合隼雄らしい内容でよかった。
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題名からイメージ、期待していた「人の心を理解するためのテクニック」とは違い、「心理療法家とはこんな仕事だよ」と言った感じの内容で少々拍子抜け。ただ、誰にでも分かりやすく平易な日本語で書こうとされてる事は文章から伝わってくる。
『教師の生徒に対する体罰がときどき問題になりますが、体罰と同じ厳しさ、強さを、体を使わずに、言葉と態度で表現できるようになることがかんじんです。それが父性を鍛えるということです。』p69より引用
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心理療法家がどのような姿勢で、クライエントと向き合っているのか、さまざまなケースを例に記されている本。
心理学者というものは、全人格で患者と向き合わなければならない仕事だ。医者と同じように、患者の命をも左右する。スキルや知識を得ただけでは成り立たないし、多少の経験では心もとない。かといって経験を積まなければ高みに行けない。
「心理療法家は全体が見えてなければならないのです」とあるけれど、そんなに簡単に見えるものでもないだろう。
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中堅の心理療法家・カウンセラーたちから寄せられた質問に著者が答えるかたちで、心理療法のあり方について論じた本です。
本書を読むと、心理療法家の人たちが心の病を非常に広い文脈でとらえていることがよくわかります。たとえば著者は、長年の妄想が治った患者から、「年来の友人を失った心境」だという感想を聞かされたというエピソードを紹介しています。ここには、ただ妄想を治してしまえばよいというような単純な考え方ではなく、患者を取り巻く社会や患者自身の生き方といった広い文脈のなかで患者の症状を考えようとする姿勢がよく示されているように思います。
心理療法家やカウンセラーと呼ばれる人たちも、そうした患者を取り巻く広い文脈のなかでみずからのなすべきことを見つけ出していかなければならないことはよくわかりましたが、そうした心理療法家の役割が世間から十分に理解されていないことに対する葛藤もあることを教えられました。
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人の心はどこまでわかるか の答えを期待して読んでは行けません(笑)。
たくさんの臨床家からの質問に著者が答える形式です。
臨床心理の現場以外でも役立つことが多いと思います。
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中堅の心理療法家の人達と河合先生の対話をもとに、心理療法について書かれた本です。人を理解することには、終わりはなく、どんな時も希望を持つこと、常に研究し、努力することなど、多くのことを教えてくれました。
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河合さんがユング分析家になったのは、アメリカ留学で尊敬する2人の教授が「スイスの研究所に行ってユング分析家になれ」と言ったからだそう。偶然の必然てあるんだなぁ。「自分が治してやる」という気持ちでは臨床はできないそう。問題行動が治って「普通の人」になることで、本人は「さみしい気持ち」になったり、自殺したりしてしまうこともある。
Posted by ブクログ
あんまり記憶にありませんが、たぶん、いろいろな投書に応える形で河合さんの考えや、問題へのヒントを教えてくれる本だったと思います。こういう本を読んで、少しづつ自分の考え方に影響がもたらされる物だと思います。意識していない部分で変容が起こるような気がします。
様々な分野で心理療法に関わる人たちの質問に答えていくという内容。
専門分野のことだけど、河合さんは平易な言葉使いで丁寧に、
答えすぎずに演繹的に意見を述べられています。
だから、一般の素人が読んでみても、なるほどなぁと考えさせられるところがあります。
著作はたくさんあるだろうけれど、まだまだ話を聴いてみたいような人。
亡くなられたのが残念です。
Posted by ブクログ
父性というものを学べた。親と子等家族というものの考え方が日本と欧州では背景から違い、上辺だけ見ないで深いところを知って自らに落とし込む大切さみたいなことが知れた。
Posted by ブクログ
著者はユング派の心理療法を確立した有名な臨床心理学者。
専門的な言葉が少ないので、初心者でも読みやすいけど、単純に表があれば裏があるというような話ではないので、白黒はっきりつけたい人には無理だと思われます。
経験談は少し自慢的なところも…