あらすじ
ジヴェルニーに移り住み、青空の下で庭の風景を描き続けたクロード・モネ。その傍には義理の娘、ブランシュがいた。身を持ち崩したパトロン一家を引き取り、制作を続けた彼の目には何が映っていたのか。(「ジヴェルニーの食卓」)新しい美を求め、時代を切り拓いた芸術家の人生が色鮮やかに蘇る。マティス、ピカソ、ドガ、セザンヌら印象派たちの、葛藤と作品への真摯な姿を描いた四つの物語。
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恩田陸の作品を読んだ後だったこともあり、ドビュッシーやラヴェルといった19世紀末から20世紀初頭の音楽家に触れたことを思い起した。彼らがパリで印象主義を音で表現する際の源泉となったのが、ドガやモネが描いた滲み出る色彩であった。その描写を通じて、当時のフランスの空気をうかがい知ることができた。
モネらが印象派へと移行できた背景には、写真・蓄音機・印刷機といった技術革新がある。芸術が記録や複写の役割から解放され、より自由な表現が可能になった。また、その芸術が広く民衆に行き渡り、華やかな時代を築いていたことが伝わってくる。
さらに、本書では多くの女性が評価される立場を求めながらも、不条理な社会に翻弄されていく姿が描かれている。女性の自由というテーマは、当時に限らず、現代を生きる私たちにとっても向き合うべき課題であると感じた。
知識欲を大いに満たしてくれる一冊であり、まるでベテランの学芸員の解説に耳を傾けているような、深い学びを得られた。
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淡々と過ごす毎日、しかし、積み重なった長い階段を登るように、確信に満ちた一歩 一段を踏み締め続ける。
苦しい日々も、小さな幸せに向けた、序章に過ぎない。
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美術好きな友達が入院した時、短編で薄い文庫なら、とお見舞いで渡した。以来、彼女もマハさんファンになり何冊も読んで美術館にも行って、トークショーにも参加したな!そんな思い出深い一冊。
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画家と、その人生に触れた女性との短編集。
表現が色鮮やかで、おいしい匂いがして、暖かくて、愛で溢れてる。
3つ目の « Le père Tanguy »が1番好き!タンギーの娘がセザンヌへ宛てた手紙のみで構成されていて、ほろり。表題もかなりいい。
史実には忠実、でも間をこんなに鮮やかに埋めるなんて、すごすぎる。モネのこと好きになっちゃうよ
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マティスに始まり、ドガ、ゴッホ、モネ。4人の芸術家がまさに1人の人間として生きた物語。絵描きだと絵が、音楽家だと音楽が後世に残る。でもどうやってその彼らの子供たちが生み出されたのかずっと知りたかった。初めて読み終わりたくない、まだその芸術家のそばに寄り添いたいと丁寧にページを巡った一冊。憧れの芸術の世界観に浸ることができた。
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まるで印象派の絵のように心がグッと引き込まれ、しばし見つめていたくなるような作品だった。
日本でも絵が来日してはその人気が話題になる印象派の画家。そんな画家たちがかつては作風が認められず日々苦労に苛まれ、それでも絵に対する純粋な思いを失わずにいられたのはどうしてか、を作品を読んで知れた気がした。
また、周囲の一般的には知られていない、画家を支えた人々にスポットライトを当てることで画家に人間味が与えられていて読んでいて楽しかった。
読んでいると画家の絵を見たくなり、画家自身や周囲の人々についてもっと知りたくなって、アートが前より好きになった。
印象派の優しい光を感じられる素晴らしい作品でした。
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マティス、ドガ、セザンヌ、モネ。あまりにも有名な印象派の画家たち。その人生について、こんなふうに深く思いを巡らせたことがありませんでした。
美術に造詣の深いマハさんは、そんな彼らがどんなふうに当時を生きていたのかを、物語を通して想像する楽しさを教えてくれました。
そしてアートをより身近なものとして感じさせてくれた。
「画家」と周りから呼ばれる人のことや保守的な美術界のことなど、過去に何があったか、そばで見守ってきた人の記憶をのぞいているような気持ちになる。いつの間にか物語の世界に没入。
彼女たちの目を通して、作品の中ではあのピカソが、マティスが、ドガが、セザンヌが、モネが、生きている。
当たり前だけど、彼らも私たちと同じように毎日を生きて、話したり食べたり、悩んだりもしていたんですよね。
花々が咲き誇る美しいジヴェルニーの庭やきらめく太陽の光、美味しそうな食卓が目の前に広がり、五感を刺激される素敵な時間(ひととき)を過ごしました。
読みながら、まるでパリにいるような気分!
マハさんの作品はやっぱりすごいなぁ。
久しぶりのアート小説を堪能しました。
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画家たちにも生活があって、家族で食卓を囲む幸せもあれば、大切な人との別れもある。きっとその時の感情の移ろいは、作品にも繊細に現れてるんだろうなと。絵画をみるときに、どんな想いで描いたんやろう、って考えるのも深いなと思った。
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面白かった。襟を正して作品と向き合いたいそんな読書時間 登場する作品を調べ人物たちと同じように引き込まれ、まるでそこに作品があるかのように感じてしまう
4つの短編
アンリ マティス
エドガー ドガ
ポール セザンヌ
クロード モネ
一章二章と聞いたことない画家だったがすごさを引き立たせるワクワクさせる内容で、次が書簡体、読んでて初めは入ってこずも内容を理解してからはかなり面白かったと思う。そしてブランシュ視点のモネ、最初から良かった、ガトーヴェールヴェールが食べたくなった
好きなフレーズ引用
一分後には世界はかわってしまっているのですから
これがアンリマティスの目線 美のひらめき ひと目ぼれの瞬間なのだ と
たったいま
この目が この世界のありふれた風景を あれほどまでに鮮やかに見てとるのだ
太陽がこの世界を照らし続ける限り
けれどこの先は 疾馬の手綱を緩めて 転がるままにいけばいい
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友人に勧められて読みました。
芸術やアートの知識は全くなく、今まで美術館などに行ってもなんとなーく絵を観てるだけでしたが、こういった背景を知ることで以前よりずっと絵を観た時に楽しめそう!と思ってワクワクしています。
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以前何かのインタビューで、マハさんが「自分のアート小説では、史実1に対して創作が9の割合になることが多い」と語っていたのを思い出しました。
本作では、史実をもとにしたマハさんの創作によって、唯一無二のアーティストたちの人生が実に鮮やかに描き出されていました。
そして特筆すべきは、各ストーリーがアーチスト当人ではなく、彼らと関わりの深い第三者にスポットを当てて語られていることでしょう。
マティス〜家政婦マリアの語りから…
ドガ 〜メアリーカサットの追想から…
セザンヌ〜タンギー親父の娘の手紙から…
モネ 〜ともに暮らす義娘ブランシュの日常から…
読者は、マリアやブランシュらの眼差しから、アーティストたちの生き様とその作品に想いを馳せることができるのでした。
しかしこの4人。誰もが巨匠であるが故に、小説にしがいのあるアーティストたちなのでしょうね。どのストーリーも読み応えがあって、ますますアート作品への興味が深まりました。
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楽園のカンヴァスを読んだ勢いで買ったものの、時間がなく、やっと読んだ原田マハ。もちろん、作品自体は素晴らしいが、こちらの気の持ちようというか、いまのシチュエーションというか、読書にはそういうのも影響するよね。その物語世界にスッと入っていける時と、なかなか時間がかかるときと。
ヨーロッパからの帰りの機内で読んだダヴィンチ・コードとか大学病院に入院中に読んだ白い巨塔とか、、あんな臨場感は滅多にないけどね。
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この夏ニースに旅行に行くことになり、事前に読んでいた。
いつもフィクションとノンフィクションを織り交ぜて書かれているのでどこまでが本当のことかは分からないけど、
マティスの人柄や、こんなことを話していたのかなを想像できて、会ったこともないけどなんとなく人間性をイメージすることができた。
主人公がマグノリアをどう花瓶にいけるかを考えてマティスにそのいけた花を持って見せたら
「いい目を持ってる」みたいなことを言われ舞い上がる、みたいなエピソードがあったけど、
実際にマティス美術館でそのマグノリアの花の絵が見られたのは嬉しかったな。
自分が差し出したものを画家が絵にして永遠にとどめてくれるってなかなかない宝もののようなことなんだろうな。
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本書に出てくる画家の名前や代表作を多少は知っていても、作品と結びついていなかったり背景を知らなかった中で、本の帯に書かれていたように「読む美術館」として、作品をネット画像で調べながら、美術館で絵画を目の前にしているかのように想像して楽しむことが出来た。
例えばモネにしてもネットで生涯を調べて見ると、本書に書かれている内容と大方一致しておりフィクションばかりではないのだなと新たな発見が多くあった。
やはり絵画を題材にしたものは著者の真骨頂であり、絵画の表現1つにしても、そんな見方や言葉で表すことが出来るのだなと感心してしまった。
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たまたまモネ展に行った時にこちらの本の存在を知って後日購入。
モネのお話が目的だったけど4編ともとても良かったし好きだった。
タンギー爺さんに関しては最初「ゴッホのあの絵の…?」と思ったのにセザンヌのお話で「えっ」ってなったのですが、あのタンギー爺さんに違いなくて、こういった歴史の重なりなんかも調べつつ、もちろん作中に出てくる絵画も調べつつ読んだので学びにもなりました。
実在する人物が主人公だったりするけれど、細かいストーリーの部分はもちろん原田マハさんの創作に違いありません。
だけど実際こんな風に画家達の思いが紡がれていたのだとしたら素敵だなと思いました。
モネ展に行った直後に読んだこともあって、白内障になってしまってから晩年のモネの描写はとても興味深いものがありました。
これももちろん創作のお話ではあるけれど、モネがなんだか前より好きになれた気がします。
白内障の時期に描かれたモネの作品を思い出しつつ読んだので、心が痛くなるところもあったり…。
読んで良かったなと心から思えた一冊でした。
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マティス、ドガ、セザンヌ、モネ、巨匠と関わったパトロンや助手の4つの物語。
表題作のジヴェルニーの食卓は、モネとそれにかかわるパトロン一家および、
パトロン一家の娘がモネの助手としてかかわってくる物語。
パトロン=画家から絵を買ったり、書いてもらったりを頻繁に行う、
いわば、スポンサーのような人達。
モネに起こることやパトロン一家に起こる出来事に
助手としてかかわる若き娘のブランシュがどのようになっていくか・・・。
モネの代表作と言っても良い作品を書くために掛かった期間に
起きた出来事がメイン内容となって、パトロン一家とモネ一家の交流が
色濃く描かれ、最終的に・・・。
4つの物語に登場する助手となった女性たちの巨匠に対する思いが、
感動につながります。
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ドガとモネの短編が、特に素敵だった。
ドガの彫刻については知っていたけれど、世間的には悪趣味だとか気味の悪いものとして捉えられていることが多い中、原田マハさんの、ドガは踊り子を画家と同じエトワールを目指して戦う同志として捉えていたとする視点が絶妙で、胸が熱くなった。
モネについても同様。パトロンの妻と共同生活をし、やがて再婚したことはモネの人生の中でも、影の部分だと思う自分がいた。けれど、この小説の中での家族は血のつながりを超えた深い絆で結ばれていて、順風満帆な時も、辛い時も、幸せそうに食卓を囲んでいて。彼の温かな画風は、周りのサポートあってのものなのかなと。
もっと深く2人について知りたい、絵をみたいと思える良い作品でした。
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原田マハさんらしい、アートに関する短編集。
ジヴェルニーの食卓が好きだった。
実際にモネの作品を観たとき、遠目に見て“光が綺麗”と感じたのは間違いじゃなかった!と感じた。
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モネの絵画に興味を持ったので読んでみた。
やっぱり原田マハさんは美しい景色を言語化する天才だな〜と思いました。モネの家の庭の様子が鮮やかに浮かび上がってきてワクワクしました。
画家のそばにいた人たちの目線で描かれていて斬新で面白かったです。
それぞれの画家の世界に入り込むことが出来る素敵な時間だった
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印象派の画家が誕生する頃、フランスの美術界に巻き起こった激震を、私もそこで目撃しているかのように感じさせてくれる本。
機会があれば、この本に登場する画家たちの作品を、本のストーリーを思い浮かべながら、実際に鑑賞してみたいと思った。
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2015年発表のこの作品よりも先に、2021年発表の「リボルバー」を読み、台詞や描写に青臭さを感じ、少女マンガ的と辛口のコメントを書いた。
しかし、この作品は別物。上品なデザートをいただくかのごとく、丁寧に読み進んだ。
この違いは、どこから来たのだろう?短編と長編の違い?
まあ、それはともかくとして、収録されている4篇ともに印象派にふさわしい光溢れる風景描写で作者のキュレーターとしての目が活かされていて、人物描写では画家一人ひとりの画業に相応しい表現で描き上げられている。
どれくらい文献を参考にしたのか分からないが、特にマティスとピカソなど対比が上手く、彼らの作品を改めて眺めたくなった。
主軸となる脇役(マグノリアのマリアやメアリー・カサッドなど)も、つつましく、素晴らしい「目」の役割を果たしている。
ただ、どの話も似たり寄ったりの女性のひとり語りという気もする。また、作品をまたがると、マティスもモネも老画家として“同じ”に感じられる。
一番好きなのは、「美しい墓」なのだが、この1作だけを読んだ方が高く評価したかも。
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モネ、マティス、ドガ、セザンヌにフォーカスした短編集。
殆ど原田マハさんの小説で西洋美術史を学べてるので、また新たな巨匠ストーリーを読めて嬉しかったです。
多彩な美しい文章表現が多く見られて、上品な印象の一冊でした。
特に本のタイトルにもなっている『ジヴェルニーの食卓』は、モネが過ごした自然に囲まれた庭やお料理の描写が豊かで、温かい気持ちで読めました。
国立西洋美術館のモネ展に行ったので、よりリアルに情景が浮かんでモネのお庭にいるような気分でした。
ストーリーには強烈なインパクトはなく淡々としているので、初めて原田マハさんのアート小説を読む方はこれからじゃない方がいいと思います。
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絵画の奥深さを感じられる作品
うつくしい墓 △
エトワール ◯
タンギー爺さん ◎
ジヴェルニーの食卓 ◯
食卓の匂いが紙面上からふわっと香る
メニュー名を見ただけでお腹が空いた
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モネ展に行くので読んだ。マティスの召使・マリア視点の話である『うつくしい墓』、ドガの友人であり女性画家メアリー・カサット視点の話である『エトワール』、セザンヌなどを支えたタンギー爺さんと言われた画材屋の娘視点の話である『タンギー爺さん』、モネの義理の娘・ブランシュ視点の話である『ジヴェルニーの食卓』の4作を収録。
以前、『たゆたえども沈まず』を読んだときは思わなかったんだけど、原田マハの創作ってどこまで許されるんだろうってこれを読んで思ってしまった。どこまでが史実に忠実で、どこからがフィクションなのかがわからなくなる。全てフィクションだと思って楽しむのが一番いいんだろうけど。いいのかなあと思うのと同時に、でも日本の時代小説とかも過去の実在の人物を使って書かれた史実とフィクションが織り混ざった話だろうから別にいいのかなとも思う。
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原田マハさんの小説は何度か読んだことがあるが美術に関するのは初めてだった。
もう少し、絵画について、その時代について知っていれば楽しめたのだろうな。
タンギー爺さんとジヴェルニーの食卓が好き
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マネ、マチス、ドガ、セザンヌを取り巻く人を通して、画家や作品を描きだす短編集。4編の中では、マチスと娘のブランシェ、マネと家政婦のマリアの話が良かった。画家に対する尊敬の念なのか、作品への感動なのか、或いは慕情なのかは分からないが、側から見れば幸福な人生とは思えないが、ブランシェやマリアはとても幸福そうに描かれている。
後書に、「芸術はそれほどまでに他人の人生の犠牲を必要とするだろうか」とあったが、100年経っても観るものを惹き付ける芸術には、必要なことなのかもしれない。