池波正太郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
池波正太郎の連作時代小説『新装版 鬼平犯科帳〈1〉』を読みました。
池波正太郎の作品は4月に読んだ『新装版・殺しの四人 仕掛人・藤枝梅安(一)』以来ですね。
-----story-------------
斬り捨て御免の権限を持つ、江戸幕府の火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)の長官・長谷川平蔵。
その豪腕ぶりは、盗賊たちに“鬼の平蔵”と恐れられている。
しかし、その素顔は「妾腹の子」として苦労をし、義理も人情も心得ている。
昔は大いに遊び、放蕩無頼の限りを尽くしたことも。
テレビに舞台に、人気絶大の鬼平シリーズ第一巻は「唖の十蔵」「本所・桜屋敷」「血頭の丹兵衛」「浅草・御厩河岸」「老盗の夢」「暗剣白梅香」「座頭と猿」「むかしの女」を収録。
-----------------------
文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に1967年(昭和42年)12月号から1968年(昭和43年)7月号に連載された作品8篇を収録して1974年(昭和49年)に刊行された作品……実在の人物である火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公とする捕物帳、鬼平犯科帳シリーズの第1作です。
■唖の十蔵
■本所・桜屋敷
■血頭の丹兵衛
■浅草・御厩河岸
■老盗の夢
■暗剣白梅香
■座頭と猿
■むかしの女
■解説 植草甚一
斬り捨て御免の権限を持つ幕府の火付盗賊改方の長官・長谷川平蔵……盗賊からは"鬼の平蔵""鬼平"と恐れられている、、、
しかし、その素顔は義理も人情もユーモアも心得た、懐の深い人間である……新感覚の時代小説の世界を拓き、不動の人気を誇る「鬼平犯科帳」シリーズ第1巻は、同心・小野十蔵の物語から始まる……。
伝説の粋人・ジャズ評論家で、晩年は大の鬼平ファンでもあった植草甚一(1908年(明治41年)~1979年(昭和54年))が、第1巻で文庫解説を執筆。
テレビドラマでもお馴染みの鬼平犯科帳シリーズ……原作となる小説も面白いです! 本作品の収録作では、
平蔵が本所界隈を巡回中に、かつての道場仲間である岸井左馬之助、そして無頼漢でこの物語で密偵となる相模の彦十と再会する『本所・桜屋敷』、
野槌の弥平一味で捕縛されたが、かつての親分であった血頭の丹兵衛の名を汚す凶賊の探索を志願し放免され密偵となる小房の粂八との出会いとなる『血頭の丹兵衛』、
京都で隠居生活を送っていた元大盗賊・蓑火の喜之助が、江戸で茶汲み女のおとよと出会い、彼女のために大仕事を計画……哀しい結末を迎える『老盗の夢』……ちなみに蓑火の喜之助は『血頭の丹兵衛』でも印象に残る働きをしていましたね、
岸井左馬之助の機転が、意外なところで人の運命に影響を与える場面が印象的な『浅草・御厩河岸』、
平蔵は、金子半四郎という刺客に狙われるが、深川の船宿・鶴やの親爺が、実は半四郎の父の仇である森為之介であることが判明し、物語は意外な展開を見せる『暗剣白梅香』、
が印象的だったかな……連作短篇のカタチを取っており、1篇ずつでも愉しめるのですが、それぞれの短篇が繋がって大長篇としても読める構成なので、順番に読み進めると大河ドラマ的な愉しみがありますね。
第2作以降も順次、読んでいこうと思います。 -
Posted by ブクログ
武田家滅亡の時、戦闘の最中の信州高遠城から、物語は始まる。明日は死ぬる、と思い詰めた青年足軽、向井佐平次の登場から、重厚な物語の幕開けである。
始めの一冊であるのに、結構分厚く、読みでがある。なのに、今回はあっという間に読んでしまった。一日である。
武田勝頼が信長の将、滝川一益に攻め立てられるところから、本能寺の変が起こるまでが、第一巻の扱う時間。
先程述べた、向井佐平次に、不思議な女が「死ぬ前に女を抱きたくはないか」と誘う場面からで、土の匂いと、温い人の体温が感じられる。全編どういうわけか、土の匂いと夜の闇が感じられる雰囲気だった。
信州高遠は、私の勤務していた新宿区と友好都市として縁がある。桜の美しい、明媚なところで、仕事で訪れた者は、思った以上にうつくしい、佳きところであったと口を揃えた。高遠城は街のシンボルなのだろうが、その詳細を知ったのは、本書が始めてである。
一種の親しみを持って読み進めると、時代小説では人気の真田幸村の少年期と、佐平次が出会う。
が、佐平次のみが主人公ではない。幸村の父、昌幸の代からの、群像が主人公である。
時代背景がじっくりと語られるそばで、冒頭、不思議な誘いをしてのけた、女忍びのお江ら、忍者衆のひたひたとした活躍も、面白い。勿論、武田・真田・徳川・織田諸将の、絡み合う思惑自体が、実にひとつの生き物のように、様々な顔を見せて、つい先へ読んでしまう。
実はつい一週間ほど前、軽井沢を訪れ、いつも同じ旧軽に遊ぶだけではつまらぬと、滞在の三日目、真田家の本拠、上田城と、池波正太郎真田太平記館を訪れた。
軽井沢から浅間サンラインを通っての上田までのドライブは、実に爽快で、広い空とゆたかな山の連なりが、信州がどんなところか、肌身に教えてくれる道行きでもあった。
私自身は、上田も始めてだったが、上田城の、なんと攻めにくい、堅固な城であったことか。お濠のところがぐるっと歩けるようになっていて、真田神社にお参りも出来た。お城のつくりが高低差がある上、周囲の山に、くるりと囲まれている市街も、当時は城の中である。
見て回るのは楽しいけれど、これは、攻め手の武将なら、ちょっとためらうだろうと、つくづくと思った。赤いおなじみの甲冑も、観光会館に、美々しく展示され、古い落ち着いた街に、真田氏ゆかりの史跡が点在する。今も街全体が、真田氏を敬愛しているのが、本当によくわかるのだ。
それだけ、真田の治世が、人を大事にし、ゆたかにも導いた証明であろう。
ほど近い池波正太郎真田太平記館では、作中の戦闘がジオラマと映像で紹介され、池波さんの作品の初版本から愛用品、絵筆を取られた絵画など、充実した展示があって、本作を読んでから訪問しても、私のように、予習的に訪れても、池波ファンならたまらぬ見ごたえである。
本作の事に戻ると、司馬遼太郎の『覇王の家』などに描かれた時代と重なり、あちらでは徳川方から見た時代の流れ、こちらでは真田氏から見た、ことのゆくたてが綴られて、時代小説ファンなら、ニヤニヤしてしまうところ。
歴史シュミレーションゲームの名作、『信長の野望』あたりを、睡眠時間を忘れてやり込んだご経験でもあれば、一冊で二度おいしい(笑)。家臣の誰彼まで思い浮かぶからだ。
司馬さんの小説に比べると、池波さんの小説の中でも、この本の語りは、ちょっと古風で重々しい。実は私、この巻は再読で、一度難しいと途中で放ってしまった。池波さんにハマって、片っ端からエッセイや江戸の市井ものを読み漁って、次はこれだと手を出した。
何のことはない。作品が面白くないのではなくって、同じ方の本をいっぺんに読みすぎて、読み疲れしていただけのことであった。
抜けるような青い空と、染み入るような緑。人ほどもある高さの真田石に、堅牢で美しい大手門。街の中心で、今もしっかと上田の街を守り見つめるような上田城を見ては、読み直さずにいられなかった。
ラストまで読みきれるかなあ。長編だしなあ。
でも、うーん。ゆるゆるでもいい。読んでみよう。
皆さん、ゲームの中の真田幸村だけが、真田氏じゃないですよ。ここにも面白いの、ありますよぅ♪ -
購入済み
残念なとこ
石川島を作ったのもこの人、平蔵さん。
山本周五郎の名作さぶにも出てくるとこです。
囚人に対する習職施設で、今日の刑務所でも引き継がれてます。
記述するとすると、めんどくさ、なので切ってますが、残念ですね。
司馬遼太郎みたいなところがあれば、取材して記述する、繰り返しになりますが、残念。
まあ、お好みで。 -
Posted by ブクログ
▼一冊丸ごとの特別長編「炎の色」。なんですが、大まかは前半と後半で二つの話。
そして、個人的には「鬼平」「剣客」の特別長編の中でいちばん好きでした。
(「梅安」は割とすぐに、シリーズそのものが連作短編ではなくなるので、ちょっとカテゴリが違いますね)
▼前半は、「鬼平に、今まで知らなかったが、腹違いの妹がいた」というお話。
(以下ネタバレ)
・古老が妹がいることを告げに来て
・その妹は男勝りに居酒屋をひとり切り盛り
・その妹に悪い奴が絡んできたので
・鬼平が助けて自家の女中さんにしてあげる(「妹」とは明かさない)
というのが前半です。
▼後半は、よくあるパターンですが、きっかけは「密偵おまさ」です。
(通読してみて分かるのは、つまり池波さんは「おまさ」が大好きでたまらないということですね。真田太平記の「お江」と同じで、脇役なんだけど、作者愛情的には完全にナンバーワンです)
・おまさがかつての盗賊仲間に声をかけられて
・当然、まだ現役の盗賊のふりをして仲間に入り
・そこからじわじわ鬼平たちが調べて、最後はみんなお縄にしました
というよくあるパターンなんですが、趣向があって。
・女性の、盗賊首領が出てくる。それがまだ色気のあるイイ女で、
・その女盗賊がどうやら同性愛者で、おまさに惚れて良い寄る。
という趣向です。
それからもう一つの趣向は、
・この後半の事件で、前半に出てきた「鬼平の妹」が、盗賊改めの一員として活躍する。
・そして盗賊改めのレギュラーと添うことになる。
というもの。
▼この二つの趣向以外は、実は連作短編の世界観とあまり変わりません。そこが個人的には「いちばん好き」な理由だと思います。
なぜだか、「鬼平」も「剣客」も、特別長編になると、悪役がものすごく強く、凶悪になる(笑)。
従って、ひとがいっぱい死ぬ(笑)そうぢゃないと「悪役強いぞ」感が出ない。
そして主人公にとにかく死の危険が押し寄せる(笑)。
▼というのがパターンで、なんかこう、「暢気さ」みたいなものが無くなりますね。でも実は池波さんの勧善懲悪ヒーローものは、その「暢気さ」が大きな魅力のひとつなのです。だって、少なくとも悪い奴と肉体的に戦う段になれば、「絶対負けない、絶対死なない」のだから(笑)、リアリズム的なストレスとは無縁で、それが魅力。
▼「梅安」の場合はちょっと違いますが。主人公そのものが、ときには罪のない人でも殺してしまうという「殺し屋稼業」なので、そこの胃のもたれ具合はあります。だから、あんまり分量を書けなかったんぢゃ無いかと。まして、途中から完全に連作短編では無くなり、「殺し屋から足を洗おうとする梅安と、それを許さない闇社会」のやりあいになってしまう。つまり「カムイ外伝」方式とでも言いますか。
▼というわけで、「炎の色」はそのあたりのバランスが程よかったです。そして、女盗賊首領のキャラも楽しくて。捕まらずにこの話は終えているので、池波さんが生きていたら、きっと「新宿鮫シリーズ」の「悪役・仙田」みたいに、彼女であと何冊か書いてたんだろうなあ。 -
Posted by ブクログ
▼一冊まるごと、の特別長編「迷路」。この文庫版では鬼平は全24巻。そして23巻も特別長編で、24巻も特別長編。ただ、24巻は未完絶筆。ということはつまり連作短編の形式はもう21巻で終わってしまったということ。結論から言っちゃうと、池波さんの「鬼平」「剣客」は、連作短編の方がオモシロイ。これは恐らくたれも反論の余地が無いでしょう。なんでだろう、という考察は興尽きぬところですが。
▼いつくかある「鬼平」「剣客」の特別長編の中では、この「迷路」は、まずベストの部類に入るオモシロサでした。話の作りとしては、とにかく謎の敵が鬼平の周りを脅かす。正体が分からない。全体の7割程度まで、とにかく正体が分からない。後手に回るし、劣勢である。・・・というあたりのサスペンス、緊張感。つまりはストレスなんですが、そのストレスがオモシロイ。そしてストレスから解放されたいからどんどん読み進む。
▼最近読んでる中では、リー・チャイルドさんの「ジャック・リーチャー・シリーズ」が基本的にはこの構成です。
(以下ネタバレ)
▼備忘の為に記すと、要は平蔵の若い若い無名の不良時代に因縁があった男が犯人。
どういう因縁かというと、不良御家人で、悪事に平蔵を誘い、もめて片腕を切られた。という。
その人物が大人になって初老になっている。盗賊の頭になっている。それで平蔵を狙う。しかも周辺の関係者を殺していく。そういうお話でした。 -
Posted by ブクログ
▼第21巻は「泣き男」「瓶割り小僧」「麻布一本松」「討ち入り市兵衛」「春の淡雪」「男の隠れ家」の全6篇を収録。
▼レギュラー同心・木村忠吾が女にもてたいがために情けない大活躍をする「麻生一本松」。偽の侍になって威張って歩きたい、というちょっとへんたいな町人の姿を描いた「男の隠れ家」。印象に残りました。
▼やっぱり、情けない男、みっともない男、落ちていく男を描くと独特の色気があって素敵ですね。池波さん。ただ、そればっかりやられると読後感がつらい。だから片方に平蔵がいて、エンタメになっています。
これは、当たり前ですが「メグレ警視シリーズ」そのものですね。やっぱり。
鬼平が終わったらメグレを読もうと思いました~。