池波正太郎のレビュー一覧
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本棚の奥から出てきた。
池波氏が「うまい!」と思って食べてきた味と店の思い出が書かれているが「グルメ本ではない」という但し書きがつく。
舌が覚えているのは、思い出と、人の縁。
この作品の最初の刊行は、昭和59年(1984年)で、およそ40年前。今から見たら、すでにむかし・・・かも。
その「むかし」に振り返って、まだ続いている店を紹介していたものだから、現在から振り返れば、むかしむかし、である。
スマホのマップで見たところ、「たいめいけん」や「イノダコーヒー」などのごく有名な店を除いては、すでに残っていないようだ。
跡地がコンビニやビジネスホテルになっているのを見て、味気ない思いと共に時の流れを感じる。
「持続の美徳」と言って、変わらぬ味を愛し、賞賛した池波氏であったが、残念ながら変わらないものなどない。
私たちには行くことの出来ない、戦前の東京。戦後の復興。
そんなものが、読むほどに懐かしく感じられ、目の前によみがえる気がするのだ。
「むかしの味」の向こうに池波氏が見ているものは、先に亡くなった年長者たちの思い出であり、戦前戦後と経て音信不通になってしまった友たちとの懐かしい日々だった。
見たことのない、憧れの「昔の東京」に行くための重要なアイテムとして、また本棚の奥に大切に保管しておこうと思う。 -
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梅安と相棒のような彦次郎。
この二人の関係もなかなかいいし、人情を全面に出さずに、隠れた人情を感じます。
そして、本を読んでいてある意味納得、感心したことがあります。
それは、何かの分野でプロになる人は、何をやっても極める。ということです。
梅安は鍼医者として名医。彦も楊枝づくりの腕は天下一品。
何故だろう。そして私は考えた。
池波正太郎の鬼平で出てくる“いそぎ働きをしない”昔気質の盗人は、おつとめに時間をかけ、その合間に別の仕事をしていることが常。
別の仕事とはいえ、かなりの腕前であることが多く、梅安たちと同じです。
つまり、習得する持続力、忍耐力、気働きそういったものが養われダークな分野でもプロ中のプロになるのでしょう。
梅安って意外と若いのね。言動行動がちょっと落ち着きすぎ?
そんなことを思った本でした。 -
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まさか、牧野富太郎を池波正太郎が描いていたとは。
少年のようなクリクリした眼が印象に残ったとのこと。らんまんとも通ずるポートレート。
その帯に惹かれて広島空港で購入。
短編集ながら、かなり刺さる言葉が多い。
読み始めた時には、面白く無いと思っていた三根山の短編も、真摯な力士の肖像が立ち上がり、作者の眼差しもよく理解できる。
そして、武士の紋章 滝川三九郎の話。
武士たるものの一生は束の間のこと。何処にて何をしようとも、ただ滝川三九郎という男があるのみ
その境地にて、粛々と俺のすることを為すのみと生きたいものだ。
御報謝するという言葉も初めて知り、そうした心意気を粋に感じる。
そして、こうした作者の美学と眼差しで語られる真田太平記も、読んでみたいと思った。 -
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▼収録されているのは以下です。
鷲鼻の武士
品川お匙屋敷
川越中納言
新妻
金貸し幸右衛門
いのちの畳針
道場破り
この中で「品川お匙屋敷」が、以下の内容。密貿易をめぐる犯罪事件に佐々木三冬が巻き込まれる。悪人に捕まってしまう。それを大治郎が助ける。三冬の父である田沼の言い出しで、ふたりは結婚することになる。祝言を上げる。
▼なかなか急展開ではありますが、その脱力さも池波節かな、と。
▼印象深いのは「川越中納言」。川越中納言の名で呼ばれる悪党を、小兵衛が成敗する。というそれだけの話なんですが、かつて被害にあった娘が、無事に幸せに市井で暮らしている。最後に小兵衛に赤ちゃんを見せに来る。小兵衛は赤ちゃんを見て、自分の子が、大治郎が、赤ちゃんの頃を思い出す。それだけの一幕が、素晴らしい。
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▼収録されているのは以下。
白い鬼
西村屋お小夜
手裏剣お秀
暗殺
雨避け小兵衛
三冬の縁談
たのまれた男
▼印象に残ったのは「雨避け小兵衛」。小兵衛が雨よけでとある小屋に入る。その小屋にあとから、誘拐犯が入ってくる。小兵衛は隠れていて様子を見る。誘拐犯は、かつて鎬を削った剣客だった男。いまは落魄して暮らしに困っているらしい。
で、小兵衛は当然ながら腕でこれを退治解決するのだが、やるせない想いに襲われる。この誘拐犯が落魄するきっかけになったのは、自分との注目の試合だったからだ。
ラスト、若い女房のおはるに慰めを求める小兵衛、という一幕が印象的。
▼つまりは、剣客商売の業。これはスポーツとか芸能と一部似ているところもある。「いちばん強い」から金が稼げる。「負けたらすべてを失いかねない勝負」だから、人が注目するし、勝者にはお金・地位・名誉が入る。
だがその「美味しいポジションのマーケット」があまりに小さいのでは、ほとんど全員が「いつか惨めになるために、必死で修行している」ことになってしまう。その道を、そうとは思わず歩んできた自分。たまたま自分は上手く生き残ったけれど。
という感慨ですね。
▼そして、この物語は田沼時代で、それはつまり1770年代〜1780年代だと思われます。江戸時代は1603年〜1868年なので、ちょうど江戸江戸中期。元禄時代(1700年前後)を経て、剣術は以前のようには流行らなかったでしょう。
ちなみに恐らく、江戸時代後半というか終盤に多少盛んになります。具体的には千葉周作以降、1830年代以降でしょうか。幕末の乱世が1853年以降です。
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今までの10巻の中でどうしても気になって仕方がなかった「大義」、モヤモヤとしたものが付き纏っていたが少しづつ解消されてきた。家康の大義、幸村こ大義そもそも同じ目線で比べるのは間違いであった。為政者と武将そもそも終着点が違っていた。もし比べるのであれば家康と秀頼であって幸村ではない。しかしこの真田太平記で描かれる家康は広い視野で次の段階を見据えていた気がしてならない緻密な根回し、戦になる前の準備・仕掛け!豊臣家を滅ぼし誰かが盤石な泰平の世を築かなければ混乱の世は続く、戦国の世に終止符を打たなければならない、勿論私利私欲を除いてそこが大願であれば逆に素晴らしい「大義」であると思う。幸村が決戦前夜に戦の次の段階はビジョンはあったのだろうか?無かったとしたら、案外共に死を覚悟して戦に向かう士はリーダーをどう見ていたのだろうか?殉死が当たり前の様な当日の価値観が今の私に共有出来ないのは仕方がないとしても興味深い幸村の生き方である。
しかし物語の重厚さ、戦闘の描写、人間模様の展開どれをとっても素晴らしい小説である事に間違いない。 -
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名作「真田太平記」の全貌が視えてきた、素晴らしい!どこをどうとっても「素晴らしい」!このシリーズは昭和時代の発行であるが、令和の今、歴史ミステリーとしてよく上がる題材や、最近の大河ドラマに出てくる名シーンが表現されている様な描写!歴史の流れという本流をしっかり捉えた上で細かな支流の澱みまで描かれている。読み応えの骨太さは流石に驚かされる。これまでの感想にも残してきているように当時の価値観や倫理観また死への意識をそのまま理解することは不可能であるが、今では考えられない常識が普通であったのだろうと、想像することは出来る!このシリーズを楽しむ上でどうしても「大義」を意識して読んできたが、やはりハッキリと見えてはこないが、家康の激情、勝利への拘り執念!幸村の草の者達の支援の元、環境や人間関係まで予測した戦への拘り。東西それぞれの動きがハッキリ見えてくる大坂城入場から冬の陣までの策謀、内通そして戦闘どれをとっても特級品。
お江が幸村にある提案をするシーンに惹かれた、少しのやりとりの中に、私は「目から鱗」大変面白いと感動さえした、この後の展開が非常に楽しみであり最終巻まで同時に買ってしまった。