池波正太郎のレビュー一覧

  • 剣客商売十 春の嵐

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    シリーズ初の長編。大治郎の名を名乗る辻斬りがあらわれ、幕閣で対立する田沼意次と松平定信の家臣を次々に刃にかける。小兵衛は探索をはじめるが……。
    小兵衛も大治郎も市井に生きる人間であるから、シリーズのこれまではあまり政治そのものには深入りせずに描かれていたと思う。意次の政治に対する姿勢ということでそれが示されることはあっても、むしろその周辺を描いてきたのではないだろうか?もちろん、そうして体制から外れている人々を描くことで物語には深みが増していたわけである。この巻は長編ということもあって、今までに比べるとやはり仕掛けが大きくできている。それが楽しくもあるし、やはり短編でもっと読みたいとも思った。

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    2026年01月26日
  • 剣客商売九 待ち伏せ

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    大治郎との結婚後、三冬の表立っての活躍が減ってきたように思っている。で、ここにきてご懐妊なのですね。ううむ、めでたいのだけれど、これでますます活躍が減って補助的な役割になっていくのでしょうか?そうだとちょっとさびしいですね。
    大治郎が剣客としてのひとつの自覚を得るに至り、また三冬に子供ができたことを知るターニングポイントとも言える一編「待ち伏せ」、小兵衛の過去の一端に触れる「或る日の小兵衛」、ほかに興味深いのは剣客の剣客であるがゆえの執念と哀しさを浮き彫りにした「剣の命脈」

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    2026年01月26日
  • 剣客商売八 狂乱

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    二編目の「狐雨」というのがこのシリーズにして初めてのオカルトである。今後もこういう話が混じっているのだろうか?だとしたらますます楽しみなことである。この編の登場人物又左衛門のその後というのはぜひに読んでみたいものだ。書かれているといいなあ。
    それと「仁三郎の顔」というのが味わい深い。明と暗ふたつの顔を持つ男と大治郎の不可思議な関わり合い……。このあといったいどうなったのか、というのは読者が頭の中に思い描けということですね。うーむ、みごとな結末というか……。

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    2026年01月26日
  • 剣客商売七 隠れ簑

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    めずらしくドタバタの感がある「徳どん、逃げろ」が面白い。この話の結末は一読しただけでは意味がとれなかったのだが、繰り返して読んで納得。うーむ、ぼくもやはり若輩か(笑)。そういえば、ここまでのシリーズ中でもたびたびそうしたことは語られていたのだっけ。不可思議な旅の托鉢僧と老武士について語られる表題作「隠れ蓑」は最後でふたりの正体にあっといわせられるのだが、その謎解きが何とも切ない。このようなことはお江戸の昔ならではの謎ですね。

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    2026年01月26日
  • 剣客商売六 新妻

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    「品川お匙屋敷」の一編において拉致された三冬を無事に保護した大治郎は、三冬の父、老中田沼意次に娘を嫁にもらってほしいと頼まれる。と、裏表紙のあらすじ紹介に書いてあるし、ほとんど予定調和なんだから、ネタばれではなかろう。めでたしめでたし。
    しかし、裏表紙にそう掲載されていて、表題作が「新妻」ならば、ふたりが結婚するのはその一編だと誰でも思うじゃないか……。その点はやられたというか何というか。まあ、それは別として表題作の「新妻」は別の意味で味わい深い話。やはりこれも明暗の対比というか幸不幸の対比で成り立つ話ですよね。
    ふたりの奇妙な新婚生活の一端が読み取れる「川越中納言」の冒頭は、いやもう勝手にや

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    2026年01月26日
  • 剣客商売五 白い鬼

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    「雨避け小兵衛」の出だしに思わずにやりとする。飄々とした小兵衛だが、家庭人としては四十も年下のおはるにいいようにあしらわれている、そういうのもまたいいなあという書き方なのである。これに続いて起きる事件のやりきれなさとはじつにうまい対比である。同じような道を歩いてはいても、人というやつの運命はどこでどのようになるやもしれない。この編の末尾で小兵衛が噛みしめる思いは……。それにしても、おはるはけっきょくのところ小兵衛を「先生」と呼んでいるのだね。
    続く「三冬の縁談」、めずらしく大治郎の右往左往さる様が面白い。このような筋で解決しなかったとしたら、大治郎がどのように行動しただろうかと意地悪く考えてし

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    2026年01月26日
  • 剣客商売四 天魔

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    このシリーズの人間関係でもうひとつ不可思議なのが、小兵衛の後妻であるおはると大治郎の関係かもしれない。もと秋山家の下女であったおはるは、今や老夫小兵衛と絶妙のコンビネーションを見せるのだが、大治郎が実際のところ義母をどう思っているのかは、ここに至るまで描写されなかったような気がする。それが、言葉ではないまでも態度に表れるのが「箱根細工」か?これは大治郎が旅先で母上のみやげにと買い求めるものだが、箱根細工の裁縫箱というところがなんとも微妙でよい。寄木細工のように、人生というやつもいろいろと微妙な要素で成り立っていることを象徴するかのようだ。それがちょっと狂うと、この話に出てくる男のようになるのだ

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    2026年01月26日
  • 剣客商売三 陽炎の男

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    物語の軸のひとつに三冬の心境の変化というものがある。父である意次に対する姿勢もそうであるが、小兵衛に対するほのかなあこがれが、やがて恋の心になってその息子である大治郎のほうに向いていく過程が秀逸に描かれている。六十余にして自分の息子より若い後妻を持つ小兵衛とちがい、この大治郎、けっこうな朴念仁である(笑)。対する三冬は男装の武芸者なのだから、直接的にその恋の展開するはずもない……。表題作は三冬の心が大治郎に傾斜していくきっかけを見事に描いていると思う。理詰めでなく、むしろ生々しい女性を描いているのに、そこのところが男性であるぼくにもすっと理解することができるのだから……。

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    2026年01月26日
  • 剣客商売二 辻斬り

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    このシリーズを読んでいて思うことのひとつに老中である田沼意次の政治のことがある。小学校の歴史では今でもあの「もとの田沼の……」という川柳を教えているのだろうか?政治などというのは、この作品中にも何度も触れられているように綺麗事だけではすまない部分も多々あるのだろう。作中の意次の政治に対する姿勢とか、あるいは剣客であることを「商売」とする小兵衛のやりかたなどを読んでいると、うなってしまうのである。なるほど、そういうやりかたがあるよなあ、という感じである。しかし、これ、なかなかぼくのような若僧には承服できかねる部分もあるのだけれどね。
    佐々木三冬の心がじょじょにほぐれていくように、しかしいつの間に

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    2026年01月26日
  • 剣客商売一 剣客商売

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    老剣客の秋山小兵衛と息子の大治郎の活躍を描く池波正太郎の代表的作品。池波作品では『仕掛人・藤枝梅安』が既読なのだが、それに負けず劣らず面白い。じつは、このシリーズはもっと年をとってから読むためにおいておく予定だったのだが、魔がさしたのかふらふらと買いこんでしまった。梅安のときもそうだったのだが、一冊読めばたちまち続きが知りたくなるだろうという予想は見事に的中。これでまた老後(?)にとっておく予定のものをひとつなくしてしまったではないか(笑)。
    第1巻では老中田沼意次の妾腹の娘である佐々木三冬の登場なる「女武芸者」を皮切りに、意次の暗殺がはかられる一件を描いた「御老中暗殺」など。

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    2026年01月26日
  • 鬼平犯科帳(一)

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    新シリーズが始まるので予習として。

    鬼平役は松本幸四郎さんですが、原作中の中では小太りと表現されています。
    どうギャップを埋めたものか、それも楽しみです。

    時代物は読み慣れないので盗賊たちの俗称がなかなか覚えられないです…。
    ちょっと色っぽい描写もありでした。

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    2026年01月09日
  • 鬼平犯科帳[決定版](二十四) 特別長篇 誘拐

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    池波正太郎の連作時代小説『決定版 鬼平犯科帳 特別長篇 誘拐〈24〉』を読みました。
    『新装版 鬼平犯科帳 特別長篇 迷路〈22〉』、『決定版 鬼平犯科帳 特別長篇 炎の色〈23〉』に続き、池波正太郎の作品です。

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    風が鳴った。
    平蔵は愛刀の鯉口を切る。
    雪か?闇の中に刃と刃が噛み合って火花が散った―。
    表題とした「誘拐」は、著者の長逝によって永遠の未完となったが、三十年をこえる作家としての営みの掉尾を飾る作品でもある。
    巻末に著者と長い交遊のあった文芸評論家尾崎秀樹氏の「池波正太郎の文学」を併録する「鬼平」最終巻。
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    2025年12月28日
  • 鬼平犯科帳[決定版](二十三) 特別長篇 炎の色

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    池波正太郎の連作時代小説『決定版 鬼平犯科帳 特別長篇 炎の色〈23〉』を読みました。
    『新装版 鬼平犯科帳 特別長篇 迷路〈22〉』に続き、池波正太郎の作品です。

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    夜鴉が無気味に鳴くのを聞いた翌日、おまさは旧知の盗賊・峰山の初蔵に声をかけられた。
    「頼みがある。荒神の二代目に力をかしてもらいたい。
     二代目は女だ。先代の隠し子さ」
    ―荒神の先代にかわいがられたおまさの心が騒いだ。
    …平蔵の亡父の隠し子と盗賊の隠し子がからんで、事件のいとは段々ほぐれて行く。
    期待の長篇。
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    文藝春秋が発行する月刊

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    2025年12月28日
  • 鬼平犯科帳(十一)

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    犯罪者を問答無用に処罰するのではなく、平蔵が人柄を見て上手く密偵に仕立て上げる本シリーズの魅力の一つが今回も見られました。
    ただ、さすがの平蔵も実は現将軍の顔すら見たこともなく。大身旗本の事件は扱いきれなかったか。
    この辺りが身分制度の難しいところですね。

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    2025年12月27日
  • 鬼平犯科帳(二十二)

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    池波正太郎の長篇時代小説『新装版 鬼平犯科帳 特別長篇 迷路〈22〉』を読みました。
    池波正太郎の作品は先日読んだアンソロジー作品『女城主 戦国時代小説傑作選』に収録されていた『夫婦の城』以来ですね。

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    盗賊改方の水も洩らさぬ探索網により、薬種屋を狙った大がかりな押し込みは未遂に終わった。
    しかし、安堵の空気もまもないころ、夕闇を切り裂いて疾って来た半弓の矢が、与力・秋本源蔵の頸すじへ突き立った──。
    与力暗殺! 同じころ平蔵も襲われ、長男の辰蔵も命を狙われる。
    そればかりか、盗賊改方の下僕にまで魔の手がのびる。
    生涯の怪事件に苦悩し、追詰められ

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    2025年12月27日
  • 真田太平記(九)二条城

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    秀頼の上洛は何とか無事に終わったものの、昌幸が病死し、草の者達も奥村弥五兵衛が死に残ったメンバーも老化が進み、残念ながら真田家は確実に衰退してゆく。
    歴史は変えられないものの、真田家に肩入れしながら読んでいるので、少しずつ歯車が変わっていればと思えてならない。
    あと、家康のじわじわと相手を追い込む姑息なやり方は好きじゃないけれど、安定した世の中を作るためには仕方がなかったと思うべきなのか。

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    2025年12月22日
  • おせん

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    短編集。13編あり、すべてが女性を主人公としたもの。見た目だけでは、わからない人間の業と言うものを描き尽くしている。根っからの悪人も、根っからの善人もいない。
    池波正太郎独特の食事の場面が、その人を妙にリアルにさせてくれるのである。

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    2025年12月02日
  • 食卓の情景

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    久しぶりに本棚から取り出して読んでみた。時代小説の大家である作者の日々の食事がどれも美味しそうに描かれている。池波さんの時代小説は読んだことが無いがきっと食事の場面も上手に買いているんだろうと想像した。フットワーク軽く様々な所に出向いて食べる食事は凡人には真似できないが、美味しさを想像して面白く読むことが出来ました。時代小説にもチャレンジしようと思いました。

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    2025年12月01日
  • 食卓の情景

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     『鬼平犯科帳』『剣客商売』で有名な時代小説家・池波正太郎先生の食に纏わるエッセイで、鮨、鰻、チキンライス、ポーク・カツレツ、カレーライスなど思わずお腹が空いてくるような筆致と先生が過ごした昭和の情景描写、自身の作品と食事の深い結びつきが印象的で、思い出した時に繰り返し読みたくなる作品だった。

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    2025年11月26日
  • 真田太平記(八)紀州九度山

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    昌幸と幸村が九度山に軟禁されてからも、生き残った草のものたちはあるかないかも分からない一度の機会がある事を願って地味ながら潜伏を続けている。
    病に臥せっていた昌幸が危篤になったものの、次巻はいよいよ家康上洛。さてどう動くのか。

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    2025年11月16日