池波正太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
矛盾を描く物語。
けっして、ヒーローではないし、人を殺した理由も、仇を返り討ちにするのも、ある意味でクズな主人公。そして、女性に対する蔑視。
にもかかわらす、後半徐々に漢気が出てきたり、慈悲のある常識的、冷静でリーズナブルな差配を示したりもする。
彦さんの方はまだ理解ができるが、梅安は理解の外だ。
しかしまあ、そこは池波正太郎の術中にどっぷりはまっている。
人間は、よいことをしながら悪いことをし、悪いことをしながら良いことをしている
というテーマを描いたという池波氏。まさにその、状況に直面して混乱している自分がいるようだ。
理解できないが、理解できないままうけとめて、寄り添えるか、コミュニケーションできるか。それが人間理解の一助になるかもしれぬ。
単純な勧善懲悪ではないリアリティ。
こうした幅のある物語が受け入れられたのは、成熟した大人が多かったかもしれないし、または、戦時中に戦争に行って人を殺した経験のある人たちが、平穏な日常を生きることの矛盾を昇華する一助になっていたからかも知れない。
にしても、流石に昔の本で、今の基準では不適切な表現や展開が多々あるが、編集部の『読者各位のご賢察をお願いします』という言葉が全てだと思った。
ジェネレーションギャップで、ハラスメントだ何だと騒ぐのは、結局はご賢察できない自分の愚かしさを露呈しているだけなのかもしれぬ。
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Posted by ブクログ
▼全16巻だそうなので、ラストが近づいています。14巻は長編。丸一冊で、ひとつ噺です。大治郎が狙われる。暗殺者は何者で、意図はなんなのか。
(以下、ネタバレします)
▼ミステリとしては、種明かしは「田沼意次暗殺計画」。田沼意次は歴史実在の人物。この時代(1780年代だったか。つまり江戸時代中期)の大物政治家です。この時代の首相みたいな。そして、「剣客商売」の物語上は、主人公秋山小兵衛・大治郎父子の保護者的存在で、大治郎と結婚した三冬という女性剣客の父でもある。
▼この田沼意次を恨んだ大物がいて、暗殺計画を立てる。毎年田沼はある日にお忍びで墓参をする。そのときは供が僅か。その僅かな供には必ず大治郎がいる。大治郎が圧倒的に手ごわいので、<大治郎の相手をするためだけ>に、腕っこきの刺客が雇われた。この刺客、この人物が、このお話のゲスト主役。この人が要は、良い人なんです。しかも小兵衛と顔なじみ。。。
▼というようなお話なのですが、実は全体に言うと既視感がけっこうあります。新味っていうのはないんです(笑)。ところが味わいとしてはこのお話、小兵衛の老いの味わいなんですね。そこは新しいし、滋味深い。
▼息子が狙われているということに、本人以上に動揺をする小兵衛さん。心配で心配でタマラナイ。以前には感じたことのないイライラ。心配。不安。むしろ息子本人がどっしりしていて、それがまたカンに触る(笑)。
そんな小兵衛の気持ちがちょっとラブリーな一冊でした。 -
Posted by ブクログ
(上下巻、全編の感想です)
▼大盗賊・雲霧仁左衛門一味と、火付盗賊改方一党の、バチバチの対決です(火付け盗賊改は、鬼平ではない。鬼平より数十年以前の話)。これが大変に面白かった。正直に言うと、池波正太郎さんの代表作はほぼ読んできてるんですが、「これ第一位なのでは?」というくらいの徹夜本でした。ただ・・・・惜しむらくは。
▼描き方は、なんだかんだとありますが、雲霧仁左衛門という親分のことを非常にカッコよくスーパーに描いているんです。そして、前半戦の終わりでは、「おおっ、雲霧仁左衛門、絶体絶命?!」と思わせておいて、素敵な機転で大逆転。圧倒的勝利とは言えないまでも、「雲霧一党、判定勝ち」くらいのカタルシスなんです。
ところが、もう、圧倒的に面白かったのに、ラストが・・・。
▼ラストも、「雲霧仁左衛門、大ピンチ!これをどう切り抜ける!?」というところに追い詰めておいてですね。そのまんま、雲霧一党が大敗北、捕まって終わっちゃうんですよ。かろうじて偶然もあって、親分の仁左衛門だけは逃げ切った。けれども他は一網打尽。これぁもう、仁左衛門もグループとして再起するのに10年かかるんぢゃないか・・・という感じで。
▼正直、「えっ・・・・これで終わるの?!」という衝撃でした・・・。いまひとつ、楽しく留飲が下がらない・・・。うーん。