池波正太郎のレビュー一覧
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最初の「おんなごろし」が、何度読んでも、映画で観ても、そしてaudibleで聴いても秀逸。北斗誓一朗読 6時間24分。ちょいと長い劇場鑑賞気分。
商家の1度目の女房を殺したのも梅安ならば、2度目の女房を殺すのも梅安である。しかも、1度目の「起こし(殺人依頼者)」は2度目の女房だった。そして、2度目の女房はなんと、4歳の時に生き別れた梅安の実の妹だった。くらくらするような筋書きではあるが、梅安は淡々と暗殺の依頼をこなす。暗殺者(アサシン)として、元締めの言いなりになっているわけでもない。1度目の女房殺しが「この世に生かしておいてはためにならぬやつ」だけを殺すという梅安の信条に反していたのが判明したあとに、彦次郎には「次からはあの元締めからの依頼は受けない」と言っている。
生き別れになって、どうしようもない母親に連れて行かれた妹が、どんな闇の中を潜り抜けて来たのか、ある程度想像はしたろうけど、一目ですっかり闇に染まった妹を観たあとは、眠るように逝かせることを選ぶ梅安。もう本来は大長編にすべき(実際、映画版では半分以上が「おんなごろし」だった)内容なのだが、短編なのである。この1作で、池上は海外では既に確立されているアサシン主人公を、時代小説に持ってくることに成功し、もはや時代小説でこれ以上の暗殺者はいなくなってしまった。
梅安は藤枝が郷、母親に捨てられたあとは鍼医者津山悦堂の元、京都で修行した。いま35歳。10年ほど暗殺業。井筒のおもんといい仲。
相棒の彦次郎は馬込の出。43歳。20年も仕掛けをしている。
「彦さん、今年は死なかったねえ」
「来年は、どうなることやら」
作者もこれほどのシリーズにすることは考えていなかったらしい。
だから、短編集の最終章は、掟破りの元締め殺し、一旦受けた殺しを止める、また2000石の旗本殺し等々、やっている。現代ならばすぐ足がついて彼らは組織の掟で直ぐに殺される、または公儀によって誅殺されるところであるが、なぜか生き延びる。おそらく作者は、あれほどのことをしたら、明るみになることがわかっていて、なお、可哀想な娘と朴訥な武士を助けるのが梅安たちなのだ、と考えたのだろう。しかし、案に反して仕掛人梅安シリーズは、その年の「小説現代」の読者賞を獲って仕舞う。蓋し、作者冥利に尽きる評判を得た。
梅安シリーズが、常に死の匂いを纏っているのはそういうわけだろう。実際、池波正太郎の小説の絶筆は梅安シリーズだった。
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5月3日は、池波正太郎の命日である。昨年は生誕100年で、新作「梅安」2本が上映され、今年は時代劇チャンネルで新たな「鬼平」のテレビシリーズ、そして劇場版「鬼平犯科帳 血闘」が5月10日に公開される。亡くなったのは、1990年(平成2年)のことであった。
‥‥‥‥はや、34年も経ったのか。
貪る様に「梅安」「鬼平」「剣客商売」を買い揃え読み漁ったのも、40年近く前のはず。新社会人にとっては、丁度良い暇つぶしになる本であった。
‥‥‥‥短編ひとつが、ランチ時間のついでに読める量だった。
これである。
‥‥‥‥文字が詰まってないから
めくるスピードが速いのである。
たまさか、忌日記念の本を選んでいたら我が蔵書には19巻までしかないことが判明した。晩年の長編群は「あとのお楽しみ」に取っておいたらしい。それで読んでない一篇として長編の「迷路」(第22巻)を選んだ。
びっくりしたのは、もはやコメディ担当の木村忠吾は後方に退き、この巻では細川峯太郎が、火付盗賊改方与力としてどうしようもない男の役回りとなる。それと並行し、平蔵が「本所の銕」だった時の因縁の相手、猫間の十兵衛の陰湿な包囲網が迫り、平蔵生涯最大の危機(いっときは役職を解かれる)が訪れるのである。
平蔵の息子の辰蔵も、いつの間にやらここまで逞しくなり、おまさと大滝の五郎蔵がいつの間にやら夫婦になっている。
‥‥‥‥何やら、十数年ぶりに親戚にあった様な気分
なのであった。
平蔵50代。未だ鬼神のように強い。
池波正太郎の歿年は67歳だった。いま考えれば若い。けれども、生涯は思いっきり仕事し、楽しみ、美味いものを喰って、
‥‥‥‥まんぞく、まんぞく
の一生だったに違いない。
そう言えば、未だ潤沢な旅行資金があった頃、東京の一泊を山の上ホテルにしたことがあった。泊まってわかったのは、部屋は豪勢ではないけれども、机が大きいこと、飾ってある絵に品があることだった。
‥‥‥‥こんな感じで、池波正太郎は何泊もし、絵を描き、天ぷらを食べたのか。
と、感じ入ったモノだ。
その山の上ホテルも今年閉じてしまった。
荷風の最後の食事は大黒屋のカツ丼だった。最晩年の病院で池波は、このホテルの天丼を所望したらしい。
名人近藤シェフがわざわざ届けたらしい。
‥‥‥‥最後の晩餐どうしようか。
このエピソード読んでから、ずっと思ってる。
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▼剣の師弟 勝負 初孫命名 その日の三冬 時雨蕎麦 助太刀 小判二十両
を収録。 大治郎・三冬夫婦に子供が生まれます。
▼「剣の師弟」は、小兵衛の弟子が悪に落ちていたパターン。このパターンはやはり評判が良いのか、何作かありますね。これも良作。苦く、おいしい。
▼「勝負」は滋味深かった。これも同主題の話はあった気がしますが。対戦相手にとっては、就職がかかった試合があり、大治郎が相手。大治郎は別に就職は必要なく。小兵衛が「負けてやれ」と秒で言い切る。大治郎はもやもや。当日、色々あって結局負ける。ところが相手が「わざと負けたのでは」と疑心暗鬼になり…。これはなかなかコクがありました。
▼「その日の三冬」これがいちばん印象に残りました。いちばん、「メグレ=シムロン味わい」が横溢。かつての三冬と同門の、大変に屈折して醜い男がいて、爪はじきものだったが、三冬はフラットに付き合っていた。その男が幾星霜、表面的には悪に墜ち。そして三冬と再会し…という内容で。世間の残酷さ、不公平さ、切なさ、理不尽さがとても良く伝わります。 -
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▼なんだか最近、「あさりを食べたいなあ」と思ってスーパーの冷凍剥きあさりで良いので適当に食べているのですが、よく考えたら池波正太郎を読んでいて刷り込まれた気がします(笑)。
▼白い猫密通浪人浮寝鳥十番斬り 同門の酒 逃げる人 罪ほろぼし
以上を収録。
▼似たような話が多いですが、オモシロイ。軽さも出てきました。「浮寝鳥」は、乞食までなって世を捨てた男が、一人娘のために危険を冒して金を作ろうとして殺されてしまう。こういう話を主人公からの距離感で見つめるあたりは、「メグレ警視」っぽさが面目躍如。
▼「十番斬り」は余命はかない病になった剣客が、最期に無頼者たち10人を斬って捨てようという。全体に人生のままならなさと表裏を煮詰めたようなゲストが毎回コクを醸しだす感。 -
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大阪夏の陣。
真田左衛門尉幸村が大阪方の総指揮官であったなら果たして家康は勝てたのであろうか、平和に向かった江戸幕府はあり得たのだろうか?
豊臣方に無理矢理仕掛けたような喧嘩ではあったけれどその後の長い平和日本をもたらしたのだと思うと複雑な思いがある。
真田幸村の戦上手、兵士たちからの信頼の厚さ、人間としての様々な魅力が描き出されているのであるけれど、ひとつ考えさせられるのは世の中の事、人々の暮らし、などなどよりはとてつもない「戦好き」だったのだろうという事。
だとすれば徳川の安定した力のもと徳川家の安泰、つまりは日本全体の平和を1番に求めていた家康こそが正義なんだろうな。 -
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秋山小兵衛のもとに、刀屋の嶋屋が情報をもってくる。愛弟子を殺害した浪人を江戸で見かけたというのだ「春愁」
四谷の岡っ引き弥七の部下、傘屋の徳次郎は博打場で一人の男に声をかけられる。男は盗賊で相棒を探していた。目指す獲物は鐘ヶ淵に隠宅を構え若い女房と二人で住んでいるというのだ「徳どん、逃げろ」
秋山大次郎は侍に斬られそうになっていた老僧を助ける。老僧は盲人の浪人の世話をして暮らしていた。逆恨みで老僧を付け狙う侍がいる事に気付いた秋山親子。盲人は仇を探していた「隠れ蓑」
大次郎は二人目の弟子をとった。田沼家用人の推挙があった笹野新五郎だ。新五郎は旧師の死後は酒食に溺れていたが、大次郎の元で剣士の道を再び見出す「梅雨の柚の花」
笹野新五郎の放蕩時の相方だった女を殺したのは中津藩士だった。その男は何者かに成敗された。そんな折、小兵衛はある絵師と知り合う「大江戸ゆばり組」
上野へ参拝に出かけた小兵衛は、誘拐犯から子どもを助ける。子どもは神田の商家の息子だった。事件は、神田近辺を縄張りとする岡っ引きの暗躍があった「越後屋騒ぎ」
大次郎の同門•吉村弥惣治が決闘することになった。相手は同じく旗本の家臣で、あろう事か主君同士の賭け事の対象になっていた「決闘•髙田の馬場」
"六十を幾つか過ぎた"という秋山小兵衛は退屈を持て余すのか、様々な事件に関わりをもつ。老境にあるにもかかわらず剣技は益々冴え、鬼神の域に達したかのようだ。息子の大次郎も妻を迎え、かつての朴念仁ではなく、何やら行動面でも父の小兵衛に似てきたような。安定の面白さの第7巻です。 -
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渡部甚之介は将棋好きの剣客。ある日、秋山小兵衛の家で将棋を指し続けて、果し合いの約定を失念してしまう「鷲鼻の武士」
佐々木三冬は根岸の寮に帰るさなか、一人の女性を助ける。女性は絶命するが、抜荷の証拠を託した「品川お匙屋敷」
秋山大次郎は佐々木三冬と無事結婚。小兵衛と三冬は親子となる。そんな中、小兵衛はかつて道場に来ていた美男子を町中で見かける「川越中納言」
大阪へ、修行時代の恩師の墓参りに行った大次郎は帰途に同姓同名の人物に出会い、その苦境を救う為に尽力する「新妻」
小兵衛が料理屋•元長で見かけたのは品の良い老人。老人は行方不明になった娘の行方を探していた「金貸し幸右衛門」
植村友之助は、病を得るまでは小兵衛の高弟だった。そんな彼が、偶然拾った畳針で人助けをする「いのちの畳針」
金杉新田に住む鷲巣見平助は道場破り。日本橋の間宮道場に訪れると、その日、道場に来ていた大次郎と戦う。大次郎と真剣で立会いたいと望む平助だったが「道場破り」
ついに結ばれた大次郎と三冬。大次郎の道場で修行していた飯田粂太郎も元服し、小兵衛は63歳•おはるも23歳になった。(「金貸し幸右衛門」冒頭に記述あり)
「解説」によると、著者は67歳で亡くなったそうだが、著作は驚くほど多い。本作は著者が50代の作品だそうだが、脂がのりきっている感じがする。
つい先日見に行った映画館では、「鬼平犯科帳」の新シリーズ予告をやっていた。私が子どもの頃、父が、松本幸四郎主演のテレビシリーズを熱心に見ていたが、ついに孫が同じ役を演じる時代になったのだ。池波正太郎の作品は、ある意味で時代を超えて残るのかもしれない。