【感想・ネタバレ】鬼平犯科帳[決定版](十六)のレビュー

あらすじ

江戸の盗賊たちに「鬼の平蔵」と恐れられている、「鬼平」こと火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)長官・長谷川平蔵。
火付盗賊改方とは江戸の特別警察とでもいうべき組織。その長官を務める旗本の平蔵は、いまでこそ人あたりもよく笑顔を絶やさないが、若い頃は「本所の銕(てつ)」と呼ばれ、無頼の者からも恐れられた乱暴者だった。「悪を知らぬものが悪を取りしまれるか」と口にしながら、人情の機微に通じた鬼平が悪を退治する時代小説の金字塔。
中村吉右衛門が鬼平を演じたテレビ版をはじめ、映画、舞台、マンガと様々な形で愛されてきたが、2017年1月からはアニメ「鬼平 ONIHEI」が放送され、大きな話題になった。
2017年は池波正太郎の「鬼平」誕生50周年。これを記念して人気絶大のロングセラー「鬼平犯科帳シリーズ」全24巻を、ふりがなを増やし、読みやすくなった決定版で順次、刊行する。
「影法師」「網虫のお吉」「白根の万左衛門」「火つけ船頭」「見張りの糸」「霜夜」の全6篇を収録。
新婚同心・木村忠吾の惚けぶりには、平蔵の皮肉も通じない(「白根の万座左衛門」)。一方、妻子を失った小柳安五郎は、平蔵の指示で、女賊と乱行を続ける同僚を監視する(「網虫のお吉」)。部下たちの様々な思惑に、平蔵の決断が冴える。

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Posted by ブクログ

『影法師』
火付盗賊改方の同心・木村忠吾が婚礼の日が迫っている。お調子者で娼妓遊びも激しく粗忽者の彼も、鬼平の元でだいぶ頼りになる同心になっている。だがやはり「うさぎの忠吾」、独り者の間にできる遊びに励むのだ。
そんな忠吾は、すでに捕らえられている盗人「さむらい松五郎」に瓜二つ。さむらい松五郎を仇と狙う盗人に目をつけられて…。
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忠吾の結婚について。以前鬼平のお供で京都に行った時に与力の浦部彦太郎に「娘の婿に」と望まれたが、その娘は病死してしまった。その後、同心・吉田藤七に気に入られ、娘の”おたか”との縁談が成り立ちました。

『網虫のお吉』
鬼平の下で働く同心たちのなかには、強引なことをしたり強請りスレスレのことをするものもいる。多いとは言えない給金で命懸けで働く彼らを慮りある程度は目をつぶってきた。だが悪の側に入った同心を成敗したこともある。そして今、同心・黒沢勝之助の所業についての衷心があった。黒沢はかなりの手柄を立ててきていた。だが相当あくどいやり方、他人の手柄の横取りもしてきたという。その黒沢が、昔盗賊で、今は彼女の過去を知らない男の女房になっている”網虫のお吉”という女を見つけた。黒沢はお吉の昔の盗賊一味を捕らえるためにお吉から金と彼女の身体を強請りいたぶり続けているのだ。
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一人で苦労に苦労を重ねて生きてきた女が、今度こそ静かに生きようとしたのに、過去を知る相手からひどい目に合わされて…。気の毒すぎる…。

『白根の万佐兵衛』
白根の万佐兵衛は昔気質の盗人だった。準備に長い時間をかけ、殺したり犯したりはしない。破った手下は厳しく処分する。そんな白根の万佐兵衛も死期が迫っている。跡継ぎは誰になるのか?娘とその婿か、第一の手下か。だが彼らは、殺すこじ、犯すの急ぎ働き、白根の万佐兵衛の死に際しても、隠してあるという財産目当てで裏では騙し合いを続けている。白根の万佐兵衛はそんなヤツらの思うように死んでやるつもりはなかった。
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鬼平が体調不良を!大丈夫か!

『火つけ船頭』
船頭の常吉は人に知られてはいけない所業を行っている。夜の闇に紛れて火つけをするのだ。見つかったらもちろん死刑になる。だが日頃「間抜け船頭」などと馬鹿にされ、女房は他の男と情事にふけり二人からも舐められる彼は、堪りかねたある夜火を着け、その時の爽快感が忘れられないのだ。
今宵も火を付ける家を探して歩く常吉。だがある屋敷に火を付けようとした時に、その屋敷に盗人が入り込むのを見てしまった。そしてその一味には、女房の情夫がいるではないか!

『見張りの糸』
いくつかの悪事の計画に、いくつかの盗人たちの思惑が重なってなかなかややこしいことに。
 まず、鬼平たちが、かつての親分「狢の豊蔵」一味の忍び宿も見つけ、そこに集まる盗人たちを捕らえる計画を立てている。
 ところがその鬼平たちが忍び宿見張りのために借りた家が、引退した盗人親分「堂が原の忠兵衛」とその身内が身を潜める家だった。
 さらに、忠兵衛を仇と狙う盗人が、忠兵衛の家(つまり、鬼平一味が潜んでいる家)の襲撃を企てている。

さあ、勝つのは誰だ!?
『霜夜』
鬼平は、二十年ぶりに若い頃の道場仲間・池田又四郎を見かけた。そのころの鬼平は身も心も荒んで暴れ者だった。いよいよ引き返しのつかないことを決意した鬼平の心を読み取り、それを止めたのが池田又四郎だったのだ。
懐かしい。だが鬼平は声をかけるのを躊躇った。又四郎の持つ雰囲気から、彼が真っ直ぐな道を進んでいないことを感じさせられたのだ。
==鬼平にまつわるなかなか切ない流れ。悪道から立ち直った鬼平、その鬼平と繋がりが薄れたため悪道に近づいた又四郎。鬼平は又四郎の熱く切ない気持ちを知る。

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2025年03月21日

Posted by ブクログ

池波正太郎の連作時代小説『決定版 鬼平犯科帳〈16〉』を読みました。
池波正太郎の作品は先日読んだ『新装版 鬼平犯科帳 特別長篇 雲竜剣〈15〉』以来ですね。

-----story-------------
出合茶屋で女賊の裸身をむさぼる同心・黒沢。
どうも妙だ、と同僚の小柳は気づいた──「網虫のお吉」。
結婚を目前に最後の悪所通い、としゃれこんだ木村忠吾が出くわしたのは──「影法師」。
妻を寝とられ腹いせに放火を企てた船頭が、闇の中、商家へ吸い込まれてゆく黒い影の群れを見た時──「火つけ船頭」。
巷にしぶとく生きる悪に鬼平は如何に立ち向かうのか? 「白根の万左衛門」「見張りの糸」「霜夜」とあわせ全六篇を収録。
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文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に1977年(昭和52年)2月号から1977年(昭和52年)7月号に連載された後1987年(昭和62年)に刊行された作品……実在の人物である火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公とする捕物帳、鬼平犯科帳シリーズの第16作です。

 ■影法師
 ■網虫のお吉
 ■白根の万左衛門
 ■火つけ船頭
 ■見張りの糸
 ■霜夜

チーム鬼平、絶好調! 新婚の同心・木村忠吾への平蔵の可愛がりも舌好調……盗賊のみならず、同心たちの迷いに、長官が下す決断は?

新婚の同心・木村忠吾の惚けぶりは延々綿々、平蔵の皮肉も通じない(「白根の万左衛門」)。

一方、妻子を失って以来、独り身の同心・小柳安五郎は、平蔵の指示で、女賊と乱行を続ける同僚の監視を続けていた(「網虫のお吉」)。

部下たちの思惑に平蔵の決断が冴える……ほかに「影法師」「火つけ船頭」「見張りの糸」「霜夜」の全6篇を収録。

テレビドラマでもお馴染みの鬼平犯科帳シリーズ……原作となる小説も面白いです! 本作品の収録作では、

同心・木村忠吾と同じく同心の吉田藤七の娘・おたかとの婚礼が近づいており、これで遊べなくなると思った忠吾は、品川の女郎屋へと繰り出すが、そこで忠吾は既に火盗改方に捕らえられた忠吾にそっくりの盗賊・さむらい松五郎と勘違いされてしまう……コミカルな展開が愉しめる『影法師』、

新婚の木村忠吾は惚気話をしたくて仕方がなく、火盗改方の同心たちに惚気話をし過ぎたために惚気話を聞かせる相手がいなくなり、こともあろうに平蔵に惚気話を始めるという微笑ましいオープニングが印象的な『白根の万左衛門』、

女房の浮気がきっかけで始めた放火がやめられない船頭の常吉が、放火をしようとした先に盗賊の押し入っているのを発見、さらにその一味に女房を寝取った浪人・西村虎次郎の姿があったことから一計を図ろうとする『火つけ船頭』、

盗賊・稲荷の金太郎の見張り場に選ばれたのは和泉屋忠兵衛の店だった……実はこの和泉屋忠兵衛はもと盗賊であったという設定が面白い『見張りの糸』、

が印象的だったかな……連作短篇のカタチを取っており、1篇ずつでも愉しめるのですが、それぞれの短篇が繋がって大長篇としても読める構成なので、順番に読み進めると大河ドラマ的な愉しみがありますね。

平蔵を取巻く登場人物の存在感も幅広く、関係性も濃くなり、それぞれの人間味に深みがでてきて、巻が進むに連れてどんどん面白くなっていきますね……第17作以降も順次、読んでいこうと思います。

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2025年10月15日

Posted by ブクログ

 おすすめのエピソードは「霜夜」。長谷川平蔵と旧友の悲しい再会を描く。事件は起こるが二の次にして、平蔵の過去が掘り下げられる。友を想う平蔵の人間味溢れる人物像が感動的で、珠玉のエピソードだと思った。

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2024年11月24日

Posted by ブクログ

様々な思惑を胸に秘めて、巷にしぶとく生きる悪に如何に立ち向かうのか?「影法師」「網虫のお吉」「白根の万左衞門」「火つけ船頭」「見張りの糸」「霜夜」の六篇収録。
リーダー長谷川平蔵を中心にチームで悪を成敗する。決断と知恵と団結がしっかり融合する組織力は、現代社会にも参考になる。

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2020年10月13日

Posted by ブクログ

うさぎの木村さんが奥さんをもらってさんざん惚気るくせに、一方で商売女性さんを喜んで買ったりする感覚がよくわからない。
一部の男性にとって女性を求めるのはレジャーなのかな?

一方で亡くなった奥さんを一途に愛している小柳安五郎さんみたいな人もいて、こちらは性格も実直だし、真面目でちょっと暗そうだけど、良い人っぽい。

これまた同じ火付盗賊改方の一員のくせに、盗賊だったという女性の弱みにつけこんでさんざんその身体を弄ぶダメ男もいて、いろんな人間がいるなぁ~と感じた1冊でした。

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2018年10月04日

Posted by ブクログ

▼子供の頃に<中村吉右衛門×フジテレビ×京都松竹バージョン>の時代劇を、さほど熱心では無くても見ていたので、そのイメージがあって読みやすいという要素もきっと欠かせないでしょう。
 自分の中では鬼平さんは吉右衛門さんだし、木村忠吾さんは尾美としのりさんだし、五郎蔵は綿引勝彦さんだし、おまさは梶芽衣子さん。このあたりは鉄板になってしまっています。塗り替えられない(笑)。そういう方も、多いはずです。

▼文庫全24巻。とうとう16まで来ました。
ルパン三世シリーズのアニメみたいなもので、1話1話が厳密に言うと「オモシロかったのか?」と詰め寄られると実はそうでもない。んだけど、レギュラーキャラの活躍を安心して楽しめるというぬるま湯な読書の愉しみ。
 

▼収録内容

影法師 網虫のお吉 白根の万左衛門
火付け船頭 見張りの糸 霜夜

▼確かいくつかの話を跨いで、部下の同心・木村忠吾の結婚&新婚話があり、長寿シリーズならではの「サブキャラの成長」が愉しい。

▼「見張りの糸」は盗賊を監視する家のものが盗賊だったという、ありそうで無かった設定。これまた長寿シリーズならではの番外編的愉しさ。

▼「霜夜」。義母との葛藤で悩みぬいた若き日の平蔵を助けてくれた後輩が、今や落剝して再会するが…。平蔵の「過去剣友シリーズ」で、又四郎というゲストキャラが良く描けていて面白かったです。

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2025年02月16日

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