池波正太郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
シリーズ初の長編。大治郎の名を名乗る辻斬りがあらわれ、幕閣で対立する田沼意次と松平定信の家臣を次々に刃にかける。小兵衛は探索をはじめるが……。
小兵衛も大治郎も市井に生きる人間であるから、シリーズのこれまではあまり政治そのものには深入りせずに描かれていたと思う。意次の政治に対する姿勢ということでそれが示されることはあっても、むしろその周辺を描いてきたのではないだろうか?もちろん、そうして体制から外れている人々を描くことで物語には深みが増していたわけである。この巻は長編ということもあって、今までに比べるとやはり仕掛けが大きくできている。それが楽しくもあるし、やはり短編でもっと読みたいとも思った。 -
Posted by ブクログ
「品川お匙屋敷」の一編において拉致された三冬を無事に保護した大治郎は、三冬の父、老中田沼意次に娘を嫁にもらってほしいと頼まれる。と、裏表紙のあらすじ紹介に書いてあるし、ほとんど予定調和なんだから、ネタばれではなかろう。めでたしめでたし。
しかし、裏表紙にそう掲載されていて、表題作が「新妻」ならば、ふたりが結婚するのはその一編だと誰でも思うじゃないか……。その点はやられたというか何というか。まあ、それは別として表題作の「新妻」は別の意味で味わい深い話。やはりこれも明暗の対比というか幸不幸の対比で成り立つ話ですよね。
ふたりの奇妙な新婚生活の一端が読み取れる「川越中納言」の冒頭は、いやもう勝手にや -
Posted by ブクログ
「雨避け小兵衛」の出だしに思わずにやりとする。飄々とした小兵衛だが、家庭人としては四十も年下のおはるにいいようにあしらわれている、そういうのもまたいいなあという書き方なのである。これに続いて起きる事件のやりきれなさとはじつにうまい対比である。同じような道を歩いてはいても、人というやつの運命はどこでどのようになるやもしれない。この編の末尾で小兵衛が噛みしめる思いは……。それにしても、おはるはけっきょくのところ小兵衛を「先生」と呼んでいるのだね。
続く「三冬の縁談」、めずらしく大治郎の右往左往さる様が面白い。このような筋で解決しなかったとしたら、大治郎がどのように行動しただろうかと意地悪く考えてし -
Posted by ブクログ
このシリーズの人間関係でもうひとつ不可思議なのが、小兵衛の後妻であるおはると大治郎の関係かもしれない。もと秋山家の下女であったおはるは、今や老夫小兵衛と絶妙のコンビネーションを見せるのだが、大治郎が実際のところ義母をどう思っているのかは、ここに至るまで描写されなかったような気がする。それが、言葉ではないまでも態度に表れるのが「箱根細工」か?これは大治郎が旅先で母上のみやげにと買い求めるものだが、箱根細工の裁縫箱というところがなんとも微妙でよい。寄木細工のように、人生というやつもいろいろと微妙な要素で成り立っていることを象徴するかのようだ。それがちょっと狂うと、この話に出てくる男のようになるのだ
-
Posted by ブクログ
物語の軸のひとつに三冬の心境の変化というものがある。父である意次に対する姿勢もそうであるが、小兵衛に対するほのかなあこがれが、やがて恋の心になってその息子である大治郎のほうに向いていく過程が秀逸に描かれている。六十余にして自分の息子より若い後妻を持つ小兵衛とちがい、この大治郎、けっこうな朴念仁である(笑)。対する三冬は男装の武芸者なのだから、直接的にその恋の展開するはずもない……。表題作は三冬の心が大治郎に傾斜していくきっかけを見事に描いていると思う。理詰めでなく、むしろ生々しい女性を描いているのに、そこのところが男性であるぼくにもすっと理解することができるのだから……。
-
Posted by ブクログ
このシリーズを読んでいて思うことのひとつに老中である田沼意次の政治のことがある。小学校の歴史では今でもあの「もとの田沼の……」という川柳を教えているのだろうか?政治などというのは、この作品中にも何度も触れられているように綺麗事だけではすまない部分も多々あるのだろう。作中の意次の政治に対する姿勢とか、あるいは剣客であることを「商売」とする小兵衛のやりかたなどを読んでいると、うなってしまうのである。なるほど、そういうやりかたがあるよなあ、という感じである。しかし、これ、なかなかぼくのような若僧には承服できかねる部分もあるのだけれどね。
佐々木三冬の心がじょじょにほぐれていくように、しかしいつの間に -
Posted by ブクログ
老剣客の秋山小兵衛と息子の大治郎の活躍を描く池波正太郎の代表的作品。池波作品では『仕掛人・藤枝梅安』が既読なのだが、それに負けず劣らず面白い。じつは、このシリーズはもっと年をとってから読むためにおいておく予定だったのだが、魔がさしたのかふらふらと買いこんでしまった。梅安のときもそうだったのだが、一冊読めばたちまち続きが知りたくなるだろうという予想は見事に的中。これでまた老後(?)にとっておく予定のものをひとつなくしてしまったではないか(笑)。
第1巻では老中田沼意次の妾腹の娘である佐々木三冬の登場なる「女武芸者」を皮切りに、意次の暗殺がはかられる一件を描いた「御老中暗殺」など。 -
Posted by ブクログ
池波正太郎の連作時代小説『決定版 鬼平犯科帳 特別長篇 誘拐〈24〉』を読みました。
『新装版 鬼平犯科帳 特別長篇 迷路〈22〉』、『決定版 鬼平犯科帳 特別長篇 炎の色〈23〉』に続き、池波正太郎の作品です。
-----story-------------
風が鳴った。
平蔵は愛刀の鯉口を切る。
雪か?闇の中に刃と刃が噛み合って火花が散った―。
表題とした「誘拐」は、著者の長逝によって永遠の未完となったが、三十年をこえる作家としての営みの掉尾を飾る作品でもある。
巻末に著者と長い交遊のあった文芸評論家尾崎秀樹氏の「池波正太郎の文学」を併録する「鬼平」最終巻。
-------------- -
Posted by ブクログ
池波正太郎の連作時代小説『決定版 鬼平犯科帳 特別長篇 炎の色〈23〉』を読みました。
『新装版 鬼平犯科帳 特別長篇 迷路〈22〉』に続き、池波正太郎の作品です。
-----story-------------
夜鴉が無気味に鳴くのを聞いた翌日、おまさは旧知の盗賊・峰山の初蔵に声をかけられた。
「頼みがある。荒神の二代目に力をかしてもらいたい。
二代目は女だ。先代の隠し子さ」
―荒神の先代にかわいがられたおまさの心が騒いだ。
…平蔵の亡父の隠し子と盗賊の隠し子がからんで、事件のいとは段々ほぐれて行く。
期待の長篇。
-----------------------
文藝春秋が発行する月刊 -
Posted by ブクログ
池波正太郎の長篇時代小説『新装版 鬼平犯科帳 特別長篇 迷路〈22〉』を読みました。
池波正太郎の作品は先日読んだアンソロジー作品『女城主 戦国時代小説傑作選』に収録されていた『夫婦の城』以来ですね。
-----story-------------
盗賊改方の水も洩らさぬ探索網により、薬種屋を狙った大がかりな押し込みは未遂に終わった。
しかし、安堵の空気もまもないころ、夕闇を切り裂いて疾って来た半弓の矢が、与力・秋本源蔵の頸すじへ突き立った──。
与力暗殺! 同じころ平蔵も襲われ、長男の辰蔵も命を狙われる。
そればかりか、盗賊改方の下僕にまで魔の手がのびる。
生涯の怪事件に苦悩し、追詰められ