【感想・ネタバレ】鬼平犯科帳[決定版](十一)のレビュー

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Posted by ブクログ 2020年10月06日

『男色一本饂飩(なんしょくいっぽんうどん)』
なんか強烈な題名で始まった(笑)「鬼平犯科帳11」
今回ちょっと危ない目に合うのは、火付盗賊改方同心の木村忠吾、うさぎ饅頭に似ているのであだなは兎忠(うさちゅう)。
体力も胆力も足りなくお調子者でしょっちゅう女に引っかかりおっちょこちょいちょいだが、いざ...続きを読むとなったら夢中で働き裏表なくて愛嬌もあるので、与力同心たちからも鬼平からも可愛がられている。
そのうさ忠が好物の「一本饂飩」を楽しんでいるところに強引に同席してきた巨漢で毛深い男。野太い声をみょ〜に柔らかな口調でうさ忠の耳元に囁きかけてくる。
店を出たところで、うさ忠は数人の男たちに拉致されて…。
***拉致されたのが女性ならまず無事では済まない(実際に無事ですまなかった話もあるし)状況になったのですが、でもうさ忠だよ?まさかそんなにひどい目には合わないよね?という思いながら読みました。
まあ結局うさ忠を拉致ったのが強盗団だったため、鬼平としてはうさ忠救出と強盗団壊滅できたのですが、行方不明時は心配されたうさ忠が、助けられたら同心たちから「あいつなんかめずらしい体験したらしいなあ」と貞操を疑われてしまうのはちょいとお気の毒。

『土蜘蛛の金五郎』
三ノ輪の外れにできた「どんぶり屋」という飯屋。滅法安いし乞食にはただで食べさせる。
興味を持った鬼平は、荒んで汚れきった浪人の変装をして「どんぶり屋」へ通う。
そしてある時店に押しかけてきた暴漢たちを鬼平はあっさりと叩きのめす。
その腕前を見た店主の金五郎は、鬼平へ驚くような依頼をしてくれる。
「謝礼はたっぷり払う。火付盗賊改方の長谷川平蔵を殺してくれないか」
自分の暗殺を依頼された鬼平が立てた作戦は、緊迫の鬼平vs鬼平の決闘だった。
***すべてが終わって、汚い浪人から火付盗賊改方に戻った鬼平がつぶやきます。「おれは実に楽しかった。できることなら面倒なお役目は捨ててしまって、乞食浪人になってみたいもんだ」
若い頃グレていた鬼平なら乞食浪人も似合いそうですが、いまのあなたには家族も与力や同心も密偵たちもいるので、お役目は捨てないでね。

『穴』
大店の鍵のかかった蔵にしまわれた三百両が盗まれた。誰も気が付かない間に行われた見事な盗め(つとめ)仕事。
しかもその数日後、その鍵のかかった蔵に盗まれた三百両がそっくり戻されていた。やはり誰も気が付かないうちに行われた見事な仕事っぷり。
犯人は、隣に住む扇谷のご隠居平野屋源助とその番頭の茂兵衛だった。昔気質の盗賊だった源助と側近の茂兵衛は盗賊稼業から綺麗に足を洗い、死に支度に入ろうとしていた。
だが71となった今でも元気矍鑠たる源助は、ふとしたときに昔の盗みの血が騒ぎ、自分がまだ現役でやれるという証を見せたくてしょうがなくなっていたのだった。
***鬼平犯科帳では、筋の通った矍鑠たる老盗や御隠居が出てきますが、敵味方に関わらず鬼平と互いを認め合う話になります。
今回も、源助に対して鬼平は相手の腕を認めつつこれ以上やりすぎるなよと牽制してみせ、感服した源助はそれに応えることになりました。

『泣き味噌屋』
火付盗賊改方会計担当同心の川村弥助は、まるで相撲取りのような体格にもかかわらず、怖がりで押しが弱くて「泣き味噌屋(※泣き虫の意味)」と呼ばれている。
だがある日、新婚の愛妻さとが攫われてしまい…
***最初の話でうさ忠の操は無事だったが、やっぱり女性だと…

『密告』
「こんや、九ツはん、ふか川、せんだいぼり、かまくらやへおしこむぬすっと十五にん」
たどたどしい文字で書かれた強盗密告の手紙は、それが実行される直前に届けられた。
捉えられた盗人の一人の顔、それはかつて鬼平が知っていた男によく似ていた。
鬼平は知る。若くてグレていた頃の鬼平が片手間に気遣った女は、その後の苦労の人生でその親切をずっと支えにしていた。そしてとても苦しい決断を鬼平に託したのだということを。

『毒』
市中見廻りにでた鬼平は、若い男が陰陽師から財布を掏る場面を目撃する。
その掏摸を捕まえた鬼平だが、取り上げた財布には、毒薬が隠されていた。
***今回は、幕府に使える鬼平が、幕府制度の隠匿姿勢と、人民との距離に疑問を持ち、背後に巨悪があるかもしれないけど、火付盗賊改方とはいえ自分たちにはこれ以上道しようもないんだよね…という矛盾を吐露する話になっています。

『雨隠れの鶴吉』
強盗の引き込みをする雨隠れの鶴吉とお民の夫婦は十二年ぶりで江戸に戻ってきた。
鶴吉は大店の旦那と女中の間の子供だったが、正妻に追い出されていたのだ。
江戸についた鶴吉は、昔なじみから旦那様はいまでも鶴吉の行方を探していると聞かされる。
そして十二年ぶりの親子対面となったが、その店には別の強盗団の引き込み役が入り込んでいた…
***偶然に偶然が重なり、喜んで迎えてくれる場所と、でも別の人生に戻らなければいけないという板挟みのなかで、それぞれが仁義を通したというお話。
<物事には、いちいち理屈をつけるものではない。人間という生き物は理屈とは全く無縁のものなのに、どうも得てして理詰めにいきたがるのがおかしい。P308>

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Posted by ブクログ 2019年01月23日

三度目の鬼平もこれで、第11巻。全七話収録されているが、圧巻は同心・兎忠木村忠吾が誘拐される「男色一本饂飩」その他は引退した老盗がお盗めへの情熱から再び盗めを行う「穴」、家を捨て、盗人になった男が実家の危機を救う「雨隠れの鶴吉」など。

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Posted by ブクログ 2017年09月03日

「男色一本饂飩」「土蜘蛛の金五郎」「土」「亡き味噌屋」「密告」「毒」「雨隠れの鶴吉」を収録。怖がりの盗賊改方の経理担当者が妻の敵を討つ「亡き味噌屋」、木村忠吾が男色の盗賊に誘拐される「男色一本饂飩」が印象的だった。

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Posted by ブクログ 2021年12月24日

内容(「BOOK」データベースより)
食い気盛んな同心・木村忠吾の大好物は、深川の一本饂飩。柚子や摺胡麻、葱などをあしらった濃目の汁で食べる。ある日、「同席、かまわぬかしら?」と巨体の侍が忠吾に近づいてきた(「男色一本饂飩」)。老盗人の名人芸とは(「穴」)。全七篇を収録。

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Posted by ブクログ 2018年09月02日

江戸時代の陰陽師って、登録制(?)で土御門家に登録料(?)を払う形式だったんだね。

鬼平さんは江戸の市民を守っているけれど、その上の幕閣にいる御家人さんとか大名さんとか、役職付のエライ人とか、大奥とかもっとドロドロしてるっぽいことが少し描かれていました。

そんな世界で地道に生きている市民を守る鬼...続きを読む平さんは、酸いも甘いも清濁併せ呑める力量なのがスゴイな~♪

……ま、ちょっと剣術が強すぎるけどね(笑)

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