池波正太郎のレビュー一覧
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本棚の奥から出てきた。
池波氏が「うまい!」と思って食べてきた味と店の思い出が書かれているが「グルメ本ではない」という但し書きがつく。
舌が覚えているのは、思い出と、人の縁。
この作品の最初の刊行は、昭和59年(1984年)で、およそ40年前。今から見たら、すでにむかし・・・かも。
その「むかし」に振り返って、まだ続いている店を紹介していたものだから、現在から振り返れば、むかしむかし、である。
スマホのマップで見たところ、「たいめいけん」や「イノダコーヒー」などのごく有名な店を除いては、すでに残っていないようだ。
跡地がコンビニやビジネスホテルになっているのを見て、味気ない思いと共に時の流れを -
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梅安と相棒のような彦次郎。
この二人の関係もなかなかいいし、人情を全面に出さずに、隠れた人情を感じます。
そして、本を読んでいてある意味納得、感心したことがあります。
それは、何かの分野でプロになる人は、何をやっても極める。ということです。
梅安は鍼医者として名医。彦も楊枝づくりの腕は天下一品。
何故だろう。そして私は考えた。
池波正太郎の鬼平で出てくる“いそぎ働きをしない”昔気質の盗人は、おつとめに時間をかけ、その合間に別の仕事をしていることが常。
別の仕事とはいえ、かなりの腕前であることが多く、梅安たちと同じです。
つまり、習得する持続力、忍耐力、気働きそういったものが養われダークな -
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まさか、牧野富太郎を池波正太郎が描いていたとは。
少年のようなクリクリした眼が印象に残ったとのこと。らんまんとも通ずるポートレート。
その帯に惹かれて広島空港で購入。
短編集ながら、かなり刺さる言葉が多い。
読み始めた時には、面白く無いと思っていた三根山の短編も、真摯な力士の肖像が立ち上がり、作者の眼差しもよく理解できる。
そして、武士の紋章 滝川三九郎の話。
武士たるものの一生は束の間のこと。何処にて何をしようとも、ただ滝川三九郎という男があるのみ
その境地にて、粛々と俺のすることを為すのみと生きたいものだ。
御報謝するという言葉も初めて知り、そうした心意気を粋に感じる。
そして、 -
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▼収録されているのは以下です。
鷲鼻の武士
品川お匙屋敷
川越中納言
新妻
金貸し幸右衛門
いのちの畳針
道場破り
この中で「品川お匙屋敷」が、以下の内容。密貿易をめぐる犯罪事件に佐々木三冬が巻き込まれる。悪人に捕まってしまう。それを大治郎が助ける。三冬の父である田沼の言い出しで、ふたりは結婚することになる。祝言を上げる。
▼なかなか急展開ではありますが、その脱力さも池波節かな、と。
▼印象深いのは「川越中納言」。川越中納言の名で呼ばれる悪党を、小兵衛が成敗する。というそれだけの話なんですが、かつて被害にあった娘が、無事に幸せに市井で暮らしている。最後に小兵衛に赤ち -
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▼収録されているのは以下。
白い鬼
西村屋お小夜
手裏剣お秀
暗殺
雨避け小兵衛
三冬の縁談
たのまれた男
▼印象に残ったのは「雨避け小兵衛」。小兵衛が雨よけでとある小屋に入る。その小屋にあとから、誘拐犯が入ってくる。小兵衛は隠れていて様子を見る。誘拐犯は、かつて鎬を削った剣客だった男。いまは落魄して暮らしに困っているらしい。
で、小兵衛は当然ながら腕でこれを退治解決するのだが、やるせない想いに襲われる。この誘拐犯が落魄するきっかけになったのは、自分との注目の試合だったからだ。
ラスト、若い女房のおはるに慰めを求める小兵衛、という一幕が印象的。
▼つまりは、剣