Posted by ブクログ
2017年05月27日
第九巻「二条城」
関ヶ原敗戦後、命を取り留め流刑地紀州で大人しく暮らす真田昌幸・幸村親子。
幸村は子供も増えました。
便宜上この小説では娘二人と息子一人を子供としていますが…もっと沢山いたようですね。暇だったんだろうなあ(苦笑)
さて、作者はこの時代の武将では加藤清正を評価しています。
若いころ...続きを読むは武力だけの人だったのが、その後の経験が彼を育てた、知力、交渉力、築城に経済、すべてにおいて才能を磨いていった…と褒めています。
そして加藤清正は、自分こそが豊臣と徳川の橋渡しになると覚悟を持ちます。
豊臣の主は大阪城にいる秀吉の遺児の豊臣秀頼。
作者は「母の淀殿が秀頼が家康に暗殺されるのではないかと心配するがあまり広大な大阪城敷地内から出さず、そのために若いのに肥満気味なのが残念だが、
顔立ちは端正、体格は立派で、立ち居振る舞いは貴公子、書物の才能も優れている」としています。
それまで大阪城に引き籠りだった秀頼ですが、清正が強引に対面すると、天下の情勢を悟ります。
加藤清正や浅野幸長の必死の仲立ちにより、二条城にて家康と秀頼の対面が叶います。
京都に入った秀頼は、民衆から熱烈な歓迎を受けます!
もともとの秀吉人気のうえに、秀頼の立派な風貌にすっかり民衆は大喜び!
…それなら大阪城に引き籠らせてなくて、民衆に自己アピールしておけば民衆を味方につけられただろうに…。
家康は威風堂々たる豊臣に危機感を募らせます。
九度山の昌幸・幸村は、いつか大阪と関東の戦が起こる、その時は九度山を抜けて駆けつけよう…それを励みに生きていますが…
ほぼ立て続けに加藤清正、真田昌幸、浅野幸長が死去。
こうなると豊臣秀頼を世間と結ぶ者たちがいなくなり、そして結局大阪城引き籠りに。
真田の草の者たちも、家康を暗殺するか、戦場での正面対決を待つか意見が分かれ…
全国の忍びたちの在り方も変わりつつあります。
真田の草の者たちは息を潜めつつ力は蓄えていますが、他国には時代遅れになって老いていく忍びたちも。
この巻では料理人として入り込んでいる忍びたちが暗躍します。
普段は完全に料理人となり主君に仕えているけれど、実際の主君はまた他家の武将であり、命令がくれば忍びとして働きます。
そしてその命令を果たした後はまた料理人としての日々を過ごします。
この時代のいくつかの不審な死を作者は「忍びの仕業」としてうまく物語化しています。