原田マハのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
読む前は、明るく温かい雰囲気の話かと思ったが、登場人物全員訳アリ。それぞれに壮絶な過去を持つ人々が"尽果(つきはて)"という土地に流れつき、徐々にその過去が明らかになっていく。
それぞれの過去は重たく到底受け止めきれないようなことばかりだけど、一貫して温かいイメージを与えてくれるのは登場する四季折々の素材を使った和食料理。
やりきれない経験をしている人たちが集まり、それぞれに事情があるとわかっているからこそお互い踏み込みすぎない。そっと見守る。だけど無関心なわけではない。どこかに感じられる人柄の温かさ。
一面に咲く菜の花や真っ青な海、色づく紅葉や降り積もった雪など、四 -
Posted by ブクログ
僕にとってのいい小説とは、読後の余韻が長く続く小説だ。この小説は読後の余韻に十分浸れる。
時代は16世紀の末、遣欧使節の一員としてローマに向かう俵屋宗達。16歳の少年たちの渡欧というある種の”冒険”をみずみずしく描く。
ローマで宗達が見たシスティーナ礼拝堂の「天地創造」、サンタ・マリア・デッレ・グラッツィエ教会の「最後の晩餐」。
宗達が「天地創造」や「最後の晩餐」などの名画に出会ったときの描写がいい。
「いっさいの言葉を奪い去られて、ただただ、涙を流していた」
「絵とは、ただ、目に見えるものをそのまま画紙や画布に描き写すだけのものではない。絵師の思いが込められた絵こそ、まことに見る者の心を -
Posted by ブクログ
ネタバレ飛行機も新幹線もない時代、東の果ての果ての国、日本と西欧が「出会う」ことは奇跡的なことであった。
なにもかもが異なる二つの土地が美を愛でる心を通して結ばれていくところに、アートの偉大さを感じた。
現代では交通機関が整備されたり、インターネットが普及したりして、「出会い」は昔に比べると想像もつかないほどに広がった。そのせいで1つ1つの「出会い」に対する感動や興奮は小さくなってしまったように思う。
「目の前に、ひとつの絵がある。それは、いつの時代にもその絵を愛し、守り、伝えようとした人がいた証にほかならない。」
作中にあった言葉である。
「出会い」がありふれた現代において、私は人に限らず、あらゆ -
Posted by ブクログ
江戸時代初期の絵師、俵屋宗達をモデルにした壮大な歴史小説。
その代表作「風神雷神屛風」は京都国立博物館で見ることができるのだろうか?
この絵を14歳の彩が見た際の描写。
「宗達の絵は光を放っていた。強烈な磁力も。彩は一気に引き込まれて、しばらく動くことすらできなかかった。天上の光に包まれて」
こんな風に描写されると、どんな絵何だろうと実物を見たくなる。
1582年、天正遣欧使節は、3年を費やしローマを訪問。ローマ教皇と謁見を果たす。
上巻は、宗達を含めた天正遣欧使節が海路にてローマを目指す苦難の途上で幕を閉じる。
時に宗達は、彩が「風神雷神屛風」を初めて見た時の年齢と同じ14歳。
今の時 -
Posted by ブクログ
一遍ずつ書いていきます。(故に評価は最後)
椿姫「3.0」
男の子凄いね。大人と子供の違いって、「責任感」の有り無しで自分は区別しているので、それがある少年は少なくとも大人だなと感じた。
よって、主人公、主人公を妊娠させた男、少女はまだ子供だと感じた。
最後の主人公が男の子の肩に安心したように頭を預けたのは、一瞬の安心を求めてそうなったのかな。
夜明けまで「4.0」
この物語を読んで夜明けっていうタイトルから
連想する言葉は「希望」「安心」「帰るところ」ってワードかな。軽自動車に乗って山道をヒカルと一美が陽気に楽しんでいるシーンと、村落の自然と一体化するような雰囲気がとても好き!
星がひ -
Posted by ブクログ
原田マハさんの作品はいくつも読んでいるし、ヤマザキマリさんは講演を聴きに行ってほんとに面白かった記憶があり、大好きな2人の対談のため購入。
2人とも美術マニアなんだけど、着眼点が違うというか、「そういうモノの見方をするのか」というのが面白かった。
例えばヤマザキマリさんのウッチェロの話で、「遠近法や理系で物を考えすぎて幾何学模様を絵に入れてしまう」みたいな彼の人となりから美術に反映される考察とか、原田マハさんの風神雷神図屏風で「作者の俵屋宗達はルネサンスを見たに違いない!」という仮説の妄想から歴史を調べて小説ストーリーを作るみたいなのは自分にはできない思考。
作品だけを見るのではなく、そ -
Posted by ブクログ
ネタバレオーブリー・ビアズリー展でこの本を購入した。
「酷い英訳だったが挿絵が好評で売れた」の裏側。
今の自分と重なる点からいえば、強い愛情と正義、自己実現の執着を以て、愛情の対象を破滅させ得る。
物語としては解説の中野さんがよく良い射ており、"2人の天才を追いかけるうちに自身が化け物のようになっていった"がしっくり来る。
最後は怒涛だった。
深い愛を持って弟の安全を願った、自身のキャリアを望んだ姉が弟を含む3人を突き落とした。
病気で長くないことが分かっていた弟のその後の仕事を思えば良い結果だったのか、弟が熱望した未来を壊したことが何よりの不幸なのか。
弟に信頼された姉の愛