中島らものレビュー一覧
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Posted by ブクログ
電子書籍版を購入。
電子版は前書きも後書きも無いので、読み始めてから、相談者の悩みの内容も解答もかなり昔の感じだなって思った。思春期らしい相談者の親が戦時中の人らしいのをみて、これは数年ではなく数十年前の気配がすると思って調べたら1980年代に最初の本が出てた模様。
どの時代になっても家族や友人の奇行に驚き悩むのは変わらないんだなって思ったし、解答が思いもよらない方向の視点で面白い。短いナイトスクープみたいな感じがある。
自分が悩みすぎてどうにもならない時、同調よりもこういう思いもよらぬ方向からのアドバイスもしくは視点をもらえると本当に救われた気がするので嬉しいんじゃないかなと思った。
読むのが遅い私でも2時間で読み切れました。 -
Posted by ブクログ
正統派な幽霊ものやサスペンス系のホラーもありつつ、オカルトや超常現象の趣味があふれた話にシュールな作品など、中島らもさんの表も裏も楽しめる短編集でした。らもさんの場合は正統派系も、ぶっ飛んだ系も、どっちも表なのかもしれないけれど。
正統派系だと嗅覚の鋭敏な女性が、新しく越してきたマンションの浴室の音と臭いに悩まされる「はなびえ」と、
盗聴が趣味の男が、隣室の女性が一人で誰かと会話している様子を聞いてしまう「耳飢え」が好きでした。
「はなびえ」は現象としては正統派なんだけど、そこに女性心理であったり、ラストの一言の皮肉が効いていて、単なる都会の怪談話でなく、都市に生きる女性の一面を照らしたような一編になっていると思います。
「耳飢え」は盗聴にはまる男の心理や設定が妙にリアルだし、隣の女性の謎も相まって引き込まれる話でした。ラストシーンのぞーっとさせる感じも描写の上手さとか、話の引き込み方の上手さを感じます。
「ピラミッドのヘソ」も個人的に好み。延々とピラミッドエネルギーの講釈を聞かされてると時は「この人は何を書いてるんだ?」と思うし「自分は今何読まされてるんだ?」とも思うけど、なぜか読めてしまうし、面白かった気もしてしまう。たぶん『ドグラ・マグラ』とか『黒死舘殺人事件』を面白く読める人は好きな話じゃないかなと思います。
同じ系譜で言うと「翼と性器」もその系統の作品かも。異様な告白と天使と悪魔をめぐる雑学が続く手紙は、ラストでなんとも言えない異様な展開に突入していきます。
「骨喰う調べ」もラストが好きです。この話は「お墓がああなったら面白いだろうな」という妄想一本で書いた話ではないか、とも疑ってしまうけど(笑)。あれをさらっと書くのが分かってるって感じがします。
オカルト趣味でいうと「膝」もよかった。人面瘡評論家というこれまたシュールな話から、ラストはいわゆる奇妙な味の雰囲気が楽しめる作品となっています。
他にも異国を舞台にした話であったり、ミュージシャンでもあった著者の心情が感じられる作品、ちょっといい話の雰囲気のひねったゴーストストーリーもあって、まさに変幻自在な作品たちです。
プロローグとエピローグの奇妙さも読者である自分が「人体模型の夜」に迷い込んだような気分にさせる、短編集ながらも一冊通して奇妙な世界観が最後まで持続する不思議な作品でした。 -
Posted by ブクログ
ドタバタものかと思いきや、どこか詩的な言葉や表現が現れ、物語の方向性がいきなり変わり、怒涛のように言葉が紡がれる。
まさに中島らもさんらしい作品でした。
一番印象的だったのは、写植を営む波多野が知り合いである詐欺師の相川からもらった薬を口にして、ハイになった状態で仕事にかかる場面。
写植というのはPCによるデザインが普及する前の時代、フィルムや専用の機械などを利用して紙に印字する技術のこと。
波多野の思考と、仕事で打ち込んでいく文字が混ざり合い、意味の通らない言葉の連なりが延々と続いていく。
どういう思考回路をしていたら、こういう文章を書き続けることができるのだろう、とこうして本の感想を文章として書いてる身からすると、不思議だしうらやましくも思いました。でも、そういう文章を書くには、著者である中島らもさんなみの波乱万丈な人生経験と、何かの中毒にならないといけないような気がしますが……
話としては写植を営む波多野のもとに、詐欺師の相川が転がり込んできて騒動に巻き込まれていくというストーリーになるのだけど、詐欺師の相川のキャラも面白かった。
いきなり波多野のもとに謎のタニシを持ち込んでくるという、めちゃくちゃで自分勝手な人間かと思ったら、詐欺自体は巧妙でリアリティがあり、独自の哲学を持っている。そうした不思議な二面性や、彼の回想から明らかになる、彼自身のどこか憎み切れない愛嬌や情けなさみたいなものが、良かったのだと思います。
あと作品の中盤以降に現れる女性編集者の宇井もいいキャラでした。一昔前のトレンディドラマに出てきそうな、古い男性的な表現をするなら「いい女」といった感じの女性です。
この手の女性キャラは今読むと時代を感じてしまい、冷めてしまうときもあるのですが、この作品に関してはそれがありませんでした。彼女と波多野・相川のやりとりが洒落ていて、単なる古くささを超えた、中島らもさんの女性に対する一種のロマンや理想が現れているように感じました。それが自分の感性にも刺さったのかもしれません。
独特の愛嬌があるキャラクターたちのドタバタ劇に、中島らもさんしかできない表現が合わさり、楽しく笑えながらも、どこかおしゃれで知的な雰囲気も感じます。やはり中島らもさんは唯一無二の作家だったのだと改めて感じました。 -
Posted by ブクログ
「僕が踏んだ街と 僕に踏まれた街」に続き中島らも二作目。
前作とは違い明るい雰囲気。後半は呪術などに関しての興味も語られる。
「生きている」の反対語は「死」ではなく、「生きていない」であり、究極には無である。
死という状態は、人間の想像力によってのみ規定される架空の概念である。
自分という存在は、人間という種の連続の中の一つの結節点であり、種が繋がる限り僕という存在も永続的に生き続ける。
凝り固まっていた死という一大イベントを、よりライトに捉え直すことができました。
所々に核や戦争についても言及されていた。人類史における最大の悪は核である。。??