原田マハのレビュー一覧
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ネタバレデスクへ戻ると、麻実は、空っぽの紙カップの文字──We Are Happy To Serve You.──「We Are」と、「Serve」の中の「rv」の二文字を、サインペンで黒く塗りつぶした。
Happy To See You.──あえてよかった。
そのカップを、パティのデスクの真ん中に置いた。せいせいと明るい心持ちで、麻実はその日、オフィスを後にした。
マンハッタンの先っぽでは、ふたつのタワーが燦々と発光していた。
あの街を、世界を、静かに、等しく照らし出していた──。
原田マハ氏の大人気『MoMAシリーズ』の一作で、本作はMoMAを舞台にした全5話の短編集でした。
以前読んだ『楽園のカンヴァス』でも登場していたティム・ブラウンとトム・ブラウンが、本作でも名前が出てきて、同じ世界線でのお話なんだなーと。
僕が好きなお話は1話目『中断された展覧会の記憶』と5話目『あえてよかった』が好きでした。
原田マハ氏の作品は毎回心が洗われる。疲れていたり荒んだ心を、そっと包み込んで癒してくれるような優しい文体ですよねー。
好きすぎていっぱい積読してるから、少しずつ読み進めていきたいなー。
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ニューヨークの中心、マンハッタンに存在し、1920年代から「ザ・モダン」と呼ばれたモダンアートの殿堂。それが「MoMA」ニューヨーク近代美術館。近現代美術、工業デザインなどを収集し、20世紀以降の美術の発展と普及に多大な貢献をしてきたこの美術館を舞台に、そこにたずさわる人々に起きる5つの出来事を描いた自らの美術小説の原点にとりまくんだ美術小説短編集がついに刊行。
『楽園のカンヴァス』で、山本周五郎賞を受賞、本屋大賞三位を獲得した原田マハが、半年間勤務し、『楽園のカンヴァス』でも重要なモチーフとなった〈ルソー〉の「夢」も所蔵する「MoMA」が舞台。『楽園のカンヴァス』とは、世界観を共有し、その作中人物も登場。「新しい出口」は、マティスとビカソ、そしてある学芸員の友情と別れを描いた作品。そのほかにも、アメリカの国民的画家〈アンドリュー・ワイエス〉と〈フクシマ〉の原発事故について描く「中断された展覧会の記憶」、MoMAに現れる一風変わった訪問者にまつわる監視員の話「ロックフェラーギャラリーの幽霊」、初代館長アルフレッド・バーと、美しきMoMAの記憶を、インダストリアルデサイナーの視点から描いた「私の好きなマシン」、美術館に併設されたデザインストアのウィンドウにディスプレイされた日本に待つわるものについての意外なエピソードをつづった「あえてよかった」など、著者ならではの専門的かつ、わかりやすい視点で、芸術の面白さ、そして「MoMA」の背景と、その歴史、そして所蔵される作品群の魅力を、十二分に読者へと伝える待望の「美術館」小説集。 -
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風神雷神図屏風の作者俵屋宗達をめぐる物語。
どこまでが史実でどこまでが創作なのか、分からず、最後の解説で、おぉ、この辺までが史実でこの辺が創作ね。って理解した物語。
原田マハさんのアート&冒険譚が染みる物語でした。
下巻です。
さまざまな苦難を得て一行はヨーロッパに到着します。
さらに、彼らはヨーロッパの各地で大歓迎を受けることに。
そりゃそうだよね。見ず知らずの国からそれなりの人が来ているんだもんね。
また驚くのは、航海の間に身に着けた彼らの語学力。
自分は英語でさえ苦労しているのに..(笑)
そして、いよいよローマ教皇との謁見。
そんな中、宗達はバロックの巨匠・カラヴァジョと出会います。
そこで結ばれた約束。
お互いの「己の絵」を贈りあうことに。
そして帰路に就くという設定です。
こうして、マカオの学芸員と彩が目にした「風神雷神」が描かれた西洋絵画と古文書に記された宗達の文字の意味が明らかになります。
なるほど、すごい設定、壮大な世界観でした。
そして、そこに感じたアートの力。
マハさんの世界にははずれがありませんね。
とってもお勧めです。 -
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風神雷神図屏風の作者俵屋宗達をめぐる物語。
どこまでが史実でどこまでが創作なのか、分からず、最後の解説で、おぉ、この辺までが史実でこの辺が創作ね。って理解した物語。
原田マハさんのアート&冒険譚が染みる物語でした。
上巻です。
京都国立博物館研究員の彩のもとにマカオ博物館の学芸員が現れます。
学芸員に導かれ、マカオを訪れた彩が目にしたものは「風神雷神」が描かれた西洋絵画と、天正遣欧使節の一人、原・マルティノの署名が残る古文書。
その古文書に記された、「俵 屋 宗 達」。
そして、物語は織田信長の時代へ。
信長にその画力を認められた宗達は、狩野永徳の安土城が京を見下ろす洛中洛外図屏風の創作を手伝います。
そんな宗達と遣欧使節に選べれた4人の少年の出会い。
そして、その屏風を教皇に献上する役割を与えられた宗達は遣欧使節団とともに、ヨーロッパへ。
4人と宗達たちの反目がありながらも、徐々に理解しあいながら、航海は続きます。
そんな宗達には、信長から密命を授かっています。
武家やキリシタンの立場と絵師の立場。
しかし、目的は一つ、教皇に謁見すること。
当時の航海はそれこそ命がけの長い長い旅ということが理解できますし、その困難さは大変なものだったと思います。
下巻の解説を読むと、
信長が永徳の洛中洛外図を上杉謙信に贈ったこと。
安土屏風をローマ教皇に献上したこと。
天正遣欧使節の4人の少年が長崎から3年かけて、ローマにて、グレゴリウス13世に謁見したこと。
は史実の様です。
そんな中、マハさんの創作は下巻に進むのです(笑) -
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近代美術の巨匠であるマティス、ドガ、セザンヌ、モネを、彼らを支えた周囲の人々の目を通して描いた作品。原田マハさんの巧みな描写力により、芸術家たちの人生が、光によって移り変わる印象派絵画のように儚く美しく描かれている。どの章についても、芸術家たちの死や晩年が描かれているにもかかわらず、悲しさだけでなく、希望に満ち、想像力が掻き立てられる魅力に溢れている。読むと穏やかな気持ちになり、改めてマハさんの作品が大好きだと再確認できた。
マティスとピカソの関係や、ドガに対するメアリー・カサットの思いなど、本人たちにしか分からない領域が、マハさんの手にかかると「きっとこうだったに違いない」と思わせる圧倒的な説得力で迫ってくる。
表題作「ジヴェルニーの食卓」で登場する数々の食事は、フランスの豊かな食文化や、美しい景色を眺めながら食事をする幸福なひとときを感じられ、いつか現地で追体験してみたいなと強く思った。 -
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味わいながら読むつもりが一気に読んでしまった。
ヘレン・ケラーとアン・サリバンの物語を日本の明治時代の寒村に落とし込んだフィクション作品。
家父長制に、障がい者差別に、女性差別に必死で抗うシスターフッド小説。
れんの持つ強烈な生きる力が運命を引き寄せたんだろうな。と感じずにはいられない。しゃべれなくても、見えなくても、聞こえなくても、彼女の生きようとする力が周囲を動かしたんだ。
安自身が弱視という障がいを持ち、女性というだけで道が狭まることに苦しんだ。だから、安はれんのことを諦めなかったんだと思う。
れんの可能性を信じて奮闘する様子には親として学ぶべきところがたくさんあった…すごい忍耐…本当に。私なんて実の子どもなのに、ここまでがむしゃらに一生懸命やってあげてる自信ない。その熱意に胸を打たれて、思わず涙。
終盤、食事の席で取っ組み合いをするシーンには魂がゆさぶられた。
そして、このお話オリジナルの登場人物キワ。
言葉を尽くして何か伝えたい、というのは相手あってのこと。キワはれんにとってその大切な役だった。彼女の姿もいじらしくて涙を誘う。
れん、安、キワ、誰一人欠けてもこの結果にはならない。複雑により合わさった糸のようになって、奇跡の人を生んだと思う。 -
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ネタバレかなり好き!
表紙が素敵で買った。限定かばーだったらしい。
1話がまず重い。主人公に起こること全てが苦しくてドキドキして胸が苦しくなった。主人公の父親のことを嫌いになりきらないところ、娘を見捨てきれない父親、好き嫌いだけでは割り切れない感情が心を揺さぶってきた。
2話もかなり重い。でもかなり好きなお話。
全体的に文章もさくさく読めていい。浮気とか不倫が出てくる話は基本好きではないが。世の中こんな不倫してるの?キモすぎない?無理
最終話だけあんまり響かなかったので星4
ほぼ寝取りってこと?けど相手の男も行為中にクロの名前を呼んでいたの気持ち悪すぎる、結婚後も普通に友達として会おうとする主人公キモイ。個人的感情すぎるけど友情に対する裏切りがいちばん嫌いだからムカついた。勧善懲悪が好きなのでこいつらが人生成功してますみたいのもきもい。まあ描写的にもやらかしてしまったことに対する気持ちを抱えて生きていくんだろうけど、当たり前だろと思う。 -
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閉ざされた地で「固定概念」という真の障害に挑む
本作は、ヘレン・ケラーの物語をベースに、昭和中期の津軽を舞台として身体障害や女性蔑視、村社会の歪みを浮き彫りにした重厚な物語である。地吹雪の情景や津軽弁の描写から鮮烈な映像が浮かぶ本作は、感動的なヒューマンドラマでありながら、社会の死角に潜む闇を暴くサスペンスの側面も併せ持っている。
1. 世界観の断絶と社会構造の死角
健常者優位の社会において、敷居や急な階段などの造形美は、障害者にとっての「トラップ」に変貌する。これは悪意によるものではなく、互いの世界観を認識できない社会構造が生んだ死角だ。しかし、この地に根差すボサマやイタコといった互助型の福祉システムと、暗闇におけるイタコの言葉は、差別に悩む主人公・安に現状打破への大きな気づきをもたらす。
2. 教育の根源と自立へのアプローチ
帰国子女の存在が既得権益層の恐れを誘うなか、試みられるのは現代のマネジメントにも通じる教育だ。目標を立て、優先順位をつけて成功体験を積ませる。ただ言葉を教えるのではなく、存在を認める「名前」と、自分を映す「友達」を通じて自立を促す。親がリスクを恐れて子供の可能性を閉ざすのではなく、信じて決断することの重要性が説かれる。
3. 美談を覆すサスペンスへの急展開
ローマ字と手話のハイブリッドという努力が結実し、ハッピーエンドを迎えたかに見えた瞬間、物語はサスペンスへと急展開する。積み上げた努力が無駄になりかけた時、諦めるのか、命懸けで贖うのか。将来の価値を見据えてサンクコストを冷徹に見定める主人公たちの決断が、物語に圧倒的な緊迫感をもたらしている。
まとめ
本作が伝えるのは、真の障害とは心身の不自由さや過酷な環境そのものではなく、人々の心に潜む「固定概念」だということだ。緻密な伏線と社会批評が織りなす、深く考えさせられる傑作である。