池波正太郎のレビュー一覧
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「品川お匙屋敷」の一編において拉致された三冬を無事に保護した大治郎は、三冬の父、老中田沼意次に娘を嫁にもらってほしいと頼まれる。と、裏表紙のあらすじ紹介に書いてあるし、ほとんど予定調和なんだから、ネタばれではなかろう。めでたしめでたし。
しかし、裏表紙にそう掲載されていて、表題作が「新妻」ならば、ふたりが結婚するのはその一編だと誰でも思うじゃないか……。その点はやられたというか何というか。まあ、それは別として表題作の「新妻」は別の意味で味わい深い話。やはりこれも明暗の対比というか幸不幸の対比で成り立つ話ですよね。
ふたりの奇妙な新婚生活の一端が読み取れる「川越中納言」の冒頭は、いやもう勝手にやってくれというか(笑)。このシリーズの癖なのか、冒頭が和やかであればあるほど、続く事件が陰惨なのがやりきれないけれどねえ。ただ、この一編の結末には救われた思いがしますね。 -
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「雨避け小兵衛」の出だしに思わずにやりとする。飄々とした小兵衛だが、家庭人としては四十も年下のおはるにいいようにあしらわれている、そういうのもまたいいなあという書き方なのである。これに続いて起きる事件のやりきれなさとはじつにうまい対比である。同じような道を歩いてはいても、人というやつの運命はどこでどのようになるやもしれない。この編の末尾で小兵衛が噛みしめる思いは……。それにしても、おはるはけっきょくのところ小兵衛を「先生」と呼んでいるのだね。
続く「三冬の縁談」、めずらしく大治郎の右往左往さる様が面白い。このような筋で解決しなかったとしたら、大治郎がどのように行動しただろうかと意地悪く考えてしまうのだが、どうだろう?三冬にふさわしい男が縁談の相手であれば黙って身を引いたんだろうか?まあ、それでは物語にならないけれど……。 -
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このシリーズの人間関係でもうひとつ不可思議なのが、小兵衛の後妻であるおはると大治郎の関係かもしれない。もと秋山家の下女であったおはるは、今や老夫小兵衛と絶妙のコンビネーションを見せるのだが、大治郎が実際のところ義母をどう思っているのかは、ここに至るまで描写されなかったような気がする。それが、言葉ではないまでも態度に表れるのが「箱根細工」か?これは大治郎が旅先で母上のみやげにと買い求めるものだが、箱根細工の裁縫箱というところがなんとも微妙でよい。寄木細工のように、人生というやつもいろいろと微妙な要素で成り立っていることを象徴するかのようだ。それがちょっと狂うと、この話に出てくる男のようになるのだろう。まことに、ままならないものであるにちがいない。
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物語の軸のひとつに三冬の心境の変化というものがある。父である意次に対する姿勢もそうであるが、小兵衛に対するほのかなあこがれが、やがて恋の心になってその息子である大治郎のほうに向いていく過程が秀逸に描かれている。六十余にして自分の息子より若い後妻を持つ小兵衛とちがい、この大治郎、けっこうな朴念仁である(笑)。対する三冬は男装の武芸者なのだから、直接的にその恋の展開するはずもない……。表題作は三冬の心が大治郎に傾斜していくきっかけを見事に描いていると思う。理詰めでなく、むしろ生々しい女性を描いているのに、そこのところが男性であるぼくにもすっと理解することができるのだから……。
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このシリーズを読んでいて思うことのひとつに老中である田沼意次の政治のことがある。小学校の歴史では今でもあの「もとの田沼の……」という川柳を教えているのだろうか?政治などというのは、この作品中にも何度も触れられているように綺麗事だけではすまない部分も多々あるのだろう。作中の意次の政治に対する姿勢とか、あるいは剣客であることを「商売」とする小兵衛のやりかたなどを読んでいると、うなってしまうのである。なるほど、そういうやりかたがあるよなあ、という感じである。しかし、これ、なかなかぼくのような若僧には承服できかねる部分もあるのだけれどね。
佐々木三冬の心がじょじょにほぐれていくように、しかしいつの間にかぼくも作者のペースにはまってしまっていて、思わずにやついてしまうこと、二度や三度ではない。やはり、途中で読むのをやめるのは難しいようだ。 -
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老剣客の秋山小兵衛と息子の大治郎の活躍を描く池波正太郎の代表的作品。池波作品では『仕掛人・藤枝梅安』が既読なのだが、それに負けず劣らず面白い。じつは、このシリーズはもっと年をとってから読むためにおいておく予定だったのだが、魔がさしたのかふらふらと買いこんでしまった。梅安のときもそうだったのだが、一冊読めばたちまち続きが知りたくなるだろうという予想は見事に的中。これでまた老後(?)にとっておく予定のものをひとつなくしてしまったではないか(笑)。
第1巻では老中田沼意次の妾腹の娘である佐々木三冬の登場なる「女武芸者」を皮切りに、意次の暗殺がはかられる一件を描いた「御老中暗殺」など。 -
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池波正太郎の連作時代小説『決定版 鬼平犯科帳 特別長篇 誘拐〈24〉』を読みました。
『新装版 鬼平犯科帳 特別長篇 迷路〈22〉』、『決定版 鬼平犯科帳 特別長篇 炎の色〈23〉』に続き、池波正太郎の作品です。
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風が鳴った。
平蔵は愛刀の鯉口を切る。
雪か?闇の中に刃と刃が噛み合って火花が散った―。
表題とした「誘拐」は、著者の長逝によって永遠の未完となったが、三十年をこえる作家としての営みの掉尾を飾る作品でもある。
巻末に著者と長い交遊のあった文芸評論家尾崎秀樹氏の「池波正太郎の文学」を併録する「鬼平」最終巻。
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文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に1987年(昭和62年)11月号から1990年(平成2年)4月号に連載された後1994年(平成6年)に刊行された作品……実在の人物である火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公とする捕物帳、鬼平犯科帳シリーズの第24作で最終作です。
■女密偵女賊
■ふたり五郎蔵
■誘拐
・相川の虎次郎
・お熊の茶店
・浪人・神谷勝平
■池波正太郎の文学 尾崎秀樹
■平蔵の好きな食べもの屋 秋山忠彌
テレビドラマでもお馴染みの鬼平犯科帳シリーズ……原作となる小説も面白いです! シリーズ最終作は短篇『女密偵女賊』と中篇『ふたり五郎蔵』、5作目の長篇で著者急逝のため未完の『炎の色』が収録されています。
おまさは、昔の仲間・お糸を茶店で見かける(「女密偵女賊」)……火盗改メの役宅にきた新しい「まわり髪結い」、その名は五郎蔵だった(「ふたりの五郎蔵」)、、、
荒神のお夏はおまさへの思いを断ち切れず……未完となった最後の作品「誘拐」。
「ふたり五郎蔵」の池波正太郎による挿画と、尾崎秀樹の「池波正太郎の文学」、秋山忠彌の「平蔵の好きな食べもの屋」を併録する「鬼平」最終巻!
おまさが、かつての仲間・お糸を偶然見かけたことから始まり、女密偵たちの過去と現在が交錯するシリーズらしい人情と緊張の物語『女密偵女賊』、
火付盗賊改方に新しい髪結い・五郎蔵が入るが、その素性に不審が生じる…… 彼の妻が行方不明であり、背後には強矢の伊佐蔵の弟・暮坪の新五郎が関わっており、2人の“五郎蔵”を軸に、鬼平の洞察と密偵たちの動きが光る『ふたり五郎蔵』、
前巻『炎の色』から続く物語で、荒神のお夏が裏切り者・おまさへの復讐を企む……という筋立てで、緊張感の高い展開が推測されるが著者の急逝のため、これから! というところで途切れ、結末は読者の想像に委ねられる『誘拐』、
どの作品も面白かったですねー 『誘拐』は未完なので残念ですが……全篇を通じてシリーズの余韻と喪失感が強く感じられた一冊でしたね。
未完でありながらシリーズの魅力が凝縮された最終巻だと思います……遂にシリーズ全巻を読み終えちゃいましたねー 今は喪失感でいっぱいですね。 -
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池波正太郎の連作時代小説『決定版 鬼平犯科帳 特別長篇 炎の色〈23〉』を読みました。
『新装版 鬼平犯科帳 特別長篇 迷路〈22〉』に続き、池波正太郎の作品です。
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夜鴉が無気味に鳴くのを聞いた翌日、おまさは旧知の盗賊・峰山の初蔵に声をかけられた。
「頼みがある。荒神の二代目に力をかしてもらいたい。
二代目は女だ。先代の隠し子さ」
―荒神の先代にかわいがられたおまさの心が騒いだ。
…平蔵の亡父の隠し子と盗賊の隠し子がからんで、事件のいとは段々ほぐれて行く。
期待の長篇。
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文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に1984年(昭和59年)12月号から1987年(昭和62年)1月号に連載された後1993年(平成5年)に刊行された作品……実在の人物である火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公とする捕物帳、鬼平犯科帳シリーズの第23作です。
■隠し子
■炎の色
・夜鴉の声
・囮
・荒神のお夏
・おまさとお園
・盗みの季節
・押し込みの夜
テレビドラマでもお馴染みの鬼平犯科帳シリーズ……原作となる小説も面白いです! シリーズ23作目は短篇『隠し子』と4作目の長篇『炎の色』が収録されており読み応えがありましたね。
謹厳実直な亡父・長谷川宣雄の隠し子が出現……平蔵は、腹違いの妹・お園を妙に気に入り、お園のためにひと肌脱ぐ(「隠し子」)、、、
夜鴉がしきりに鳴いた翌日、おまさは旧知の盗賊・峰山の初蔵に声をかけられる「新しい荒神のお頭を手伝ってもらいたい。2代目は女だ。先代の隠し子さ」……2代目の首領を継いだ女盗賊・お夏に気に入られた密偵おまさと、平蔵の役宅で働くようになったお園、平蔵の配下の女性2人の活躍がめざましく、ときに妖しい(「炎の色」)、、、
お園の出現に、新たなる物語の始まりの予感。
平蔵の亡父の隠し子・お園、そして女盗賊・荒神のお夏という新しい女性像が物語を揺さぶり、密偵おまさの存在感も際立つ作品でした……この3人の女性キャラクターが物語の中心に据えられていることが特徴で、お園の明るさ、お夏の妖しさ、おまさの揺らぎ、という三者三様の炎の色が重なる展開が印象的でしたね、、、
特にお夏の存在感は強烈で、おまさが彼女に惹かれ、善悪の境界が曖昧になる瞬間があり、そこに人間の感情の複雑さを感じましたね……面白かったです。
平蔵を取巻く登場人物の存在感も幅広く、関係性も濃くなり、それぞれの人間味に深みがでてきて、巻が進むに連れてどんどん面白くなっていきますね……残りは最終作の第24作を読もうと思います。 -
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池波正太郎の長篇時代小説『新装版 鬼平犯科帳 特別長篇 迷路〈22〉』を読みました。
池波正太郎の作品は先日読んだアンソロジー作品『女城主 戦国時代小説傑作選』に収録されていた『夫婦の城』以来ですね。
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盗賊改方の水も洩らさぬ探索網により、薬種屋を狙った大がかりな押し込みは未遂に終わった。
しかし、安堵の空気もまもないころ、夕闇を切り裂いて疾って来た半弓の矢が、与力・秋本源蔵の頸すじへ突き立った──。
与力暗殺! 同じころ平蔵も襲われ、長男の辰蔵も命を狙われる。
そればかりか、盗賊改方の下僕にまで魔の手がのびる。
生涯の怪事件に苦悩し、追詰められた平蔵の胸に去来するものは……。
〈雲竜剣〉〈鬼火〉につづく感動のシリーズ長篇〈迷路〉。
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文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に1983年(昭和58年)5月号から1984年(昭和59年)3月号に連載された後1992年(平成4年)に刊行された作品……実在の人物である火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公とする捕物帳、鬼平犯科帳シリーズの第22作です。
■豆甚にいた女
■夜鴉
■逢魔が時
■人相書二枚
■法妙寺の九十郎
■梅雨の毒
■座頭・徳の市
■托鉢坊主
■麻布・暗闇坂
■高潮
■引鶴
テレビドラマでもお馴染みの鬼平犯科帳シリーズ……原作となる小説も面白いです! シリーズ22作目は3作目の長篇、読み応えがありましたね、、、
長谷川平蔵のみならず、その周囲の者たちが次々に狙われる……与力、下僕が殺され、平蔵の息子、娘の嫁ぎ先までが標的に、、、
敵は何者か? 盗賊改方への怨みなら、なぜ下僕まで襲うのか? 追い詰められた平蔵は苦悩の果てに、坊主に変装し役宅から姿を消す……渾身の傑作長篇!
平蔵が、自身だけでなく周囲の人々が次々と狙われるという難事件に立ち向かう物語……与力・秋本源蔵が半弓で射殺され、続きて下僕までもが殺される、、、
敵の悪意は止まらず、平蔵の長男・辰蔵、さらには娘の嫁ぎ先である親族にまで手が伸びるという、火盗改方への怨みだけでは説明のつかない、巧妙かつ強烈な悪意による包囲網が平蔵とその身辺に敷かれ、追い詰められた平蔵は苦悩する。
誰が、なぜ、これほどまでに執拗に平蔵を狙うのか? 火盗改方への怨恨であれば、なぜ無関係な下僕まで襲うのか? 謎が謎を呼び、苦悶の末、平蔵はついに坊主姿に変装し、役宅から姿を消すという行動に出ます……行方不明となった平蔵は、この迷路のような状況からどのように活路を見出し、強敵を打ち倒すのか!? 手に汗握る緊迫感のある展開が愉しめました、、、
個人的な悪意と対峙し、精神的にも追い詰められる姿を描くことで、読み応えのある作品に仕上がってましたね……追い詰められた状況の中、平蔵不在の火盗改方同心たちが広く網をかけて敵を殲滅していくアプローチも長篇ならではの展開で見どころになっていたと思います。
平蔵を取巻く登場人物の存在感も幅広く、関係性も濃くなり、それぞれの人間味に深みがでてきて、巻が進むに連れてどんどん面白くなっていきますね……残り少なくなってきましたが、第23作以降も順次、読んでいこうと思います。 -
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池波正太郎の連作時代小説『決定版 鬼平犯科帳〈21〉』を読みました。
『決定版 鬼平犯科帳〈20〉』に続き、池波正太郎の作品です。
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大島勇五郎は、名前ほど勇ましくないが有能な同心だ。
しかし最近おかしい。
不審を感じた平蔵が、自ら兇盗の跳梁を制する「春の淡雪」、探索方から勘定方に戻されて、ふて腐れていた細川峯太郎が、非番の日に手柄を立て、再び探索方に戻るまでを描く「泣き男」、浮気の虫が騒ぎ出した木村忠吾にも温かく厳しい眼をそそぐ「麻布一本松」ほか、「瓶割り小僧」「討ち入り市兵衛」「男の隠れ家」を収録。
“仏の平蔵”の部下への思いやりをしみじみと描く、慈愛溢れる一冊。
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文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に1980年(昭和55年)6月号から1982年(昭和57年)3月号に連載された後1991年(平成3年)に刊行された作品……実在の人物である火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公とする捕物帳、鬼平犯科帳シリーズの第21作です。
■泣き男
■瓶割り小僧
■麻布一本松
■討ち入り市兵衛
■春の淡雪
■男の隠れ家
第21巻は「泣き男」「瓶割り小僧」「麻布一本松」「討ち入り市兵衛」「春の淡雪」「男の隠れ家」の全6篇を収録……この中で、池波正太郎自身が好きな作品ベスト5に選んだ「瓶割り小僧」は、児童虐待がテーマになっています、、、
ほかにも、鬼平が自身のかなしみを吐露する「春の淡雪」など、心に沁みる作品が多い巻です。
テレビドラマでもお馴染みの鬼平犯科帳シリーズ……原作となる小説も面白いです! 本作品の収録作では、
情事の相手だったお長への未練を断ち切れず、勘定方へ戻された同心・細川峯太郎は、非番の日に歩いていて座頭の辰の市を見かけるが、座頭のはずの辰の市が目を見開いて歩いており、不審に感じた細川峯太郎は……平蔵の部下管理能力に感嘆させられる『泣き男』、
捕えた盗賊・石川の五兵衛がしぶとく何も吐かない……平蔵はその訊問ぶりを見ていて、五兵衛の顔になんとなく見覚えがあることを思い出した! 利口でトンチが得意だった少年、周囲に助けてくれる人がいれば、違う人生があっただろうにと感じた『瓶割り小僧』、
同心・木村忠吾が巡回中にむしゃくしゃして路上の石を蹴飛ばしたら、浪人の向こう脛に当ってしまい、怒った浪人が忠吾に襲い掛かろうとするが、忠吾は逆に毒づき急所に一蹴り入れて逃げてしまう……久しぶりに同心・木村忠吾のおっちょこちょい振りが面白おかしく描かれる『麻布一本松』、
が印象的だったかな……連作短篇のカタチを取っており、1篇ずつでも愉しめるのですが、それぞれの短篇が繋がって大長篇としても読める構成なので、順番に読み進めると大河ドラマ的な愉しみがありますね。
平蔵を取巻く登場人物の存在感も幅広く、関係性も濃くなり、それぞれの人間味に深みがでてきて、巻が進むに連れてどんどん面白くなっていきますね……残り少なくなってきましたが、第22作以降も順次、読んでいこうと思います。 -
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池波正太郎の連作時代小説『決定版 鬼平犯科帳〈20〉』を読みました。
池波正太郎の作品は先日読んだ『決定版 鬼平犯科帳〈19〉』以来ですね。
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女は、いきなり甚助へつかみかかり、「何をしゃあがる」立ちあがった甚助に突き飛ばされると、「か、敵討ちの約束がまもれぬなら、わたした金を返せ、返せえ!!」白眼をつりあげて叫んだ。
逃げ廻る甚助に旧知の平蔵は助太刀をするが、事は意外な方向に展開して行く。
女心の奇妙さに、さすがの鬼平も苦笑い。
花も実もある鬼平の魅力──「助太刀」。
ほか「おしま金三郎」「二度あることは」「顔」「怨恨」「高萩の捨五郎」「寺尾の治兵衛」の全七篇収録。
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文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に1979年(昭和54年)8月号から1980年(昭和55年)5月号に連載された後1991年(平成3年)に刊行された作品……実在の人物である火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公とする捕物帳、鬼平犯科帳シリーズの第20作です。
■おしま金三郎
■二度ある事は
■顔
■怨恨
■高萩の捨五郎
■助太刀
■寺尾の治兵衛
肴は豆腐の一品のみの、味も素っ気もない居酒屋が麻布にある……その夜、訪ねてきた女が「小柳安五郎が殺されても、いいのかえ?」といって、帰った、、、
店の亭主は、以前、火付盗賊改方同心をつとめていた金三郎であった。(「おしま金三郎」)。
ほかに「二度あることは」「顔」「怨恨」「高萩の捨五郎」「助太刀」「寺尾の治兵衛」の全7篇を収録。
テレビドラマでもお馴染みの鬼平犯科帳シリーズ……原作となる小説も面白いです! 本作品の収録作では、
同心・細川峯太郎は父母の墓参りに行った際、平蔵から叱責される発端となった情事の相手お長のことが忘れられず、ついついお長が働く茶屋へ足が向いてしまうが、そこで偶然、怪しい人物を見かけて尾行し、アジトを見つけるが、お長への想いを断ち切れないことを平蔵に気付かれたくなく、正直に報告することができない……木村忠吾に代わるいじられキャラの細川峯太郎の行動により事件は思わぬ方向に転がる『二度ある事は』、
高杉銀平道場に平蔵と岸井左馬之助をも凌ぐ剣士・井上惣助という男がいた……井上惣助は何らかのお咎めを受け、切腹したはずであったが、平蔵は、その井上惣助を見かけ興味をそそられ調べを始める『顔』、
農家の子どもが木の上から放尿したところ、通りかかった侍に尿が降りかかってしまい、侍たちが子どもと父親の農夫を斬りつけようとしたところへ、盗賊・高萩の捨五郎が2人を助けようと飛び出し、侍に斬りつけられてしまう……それを見ていた密偵の彦十と平蔵が、侍を蹴散らし、高萩の捨五郎を助けたことをきっかけに、盗賊・籠滝の太治郎の計画が明らかになる『高萩の捨五郎』、
平蔵は剣客・橫川甚助がお峰に追いかけられているところに出くわす……橫川甚助はすでに剣客としての腕は鈍っているのだが、お峰に敵討ちを約束しており、いつまでも腰を上げない橫川甚助にお峰が激怒していたのだ! その敵討ちは成功するのか? 女の逆恨みの恐ろしさを描いた『助太刀』、
が印象的だったかな……連作短篇のカタチを取っており、1篇ずつでも愉しめるのですが、それぞれの短篇が繋がって大長篇としても読める構成なので、順番に読み進めると大河ドラマ的な愉しみがありますね。
平蔵を取巻く登場人物の存在感も幅広く、関係性も濃くなり、それぞれの人間味に深みがでてきて、巻が進むに連れてどんどん面白くなっていきますね……第21作以降も順次、読んでいこうと思います。 -
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池波正太郎の連作時代小説『決定版 鬼平犯科帳〈19〉』を読みました。
池波正太郎の作品は先日読んだ『決定版 鬼平犯科帳〈18〉』以来ですね。
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双肌をぬぎ、太やかな腕を剥き出しにして、せっせと桶をつくる働き者のおろくは、息子の変事をきいて顔色が変わった。
「これ、どうしたのだ?」「うちの子が、勾引(かどわか)されたんでございます」叫ぶようにいったおろくが、平蔵の手を振り切って家を走り出た。
──幼児誘拐犯は、実の親か? 卑劣な犯罪を前にさすがの平蔵にも苦悩の色が……。
「霧の朝」「妙義の團右衛門」「おかね新五郎」「逃げた妻」「雪の果て」「引き込み女」の六篇を収めた力作短編集。
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文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に1978年(昭和53年)12月号から1979年(昭和54年)7月号に連載された後1990年(平成2年)に刊行された作品……実在の人物である火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公とする捕物帳、鬼平犯科帳シリーズの第19作です。
■霧の朝
■妙義の團右衛門
■おかね新五郎
■逃げた妻
■雪の果て
■引き込み女
女密偵おまさは、万年橋から川面を見つめている女に気づく……以前、同じお頭の許で、「引き込み」をつとめた女賊のお元であった、、、
(さて、どうしたらよいものか?)おまさは迷うが、平蔵は、密偵たちの複雑な心境を理解していた(「引き込み女」)。
ほかに「霧の朝」「妙義の團右衛門」「おかね新五郎」「逃げた妻」「雪の果て」の全6篇を収録。
テレビドラマでもお馴染みの鬼平犯科帳シリーズ……原作となる小説も面白いです! 本作品の収録作では、
火盗改方に何かと協力を惜しまない御用聞き・富蔵とおろくの夫婦の息子・幸太郎が拐かされた! 幸太郎は富蔵夫婦の実の子ではなく貰い子だったことから、おろくは実の親で瓦焼き職人の吉造、おきねの夫婦を疑うが……親子の愛情が巧く描かれている『霧の朝』、
密偵・馬蕗の利平治に、盗賊・妙義の團右衛門が江戸での盗みをするために近付いてくる……しかし、利平治が密偵であることが妙義の團右衛門に知られてしまい、盗賊と火盗改方の化かし合いとなる、一体どちらに軍配が挙がるのか? 失敗(しくじり)をした平蔵の壮絶な仇討ちが、カタルシスのある結末を迎える『妙義の團右衛門』、
男が未練がましいのか? 女が男を狂わすような女なのか? 浪人・藤田彦七と夫と娘を残し、男とともに彦七の元から去った元妻りつを主人公に男女の複雑な関係を描いた『逃げた妻』、『逃げた妻』、
おまさが、過去に同じ盗賊のもとで引き込みをやっていたお元に偶然再会、お元は引き込みである店に入っており、この店の主に一緒に逃げないかと言われているが、盗賊の掟には背けないし、店の主を憎からず思っているし、この両者に板挟みにあい悩んでいた……お元の判断は? 皮肉な運命を描く『引き込み女』、
が印象的だったかな……連作短篇のカタチを取っており、1篇ずつでも愉しめるのですが、それぞれの短篇が繋がって大長篇としても読める構成なので、順番に読み進めると大河ドラマ的な愉しみがありますね。
平蔵を取巻く登場人物の存在感も幅広く、関係性も濃くなり、それぞれの人間味に深みがでてきて、巻が進むに連れてどんどん面白くなっていきますね……第20作以降も順次、読んでいこうと思います。