Posted by ブクログ
2012年09月06日
剣客商売シリーズ14作目
ある日、小兵衛は凄腕の二人の浪人者をたちまちにして蹴散らす巨漢の剣客を目にする。
その男の名は波川周蔵。
「あの男ならせがれでも危うい」。
その後、小兵衛は大治郎襲撃の計画を偶然知ることになる。実行するのは波川らしい。その裏には誰がいるのか。なぜ大治郎が狙われているのか...続きを読む。
小兵衛66歳。この巻では今までにはないような失敗をしたりもする。でも、ここへきてどんどん人間味が増している感じもする。大治郎に対して声を荒げてしまうシーンなど特にそう思う。
大治郎は、さらに腕を磨き、小兵衛へ近づきつつある。
三冬は娘からしっとりとした妻、母に。
田沼の悪評はさらに広がり、威勢も衰えつつある。この「暗殺者」の事件の一月後には意知は殺害され、その二年後、彼は老中を罷免・領地も没収されるのだ。
そして、この作品の重要人物である波川周蔵。
彼もまた一角の剣士でありながら十数年のうちに剣の道で天道を歩めぬ身となっている。
大治郎襲撃の黒幕となっている者もそうだった。
人は流れていく。ひとつのところに留まっていられる者などいないのだと強く感じる一冊でした。
波川周蔵がすごくよかった。だからこの終わり方で少しホッとしました。